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学校特集

成蹊中学・高等学校2021(2)

「0 to 1 」(ゼロ トゥ ワン)は自分で未来を拓く合言葉

掲載日:2022年1月10日(月)

 創立者中村春二先生の「知育偏重ではなく、人格、学問、心身にバランスが取れた人間教育を実践したい」という思いを、今も大切に継承している成蹊学園。その教育を実践するために、「個性の尊重」「品性の陶冶(とうや)」「勤労の実践」を建学の精神とし、時代に則した人創りに取り組んでいます。2021年4月に中高の校長に就任した仙田直人先生は、21世紀を生きる子どもたちに向けて、「0 to 1」を合言葉に、問題解決型のプロジェクトを推進しています。また、85年以上前から留学生の受け入れをしてきた成蹊のアイデンティティともいえる国際理解教育にも力を入れ、社会に貢献できる人創りにつなげたいと考えています。そうした環境のもとで、「成蹊生である今しかできないことをしたい」と果敢にチャレンジする、小寺未来さん、東 亜矢さん、兼清 悠祐太さん(以上、高2)、河村 一輝さん(中2)に、仙田校長が自らインタビュアーとなり成蹊での学びや成長について聞きました。

*大正製薬株式会社との探究学習に参加して*
「モノを売る仕組みに興味を持った」

成蹊_校長 仙田直人先生
校長 仙田直人先生

仙田校長:今日、集まってくれたのは、今年度、本校が力を入れている探究学習や国際理解教育のプログラムに、自らの意思で参加し活動した生徒たちです。一人ひとりに、チャレンジに至った動機や取り組み、成果などを話してもらいたいと思っています。では、まず大正製薬㈱との探究学習に参加した小寺さん。プログラムの内容から教えてください。

成蹊_小寺未来さん
小寺未来さん

小寺さん:私が参加したプログラムは、「リポビタンDをあなたのデザインに」 というテーマでオリジナルデザインボトルを作るという企画です。高1と高2の希望者16名が参加しました。前回(2020年度)も参加しましたが、チラシを見た時に"楽しそうだな"、と思ったことが動機です。社会人の方と一緒に仕事ができるところにも惹かれました。専門職の方々からマーケティング理論を学び、一緒にデザインを作成する中で、マーケティングの手順を体感できたことは大きいと思います。

仙田校長:活動はどのように進行しましたか。

小寺さん:4つの班に分かれて「高校生に受け入れられる商品コンセプトやデザインに変更したら販売拡大できるのか」という仮説を立て、どのようなデザインが好感を得られるのかを話し合い、デザイン案を作成しました。私たちは「部活動や勉強を頑張る高校生を力強く応援しよう」というコンセプトで、大正製薬のワシを図案化し、キャッチコピーを入れることにしました。そしてプレゼンを行い、互いに評価しあって、最終的に私たちの案が選ばれましたが、市場調査を受けて、ワシの表情をもう少し柔らかくしようなど、改善を重ね商品化となりました。

成蹊_小寺さんたちがデザインしたオリジナルボトル
小寺さんたちがデザインしたオリジナルボトル(右)

仙田校長:実際に商品を手にした時は、どんな気持ちでしたか。

小寺さん:何もない状態から自分たちのデザインを描きおこす作業が大変だったので、感慨深かったです。

仙田校長:お披露目会という形で、同じ課題に取り組んだ慶應義塾高等学校(神奈川)と柳川高等学校(福岡)とデザイン案のプレゼン大会を実施しましたが、そこで気づいたことはありますか。

小寺さん:どの学校も「高校生」をコンセプトに考えていて、「癒し」や「爽快感」など、私たちとは反対の捉え方をしていた点はとても新鮮でした。観点によってデザインが変わることを知り、モノを売る仕組みにも興味を持ちました。

仙田校長:この商品は、成蹊大学構内にあるブックセンターで販売していますので、本校にお越しの際は、是非ともご購入いただきたいですね(笑)

*三菱商事パッケージング株式会社との連携*
「企業の方につないでくれて感謝。成長できた」

仙田校長:この活動は、東さんが校長室のドアを叩いたことをきっかけに発展しました。いきなりペットボトルの捨て方を尋ねられ、私も考えさせられました※詳細は学校HPの校長ブログ(2021.9.15)に掲載。朝日新聞主催の『SDGsクリエイティブアイデアコンテスト2021』に参加することを知り、ペットボトルのパッケージを作っている三菱商事パッケージング様を紹介しましたが、その後はどのような活動をしましたか。

成蹊_東 亜矢さん
東 亜矢さん

東さん:3回ほどオンライン(Zoom)でお話をさせていただき、5、6人の企業の方から、それぞれの立場で意見を伺うことができました。そこで多くのことを学びましたが、特に感じたのはいろいろな方と接点をもって話をすることの大切さです。私が環境問題にアクションを起こしたいと考えた背景には、「なぜ社会は動かないのだろう」「社会人は何をやってるんだ?」 という憤りがあったからです。しかし、初めて企業の方とお話をさせていただき、企業には企業の考え方があり、制限のある中で努力されていることを知りました。知識や情報も豊富ですし、私が正しいと思っていた考えが、見方を変えると環境に優しくない考えであることも教えていただき、勝手な偏見をもっていたことに気づかされました。

仙田校長:良い勉強ができましたね。お話を聞いてどんなことをプレゼンに活かすことができましたか。

成蹊_PCを使って発表資料を作成する東さん
PCを使って発表資料を作成する東さん

東さん:商品は需要と供給で成り立っていることを改めて実感し、社会に目を向けるなら消費者や私たちの目から変えなければいけないと思いました。視野が広がったおかげで、供給側と消費者側の両面からアイデアを提案することができました。

仙田校長:今後はどういう行動をしていきたいですか。

東さん:このコンテストはアイデアの提案で終わっているので、このアイデアを実行してみて、人は動くのか、変わってくれるのかを確かめたいと思っています。

仙田校長:今後も何か大会がある時には出て挑戦していきますか?

東さん:はい。そういう機会があればぜひ挑戦したいです。高校生でいられる時間は短いので、今だからできることをやっておきたいという気持ちがあります。純粋に思った事を大人にぶつけられる時期も今しかないので、いつでも校長室を訪ねることができるのはとてもいい環境だと思います。

仙田校長:私も話すことが好きなので、生徒のほうから来てくれるとありがたいです。身近な話から発展して活動につながっていくところが成蹊の良さだと思います。

*SEIKEI STARTUP*
「参加した動機の1つは『0 to 1』」

仙田校長:「SEIKEI STARTUP」はアントレプレナーシップ 、いわゆる起業家精神を育てることを目的にスタートした企画です。その企画に参加した河村さん、この企画の趣旨を説明してもらえますか。

成蹊_河村 一輝さん
河村 一輝さん

河村さん:この企画は成蹊の卒業生で、エストニアで起業された熊谷宏人さんとオンライン(Zoom)でつなぎ、STARTUPのアイデア(課題)をみんなで話し合い、出てきたアイデア(解決策)を実行するために必要なことを考えて後押しする、というものです。僕は将来の夢や、やってみたいことが何もありませんでした。 このチラシを手にした時に、せっかく成蹊に入ったのだから成蹊という場を使ってできることをしてみたいと思いました。

仙田校長:現在、取り組んでいる活動について教えてください。

河村さん:ゴミを減らす、という課題に取り組んでいます。例えば、ワールドクリーンアップデイ(World Cleanup Day)に着目し、「その活動と似たようなことを、成蹊でやってみよう」ということになりました。僕たちだけでは人数が少なく、小規模になってしまうので、私たちの活動を知ってもらうことを目的に、蹊祭(こみちさい)で発表しました。

仙田校長:活動の中では、どのようなことがおもしろいですか。

河村さん:新たな課題を見つけることです。解決できた時の感動がすごく大きいからです。

成蹊_来場客に河村さん自らプレゼン
来場客に河村さん自らプレゼン

仙田校長:それを私は何て表現していますか?

河村さん:あ、0 to 1(笑)

仙田校長:(笑)素晴らしい! 正解です! これからはAIが人間よりもすごい力を発揮します。1つの課題に対して100や1000の解決策を導き出すでしょう。ただ、AIは課題を発見することはできません。その力を身につけていれば、どんな世界でも生き抜いていけるのではないかと思っています。

河村さん:「SEIKEI STARTUP」の1回目に、仙田校長から「『0 to 1』の発想力を身につけることの大切さ」を聞き、非常に共感しました。それも参加した動機の1つです。

仙田校長:高校生と一緒に活動している中で、感じたことはありますか。

河村さん:高校生は自分とまったく違う考えを持っていて、アイデアを1つ出すといろいろな観点から、そのアイデアの改善点や問題点を言ってくれます。高校生の後押しにより、自分のアイデアが1番になった時は、仲間がいることの心強さを実感しました。

仙田校長:それはいいですね。高校生と一緒でも、萎縮せずに話せる風土が成蹊にはありますね。

河村さん:「アイデアを否定しない」「間違い・失敗を恐れない」などのグランドルールがあります。アイデアを否定するとアイデアを出した人が自信をなくしてしまいます。改善すればいい案になるかもしれないので、どんなアイデアも改善して良い方向へ向けていく、という姿勢で取り組んでいます。また、人の意見を聞くとアイデアが深まるので、聞くことを大切にしています。あとは...「楽しむ」。楽しくないと興味を失います。興味を失うとアイデアを出さなくなります。だから自分たちが楽しいと思える活動にすることが大事だと思います。

*国際理解教育*
「現地へ行けなくて本当に残念。
でも英語でのアカデミックな授業は楽しかった」

仙田校長:続いては、この夏、アメリカのチョート・ローズマリー・ホール校のサマースクールに参加した兼清さんです。参加した理由を教えてください。

成蹊_兼清 悠祐太さん
兼清 悠祐太さん

兼清さん:私は帰国生ではありません。海外で暮らした経験はありませんが、物心がついた頃から、英語にはネイティブや帰国子女に近い触れ方をしてきました。だから、私生活も完全に英語で囲まれた環境で生活してみたいと思い、短期留学に参加しました。チョート校を選んだのは、留学生に向けたサマープログラム用の授業ではなく、現地の生徒と同じアカデミックな授業を受けられるプログラムだからです。コロナ禍のため、今年はオンラインになってしまいましたが、6月の終わりから8月の初めまでサマースクールに参加し、英語で授業を受けました。

仙田校長:どんな授業に参加しましたか。

兼清さん:3つあって、1つはライティング力を高める「Expository writing」、1つはプログラミング言語の基礎を学べる「Introduction to Computer Programming 」、もう1つはwebデザインやwebプログラミング について学べる授業です。時差があるので、授業によっては夜中の3時、4時になることもありますが、それを考慮して、20時から24時あたりまでの授業で興味のあるものを選択しました。

仙田校長:授業は毎日?

兼清さん:はい。月曜から金曜まで、6週間です。

仙田校長:それは大変でしたね。どれが一番面白かったですか?

成蹊_兼清さんがデザインした蹊祭の正門
兼清さんがデザインした蹊祭の正門

兼清さん:プログラミングの2つですね。もともとコンピュータソフトを扱うのが好きで、中学生の時に受講したLife is Tech ! (ライフイズテック)社の夏期講習をきっかけにプログラミングにより興味を持つようになりました。また僕は絵を描くことが好きで、今年の蹊祭では中高の正門の装飾デザインを担当しました。アートやデザインの授業がその時間帯にあれば受けたかったです。

仙田校長:いろいろなスキルを持っていますね。現地へ行ったら、もっとバージョンアップができると思いますよ。

兼清さん:現地に行けば授業だけでなく、電車に乗ることや買い物することも学びになりますよね。私生活すべてが英語という環境を欲していたので、本当に現地に行きたかったです。

仙田校長:本校には国際理解教育を推進する土壌があるので、兼清さんのように英語をネイティブのように使いこなす生徒がたくさんいます。TOEFLで100点を持つ生徒が現在10名いますし、とれそうな生徒も含めるともっと多くいます。コロナ禍ではありますが、現在、5名の生徒が留学しています。この環境を活用して、大いに刺激を受けて成長してほしいと思っています。

*社会とつながる、成蹊で広がる学びとは*
「主体的にチャレンジするきっかけが誰にでもある」

成蹊_仙田校長とも和気あいあい♪
仙田校長とも和気あいあい♪

仙田校長:最後に各プログラムに参加、あるいは成蹊で学んできて成長を感じている部分を一人ずつ教えてください。

小寺さん:私は、大正製薬さんとの探究学習を通じて、自分にできることは結構たくさんある、と感じることができました。最近は自分を高めるためにはどう行動すればいいかを考え、さまざまな活動に関わることができています。

東さん:成蹊は、個人的に考えていたことを実現できる学校です。先生方にも気軽に話せますし、仙田先生は企業の方とつなげてくれます。おかげで、いろいろな見方ができるようになりました。アイデアや考えが広がっていく実感を味わうことができています。

河村さん:僕はこれまで「どう思う?」と聞かれた時にアイデアを出せず、人の意見に同調していましたが、「SEIKEI STARTUP」に取り組んでからは、自発的に自分の意見を言えるようになりました。1つのアイデアに対していろいろな観点から考えて、改善点を出せるようになり、その力は他の活動や授業でも活かすことができていると思います。

兼清さん:僕が感じていることは大きく2つあります。1つは中学の時にいた英語の「特設クラス」です。僕はただ一人の帰国生ではない生徒として、2年間、そのクラスで学びました。先生はもちろん外国人ですし、クラスメイトも英語が母語のような人たちばかり。扱う内容もアカデミックでしたが、すごく力になりました。今回のサマースクールも、特設クラスでの学びが自信につながり、踏み出すことができたと思います。もう一つは、デザインに関することです。今回、蹊祭の正門外装デザインを担当しましたが、中学時代にも部活やクラスTシャツなど、自分でデザインしたものが形になる機会が結構あり、それも自信につながっています。

仙田校長:自ら一歩を踏み出すためのきっかけづくりは授業にあります。教員らが興味の種を蒔き続けているからこそ、その学びを深めたいという気持ちが生まれます。その瞬間を逃さないように、探究学習型のプロジェクトを企画したり、企業とつなげたり、外部コンテストなどの情報もポスターやチラシで告知しています。先日も、高校生が日本と台湾のことについての作文コンテストで、賞を獲りました。きっかけは一枚のポスターです。その生徒は「父が台湾で働いており、自分も住んでいたため、私が書かなければ」と思ったそうです。国際理解教育も含めて、「0 to 1」を合言葉に、今後も成蹊のリソースを大いに生かして、世の中のためになる活動、活躍ができる人を育てていきます。受験生の皆さんには、ぜひ学校に足を運んでいただき、学園の雰囲気を感じ取っていただければと思います。

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