学校特集
共立女子第二中学校高等学校2021
掲載日:2021年9月1日(水)
135年前に、初めて校名に「女子」を入れた学校として創立された共立女子学園。その「女性の社会的自立」を建学の精神に受け継ぐ共立第二は、女子に特化した教養教育を行っています。東京ドーム5個分という恵まれた環境の中で、教科教育の充実はもちろんのこと、「ファーム教育」や伝統の「和躾(なごみ)の日」など、体験重視の多彩なプログラムを展開。さらに、2022年4月からは高校で新コース制をスタートさせ、英語教育を強化した「英語コース」を開設します。女子校らしい伝統教育と多様化時代への変革を融合し、付属校ならではの高大連携も充実させている同校の取り組みについて、入試広報部主任の戸口義也先生と、同校出身で家庭科の湊理香先生にお話しを伺いました。
豊かな自然環境の中で受け継がれる伝統の女子教育
■緑豊かな自然環境で育まれる母校愛
緑豊かな八王子の丘陵地に広がる東京ドーム5個分のキャンパス。大きな空の下、都心では味わえない新鮮な空気が流れる同校は、なんとも伸び伸びとした雰囲気です。卒業生対象の『共立のココが好き』アンケートを見ても、「友人」を抑えて不動の1位は「自然環境」。「空気が違う」「季節が感じられる」と、圧倒的な人気です。
自らも同校出身の家庭科の湊理香先生は在校時代を振り返り、「祖母も共立女子学園の卒業生ですが、私自身、共立に入ってから変わりましたね。自分でやらなければいけないことが多くて、自然に積極的になりました」と話します。
女子校の良さの一つは、「男子の視線を気にすることなく伸び伸び振る舞え、『素』の自分らしさを出せる」こと。女子だけで過ごす学校生活は、協調性や自分の役割を積極的に果たそうとする意識が自然に備わる環境でもあります。
湊先生:「卒業後も長く付き合える友達ができたことや、在校当時からいらっしゃる先生方との絆も一生の財産です。女子校は『寄港地』であるとよく言われますが、就職や結婚などの節目ごとに学校を訪ねてくる卒業生も多く、なかには親御さんにもまだ紹介していないボーイフレンドを連れて会いにくる卒業生も(笑)。生徒と教員の繋がりの強さや母校愛は、どこにも負けない本校の特徴だと思います」
■美しい所作を身につける「礼法」は伝統のプログラム
そうした母校愛を育む共立女子第二の魅力の一つが、女子校らしい伝統教育です。
同校では、中学3年間、道徳の一環として年間8時間の「礼法」を学びます。武家の作法を今に伝える小笠原流礼法を基本とし、専門の先生の指導を受けて、「和室と洋室での基本動作」や「座礼・立礼の基本」「食事の作法」など、TPOに合わせた正しい礼儀作法、美しい立ち居振る舞いを身につけていくのです。
高校では「マナー講座」があり、高2時には「茶道・華道・装道」を全員が学ぶ「和躾(なごみ)の日」に「和」の作法を教わります。装道とは、着物の装い文化を極めること。同校では、「浴衣」を帯結びまでを含めて一人で綺麗に着られることを目標にしています。
湊先生:「堅苦しいと思われがちな礼法教育ですが、実は生徒たちはとても楽しみにしています。『今年は浴衣の着付けはやらないのですか?』など、コロナ禍でできなかったことを残念がる生徒も多かったですね。また、アナウンサーになった卒業生は『お辞儀姿が綺麗で素晴らしい』と視聴者の方から褒められたそうです。本校での礼法教育は、10年後、20年後の社会生活の中で役立つことが多いと、卒業生たちも口々に語ります」
美しい所作は、グローバル社会では「和」の体現にもつながります。こうした振る舞いを自然に身につけた日本女性を育てる礼法教育は、同校の土台となる伝統のプログラムなのです。
■伝統の「食育」で気づく日本人らしさ
同校が取り組んでいる「食育」も、伝統教育の一つです。
コロナ禍以前は、毎日2クラスずつ交代で食育を実施していましたが、今は「密」を防ぐために、厨房で作られたお弁当パックを教室で「黙食」しています。
食育の時間は、同校専属の管理栄養士の先生が「食」にまつわるさまざまな知識やマナーを教える大切な時間でもありましたが、現在は、各教室への動画配信で学びを再開しています。
動画による1回目のテーマはお弁当のマナーで、箸の割り方でした。割り箸は縦にして横に引っ張るのではなく、お箸を横にして上下に引っ張るように割るのが正しいというお話でした。これは、横に引っ張ることで隣の人に当たる危険を防ぐため。他者に配慮する、日本人ならではの思いやりマナーです。
湊先生:「こうしたマナーは意外に教わる場所がないですよね。おせち料理の由来や一尾まるごとの魚の食べ方など、中学3年間、学校で時間をかけてきちんと学ぶことは貴重だと思っています。また、食の知識だけでなく、例えば手紙の書き方や電話の掛け方、蓋つき茶碗のお茶の飲み方など、基本的なマナーの重要性は、在校中には気づかないかもしれません。習っている時は少し面倒だなと煙たく思っても、社会に出た時にとても大事なことを教わっていたと実感するのではないでしょうか」
こうした長年にわたって受け継がれてきた共立の伝統教育は、多くの保護者が「共立で学ばせたい」と思う大きな理由にもなっています。
理科教育にも力を注ぐ同校ですが、豊かな自然環境を生かした、テニスコート一面分(300㎡)を超える広いファームでの野菜栽培も同校独自の体験プログラムです。今年からは「もっと身近にファームを」というコンセプトの下、ファームの規模を少し小さくして、中庭に「お花や野菜、ハーブを栽培するポタジェガーデン」をオープンしました。
「ポタジェ」とは、フランス語で「(家庭)菜園」を指す言葉です。トマトやなす、大根、じゃがいもなどの野菜だけでなく、ハーブや草花、果物などを混植して作っています。
湊先生:「将来の生徒たちのライフスタイルを考えた時、広々としたファームよりベランダ・ガーデンなどが多いはず。土を入れた麻袋でじゃがいもを育てたり、より実情に合わせた工夫を加えました」
高校創立51周年目の改革。2022年4月より新コース制がスタート
■高校は4コース制に。高2進級時には改めて選抜を行い、進路をより明確に
昨年に高校創設50周年を迎え、今年から次の50年に向けた歩みが始まりました。
「どこで学ぶか」に加え、「何を学ぶか」がより重視されるようになってきた今、同校は中高の継続した6年間を見据えて、2022年より高校に新たなコース制を導入。
ちなみに、中学は共通カリキュラムのクラス編成ですが、今年から中3では英数国の3教科で少人数グレード制を導入することで、個々の実力に合った個別最適の学習が可能となりました。
高校の新コース制は、生徒一人ひとりの進路を確実にするため、高1から希望と成績により主要5教科に重点をおいて難関大学合格を目指す「特別進学コース」、多様な進路に対応する総合的な学力の向上を目指す「総合進学コース」、そして英語力強化に特化した「英語コース」に分かれ、さらに高2からは「共立進学コース」を加えた4コース制に。生徒一人ひとりの志望に沿った教育が実践されます。
新コース設立の狙いについて、入試広報部主任の戸口義也先生は、「生徒の多様な価値観、進路希望に対応するため」と話します。そして、英語コース以外は高2進級時に選抜を実施することも注目ポイントです。
戸口先生:「『特進コース』は、かなり選抜をすることを想定していますが、競争原理を取り入れることで学びのモチベーションも高まります。大学入試改革や新学習指導要領実施による影響もあり、生徒たちの進路も多様化しています。コースを差別化することで、自分の進路がよりクリアに意識できるようになると思っています」
■国内外で、グローバルに活躍する人材を育てる「英語コース」
新設される「英語コース」(定員30名/内進10名・高入20名)のキャッチフレーズは、『思考力と行動力を兼ね備えた私らしいリーダーシップ』。英語力向上に意欲的な生徒を対象とし、3年間でCEFR B2レベル(英検準1級程度)を目指した学習カリキュラムを設定。ニュージーランドへのターム留学(高1の3学期の3カ月間/コロナ禍の状況によっては変更の可能性あり)を必須とし、世界中で語学教育を展開するベルリッツとの独自の連携プログラムも実施します。
建学の精神である『女性の社会的自立と自活』は、同校が一貫して示してきた普遍の理念です。見通しのきかない不安定な社会状況にあっても、その理念を具体化するため、国内外で自分らしく活躍できるグローバル人材の育成を目標に、英語力とマインドの育成に特化した学びを展開します。
同校の英語教育は、日々の授業の中で4技能すべてを活用し、バランスの取れた英語力を育てることを目指してきました。今年でスタート7年目となったオリジナルの指導法「4技能統合型授業&レイヤードメソッド」の成果の一つとして、高3で3人(内1人は英検CBTも合格)、高2で1人、準1級合格者を出しています。高2の生徒はターム留学後の合格でした。
こうした英語教育の実績を踏まえて、さらに総合的な英語力を伸ばすことが「英語コース」の狙いです。
ちなみに、3年間の英語の総時間数は他コースより8〜9単位増やして、週31単位になります。
戸口先生:「英語コースは英検準2級以上または評定4以上を条件にしています。やはりそれだけの語学力がないと、3カ月間のターム留学生活に対応するのが難しいですし、留学前に英語力をアップするだけでなく、帰国後の英語力を維持していく必要もあります。また、卒業後の進路として海外大学留学の可能性もあり、その場合は英語のエッセイが必須です。そうした論文指導も英語の時間に含めているので、単位数は多くなります。先日行われた在校生のベルリッツの体験授業を見学したのですが、授業が始まる前と終了後では、生徒のスピーキング力・対応力がまったく違っていました。これを1年間続けたら、さらに効果が上がると期待しています」
ベルリッツの正課授業は1:15程度の少人数で、クリティカル・シンキング(分析的思考力)が身につくPBL(Problem Based Learning/問題解決型学習)を想定。思考力を育てることに重点を置いています。
同校の英語教育は、全学年で「話す・聞く・書く・読む」の「4技能統合型授業」を展開。同時に、教科書を何度も繰り返し使う「レイヤードメソッド」で「英語の核(コア)」を作り上げていくことが特徴です。
50分の授業は、基礎力をつけて英語が使えるようになるために、生徒自身が英語を使う量の確保を意識した授業になっています。音読やディクテーション、リプロダクションをはじめとするさまざまな活動も、複数の方法を組み合わせることで、生徒が自然と4技能を使う仕掛けになっています。
コロナ禍では「密」を避けるために、生徒たちは教室内でワークシートを行うグループと、各階にあるオープンスペースに移動してソーシャルディスタンスをとりながら音読するグループに分かれて学んでいます。
オープンスペースでの音読は、窓の方を向いて「モゴモゴ読み」「ボソボソ読み」を奨励。体を動かしながら音読することは、脳に定着させるために効果的だと言われ、昔ながらの音読スタイルで反射的に答えられるようになるまで、英語を頭の中に取り込み、「英語脳」の回路を作り上げていくのです。
中学の英語は週6時間。4技能統合型授業が4時間、ネイティブの専任教員による少人数の英会話授業が1時間、分割の授業が1時間。マンツーマンの英会話レッスンを行う「オンライン英会話」も導入しています。
また、「話す力」をつけるトレーニングとして、ペアワークやグループワークで英語を使う時間を増やしているほか、教科書を書き起こす作業を繰り返して「書く力」を強化するなど、バランスよく4技能を定着させる学習を行っています。
■付属校ならではの高大連携システムの強化
同校では、約94%の生徒が4年制大学に進学(2020年度)し、ここ数年は、外部大学への進学と共立女子大学・短期大学への進学はほぼ同じ比率になっています。
近年は、高い資格取得率や就職率の高さなどによって私立の女子大人気が復活しており、とりわけ共立女子大学は、2020年4月に女子大初のビジネス学部が新設されるなど注目を集めています。神田一ツ橋に校舎・組織を集中してワンキャンパス化し、看護学部、児童学科などが実学的な学部・学科の人気も加わって、入学者も急増中。
その併設校としての強みを生かし、同校では充実した推薦制度を利用した「挑戦と安心のシステム」を構築。とくに、共立女子大学の文系学部(文芸・国際の両学部)については、大学で主体的に学ぶ意欲を持ち、第一志望で推薦の内規をクリアできれば入学が可能。また、多様化する生徒の志望に合わせ、「併設高校特別推薦制度」を利用すれば、共立女子大学・短期大学への推薦合格を得た後も、制限なく外部大学を併願受験することができます。
さらに高大連携も進み、高3から神田一ツ橋のキャンパスで大学生と共に授業を受けることが可能になりました。大学入学後に単位認定されることも大きなメリットです。
戸口先生:「大学入学後に時間的な余裕ができるため、資格取得やサークル活動など、自分らしい時間の使い方が可能になります。実際、大学入学後に留学する卒業生も増えています」
創立以来の伝統と変革を融合させながら、バランスの取れた改革を推進する共立女子第二。生徒も先生方も、そして卒業生も、そうした共立ならではのアイデンティティを誇りにし、強い母校愛でつながっています。
戸口先生:「本校の受験生は第1志望で選ぶ生徒が多く、自然豊かなこの環境で伸び伸び学びたいと入学してきます。だからこそ、前向きな中高生活を送りながら、自分らしく積極性を育んでいけるのだと思います。本校が目指す人間像は、10年、20年後に、リーダーシップを発揮しながら、社会に貢献していける自立した女性です。中学3年間で学びの基礎をしっかり身につけ、続く高校3年間で自分らしい学びを紡いでほしいと願っています」