学校特集
富士見丘中学高等学校2021
掲載日:2021年9月3日(金)
学校説明会参加者数はもとより、入学者数が増加している富士見丘中学高等学校。『週刊東洋経済』(2021年5月29日号)の「6年間で伸びる進学校ランキング」で東京1位(全国2位)、『週刊ダイヤモンド』(2021年4月4日号)では「レバレッジ度総合ランキング」で首都圏第3位に輝いた、入学時偏差値と卒業時の大学合格実績の大きな伸長差が魅力の学校です。しかし、この大学合格実績はあくまで、これまで同校が着実に積み重ねてきた教育が結実したもの。注目を浴びている学校で何が行われているのか、なぜそれだけの伸びが可能なのか、教育の中身を見てみましょう。
時代の先端をいく教育を実践
2020年に創立80周年を迎えた歴史ある女子校、富士見丘中学高等学校。2015年からのスーパーグローバルハイスクール(SGH)指定校を経て、2020年にはワールド・ワイド・ラーニング(WWL)コンソーシアム構築支援事業カリキュラム開発拠点校となっています。WWLとは、イノベーティブなグローバル人材を育成するための文部科学省による高校生のための事業。コンソーシアムとは協働して物事を成し遂げようとする共同事業体などを意味します。
同校の教育の大きな柱となっているのは、以下の3つです。
1.探究学習
2.英語4技能教育
3.ICT教育
かねてよりSGHとして「サステイナビリティから創造するグローバル社会」をテーマに探究学習に取り組んでいます。各種コンクールでも数々の受賞歴を誇り、国内外で高い評価を得てきました。これらの経験を生かし、WWLとしてさらなる発展を遂げています。
自分と、他者と、向き合う探究学習
富士見丘の探究学習は中1から始まります。中1から高2まで取り組む「自主研究5×2」は、自らの興味・関心を掘り下げます。様々な分野に興味をもち探求したり、一つのテーマにじっくり取り組むなど、スタイルは自由です。あわせて、自分自身の関心が何に向いているのか、その志向がどう変わっていくのかがわかるので、自己理解にもつながります。
中2では、武蔵野美術大学とのコラボレーションを行い、生徒たちがキュレーターとなって美術展を開催。美大生やプロの作家たちとの協働学習を通して、生徒たちは課題を見つけ、考え抜くことを要求されます。様々な試行錯誤の末、友だちなども巻き込みながら自ら動ける姿勢を身につけていきます。そして、クリエイターと触れ合うことで生徒たちの創造性に火が点くことは間違いありません。
高1での「グローバルスタディ基礎」は、慶應義塾大学大学院の研究室と共にSDGsについて考え、解決するためのグループワークやプレゼンテーションを実施。
高2からは「グローバルスタティ演習」として、高大連携で本格的な探究に取り組みます。「災害と地域社会」、「環境とライフスタイル」、「開発経済と人間」をテーマにゼミ形式の授業を行い、オンラインで慶應義塾大学やWWL提携校の鹿児島池田高校、沖縄尚学高校などと交流を図りながら、ディスカッションや研究発表を行っています。
広報部長の佐藤一成先生は、
「例年高2では台湾やシンガポール、マレーシア現地でのフィールドワークを実施していました。自分たちが関心を持った社会課題について、海外での取材・フィールドワークを経ることで視野が広がり、現地の高校生・大学生との交流も忘れがたい思い出になっていました。
コロナ禍の昨年からは、オンラインでの取材や交流が中心となっていますが、生徒たちはこちらの予想以上に積極的に行動し、研究を深めています」と話します。
2020年度は海外でのフィールドワーク(FW)が叶わなかったため、国内FWとして沖縄FWを企画し、の環境・経済・観光・教育などについて比較研究に取り組みました。
「オンラインで実施しましたが、現地の方たちが非常に協力的で、生徒たちが考えたことに丁寧にアドバイスをくださいました。その中で"さとうきびの搾りかすで衣服を作る"という環境保全にもつながるテーマに取り組んだグループは『全国高校生フォーラム』に出場しました。1月には沖縄でFWを行う予定でしたが、緊急事態宣言発出のためなくなってしまったのは残念でした。しかし海外だけでなく、沖縄の方々など、現地とのつながりは今後も生かしていきたいですね」(佐藤先生)
なお、WWLになりプログラムがバージョンアップしています。これまでの海外FWは継続していますが、2021年度からはハワイ大学とのプログラムが新たに加わりました。大学の単位認定もされる高大連携の授業です。
「『ディスティネーションマネジメント』という観光に関する分野が新たに導入されました。ハワイ大学のラッセル・ウエノ教授から毎回プロジェクトを指定されますが、6月の授業ではハワイの各島をケーススタディーとして、グループごとにプレゼンテーションを行い、観光を活性化させていくことを目指しました。
このプログラムは振り返りも含めて全編英語で実施されるため、英検2級以上の有資格者が対象となっています。開始2か月後のプレゼンテーションを見ましたが、レベルの高さに驚きました」と佐藤先生。
コロナ禍が収束すれば、2022年1月には、現地ハワイでのFWが予定されています。
協働で発表することで絆も強まる
こうした学びを学校生活の中に豊富に用意し、さらに発表して共有することへとつなげている同校。先にも触れた通り、生徒たちの表現スキルは年々目を見張るほど上達しているそうです。
「プレゼンテーションを行う際には必ずチームを作ります。1人でやるよりも協働することで、自分の強みをそれぞれが活かすことができますし、成果を感じられます。例えば英語が強い帰国生はスピーチの部分をリードするだけでなく、他の子の発音をチェックできます。また段取りを組んだり、リサーチしたり、収集したデータをPCでまとめていくのが得意な子もいますし、インタビューをするのが好きな子もいるでしょう。揉めることもよくありますが、それは一人ひとりがしっかりと頑張っている証拠ですし、だからこそ成長が実感できると思います」(佐藤先生)
これらの取り組みの集大成として開催されるのが、2月の「WWL課題研究発表会」です。
「発表内容や姿勢は毎年グレードアップしています。例えば、優勝したチームは『マイボトルを持ちましょう』という呼びかけをしましたが、実際に"富士見丘ボトル"を企画・提案してデザインをし、実行に移しました。こうした経験を積み重ねることで生徒たち自身の自信につながりますし、それを見ていた下級生は大いに刺激を受けて発奮します」と佐藤先生。
どんな状況下でも学びを止めない富士見丘の快進撃はとどまるところを知りません。
英語4技能とICT教育
同校のもう一つの柱である英語教育について、佐藤先生はこう話します。
「本校は『WWL』でグローバル課題に取り組んでいますし、『英語入試』なども行っているので、英語教育に強いと言われています。確かに学年に20%ほど帰国生がいますが、多くの生徒はゼロスタートです。英語は単なる受け身の学習ではなく、プレゼンテーションをしたり、長文を書いたり、中学段階から4技能にバランス良く取り組んでいます。ネイティブの授業はチームティーチングを含め、週3回実施していますが、大切にしているのは、生徒たちが何よりも授業を楽しむということです」
なお、富士見丘は英語だけでなく、その他の科目についても基礎学力をしっかりつけさせる徹底的な面倒見の良さが特長です。
佐藤先生は「こう言うと引いてしまう生徒もいるかもしれませんが(笑)」という前置きのあと、
「補講は発展的なものも行っていますが、課題を出せていない生徒のためにも実施します。少人数なぶん、中学のうちは特に手をかけていて、課題は毎回きちんと提出するまで追いかけ、学習の定着度を図っています。だからこそ高校入学時には、苦手だった教科への意識を払拭できている生徒も多くいます」とほほえみながら教えてくれました。
また2017年から1人1台ノートパソコンを持ち、国際基準に応じたICT教育を実践しています。
ICTを授業で活用することの意味を社会科の教諭でもある佐藤先生はこう話します。
「アクティブラーニングで大切なことは考えることです。頭を働かせるという意味の"アクティブ"なのです。例えば高校の社会科では、それぞれが調べたことをロイロノートで共有し、考えることを大切にしています。全員が発言しないまでも、自分の意見を必ず書くため、みんなが共通点や違いを認めて議論を展開することができます。ICTの導入により頭がアクティブに働く学習のスタイルで授業ができるようになりました」
また理科でも実験の過程を撮影・共有することができ、研究レポートを作成する際にも写真に直接書き込むことで、正確性が担保される上、時間短縮ができるぶん考察に時間を割くことができます。
こうした学びを通じて、きちんと考える力を養う学習に取り組んでいます。
英語の宿題の音読でもICTを活用しています。
「ロイロノートで共有して、この発音はカッコいいね、この繋げ方が素敵だねと伝えることで、生徒たちが『私もこうなれるようがんばりたい』と思う気持ちを育てています。
ネイティブの発音だけ聞いていたら、『あれはネイティブだから』となってしまいますが、自分と同じくスタートしたお友だちが流暢に話していると褒められた子はうれしいですし、周りの子にも刺激になります」(佐藤先生)
なお、同校では中1から1年間、総合学習の時間にICTについて丁寧に指導しています。佐藤先生は、
「情報科の教員と担任がタッグを組んで授業をしています。様々なアプリやカメラ、ワードやエクセル、パワーポイントなどのオフィス系の機能も1年生のうちに使いこなせるようにしています。ICTのスキルを磨くだけでなく、モラルやネットリテラシーをしっかりと身につけることも必須としています」と言います。
このように新たな教育ツールと丁寧な面倒見を融合させながら、生徒たちにとっての最適解を探りつつ、大きく進化しているのが富士見丘なのです。
高い進学実績のヒミツとは
最初に触れた通り、入学時の偏差値に対して出口である大学合格実績で結果を出している富士見丘。
そのヒミツを佐藤先生はこう話します。
「高1のときからSDGsや環境、貧困など世界が抱える課題について学習していくので、なんらかの社会貢献をしたいという意識を強くしているように感じます。自分が学びたいことや将来の目標を見据えて、進学先を決める生徒が増えています。
『グローバルスタディ演習』を通じて、災害看護の資格を取りたいと日本赤十字看護大学で学んだり、お世話になった慶應義塾大学の防災研究の研究室に入室するためにSFCの総合政策学部に進学したり、取り組みが進路に結びついています。学んだことが進路に直結していない生徒も、大学で何を学びたいのかを考えるきっかけにはなっているのだと思います」(佐藤先生)
進学先はもちろん文系だけではありません。埼玉大学工学部に進学したOGは高2の時に行ったシンガポールFWで建築に関心をもったそう。
「自分が海外で経験したことを元に世界に貢献したいと国立大学を目指して勉強を始めました。英語の勉強もしなくてはいけないと頑張っていた姿が印象的でした」と佐藤先生。
今春の卒業生数は84名ですが、東京外語大学へは2名、上智大学へ13名など、合格校の詳細は学校HPをご覧いただけたらと思いますが、最も多いのは18名の立教大学です。
佐藤先生は、「立教大では英検準1級を持っていると英語は100点みなしになります。英語4技能をしっかりと鍛える教育が大学進学実績にも結びついています。なお、高3で英検2級の取得者は70%以上ですが、中入生は80%を超えています。特に準1級など上の級の取得率は中入生のほうが高入生より10%ほど高くなっています。早いうちからネイティブ教員と触れ合うことで、英語に対する積極性が培われているのではと考えています」と言います。
例年海外大学への進学者がいましたが、今年は新型コロナの影響で敬遠されました。そのぶん、大学に行ってからさらに英語を学びたい、海外留学をしたいとグローバル教育を推進しているスーパーグローバルユニバーシティ(SGU)を目指す卒業生が多かったことも特徴です。
なお、2022年度入試では「英語特別コース」の改編が行われます。
帰国生や英検3級以上取得者の「コースB」と「インター」に加え、英検4級を持っていれば入れる、英語口頭試問は行わない「コースA」を新設します。
「英検を持っていて、ゼロスタートより進んだ内容で学びたいという生徒に対応したクラスとなります。また、英語資格入試では4級は80点、3級は90点、準2級以上で100点と、取得級で得点加算があります」(佐藤先生)
さらに得点率が85%以上では入学金免除、90%以上の場合は入学金と施設費免除という特待生制度も新たに始まります。ぜひ一度、ご自身の目で富士見丘中学高等学校の教育をご覧ください。