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学校特集

自修館中等教育学校2021

創立以来、「探究」と「EQ」で社会に働きかける人材を育む
「探究」をバージョンアップさせた「C-AIRプログラム」で、社会を変革する資質と能力を身につける

掲載日:2021年9月1日(水)

 1999年に創立し、「自主・自律の精神に富み、自学・自修・実践できる『生きる力』を育むこと」を教育目標とする自修館中等教育学校。同校の教育の柱が、22年前の創立当初から取り組んできた「探究」と「EQ(こころの知能指数)」です。そして今、変化の激しい社会に対応するべく、これまでの「探究」をさらにバージョンアップさせた「C-AIR(シー・エア)プログラム」で、積極的に社会に働きかける資質・能力を育んでいます。完全中高一貫の小規模校だからこそ可能なきめ細かなサポートが特徴ですが、同校ならではの「探究」と「EQ」教育について、入試広報室長の古跡雅宣先生にお話を伺いました。

社会とつながり、社会に働きかける力を育てる「探究」

■バージョンアップした「C-AIR(シー・エア)プログラム」とは?

 22年前の創立時から、同校では「探究」の授業を全国に先駆けて取り入れてきました。
「開校当初、本校は『変化の時代がやって来る。では、どのように生きていくのか、生き抜いていく力をどのように身につけさせるのか』と必死に考えました」と、古跡先生は語ります。
 校名にもある通り、「自学(何を学び)・自修(何を身につけ)・実践(何をするか)」の教育目標を実現するために同校が考え抜いた答えが、「探究」だったのです。

自修館_「探究」のフィールドワークで伊勢原市役所を訪ねた生徒たち
「探究」のフィールドワークで伊勢原市役所を訪ねた生徒たち

 同校の「探究」は、座学の授業だけではなく、地元・神奈川県伊勢原市の行政や県内の大学や研究機関、企業を生徒が訪問し、取材や対話によって考察を深めることを特色としてきました。
 そして創立20周年を機に、変化と多様性に満ちた時代到来を踏まえて、「C-AIR(シー・エア/Change and Coexistence oriented Agency through Inquiry and Research)プログラム」と銘打ち、「探究」の内容を刷新。
「C-AIR」とは即ち、「変化と共存を志向して、社会の課題を自ら引き受ける探究者」を育成すること。私たちが暮らす「社会」に積極的に関わり、働きかけることを活動のベースとしたのです。

自修館_入試広報室長の古跡雅宣先生
入試広報室長の古跡雅宣先生

古跡先生:「これまで同様、関心のあるテーマをとことん追求し、調査・研究・発表していくプロセスに加えて、『探究』で深めたテーマを社会との関わりを考えながら、どう掘り下げていくかを大事なポイントとしています。社会が抱える課題を見出し、解決策を探っていく。その過程で養われる思考力や表現力、そしてさまざまな人たちと協働してアイデアを現実化していく実践力は、大学進学後や社会に出た時の課題解決能力につながっていきます」

 10年、20年先の「社会」の諸問題に対して積極的に立ち向かい、他者と共に力を合わせて乗り越えていく。同校では、そんな力、そんな人材を育てることを目標としています。

■自修館の「C-AIRプログラム」6年間の流れ

Process1:「社会」の見方を知る/1・2年生(経験型・グループ探究)
 地元を素材に「課題設定→情報収集→分析・考察→まとめ→発表」という探究のサイクルを習得。
Process2:「社会」とつながる/3・4年生(学術ゼミ型・個人研究)
 各10名程度の12のゼミで思考を深め、個人テーマで専門的な「探究」に挑戦。
 「テーマ決め→中間発表→最終発表」を経て、本格的な「論文」を執筆。
Process3:「社会」に働きかける/5年生(自律型・個人orグループ探究)
 1〜4年生までに身につけた力・知見を生かし、自ら探究活動を行う。
 社会の発展に貢献することを念頭に、個人やグループで自律的に探究活動を実践。
Process4:「社会」の今後を見通す/6年生(選択型・個人探究)
 選択制授業。進学後も視野に、テーマを深めて自主研究を行う。


■「探究」で鍛える思考力や判断力が、将来を支える基盤になる

 創立からの年数と同じ年数の歴史ある同校の「探究」。以前は、1〜4年生までの4年間の学びでしたが、現在の「C-AIRプログラム」では5年生も「必修」、6年生は「選択制」とし、ますます学びを深化させています。

自修館_1・2年生の「C-AIRプログラム」の様子
1・2年生の「C-AIRプログラム」の様子

古跡先生:「『探究』の進め方を習得した5年生になると、生徒は独り立ちできますから自律的に探究を進めていきますし、選択制となる6年生は卒業後の進路や将来を考えつつ、自分が社会に出た時のイメージを見据えて動く生徒も出てきます」

 同校が進化させてきた「探究」の特徴は、第一に22年間の蓄積があること。第二に、完全中高一貫教育の小規模校だからこそできる、一人ひとりに対するきめ細かな対応です。

自修館_6年生の「C-AIRプログラム」では自主研究を行う
6年生の「C-AIRプログラム」では自主研究を行う

古跡先生:「探究指導で肝心なのは、テーマ設定です。テーマが浅いとすぐに探究が終わってしまいますし、深すぎると一流の研究者でも答えが出ない。生徒たちにとって中身の濃い『探究』にするためには、適切なテーマを設定することが大事なのです。その点では、22年間にわたって培われてきた教員の指導スキルは本校の大きな財産となっています。教員が生徒の関心を収斂させていく問いかけ方をブラッシュアップしてきたことで、生徒たちのより質の高い探究活動が可能になっていると思います」

自修館_com+comのイベントとして行われた「昆虫展示」。生徒から希望があれば、可能な限り実現させるのが同校流
com+comのイベントとして行われた「昆虫展示」。生徒から希望があれば、可能な限り実現させるのが同校流

 3・4年生の12分野のゼミもそれぞれ2名の先生が受け持つことで、生徒一人ひとりに対して手厚いサポートを行っていますが、これは1学年約120名の小規模校だからこそ可能な体制と言えます。
 また、2018年にオープンした図書館「com+com」も、探究活動の大きな拠点になっています。デジタル・ライブラリーが整備され、先輩たちの論文を検索することも可能になりました。

 次代を生きる生徒には、旧来のような知識を中心とする力だけでなく、実社会の課題を自ら引き受け、その解決法を探究し、実践に移す能力が必要とされています。そして、同校ではそうした人材を、先述の通り「変化と共存を志向し、社会の課題を自ら引き受ける探究者」と位置づけました。

自修館_3・4年生は「探究英語プレゼンコンテスト」にも挑戦
3・4年生は「探究英語プレゼンコンテスト」にも挑戦

古跡先生:「テーマが何であれ、とことん追求してほしいですね。しかし、昔の100年の変化が数年で過ぎ去るような目まぐるしい今の社会では、その変化に対応すると同時に、自分が社会を変えていこうとする発想や協働力が求められています。本校ではよく『オタク大歓迎』と言っていますが、自分の『好き』をとことん追求しながらも、周りを巻き込んで一緒に変化を起こしていけるキャリアを築いてほしいですね。ですから、これからの時代をリードするのは、社会性のあるオタクかもしれません(笑)」

 6年間で鍛えられる思考力や解決力は、生徒たちの仕事や人生を支える大きな基盤になることはもちろんのこと、さらには社会を変革する力へと昇華させていくことが同校の願いです。

■収益の上がる、持続可能な自立した文化祭を企画せよ!

 探究成果をプレゼンする「探究文化発表会」と、文化祭「自修祭」が同時開催されるようになったのは6年前から。それまで同校には楽しい出し物や模擬店などが出店される、いわゆる文化祭はありませんでしたが、生徒たちの強い要望で実現したのです。
 生徒情報室担当として文化祭立ち上げに関わった古跡先生は、当時、生徒たちにある課題を出しました。それは、「持続可能な運営方法で、収益を上げる自立した文化祭であること」というものです。

自修館_模擬店で。お好み焼きを焼く姿にも熱がこもる!
模擬店で。お好み焼きを焼く姿にも熱がこもる!

古跡先生:「学校側が予算を組むのは簡単です。しかし、生徒たちには社会の一員としてイベントを実施するという視点に立ち、お金にもきちんと向き合い、『収益を上げる』という発想を持ってほしかったのです」

「採算がとれる」以上の「収益を上げる」という課題は、今後も続けられる(後輩に引き継ぐ)企画を生み出すことと同時に、クラス展示など無収益だけれど予算はかかる部門をも賄うことを目的としているからです。もちろん、そこには探究活動の素地がある生徒たちならばできるはず、という期待があればこそ。

 文化祭で収益を上げる方法は何か、生徒たちが知恵を絞って出してきた答えが、「模擬店コンペ」でした。
 参加したい生徒は、模擬店企画の目的や魅力、他との違いなどをアピールし、実行委員会が収益性や多様性などの観点から評価して決定。
 なかには、損益分岐点まで計算したチームもあったそうです。私立中高一貫校の中で、文化祭の運営だけでなく予算配分まで生徒(実行委員会)が行っている例はそれほど多くないでしょう。

古跡先生:「食糧危機の克服をテーマに、虫好きの生徒が虫をフライにして提供する企画案を出してくるなど、模擬店コンペはとてもおもしろかったですね。人間は社会的な生き物ですから、生徒たちには日頃から社会の一員として生きるためにはどうすればよいか、何にどう貢献できるのかを考えながら行動に移すことを促しています。それこそが、本校が考える『自学・自修・実践』だからです」

「自修祭」は、生徒たちにとってまさに「探究」実践の場になりました。コロナ禍のため、今年はどのような形で行われるかはまだ未定ですが、今年で7年目を迎えます。

トレーニングによって変えていくことができる「EQ(こころの知能指数)」

■「EQ(こころの知能指数)」とは?

自修館_校長による「SS」の授業の様子
校長による「SS」の授業の様子

「探究」と同様、同校が創立以来続けているものに、1〜3年で週に一度実施される「EQ(こころの知能指数)」を基にした「SS(セルフ・サイエンス)」という授業があります。
「EQ(Emotional Intelligence Quotient)」とは、「人と仲良く付き合っていくには、相手の感情を読み取り、自分の感情をうまく表現する能力が必要」という考え方に基づき、自分の心や行動を科学的に分析し、コントロールする能力を体得していくもの。

 これは、1990年にアメリカの心理学者が提唱した理論です。企業の社員教育にも活用されていて、良好な社会生活を営むために不可欠なコミュニケーション力を、感情と行動の中間にあるEQを高めることで伸ばしていく手法です。

 毎年学年初めに行われる性格や行動を分析するEQ検査(行動特性検査)によって、生徒たちは自分のこころの「3つの知性」の働きを科学的に理解し、自分の気持ちの伝え方や人との付き合い方を学んでいきます。

●こころの「3つの知性」

心内知性.........自分の心の状態を理解し、コントロールする力
状況判断知性...相手の様子や立場、そして自分との関わりを観察する力
対人関係知性...自分の気持ちや考えを相手に伝え、わかってもらう力


 そのEQ検査で明らかになった、一人ひとりの心の特徴はグラフ化されます。「思いやりがある」「リーダ―シップがある」などの特徴や、自分でも知らなかった強み・弱みが可視化されるのです。
 そうして客観的に自分と向き合ううちに、「性格だから仕方がない」と思っていたことも、変えていくことができるようになるのだとか。

 そして、特筆すべきは生徒だけではなく、先生方も全員がこのEQ検査を受けること。1〜3年生が100問に対して、先生方は250問の設問に答えるそうです。指導者としての自身を客観視する目的もあるかもしれませんが、さまざまな成果を挙げている同校の「探究」を大きく支えるのは、実はこの先生方の姿勢なのでしょう。

古跡先生:「1年生の時に凸凹だったグラフが、成長するにつれて丸くなっていく(精神のバランスがとれていく)例も少なくありません。ここで大事なことは、EQはトレーニングによって変えていくことができるということです」

■自分を知り、自分を好きになって、自分を変えていく

自修館_自分を知ることは、人への思いやりの心を育む
自分を知ることは、人への思いやりの心を育む

 最近では、アスリートたちが自分の行動特性を知り、パフォーマンスを本番で最大限発揮できるようメンタル・トレーニングすることは当たり前に行われていますが、EQも一種のメンタル・トレーニングと言えるかもしれません。

 つまり、「SS」の授業は自分の心や行動の特性を科学的に解析することで、今後の人生の基盤となるコミュニケーション能力や感情をコントロールする力を育み、より良い行動へつなげていくためのカリキュラムなのです。

古跡先生:「教科学習は『ソフト』でEQ は『OS』であるという言い方をよくするのですが、OSがしっかりしていないと、その上にどんなソフト(知識や専門性)を加えても機能しないということです。自分自身をよく知って、自分を好きになり、自分の足りないところを変えていこうというのがこの取り組みです」

 思春期の6年間は、誰もが不安定なメンタルと戦っています。そんな時期に、同校の「EQ」教育は自らを律する術となり、良好な人間関係を築くうえで不可欠な「心の成熟」を促してくれるのです。自分に興味を持つことが、すべての第一歩なのです。

■完全中高一貫の小規模校だからできる、きめ細かな教育

自修館_姉妹校からの留学生と。生徒たちはコロナ禍が終息し、また行き来できることを心待ちにしている
姉妹校からの留学生と。生徒たちはコロナ禍が終息し、また行き来できることを心待ちにしている

「探究」や科学的アプローチによる「心の教育」は、最近でこそよく聞かれるようになってきたものの、同校では22年前から「探究」と「EQ」を実践してきました。
 時代が自修館に追いついてきた感もありますが、こうしたプログラムを実施できたのは、「1学年120名を定員とする小規模校だからこそ」と古跡先生は語ります。

 完全中高一貫の同校では、1年生から5年生まで毎年クラス替えを行うため、最終学年になる頃には学年全体が一つのクラスのような一体感が生まれ、先生方は全生徒の担任のような気持ちなのだそうです。そうした先生方と生徒の信頼関係の深さ、絆の強さも同校の大きな魅力と言えるでしょう。

古跡先生:「私たちは、1年生から6年生まで、生徒が子どもから大人になるまでの成長過程をすべて見ています。学校の教員と生徒という出会いから始まる関係性を超えて、本校には深く共感し合える環境があります。私たちは一生の付き合いとなる人間関係を育んでいるのです。本校には、『一人ひとりが自修館』という合言葉があるのですが、それぞれが自立したキャリアを持ち、幸せな社会生活を歩んでいってもらいたいですね。ですから、私たちは常に社会で活躍する姿をイメージしながら、生徒たち一人ひとりに向き合っています」

クラブ活動でも「心のつながり」を重視
ダンス部が「全国中学校ダンスドリル選手権大会」に出場

 同校には文化部、運動部合わせて19団体があり、部活動も活発に行われています。
 一例を挙げれば、チアを中心にジャズやヒップホップにも挑戦しているダンス部は、この夏、大阪で開催された「第11回全国中学校ダンスドリル選手権大会」に出場し、3位入賞しました。昨年は新型コロナウイルスの感染拡大で中止されていたため、2年ぶりの出場でした。

 2016年には「ミスダンスドリルチームインターナショナルin USA」に初出場し、世界4位という好成績を収めた同部。昨年、コロナ禍で練習もままならない日々に、ダンス部顧問の島根和美先生が気遣ったのは、部員同士の心のつながりでした。


自修館_活躍中のダンス部のメンバーたち
活躍中のダンス部のメンバーたち

島根先生:「昨年の休校期間中は週に2〜3回、Zoom部活を実施してミーティングやストレッチを行いました。カロリーコントロールを考えた食事をグーグルドライブにアップするなど、部員同士の心のつながりを途切れさせないことに心を砕きました。学校再開後に部員たちの普段通りの笑顔を見た時、やはり、みんながずっとつながっている感覚を持てることは何より大事なのだと、改めて実感させられましたね」

 学校生活のこのような断片一つにも、同校の教育姿勢が表れています。

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