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学校特集

世田谷学園中学校・高等学校2021

2021年、「本科コース」「理数コース」の2コース制が始動!
さらに充実の「本科コース」と、医学人・科学人の育成を掲げて発進した「理数コース」

掲載日:2021年9月1日(水)

1592年(文禄元年)に創立した曹洞宗吉祥寺の学寮「旃檀林(せんだんりん)」、それが同校の前身です。この比類なき歴史を誇る男子伝統校の生徒たちの呼称は「旃檀林の獅子児」。そこには、同校に学ぶ生徒としての「自信」と「誇り」と「気概」が込められています。難関大学への現役合格率の高さにも定評がありますが、高2の文理分けまで全員が一緒に学び、等しく教養を身につける体制から、早くから理系に進路を定めている生徒のニーズに応えるために「理数コース」を設置し、今年から2コース制へと変更。教務部長の舘野信彦先生と、「理数コース」主任で理科担当の秋元幸太先生にお話を伺いました。

「本科コース」は4クラス、「理数コース」は1クラス

●両コースとも、自立心にあふれ、知性を高めていく人を目指す

 例年、高2段階での理系志望者が学年全体の約6割を占める同校。そこで、2019年には布石として「算数特選」入試を新設し、今年から「理数コース」をスタートさせました。
 1学年5クラス編成をとりますが、「本科コース」は4クラス、「理数コース」は1クラスとなります。ちなみに、「本科コース」は中3から1クラスが「特進クラス」となり、毎年進級時に入れ替えが行われます。

 これまで同校では、東大などで実施しているレイトスペシャリゼーション(大学3年に進級する時に専門を選択すること)と同じ考え方で、幅広く学び、多様な体験を重ねながら文系に進むか理系に進むかを決める体制をとってきましたが、それを堅持しつつも、早い段階から理系に志望を定めている生徒のために「理数コース」を設けたのです。

「理数コース」では実体験を重視した特別プログラムが組まれ、科学的思考力を徹底的に鍛えていきます。ちなみに、数・理の授業時間数は標準時間数よりも6年間で350時間ずつ多くなる予定です。
 では、それぞれのコースはどう違うのでしょうか。

世田谷_教務部長の舘野信彦先生
教務部長の舘野信彦先生

舘野先生:「今年から月曜から金曜までが通常授業(コアカリキュラム)、土曜は通常の授業をなくして『土曜プログラム』を実施しています。そこで、各々のコースに即したより深い学習を行う形にしました」

 つまり、中1・2の前期段階では、月〜金は通常授業で2コースとも共通、「土曜プログラム」で差別化する、ということです。

舘野先生:「土曜の4時間を確保するために、通常授業のカリキュラムを削らなければなりませんでしたが、来年度から高校の教育課程が変わることもあり、『世界史A』の2時間と、国語と英語の1時間ずつを削りました。とはいえ、公立校に比べればもともと授業時間数は多いですし、削るというよりは逆の発想で、土曜プログラムでは通常授業ではなかなかできない2時間続きの学習などを取り入れています」

■2コースの6年間の流れ
  前期(中1・2) 中期(中3・高1) 後期(高2・3)
理数コース     英数国は先取り授業を行い、前期で中学課程をほぼ修了。幅広く理系分野を学び、基礎的な知識を習得。多くの実体験を通して、サイエンスに対する知的好奇心を育成する。 基礎力をもとに、より発展的なレベルで学ぶ。また、興味・関心を持った分野で研究テーマを設定し、継続的かつ専門的な研究を実施する。 研究論文を提出したり、または各科学オリンピックなどへの参加を目指したりする。将来的に研究したいテーマを視野に入れて進路を決定する。
本科コース 英数国は先取り授業を行い、前期で中学課程をほぼ修了。社理ではディスカッションや協働学習、実験や観察を積極的に実施する。 中3からは思考力を深める「特進クラス」と、じっくりと着実に基礎力をつける「一般クラス」の2クラス編成に(毎年編成替え)。 文系・理系に分かれ、英数国は高2で高校課程をほぼ修了。高3では演習を徹底的に行い、大学現役合格に向けて高い学力を養成する。

各コースの違いは「土曜プログラム」

「本科コース」の「土曜プログラム」

 では、「本科コース」の「土曜プログラム」の実施内容をご紹介しましょう。

【英語】昨年度、小学校で教科化されたが、小学校段階での英語学習にはまだバラつきがあり、中学生になった最初の段階では他教科以上に差が出やすい。そこで4クラスを解体し、すべてのレベルを洗い出して6〜7クラスの習熟度別編成に。
【国語】通常の50分授業では実施が難しい、映画を鑑賞して物語の類型をディスカッションしたり、感想文を書くことを2時間続きの授業で実施。また、文学碑のある下北沢を散策するなど。
【理科】「発泡スチロール(ポリエチレン)の実験」など、通常授業では行わない実験を実施。
【社会】学校周辺の世田谷線沿線を散策したり、大学訪問や江戸東京博物館へ出かけるなど。

世田谷_さまざまな場面で、グループワークも頻繁に行われる
さまざまな場面で、グループワークも頻繁に行われる

舘野先生:「コロナ禍が収束した後は外に出て行くなど、午前中だけではなく1日を使うことも考えています。また、本科コースには美術や音楽、技術家庭科などの講座も設けていますが、第1学年では、美術は本科コースと理数コースが一緒に学びます。本校の教員と外部からお招きした専門の方とのチーム・ティーチングで実施していますが、絵画や版画など5つのカテゴリーに分け、生徒たちは希望するものを選んで受講します。この前、授業を覗いてみたのですが、通常の授業以外に自分のやりたいことに取りくんでいることや、他のクラスの仲間と一緒に学ぶ新鮮さからか、とても活気がありましたね」

 ほかにも、「技術」では電気自動車を製作したり、「家庭科」では出汁をとって官能検査をしたり、「音楽」ではドラムを叩いたりと、ワクワク感満載の講座もたくさんあります。
 中2でも、国語や英語などの教科系講座が主体にはなりますが、「情報」や「体育(ダンス)」「書道」、教科融合型の講座も実施していく予定です。
 
舘野先生:「まだ始まったばかりですので、土曜プログラムのカリキュラムもまた変化・進化していきます。大学の先生やOBをお呼びしたり、教養プログラムも充実してさせていく予定です。ただ、生徒たちの意欲を引き出せるように、なるべく『やりたいこと』を選べるようにと考えています」

「理数コース」の「土曜プログラム」

「想像力と創造力にあふれた(利他の心を持った)医学人・科学人」の育成を掲げる「理数コース」ですが、現段階でそのうちの約1/4が医師を目指し、1/4がエンジニアを希望しているといいます。

世田谷_「理数コース」主任で理科担当の秋元幸太先生
「理数コース」主任で理科担当の秋元幸太先生

秋元先生:「早い段階から理系を志望する生徒のためのコースですから、やはり土曜プログラムでも理数系が多くなっています。入学後すぐの5月には『自然観察会』を予定し、神奈川県の城ヶ島に行って地層や植生の調査をするはずでしたが、残念ながらコロナ禍で延期に。そこで、顕微鏡やメスシリンダーなどいろいろな実験器具に触れて、まずは使い方を覚えるところから始めました」

 例えば、2時間ずつを使って「スケッチ講座」とメスシリンダーを使った金属同定の「実験」などです。
 顕微鏡でバナナの細胞を見て、顕微鏡の扱い方を学ぶと同時にスケッチの練習をする。メスシリンダーの目盛りの読み方を学びながら、質量を測ることができる物質を使ってその物質が何の金属かを考えるのです。

世田谷_コロナ禍以前の城ヶ島での「自然観察会」の様子
コロナ禍以前の城ヶ島での「自然観察会」の様子

秋元先生:「また、ガスバーナーを使ってカルメ焼きを作ったりもしました。ガスバーナーを手にしたことがない生徒がほとんどですから、最初は火を怖がることも。でも、いろいろな実験をしながら器具に慣れていくことが大切です」

 そして、先の城ヶ島での「自然観察会」と同様、「稲作体験」も大きなプログラムです。コロナ禍の中ではありましたが、感染防止対策を万全にし、5月下旬には埼玉県坂戸市に出かけて田植えを体験しました。

世田谷_コロナ禍の今年は、城ヶ島の断層を映像に映して学習
コロナ禍の今年は、城ヶ島の断層を映像に映して学習

秋元先生:「農家の方に田んぼを一反お借りしています。生徒たちには、稲作体験を通して多くのものを学んでほしいと思っています。田んぼのぬかるみや虫にワーワー言っていましたが(笑)、9月には稲刈りをし、10月には調理実習の時間に自分で作ったお米を炊いて食べる予定です」

 さらに、3学期には「環境学習」を実施。埼玉県三富地域で「落ち葉たい肥」について学びます。その場所はサツマイモの産地として有名なのですが、じつは作物が育ちにくく、落ち葉たい肥を使った農法が今もなお残っているのだとか。そこで、『土壌作り』をテーマにクリーンエネルギーを取り入れながら、農家や専門業者の方々と一緒に活動する予定だそうです。

世田谷_感染防止対策を講じて田植えは実施。初めての体験にドキドキ!
感染防止対策を講じて田植えは実施。初めての体験にドキドキ!

秋元先生:「落ち葉でたい肥を作るので1年生の3学期に実施しますが、そのたい肥でさつまいもを育てるため、2年生まで継続したプログラムになります。また、三富地域はリサイクルにも力を入れていますので、それも含めて環境学習にしたいと考えています」

 また先日、「数学講座」では「数列の漸化式」を学びましたが、数学好きの生徒にとっては通常の授業とはひと味違ったトキメキがあるようで、持てる力を如何なく発揮しているのだとか。

秋元先生:「授業を見学した際、『大きいブロックの上にはそれより小さいブロックしか積めない。最低何回で全部のブロックを移動できるか』というゲームをやっていました。手を動かしてゲームをしながら法則に気づいていくというのが教員の思惑ですが、実際にやる前にひらめきと言いますか、その法則を見抜いてしまう生徒もいますね」

 ほかには、文学や科学の文献を「英語」で読んだり、「基礎科学実験」や「数学演習」「数検講座」などを実施。
 また、理数に特化した夏休みの自由研究「世田谷サイエンスプロジェクト」も理数コース独自のものになります。
 さらに、中期や後期には特別講座としてOBのネットワークを活かした「医療系ゼミ」など、進路を見据えた具体的な取り組みも。そこでは「医学」「薬学」「看護学」のゼミを行い、救急救命の体験や医療系大学の受験相談会などを予定しています。

■OB組織「獅子医会」も強力にサポート

 医療系大学への進学者も輩出する同校ですが、医学部に進んだ各年代のOBたちが集まって自主的に作った「獅子医会」という組織があります。今後は、ここに所属する先輩たちが自らの経験を活かして「理数コース」に多方面から協力してくれることになっているのだそうです。
 できたてほやほやの「理数コース」からも、未来の「獅子医会」のメンバーが多数生まれるに違いありません。

「Think & Share」の精神で、自己を見つめ、将来への道筋を見出していく

世田谷_「沖縄修学旅行」にて。楽しい体験も!
「沖縄修学旅行」にて。楽しい体験も!

 そして、2コースの違いはもう一つ。それは、中3の修学旅行です。「本科コース」は沖縄に、「理数コース」は鹿児島県に出かけます。
「本科コース」=沖縄県(「平和」学習をメインに実施)
「理数コース」=鹿児島県(知覧と種子島と屋久島を訪れ、「平和」「宇宙」「生命」という3本柱で体験学習を実施)

 幅広く学び、多様な体験を積み重ねていくなかで、理系に目覚める生徒もいるでしょう。逆に、理系の学びを進めるなかで文系への適性や関心に気づき、志望を変更する生徒も出てくるかもしれません。
 そこで、定員に限りはあるものの、一定の条件を満たせばコース変更も可能としています。

世田谷_数学の授業の様子。みんな集中して取り組んでいる
数学の授業の様子。みんな集中して取り組んでいる

 Society5.0(仮想空間と現実空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会課題の解決を両立する人間中心の社会)と言われる今の時代、基礎学力は昔の「読み・書き・そろばん」から「数理・データサイエンス・AI」に置き換わっています。
 科学的思考力や物事の分析力を培うことはもちろん必須ですが、それでも、同校が教育の根幹に据えるのは人間力の育成です。 

■世田谷学園の教育基盤

【教育理念】Think & Share(違いを認め合って共存する社会へ/「天上天下唯我独尊」を英訳)
【求める人間像】「智慧」と「慈悲」と「勇気」を持つ人(自立心にあふれ、知性を高めていく人/喜びを多くの人と分かち合える人/地球的視野に立って、積極的に行動する人)
【モットー】「明日を見つめて、今をひたすらに」「違いを認め合って、思いやりの心を」


 同校で中1の段階で志望別にコース分けすることは、その時点での将来の目標に照準を合わせること以外に、志を同じくする仲間と刺激し合いながら自己と向き合い、大学進学のその先の、人生の進路を深く考える契機とするところにも意味があるのかもしれません。「文系」という、「理系」という窓を通して。
 より深く考え「Think」、自分の何を以て社会に貢献するか「Share」......この同校のコース改革は、時代状況を見据えながらも、教育理念を次代に向けて具現化するための一つの挑戦であるようにも思えます。

■世田谷学園の精神的支柱

坐禅、そして「臘八摂心(ろうはつせっしん)」


世田谷_修道館アリーナで坐禅を組む「臘八摂心」の様子。壮観だ
修道館アリーナで坐禅を組む「臘八摂心」の様子。壮観だ

 同校の校章は地球を形取った坐蒲(尻の下に敷くクッション)の上で、人が坐禅を組む姿を描いたもの。「坐禅」は同校の象徴ともいえます。
 人間力の基盤を築くオリジナル授業「生き方」のなかで年に5回坐禅の授業がありますが、ほかにも週に1回、希望者が参加する早朝坐禅があります。早朝坐禅は授業前の朝7時から始まりますが、多い時には100名を超える生徒が集まるといいます。

 坐禅は両膝とお尻の三点で坐るのですが、中1のうちは形が定まらないものの、だんだんと坐相もきれいになっていきます。また、高校生になると「坐禅を組むと、気持ちがスッキリする」と言う声が多くなるとか。学年を追うにしがたって、「姿勢を調(ととの)え、呼吸を調え、ひたすら坐っていると、心も調ってくる」ことを、身を以て知っていくのでしょう。

 そして、同校の伝統行事の一つである「臘八摂心」は、仏教の開祖、お釈迦様が悟りを開いた12月8日を記念して、禅宗のお寺で行われているものです。「臘」とは「臘月」、つまり12月のこと、「摂心」とは心を修めることを意味し、禅寺では12月1日から8日まで1日中坐禅を組むのです。同校でも、12月1日〜8日は日曜日を除く毎朝7時から約40分間、修道館アリーナで坐禅を組みます。自由参加ながら、毎年500〜600名もの参加者があるそうです。

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