学校特集
足立学園中学校・高等学校2021
掲載日:2021年11月15日(月)
ターミナル駅「北千住」から徒歩1分という抜群の立地にあり、地域の方々からも愛される創立92年の伝統校・足立学園中学校・高等学校。「質実剛健 有為敢闘」という建学の精神を掲げ、「自ら学び 心ゆたかに たくましく」を目標に、心身共に強さとたくましさを兼ね備えた男子を育成する全人教育を行っています。
2011年より教育改革を推進し、今なお研鑽を続ける同校。近年、足立学園を語る上でキーワードとなるのが「志共育(こころざしきょういく)」です。それが何を意味するのか、校長の井上 実先生と副校長の髙井俊秀先生にお伺いしました。
志こそが、男子のすべての原動力となる
明るく開放的な雰囲気をもつ足立学園。その至るところで聞かれるのが「志」という言葉です。同校での志とは、生徒が世のため人のために自分の人生を使い切る覚悟をもった夢と定義づけています。校長の井上 実先生は、「志(ゆめ)なき者に成功なし」という話をしばしば生徒に伝えています。
「入学したばかりの生徒に『あなたの志は?』と問うと、最初は『こんな職業に就きたい』と返されます。スタート地点はそれで十分ですが、その後、本校での6年間を通して、その職業で社会や人類に対してどう貢献していけるかを見出し、それこそが自分が実現すべき志であると自覚して努力できる男性に成長してもらいたいと考えています」(井上先生)
「思春期の男子は、学習面や生活面において、なかなか真摯に取り組まない傾向があります。しかし、きちんと目標が定まれば、自発的に努力を始めるものです。これまでは高校生活の後半でやる気を出す生徒が多かったのですが、志を立て、それを意識して生活し始めると、中学・高校の早い段階でやる気のスイッチを入れることができると実感しています」(副校長の髙井俊秀先生)
同校では現在、様々な分野に自らの志を見出し、その達成に向けて邁進する生徒たちが育っています。彼らは、どのようにして自らの志を見つけたのでしょうか。次章から同校の「志共育」をご紹介します。
生徒と教員とが一丸となって志を育てる「志共育」
学びや成長を経て変化する生徒の志を、教員と共にたくましく育てていこうという思いが、足立学園の掲げる「志共育」に詰まっています。
同校では志を育む取り組みとして、中1では己を知り、志を考える基礎を固めます。中2では職業調べ、中3では企業インターン体験後に改めて自らの志を見つめ直し、高校からは「探究総合」の授業がその教育を引き継ぎます。
まず中1の1回目の授業では、井上先生自ら、志とは何かを説き、生徒たちのやる気に火を付けます。
2回目以降はグループワークが中心になります。自分の性格・性質を理解し、その上で自分が興味のある分野を把握。特性をどう捉えれば、社会に貢献できる志となるのか、段階を踏んで考えていくのです。
生徒たちは、自分が情熱的か冷静なのか、合理的か情緒的かなどシンプルな質問事項に答えます。その組み合わせで智・勇・親・愛の4タイプに分類し、自分にどのような特徴があるのかを自覚します。これをクラス内で発表することで、同級生の性格を把握し、お互いを理解して応援し合える環境が整えられます。
3回目の授業のキーワードは「志動詞」です。2回目で判明した自分のタイプ別に、キーワードとなる動詞を探します。「人の役に立つ」「チャレンジする」などの動詞の中からピンとくるものを選ぶうちに、自分の人生を貫く行動傾向を読み解くことができるというものです。
さらにディスカッションを重ねていきます。その夢をもつきっかけになった事柄を思い返し、実現のためにどうするべきか、と生徒それぞれが思考を深めます。志の対象や目的が明確か、軸が社会に向けた外向きのベクトルになっているか、教員はさりげなくファシリテートしつつも、生徒たちの心の内から志が引き出されてくるという仕組みです。
「私たちは『志方程式』と呼んでいますが、目的→手段→対象を考え、最後に『志動詞』とつなげると、自然に自分の志が見えてきます。中1の終わりには、ほとんどの生徒が『ぼくの志はこういったもので、○○のような状況の人のために、自分はこういうことに頑張ります、挑戦します』と志を立てられるようになっています」(髙井先生)
この志を明文化し、希望者が「志プレゼンテーション大会」で発表を行います。この発表を見た生徒たちは、各々の思いをさらに強くし、同級生の志を応援しようと心に誓うのです。
「口頭で『志』と言い続けるだけでは、さほど成果は出ないでしょう。生徒に真剣に、『志共育』とはどういうものかを伝え、皆さんと一緒に実践していくという覚悟を示したいと思っています。そのために取り入れたのが教員への研修と『志入試』(※詳細は後述)です」(井上先生)
教員研修は、生徒の受ける「志共育」プログラムの成人版。2020年度より開始され、32名の先生方が受講済みです。講習受講率は中学の担任レベルは100%、副担任も含む中高では約37%の教員が認定を受けています。
「かなりの時間数の講義を受け、その過程で自分史を作成して過去を振り返り、本校の教員同士で発表をします。発表は合格が出るまで終わらず、2回、3回と落とされるうちに吹っ切れて、自分の心の奥底の志を改めて確認し、志とはどう考えるべきか、どう立てるのかを習得できるようになるのです」(髙井先生)
研修で得た知見を、先生方は生徒たちに惜しみなく注ぎます。授業はもちろん、二者面談によるきめ細やかな指導、生徒手帳への書き込みによる振り返り、先生からの日常的な声かけなど、様々な面で志について考える機会に触れ、生徒たちは、自身の中の志の根を見つけ、それを着実に伸ばしていきます。
生徒が伸びやすい環境を作り出す「生徒第一主義」
井上先生は、2018年の校長就任以来『生徒第一主義』を掲げています。「自分の花を求めるよりも生徒の花を咲かせる土になれ」という気持ちで、生徒の志に向き合っています。
始業式、終業式の際の校長講話は演壇に上がらず、生徒と同じ目線で語ります。そして、校長室の扉は常に開け放たれており、生徒の出入りは自由です。学校生活への不満を直訴しに来る生徒もいます。その心意気を井上先生は買っており、その希望が理にかなっていると思えば、すぐに改革に動きます。
近年、生徒の陳情により、校内の自動販売機の拡充・値下げ、重量が生徒の負担になっていた制定バッグの廃止、防寒具(マフラー)の解禁、夏服の改定(来夏からポロシャツ導入へ)がなされました。
「生徒が忌憚なく意見を言えることは、自尊心や自己肯定感の芽生えです。自分が意見を発してそれが反映されたという経験は自己肯定感を高めるでしょう。これらが志にしっかり繋がっていくはずです」(井上先生)
生徒の「四つのJ」(自尊心、自信、自負心、自己肯定感)を高めるべく、井上先生は彼らの話をとことん聞き、その内容を否定しないことを徹底しているそうです。
「学校生活のあらゆる面において、自発的な行動に勝るものはありません。もちろん学校側から指導を行うこともありますが、教員の指示通りにするよりも、生徒同士が考えたほうが反発も少なく、自然と決まりが守られます。勉学でも部活動でも感染症対策でも、生徒たちが話し合い、納得して方針を決めてもらいたいと思っています」(井上先生)
親子で夢を共有する、独自の入試制度を実施
この「志共育」に対して、いかに足立学園が熱意を傾けているか。それは独自の入試制度からも見ることができます。志をもち、お互い研鑽し合える生徒を広く募るため、同校では2020年度から「志入試」を実施しています。4科の学力を判定する一般入学テストもありますが、2021年度の入学生は、ほぼ半数が「志入試」の合格者です。
2022年度の志入試は2月1日に実施、概要は以下の通りです。
<事前提出>
・エントリーシート(志望理由100字程度、入学後の抱負や将来の目標100字程度)
・通知表のコピー(全面)
<選考方法>
・国算基礎学力テスト
・親子面接(教員2名で面接)
国語、算数の基礎学力テストは、小学校の授業で学んだ内容が身に付いているかを判定するもので、特別な学力は求められていません。エントリーシートの内容自体もさほど重視されていません。
「小6時点での将来の夢や希望、どのような人間になりたいかを、この機会にしっかりと考え、親子で共有していただき、それを学校生活の中で伸ばしていければと思っています。受験生の皆さんに頑張っていただきたいのは、その内容を文章にまとめること。そして、面談でその内容を自分の言葉で伝えることです」(井上先生)
「志入試」の導入は、学校としても勇気のいることだったと井上先生は振り返りますが、「志入試」で入学した生徒が学年をリードしたり、クラスで成績トップになったりと頭角を現しはじめ、後伸びする生徒が集まりつつあると実感しているそうです。
この他にも、特別奨学生入試(4科)と一般入試(2科または4科の選択)も用意されており、小学校時代に勉強を頑張ったという努力も最大限に評価できる仕組みが構築されています。
「志入試合格生と一般入試合格生とは、入学当初は多少学力差があるかもしれませんが、本校での生活を送るうちに学力も志を考える力も拮抗し、良き同志やライバルとなっています。また、一般入試で入学してきた生徒も、在学中に確固とした志を立てて目覚ましい活動をしている者もいます」(髙井先生)
その例に挙がったのが、現在高校3年生のとある生徒です。彼の志は、プログラミングによる自動運転を実現し、交通事故を減らすこと。その実験費用を学校に出資してほしいと訴え、先生方にプレゼンをして見事勝ち取りました。
その後、ある大学の教授にアプローチし研究に協力してもらったり、中高生のための英語プレゼンテーションコンテスト「Change Maker Awards」で金賞(最優秀個人賞)を受けたりと、輝かしい軌跡を残しています。現在、海外大学への給付型奨学金の選考過程を順調に進み、MITへの進学を目指しています。
「以前は、勉強はできるけれども、控えめな印象の生徒でした。しかし、高1で留学に行ってから目覚ましく変わりました。積極性が出て、自分の置かれた状況に感謝しながら同級生の勉学を助けるなど、自分の能力を惜しまず周囲に還元してくれるような人物です。
中学生・高校生が『これだ』と思う志を見つけたときは本当に頼もしい、素晴らしい可能性を秘めているのだと改めて思わされました」(井上先生)
子の幸せを追究するために、学校も保護者も意識改革を
井上先生は、生徒の志を育てるためには、両親の理解と協力も不可欠と考えています。
「生徒が有名大学進学を目指すことは、学校として一つの指標にはなります。しかし、有名な大学に行けばそれでいいのか、という考え方に一石を投じたいのです。本校の生徒たちには、目的をしっかりともって、何を学びたいから、この大学のこの教授に師事したい、そして得た知識を社会に還元していきたいという思いをもち、進学先を選んでいただきたいと思っています」(井上先生)
「優秀な成績を修めて高名な大学に行き、有名企業に就職をして幸せになってほしいという親心もとても良く理解できます。しかし、今は社会全体が変わってきています。本当に、親として子の幸せを考えるなら、お子さん自身が人生の『志』を見つけ、一生の中でそれを成し遂げることこそ、お子さんにとってもご両親にとっても幸せと言えるのではないでしょうか」(髙井先生)
一般的に、学校を紹介する際は華々しい経歴のOBが取り上げられがちですが、皆がスーパーリーダーになる必要はないと井上先生は語ります。
「本校での6年間の中で、『自分は縁の下の力持ちとなることに喜びを感じる』という志の生徒もいるでしょう。その通り、社会ではリーダーを支える優秀なフォロワーも非常に重要です。己が志す道が社会でどう役立つかを考え、その環境の中で努力することに喜びを見出していける、地上の星のような存在になるのも素晴らしいものです。どのような志も、生徒自身が見つけたかけがえのないもの。大いにバックアップしていきたいと思います」(井上先生)
足立学園で過ごすうちに、男子が一生を懸ける価値のある志が必ず見つかります。まずは学校説明会にご参加いただき、足立学園の「志」にかける熱気を体感してください。