学校特集
東京家政大学附属女子中学校・高等学校2021
掲載日:2021年8月7日(土)
2021年、創立140周年を迎えた東京家政大学附属女子中学校・高等学校。建学の精神「自主自律」を目標に、未来を創造し、世界で輝く女性を育成してきました。これからも探究学習とIB(国際バカロレア)教育を導入して生徒の学びを変え、生涯学び続ける女性へと成長することを目指しています。
将来の自分を模索する「ヴァンサンカン・プラン」、食について学べる場でもある「スクールランチ」など独自のプログラムを通し、物心両面から健やかな成長を促します。
今年度より、中学・高校共に、新しく校長が就任。中学校・高等学校統括責任者と高等学校校長を兼務する大澤 力(おおさわ つとむ)先生、中学校校長の賞雅 技子(たかまさ あやこ)先生に、同校のこれからを伺いました。
生徒たちに、世界一の教育を
――2021年度より、新校長になられた先生方にお伺いいたします。まず、中学校・高等学校の統括責任者兼高校校長となられた大澤先生の抱負は。
この度、統括責任者兼高校校長を務めることになりました。幼稚園教諭、園長代理など10年間初等教育に携わり、その後、保育者養成のために東京家政大学の教員となり20数年務めました。そして、今回の機会をいただいたのですが、中学校、高等学校の生徒の皆さんは、私の一つひとつの言葉に頷いて、心にしみこませるように聞いてくださる。本校の責任者としてこの純粋さに精一杯報いようと、改めて身の引き締まる思いです。
私が薫陶を受けた中のひとりに、玉川学園の創設者であり「全人教育」を提唱した小原國芳先生がおります。彼の書生となって大学に通っていた1年3ヵ月、小原先生が常に語っていたのが、「同じ教育をするなら日本一、世界一の教育をしろ」ということ。私はこの中高を核に、東京家政大学を世界一の女子の学び舎にしたいのです。
そのための施策の一つとしてあげるのが、附属校ならではの学び、中・高・大の連携です。本校は約9万㎡という広大なキャンパス内に、子ども園の幼児から大学院生まで(小学校を除く)の幅広い年代が集う環境です。中高生の大学図書館など施設の共同利用や大学生と共にゼミに参加するなどしていきたいのです。元々「高大連携」を進めていますが、もっと密接に「中大連携」もしていこうと考えています。
研究課題を見出して本質を突き詰めようと邁進する大学教員たち、彼らの「変人」と表現したくなるほどの情熱を、中学生にも目の当たりにしてほしいのです。研究の最先端と中学生の純真な心とが繋がると、大変な化学反応が起こり、人間教育と学力的な向上が必ず両立できると確信しています。
本校の生活信条「愛情・勤勉・聡明」は、世界に通用するものです。生徒たちの躍進のスイッチを入れるための方針を定め、先生方と生徒たちと共に歩んでいきたいと思っております。
――同じく2021年4月より中学校校長に就任された賞雅先生。前年度まで副校長を務めておられましたが、校長としての思いはいかがでしょうか。
大澤先生の描かれる未来を実現するために中学校の3年間でどのような基盤作りができるかを考えますと、私はどれだけ生徒の幅広い教養を育てるかという教育改善にかかっていると思います。
生徒が能力を発揮したり個性を活かしたりということは、教養がないと難しいものです。発想の豊かさや柔軟性を育むためには、自己の好き嫌いだけでは通用しません。自分の意見を持ち、発信し、他者の意見も受け入れて協働するための教養をきちんと身につけてほしい。そのためには、様々なことを体験してもらいたいと考えています。
前年度まで副校長として生徒たちを見守ってきました。彼女たちは皆真面目で素直です。学習にもひたむきに取り組みますし、生徒からの目線で学校を紹介する「アドミッション・スタッフ」としても活躍してくれる、自慢の生徒たちです。そんな長所を大切に育ててきました。その反面、失敗しないように大事にしすぎてしまいました。
若いというのは失敗できること、失敗から立ち直り、その中に何かを見いだせることです。自分では失敗と思っていても、他者から見たらそうではないこともあります。挑戦し、振り返り、自分なりの発見を見つけるという、自己開拓の楽しみを味わっていただきたいですね。教員一同、改めて学び続け、真面目で素直という長所を守りつつ、挑戦をあと押しする教育を実践していきたいと思っています。
3本の大きな柱で、一人ひとりの理想の未来へと近づく
東京家政大附属では「家政i教育」と銘打ち、「intercultural Communication(異文化コミュニケーション力を高める)」、「information Literacy(情報リテラシーを習得する)」、「inclusive Community(様々な人たちを包み込む社会を創造する)」というコンセプトに基づいた教育を実践しています。理想の未来を実現するため、「未来学力」の育成を目指しています。
これらのカリキュラムは主に、探究学習、アクティブ・ラーニング、英語教育の3本柱により構成されています。
1本目の柱、探究学習では、中学生から高校生まで6年間通して行い、中1は東京エリア、中2は日本、中3は世界と、徐々に枠を大きくしていきます。
同校の探究学習授業は、問いを立てる→フィールドワーク→ポスターセッションと、段階を踏みますが、徹底的に「問いを立てる」ところから始めます。
「探究と言いますと、生徒たちが問いを大きく捉えてしまい、調べ学習になってしまったり、結論が出なかったりということが多々あります。それでは生徒たちも手応えがつかめません。身近な疑問を問いにし、突き詰めていった中で何かがわかってくる、そのような成就感を重んじています」(大澤先生)
「SDGsの観点などもあえてはずして、幅広く、本当に身近なところから考え始めます。たとえば、沖縄をテーマにするのならば、基地問題や海洋汚染などではなく、『なぜ沖縄には鉄道がないのか?』。最初はこんな問いでいいの?と戸惑っていた生徒も、次第に手応えをつかみ始めます」(賞雅先生)
昨年度の探究学習授業で、大手コーヒーチェーンの紙ストロー導入のニュースから着想を得た生徒は、どれだけプラスチックが削減できたか、衛生面の観点ではどうかなど、多様な視点から検証しました。紙のストローの有効性に疑問をもち、もっとやれることがあるのではないか?という結論に至ったそうです。
世間では常識となっている当たり前を自分で問うてみるのが探究であるということを、生徒たちは学びつつあります。このプログラムを通して、同校が目指す人物像、未来を生き抜くスキルを習得し、プロセス重視の学びを身につけた、「生涯学び続ける人」を育てられると先生方は確信しています。
2本目の柱は、アクティブ・ラーニング。同校では全教科で実施し、協同学習によって生徒が主体的に学ぶ力、チームで課題に取り組み解決する力、様々な角度から物事を見る力を養います。
「6年間を通して、知識や技能、思考力、判断力をバランスよく豊かに育成するのがねらいです」(賞雅先生)
一人1台iPadを貸与し、双方向型授業や「Keynote」によるプレゼンテーションにも活用しています。
「本校では外部大学への進学を考える生徒も増加していますので、理数教育にも力を注いでいます」(大澤先生)
国公立や早慶上理・GMARCHをはじめとする難関大学合格を目指す「特進クラス(E CLASS)」と、東京家政大学への内部進学や他の上位大学への進学を目標とする「進学クラス(i CLASS)」の2コース制で、生徒の志望を叶えるカリキュラムを組んでいます(例年、東京家政大学・短期大学部への内部進学は30%〜40%)。
3本目の柱、英語教育の充実度も見逃せません。週6回の授業で英語に親しみ、Extensive Reading(多読)やプレゼンテーション力養成講座、イマージョン教育などを通じて、語彙力や表現力を広げます。
チケット購入制のオンライン英会話では、各々の習熟度に合わせたプログラムを選択することができます。レシテーション大会やスピーチコンテストに参加し、英語で自分の意見を発信する機会もあります。
そうして日々の学習で培った英会話力を発揮し、英語への向学心をさらに高める海外研修も豊富です。
・シンガポール修学旅行
中3全員が9月に5日間シンガポールへ。事前学習で現地情報を把握し、現地で地元の方と交流。帰国後はレポートにまとめ、プレゼンをします。
・オーストラリア修学旅行
高2全員で9月に6日間シドニーへ。現地大学生を交えた班別行動や少数グループでのファームステイをすることで、英語で意思疎通する機会をもちます。特進クラスの生徒は現地の高校生と交流する時間もあります。
・カナダ・ビクトリア語学研修プログラム
高1・2の希望者対象。7月〜8月の15日間のプログラム。ブリティッシュコロンビア州立ビクトリア大学の学生寮に宿泊し、2週間ELS教室でのレッスンを受けながら、現地のバディと共にアクティビティを楽しみます。
・オーストラリア体験入学プログラム
中3〜高2の希望者対象。夏休み中の14日間、1人1家庭にホームステイをしながら現地の女子校に通学。ESL授業の後、現地校の授業など現地学生の普段の学校生活を体感します。
・セブ島英語集中合宿プログラム
高1・2の希望者対象。夏休み中に4週間、1日あたりマンツーマンクラスを5コマ、グループクラスを2コマ受講。土曜日はフリータイムまたは別料金のオプショナルツアー、日曜日は復習やレポート作成を行います。
「希望者対象の3つのプログラムは成績上位者に奨励金を出していますので、ぜひ参加を検討していただきたいです。もちろん、無理をして海外プログラムに参加しなくても大丈夫です。ネイティブのALT(外国語指導助手)が5名、月曜日から金曜日までフルタイムで校内にいます。これほど気軽に英語で交流する機会はなかなかもてないでしょう。生徒の皆さんには、本校に在籍している特権をしっかり享受していただきたいです」(賞雅先生)
東京家政大附属と国際バカロレアの親和性を紐解く
「愛情・勤勉・聡明」を生活信条とし、世界で活躍できる女性を育てるべく邁進している同校。2020年度より国際バカロレア中等教育プログラム(MYP)の候補校としての一面ももっています。
国際バカロレア(以下IB)とは、多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する、探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成を目的とするもの。
中でも「MYP」は、グローバル化に対応できるスキルを身につけた人材を育成するため、11歳〜16歳の青少年にこれまでの学習と社会のつながりを学ばせるプログラムを提供しています。
IBでは国際的な視野をもつ人物として、以下の10の学習者像を重んじています。
・探究する人
・知識のある人
・考える人
・コミュニケーションができる人
・信念をもつ人
・心を開く人
・思いやりのある人
・挑戦する人
・バランスのとれた人
・振り返りができる人
「私たちの掲げる生活信条には、IBの学習者像が含まれています。生涯学び続けながら予測困難な時代をしなやかに生き抜くことができる、豊かな人間性を備え、社会をより良くしていく女性を育てたいと実践してきた教育とIBとは親和性が大変高いのです」(賞雅先生)
自主自律し、国際社会で自分の力を発揮できる女性になる、そのような夢をもつ生徒たちにとって、同校での6年間の学びは大きく貢献してくれるはずです。
これから東京家政大附属を目指す受験生たちへのメッセージ
受験生に向けて、お二方からメッセージをいただきました。入学前の心構え、入学後の目標や行動などは、あなたの中学高校での6年間をより一層充実したものにしてくれるはずです。ぜひ一度、先生方の言葉と共に、今の自分の姿を振り返ってみてください。
――賞雅先生から、受験生へのメッセージは。
「受験生の皆さんには、日々の勉強や学校や家庭での役割など、今、過ごしている小学校生活を大事に頑張ってください。本校に入学された際には、学習以外に一つ、部活動や委員会、生徒会など、自分の活躍の場をもてるように目標を見つけていただきたいです。また、自分の新しい能力をつけたい、自己開拓をしたいという意思のある方も心から歓迎いたします」
――大澤先生からはいかがでしょうか。
「本校はやりたいことをやらせてくれる学校です。私は「"かせい"を日本一、世界一の学校にする」と夢を語ります。そして、これを実現するために動いています。同じように、これから入学される生徒の皆さんにも、何か大きな夢や目標をもっていただきたいです」
本校には25歳の自分を想定し、そのために今何を成すべきかを考えるキャリア教育、「ヴァンサンカン・プラン」があります。どんなに大きな夢でも、「ヴァンサンカン・プラン」を通して実現への道を考えていけばいい。
中学、高校の6年間の中でやりたいことがある、社会に出てこういうことがしたい、こういう自分でありたい、ということを大いに語っていただきたいのです。私たちはそれをバックアップする教育をお約束します。私たちと一緒に探究し、自分の人生を作っていきましょう」(大澤先生)
東京家政大学附属女子中学校・高等学校では、在校生・卒業生・保護者の参加型説明会を実施しています。ほかに、生徒の授業などを見学できる、少人数制の「ミニ説明会」も実施しています。「アドミッション・スタッフ」が生徒を代表して日常を語る取り組みもあります。ぜひ一度、足をお運びください。