学校特集
桜丘中学・高等学校2021
掲載日:2021年8月3日(火)
1924(大正13)年に創立された桜丘中学・高等学校は、「勤労」「創造」を校訓に掲げて自立した生徒を育ててきました。学習習慣の定着、徹底した少人数指導、先端をゆく英語教育や表現力を伸ばす指導など随時改革も進め、確実に生徒の力を伸ばしています。2021年度からは高校で4コース制がスタートし、生徒の能力や希望に合わせたきめ細かい指導にも力を入れています。こうした教育改革や大学合格実績が多くの受験生の目に留まり、受験者・入学者が急増している同校。進学指導部長・樋山陽亮先生と一貫教育推進課の藤岡和宏先生に、中高それぞれの教育の特徴や同校の魅力について伺いました。
自学自習力を育てるさまざまな取り組み
桜丘中学・高等学校は、ここ数年、大学進学で右肩上がりの実績を挙げています。たとえば国公立大の合格者は2021年は54名(2019年は30名)、早慶上理ICUは24名(同16名)、GMARCHは107名(同46名)と躍進が続き、注目が集まっています。「受験生や保護者からは"塾の先生に勧められた""近所の在校生がいい学校だと話していた"といった声が増えています。口コミで評判が広がって受験生が急増しており、以前は中学は2クラスでしたが毎年1クラスずつ増え、今年度は5クラス編成になりました」と中1担任の藤岡和宏先生は笑顔を見せます。
個性豊かにイキイキと学校生活を楽しみながら、無理なく学力や表現力を伸ばせる同校。その秘密を探るべく、まずは藤岡先生に中学の学校生活や教育の特徴について教えていただきました。
中学では学習習慣を定着させ、弱点克服や強みを伸ばすために、家庭学習ノート(通称・カテガク)と「セルフスタディ(SS)ノート」を使っています。カテガクは学習の記録や自習に使うほか、日記の役割もあります。「中1の間は毎日しっかり記入して提出させ、習慣づけを狙います。中2になると書く内容や密度を濃くし、中3では得意なところを伸ばして弱点を克服することにフォーカスしていきます」(藤岡先生)。
藤岡先生のクラスでは、日記部分に毎日「お題」を出しています。HRなどで司会をするMC(日直のバージョンアップ版)がお題を出しますが、「漫画『ドラえもん』の主役はドラえもん、のび太のどちらか。理由も述べよ」「宇宙人に誘拐されて体の1か所を改造された。それはどこか?」など、ユニークで興味をそそる内容です。先生が全員の日記を読んでMVPを決めるから、「先生を笑わせよう!」と張り切って書く生徒も多く、力作が生まれているそう。それを見た隣のクラスでも「うちもやってみよう」とさっそく採り入れ始めたといいます。
「大学の総合型選抜では小論文を書かせるところも多く、いきなり出されたお題を自分なりに咀嚼して経験や意見を踏まえて文章を書く必要がある。カテガクなどで普段から考察する習慣をつけておくとパッと生まれたアイデアを組み合わせて文章を構成できるようになり、受験を始め様々な場面で役に立ちます」(藤岡先生)。
SSノートは学習内容や学習時間を記録するスケジュール帳で、週1回提出します。翌日の持ち物や小テスト、宿題、To Doリストなどをメモしたり、家庭学習の時間を記録します。教科ごとの1週間の学習時間も記録するので、自分でスケジュールを管理しバランスよく学習計画を立てる習慣が自然と身につきます。
英数は15人程度の習熟度別授業で手厚く指導
桜丘では少人数クラス編成で確実に学力を伸ばすことにこだわり、1クラスを30人程度に抑えています。それだけでも手厚いのに、英語と数学はさらに習熟度で2分割して約15人ずつで授業を行っています。「能力別編成だから自分のレベルに合った授業が受けられるし、15人だと必ず発言の機会があるので、全員が積極的に参加することになります」(藤岡先生)。
現状でもかなりきめ細かいコース分けですが、来年度の中3からはトップ層向けのコースを新設する動きもあります。「高校の難関選抜『スーパーアカデミックコース』につなげるのが目的で、最上位層にはさらに歯ごたえのある授業を提供したいと考え、計画を練っているところです」と藤岡先生。早くから最難関大を視野に入れている生徒にとっては今まで以上の好環境が用意されることになり、ますます期待が高まります。
また、桜丘の特徴的な取り組みの1つに「MC制度」があります。日直をバージョンアップしたような立ち位置で、朝礼前に担任の先生に1日の流れや連絡事項を確認し、朝礼や授業で配布物を配ったり連絡事項を伝えたり、クラス全体をまとめる役割を担います。リーダーシップ能力が磨かれるだけでなく、1分スピーチなどを行うこともあるためプレゼンや発表の練習にもなっています。「スライドも自分で用意して『私が好きなゾンビ映画ベスト3』『人が恋に落ちる瞬間』など興味深いテーマでスピーチするので、思わず聞き入ってしまいます。学年が上がると場慣れしてくるので"××さんはどうですか?"といきなり話を振ったり笑いをとることも。"こう答えたら盛り上がるな"と当意即妙に切り返す生徒も増え、オーディエンスも作られることが分かりました(笑)」--藤岡先生は、そんな副次効果にも手ごたえを感じているそうです。
授業や学校生活の中では、アクティブラーニングも自然に根付いています。たとえば時差の計算など苦手な生徒が多い単元のときは、先生は敢えて教えずに「自分たちで考えてみて」とグループワークに切り替えることもあります。先生の話を聞くだけの時より、何が分からないのかを自分たちで話し合い、分かる生徒が先生役になって教え合うほうが、知識も定着しやすくなるからです。
同様に、自習室も従来型の「一人で黙々と勉強する部屋」と「生徒同士で教え合う部屋」の2種類を用意しています。「コンテンツをなるべく増やし、どちらにも対応できる生徒を育てたい。実際に、その日の気分で"今日はお喋りOKの学習室に行く"など両方の部屋を使い分けている生徒も多く、切り替えが上手だなと感じます」(藤岡先生)。
英語教育にも力を入れている同校では、ネイティブ教員が8人在籍し、中1は1週間7時限のうちメインとなる5時限をネイティブ教員が担当しています。授業だけでなく生活指導も行っているので、生徒がふだんから外国人や英語に触れ合うことのできる環境が整っています。
さらに中3では全員参加のオーストラリア研修旅行を実施していますが、コロナ禍の今年は代替案として国内で英語体験ができる日帰りツアーを計画中です。日本に滞在している留学生とグループを組み、スカイツリーや浅草などの名所を案内するというもの。観光地のことを調べて英訳し、案内しながらお喋りしたり留学生からの質問にも答える必要があり、会話力や瞬発力が求められます。MCやプレゼンの経験で人前で話すことには慣れている生徒たちなので、留学生相手に英語を使う機会を作ることで、意識を高めたり「もっと上達したい」というモチベーションにつながることが期待されています。
高校では今年度から4コース制が始動
中学で学習習慣や生活習慣を定着させ、基礎学力を固めた生徒たちは、高校では希望の進路に向かって学力や個性を磨いていきます。2021年度から始動した新たな4コース制について、進指導部長の樋山陽亮先生に詳しく伺いました。
高校のコースは
●文理特進「アカデミックコース」
●グローバル探究「グローバルスタディーズコース」
●キャリア探究「キャリアデザインコース」
の4コースで、本人の希望や適性をもとにコースを選びます。
2021年度に新設された「スーパーアカデミックコース」は東大・早慶上理などの最難関大学を目指し、学力だけでなく主体性、表現力、思考力を育てます。
「4月、5月の探究ゼミでは樋口教授の専門分野であるゲーム理論について白熱した講義が行われました。大学の授業と同じトーンと熱量で話してくれるので、高1の生徒にはちょっと難しい部分も多いですが、"3年後にはこの内容が分かるくらい成長しないといけない"と、生徒たちは大いに刺激を受けています」(樋山先生)。
●早稲田大学名誉教授の探究ゼミ: 早稲田大学の樋口清秀名誉教授が月に2回来校し、2時限続きで探究の講義を実施。授業を担当。答えのない課題について調べて話し合い、発表する。
●日本文章能力育成・英作文育成講座:自分の考えを論理的に思考し、日本語でも英語でも相手に伝えられる能力を育てるオリジナルカリキュラム。
●オンライン英会話:各自のタブレットを使い、朝のHRで週3回、フィリピン在住の外国人講師とマンツーマン(オンライン)で話して会話力を磨く。
●東大生による放課後講座:現役東大生が放課後に来校。質問に答えてくれるだけでなく勉強のやり方や生活指導なども受けられる。
難関大学を目指して総合的な学力を身に着けるコースで、現在は5クラス編成です。高2から国立大、私立大のそれぞれ文系・理系に分かれるため、高1でキャリア展望を描く必要があります。そこで 高1の夏休みに選択制キャリア講演会を実施し、身近な社会人の話を聞く場を設けます。起業家、コンサルタント、児童相談所職員などさまざまな仕事に触れるほか、大学教授から学部・学科について話を聞く機会も設ける予定です。
●積み上げ型進路計画策定:自分を理解したうえで多種多様な社会人と交流し、既存の職業にとらわれない進路選択を目指す。
●マルチサポート体制:近年主流になりつつある総合型選抜入試に備え、書類添削や面接、ディスカッション対策などを個別サポートする。
●個別最適化授業:2年生ではAIを用いて個別課題に合わせた授業を展開(選択制)。
英語学習や、留学制度などに力を入れ、グローバル化が進む社会でも積極的に挑戦することの出来る人材を育てている同校。言語に興味があり、英語を話すことが好きな生徒が30名在籍しています。セブ島での英語研修や、日常的にNative English Teacherと接することで、英語を話す楽しさを感じることが出来ます。また、探究活動を行う際にも視野を広げSDGsを中心として世界規模の課題に取り組むことで世界と自分の関わり方を考えていく事になります。
●グローバル併願が可能に:今年度よりUPAAに加盟し、生徒の海外大学進学を後押し。海外大学の合格を持ちながら、国内の大学を受験することが可能。
●セブ英語研修:クラス全員でフィリピン・セブ島にて英語研修を実施。マンツーマンの授業を中心とし英語力の土台を築く。
●第二・第三外国語講座:高2、高3で週1時間、中国語とフランス語に触れ、更に広い視野を持てるようになる。
●4技能対策講座:高1、高2で週1時間、TEAP対策講座を実施し、英語4技能の取得へと繋げる。
●探究学習(Global Issues):ユネスコ認定校として「持続可能な開発の為の教育」の拠点となっており、SDGsなどを題材に課題の調査、考察、表現などに取り組む。外部講師による特別授業なども行う。
2021年度に新設した「キャリアデザインコース」は、現在25名が在籍しています。新しい価値を創り出すことで、輝く唯一無二の存在を目指します。大学入試における「総合型選抜入試」への特化をしており、それぞれの強みを把握して伸ばします。
●企業インターン :1つの商品が消費者の手に渡るまで、多くの職業が関わることを肌で感じ、自分の得意を活かすことが出来る可能性を探る。
●地方創生プロジェクト:行政に対してのヒアリングなどを通して地方が抱えている課題に対し、高校生ならではの視点から提案をする。
●総合型選抜講座:3年間通して経験したことを元に総合型選抜入試に特化をする。 小論文、志望理由書、面接などに向けて早い段階から取り組む。
●個別探究プログラム:自分の興味関心に合わせ、探究活動を行う。自分のキャリアを考える最高の機会になる。
●英語検定対策プログラム:外部講師による「英語検定取得」を目指す講座。総合型選抜入試で使用する武器を手に入れる。
高校4コース制は今年度からの取り組みですが、樋山先生は「新しいことを始めたわけではなく、これまでの教育内容や実績を洗い出して、より効果が出せるように再構築したもの。近年は大学入試の多様化が進み、一般入試で大学に入学する生徒は全体の半分ほどになっている。わが校でも2020年は一般入試は42%に留まり、学校推薦や総合選抜で合格する生徒が6割ほどになった。わが校でのさまざまな体験を通して目指すキャリアを見つけ、第一希望の進路につなげるべく力を伸ばしていきたい」と話します。
今まで以上に生徒たちの希望を力強く支える体制が整った桜丘は、今後も進化を続けていきます。歩みを停めずにさらなる飛躍を目指す同校に、ますます注目が集まりそうです。