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学校特集

東京都市大学等々力中学校・高等学校2021

日常に溶け込むICT教育を通じて、自ら学び続ける生徒を育成

掲載日:2021年12月21日(火)

「ノブレス・オブリージュとグローバルリーダーの育成」を理想の教育像として掲げる東京都市大学等々力中学校・高等学校。2010年の共学校化を皮切りに、様々な学校改革を実施しており、自ら思考し、探究できる姿勢をもった生徒たちを育んでいます。それらの教育活動が結実し、国公立大学の合格者数を年々更新するなど、高い進学実績を出しており、学校説明会の予約が取りづらくなっている人気校です。
早くからICT教育に取り組んでおり、ICT先進校としても知られています。「ソサエティ5.0」が提唱され、メタバースなど世界が大きな変遷を迎えている現在、どのような取り組みを行っているのでしょうか。ICT委員の鹿又裕毅先生に伺いました。

ICT先進校としての矜持とは

都市大等々力_ICT委員の鹿又裕毅先生
ICT委員の鹿又裕毅先生

 東京都市大学等々力中学校・高等学校では、「国語・リテラシー教育、英語・教養教育、数理・情報教育の三つを柱に据えた高い知識の獲得」を教育目標の一つとしています。
 これから世界へ羽ばたく生徒たちにとっていずれも必要不可欠な力ですが、同校では情報教育にあたるICT教育をかねてより推進してきました。
 現在の校舎が完成した2010年より授業の中でプロジェクターを活用し始め、15年には全ホームルームに電子黒板を設置するなど、本格的にICT教育を開始。

「17年には高1でiPadを導入しましたが、全学年で一気に導入すると無理が生じると判断し、まずは1学年に絞りました。そのとき高1の授業を持っている先生は全教員の4分の1程度。その先生方が生徒たちと一緒に使いながら慣れて、翌年は高2に進級したその生徒たちと次の高1とともに使用することで、教員の半分以上が活用する段階を経て、少しずつ浸透させていきました」と鹿又裕毅先生は話します。

都市大等々力_オンライン交流会なども盛んです
オンライン交流会なども盛んです

 実践を重ねながら改善にも取り組み、19年には6学年で一斉に導入。板書や配布、提出といった様々な点で効率化が図れたことで生まれた時間は小テストや問題演習に充てられるようになりました。さらにアクティブラーニングの時間に転用するなど、より理解を促進させ、実りのある学びへと昇華させています。

 ICTの活用において同校が他校と比べリードしている点について鹿又先生は、「本校の強みは、非常勤を含めたすべての教員が差異なく活用できることです。どの教科の授業の中でも使われており、日常の中に溶け込んでいます」と話します。

 ICTはあくまで補助教材に過ぎないというスタンスで、バランスを重視している同校。日々の生活の中で、ICTの有効活用が根付いています。

先生も驚いた新入生のICTスキルとは

都市大等々力_中1のオリエンテーションでは、一人ひとりの「命(個)」を最も大切にしていることが伝えられます
中1のオリエンテーションでは、一人ひとりの「命(個)」を最も大切にしていることが伝えられます

 現在、中1の担任も務める鹿又先生。Z世代である新入生たちは、デジタルネイティブといわれますが、入学時の生徒たちのICTにおけるスキルはどのようなものなのでしょうか。

「学校の立地がとても影響していると思います。在籍者数が多い世田谷区と横浜市の小学校は、ICT教育が非常に進んでいます。
 生徒たちには4月にiPadを渡しますが、学習支援アプリである『ロイロノート』はクラスの半数以上の生徒が使ったことがありました。最初のログインを指導する程度で、使い方自体は教えなくてもほとんどの生徒ができる状態。わかる子がわからない子に教えてあげ、教えられた子もほどなく使いこなせていました。ほとんどの生徒がICTをできる状態で入学してくるという、ここまで進んでいる学年は初めてでした」と驚きを隠せない鹿又先生。

 なお新入生に対しては、4月のオリエンテーション時にネットリテラシーを学ぶ機会を設けています。また学年集会などで定期的に、SNSとの付き合い方やインターネット上でのいじめや誹謗中傷について、それがどんなことを招くのかということを学んでいます。

「ツールが新たに増えていけば、付き合い方も変わってきます。現在はMicrosoftの『Teams』をプラットフォームとし、教職員も生徒も全員が使える状態にしてあり、チャットも活発です。
 やり取りが双方向になってきているので、例えば送る際には相手を慮ることや送信時間なども考えるようにという話はことあるごとに伝えています」(鹿又先生)

都市大等々力_一緒に大きく成長できる環境があります
一緒に大きく成長できる環境があります

 なお同校では「STOPit」というネット上でのいじめを報告できるアプリを入れ、いじめの防止やすぐに発見・対応できる体制を整えています。

 これらのICT環境が当然となっている現代の子どもたちにとって、ICTの重要性を鹿又先生に伺いました。
「これからは誰もが知らない未知の世界になっていきます。現在はない職業に就く子どもたちも増えていくなかで、予測不能なことや先の見えないことに対応しなければなりません。
 その能力はいきなりつくのではなく、学校教育の中で彼らが吸収しやすい時期に、成功体験を重ねながら学んでおかなければなりません。iPadを日常的に使用していき、失敗してしまったりすることも当然ながらありますが、様々な経験をして少しずつ距離感を掴めるようになり、適切な使い方ができていくのだと思います。

 4月に実施される最初の保護者会では、iPadを使用する際の学校の方針を伝え、『失敗はありますが、失敗しなければ学びはないと思っています。生徒たちには丁寧に話していくので、ご家庭でも同じ姿勢で見守っていてください』と保護者の方々にはお願いしています」

 ツールとして活用することは当然ながら、トライアンドエラーを恐れない姿勢や未知の出来事に柔軟に対応できる力をも養っているのです。

オンデマンドで実施する授業のメリットとは

都市大等々力_各教科で創意工夫を凝らしながら授業動画が作られています
各教科で創意工夫を凝らしながら授業動画が作られています

 2020年の新型コロナウイルス感染症対策における休校期間中には、オンデマンドによる授業動画配信を行った同校。社会科教諭である鹿又先生は、それ以前から高校生向けの講座で授業動画を作り、反転学習を行っていたため、対応もスムーズでした。

「2020年の最初はオンデマンドだけでしたが、登校が始まって以来、現在も動画配信を続けています。社会科はほぼすべてを反転授業にしています。私はできる限り早めにYouTubeでの限定配信をするように心がけており、生徒たちは授業までに家庭で視聴するというルーティンができています。学校では小テストや東大などの問題を使った演習を中心に、ポイント解説を行えるようになりました。これまで授業で踏み込めなかったプラスアルファの部分ができるようになっており、良い流れが作られてきています」(鹿又先生)

 さらにテスト対策も万全になりました。
「視聴のアナリティクスをこちらで確認できるので、試験前になると視聴回数が急激に増えるのがわかります。彼らにとっても授業動画を見返すことで、テスト勉強がしやすくなったのではないでしょうか」と鹿又先生。

 授業動画の作成は教師側にとってもメリットがあります。鹿又先生は例えば受験生である高3の授業について、「今までは高3の最初の約ひと月強ほどは、これまでの学習範囲を猛烈な勢いで復習していましたが、動画を見ることで予め学んでおくことができます。ようやく財産が使えるときがきました」と笑います。

 こうした授業形態を続けることでさらなる副産物がありました。
「社会科は、数学や英語に比べるとそれほど質問が多くない教科です。それでも質問してくる生徒は一定数いましたが、わからないところは授業動画を何度も見れば理解できるので、質問数が圧倒的に減りました。
 それでもわからないところは聞いてくるという流れができ、生徒たちは自分で解決できる力がついたと感じます」(鹿又先生)

 反転学習を行うことで、理解が浅いまま授業が進んでしまうことがなくなった上、学んだ内容がより定着し、発展できるようになりました。

 なお、今年の9月は緊急事態宣言の影響で休校措置を取っていた同校。午前中に4時間のオンライン授業を「Zoom」で行うなど、メリハリが出るような工夫や知恵を凝らしました。我が子が規則正しい生活を送りながら学び続けることができ、保護者も安心感があったことでしょう。

「オンライン授業は20分程度にし、演習やプリントを組み合わせながら集中して取り組める環境作りに腐心しました。授業動画を残したのは、作り込むことができるため、良いものになることがわかっているからです。『Zoom』での授業はどうしてもタイムラグが生じてしまうので、授業が止まるとお互いストレスが大きくなってしまうのです」(鹿又先生)

都市大等々力_様々なツールを活用して、自学自習できる生徒を育成しています
様々なツールを活用して、自学自習できる生徒を育成しています

 さらに生徒たちが学習面で役立てているのが「TQ(Time Quest)ノート」です。これは自ら目標を設定し、その目標を達成するための計画を自ら立て、そのスケジュール=時間管理ができるノート。休校期間中も時間割に応じて組み立てを考えることで、家で何をやればいいか迷わないですみました。
 同校では「TQノート」を活用しながら、自学自習の姿勢を養い、習慣づけることができています。6年間使い続けることで自分の課題が見えるだけでなく、部活と勉強の両立や受験勉強にも役立ったと生徒や卒業生たちが語る心強い味方なのです。

オンラインで実施した文化祭は大成功

都市大等々力_生徒が作成したクラス紹介動画より。学校HPから見ることができます
生徒が作成したクラス紹介動画より。学校HPから見ることができます

 2021年度の文化祭もオンラインでの開催となりました。鹿又先生のクラスでは、学校紹介の動画を作成しました。

「生徒たち自身で自由に行うよう、私は実行委員たちに『君たちがすべて把握しなさい』と少し話す程度で、できるだけ口出しはせず、基本的に見守る姿勢を貫きました」(鹿又先生)

 クラスの「Teams」のなかに文化祭のチャネルを作り、動画班と装飾班、もともとは来校者を出迎えた際に出題するクイズを作る計3班の役割ごとにそれぞれで夏休みなども活発に話し合いが行われていました。
 文化祭実行委員たちがそこで話し合われた内容を分かち合い、クラス全員が共有できるような仕組みづくりができていき、生徒は自分たちの力で最後までやり通すことができたのです。

「文化祭当日はシフト制で動画を配信しましたが、私がいちばん驚いたのは何も教えていないのに、オンライン上でファイル共有ができる『One Drive』のアドレスを全員に送って、誰もがアクセスできるようにした生徒がいたことです。その生徒はもともとICTの知識に長けている子でしたが、自分たちの中で有効活用できていることに感心しました」と鹿又先生は笑顔で教えてくれました。

都市大等々力_クラブ活動も熱心に行われています
クラブ活動も熱心に行われています

 さらに、保護者会で動画を使いたいとその生徒に伝えたところ、鹿又先生宛にもアドレスを送ってくれたそうです。

「『One Drive』に気づいた生徒もそうですが、何かをやりたいというアイデアが出た時に、適切なツールを正しく選んで使えるようになってほしいですね。
 そのためには正確な知識と認識が必要なので、できるだけ制限をせずに様々なものに触れられるようにしてあげたいと思います」(鹿又先生)

 それぞれの知識と知恵を持ち寄り、創意工夫を繰り返しながら共に学んでいく生徒が育っています。

思考を研ぎ澄ます豊富な機会

都市大等々力_「問い」へ徹底的にアプローチする姿勢が培われます
「問い」へ徹底的にアプローチする姿勢が培われます

 先に触れたように生徒たち自身で様々な試行錯誤を行いながら、成長する機会を豊富に設けている同校。ICTをはじめとする多くの学びと連動して行われているのは、アクティブラーニングです。鹿又先生はアクティブラーニングについてこのように話します。

「アクティブラーニングと聞いてイメージするのは、グループでの協働学習でしょう。思考を活性化させるために誰かとやりとりするということは、大きな選択肢の一つです。
 ただしグループを作らなくても、1人でもアクティブラーニングはできます。なぜなら自分の思考がアクティブになれば良いからです。授業では、書くことでの表現や成果物を提出させる機会が絶対的に増えており、それも一つのアクティブラーニングといえるのではないでしょうか。ですから必ずしも相互である必要がないと思っています」(鹿又先生)

 同校では「知識構成型ジグソー法」というアクティブラーニングを取り入れています。この思考法は、まず動機づけや方向づけを行い、最初と最後は「内化」という1人で思索することを大切にしています。その間に「外化」として、みんなで話し合い、批評し合う外化活動を実施して多様な考え方や思考に触れていくという、外向き・内向きの能動性を重視。様々な授業で多彩に形を変えながら活用されています。

都市大等々力_2021年11月は各学年で宿泊行事が行われました(写真は中2の「自己発見と共生の旅」)
2021年11月は各学年で宿泊行事が行われました(写真は中2の「自己発見と共生の旅」)

 最後に、同校の魅力として鹿又先生が教えてくれたのは、先生方のチームワークの良さです。

「本校の教員はとても仲がいいんです。普段から先生同士の情報共有ができていますし、誰かがわからないことがあれば自然と教え合うような環境があります。それが本校を形作る要素として大きいと思います」

 同校の教師陣は性別や年齢構成など、バランスがいいことが特長です。こうした雰囲気の良さが生徒たちにも伝播し、先述したような教え合いや互いを思いやれるような生徒たちが育っています。そうした校風がともに切磋琢磨しながら、大きな志を抱きつつ成長していく生徒を育み、最初にお伝えしたような高い成果につながるという流れができています。

 ICTだけでなく、英語や理系教育など、未来や世界を見据えた高水準での教育を行っている東京都都市大学等々力中学校・高等学校。ぜひ一度同校を体験しに足を運んでみてください。

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