学校特集
二松学舎大学附属柏中学校・高等学校2021
掲載日:2021年9月1日(水)
社会に貢献できる人材の育成を目指して「人間力の向上」と「学力の向上」を教育の2本柱に、中高一貫だからこそできるきめ細かい教育を行う二松学舎大学附属柏中学校・高等学校。今年、話題の渋沢栄一が十数年間、二松学舎の舎長(理事長)を務めていた歴史ある学校です。中学校を開校してから11年になりますが、「論語教育」と「探究教育」を基軸に据えて、豊かな心と、主体的な学びにより自ら考える力や問題を解決する力を育み、変化の大きい時代にも対応できる人材を輩出しています。
その同校が、これまで練り上げてきたプログラムをより有効に活用するために、コースを一新しました。2022年度より「グローバル探究コース」と「総合探究コース」の2コース制で、生涯にわたって有用な力を磨きます。すでに受験生からの期待は大きく、「第1回学校説明会(事前予約制)は1人のキャンセルもなく集まっていただき、興味をもっていただけた」と、自信を深める副校長の島田達彦先生に、新コースの概要について伺いました。
今こそ独自の「探究教育」を打ち出す時
二松学舎大学附属柏では、開校以来「探究教育」の開発、実践に努めてきました。「その背景には、建学の精神である『己を修め人を治め一世に有用なる人物を養成す』がある」と、島田先生は言います。
島田先生:社会で有用な人物といえば、自ら進んで自己理解に努め、自分を理解するように他者を理解する、自国を理解するように他国を理解することができる人です。建学の精神に自ら進んで自己理解に努める、すなわち「探究」が建学の精神に謳われているため、本校では、自らに問い自ら答える。自ら問題を見つけて自ら解決する、という「自問自答」を教育の原点に、独自の教育プログラムを展開してきました。
そうした本校の学びと、新学習指導要領(中学校では今年度から、高校では来年度から実施)に示されている教育の方向性が一致していることから、中高一貫生のコースを見直すことにしました。中学校を開校して10年あまりが経ち、探究教育に手応えを感じていたからです。「本校の教育の原点は自問自答にあり」ということを、改めて皆さんに知っていただきたい。新学習指導要領でいうところの新しい学力の三要素(①知識・技能 ②思考力・判断力・表現力 ③主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度)を、独自のプログラムで育成している学校であることを理解していただきたい。そうした思いから、2022年度より「グローバル探究コース」「総合探究コース」の2コースで新たなスタートを切ることにしました。
「論語」で人を創り「探究」で主体的学びを促す
新たな2つのコースの基軸は、いずれも「論語教育」と「探究教育」です。6年間「論語」を通じて美しいものを美しいと感じる感性や、他者を思いやる心、他者に共感できる心を育みます。
島田先生:本学の創立者である三島中洲が漢学者であったことから、「論語」は心の教育読本として本校の教育になくてはならないものになっています。論語の中心にあるのは「知」(経験と知識)、「仁」(思いやりの心)、「勇」(たくましさと柔軟性)です。これらが学校活動を行う上でのベースになります。中1から漢文を学ぶため、生徒は漢文検定にもチャレンジしています。
「探究教育」には3つのプログラムがあります。同校のきめ細かな学習指導を担う「学習支援プログラム」。教室を飛び出して主体的に学ぶ「自問自答プログラム」、自分らしい進路を考え、すべての学びをつなげる「進路支援プログラム」です。
島田先生:「学習支援プログラム」は毎日の積み重ねにより学習に向かう姿勢づくりや、学びの楽しさに気づくことを大切にしています。例えば「365ノート」は、自分で足りないと感じた学習やプラスαの学習など、その日に必要性を感じた学習を行います。勉強はやらされるのではなく、自分が知りたいこと、学びたいことがあるから勉強する、というスタイルが一番だと思います。やる気が出ますし、力を発揮できます。それを毎日担任が目を通したのちに戻すため、中学3年間、「365ノート」に取り組むことにより着実に力がつきます。「新聞コラム」では、毎日、三紙(朝日、読売、毎日)のコラムを読んで、視点や考え方の違いを学びます。生徒の受け止め方はさまざまで、会話の中で生徒に教えられることも多々あります。
■毎朝25分間行う「モーニングレッスン」(英語・数学・道徳・論語)
■「能率手帳」による自己管理
■計画的、継続的な学習習慣を身につける「365ノート」(内容を自分で考えて取り組む。1 日1 ページ以上学習し、毎日提出する)
■毎日、新聞コラムを読み比べる「新聞ノート」、気になった新聞記事の要点ををまとめて感想を書く「新聞コラム」
■各種検定(英語、漢字・数学は年3回。他にも論語、世界遺産、ニュース時事能力など多種多様)
※高校進学後のサポートプログラム「放課後学習センター」(7限授業として教員が行う補習・講習のほか、スタディサプリを教材に外部講師が行う講座なども実施)
主体的で深い学びができる「自問自答プログラム」
中学校を創立以来、10年以上にわたり試行錯誤しながら形にしてきた「自問自答プログラム」が、探究教育のメインプログラムになります。沼の教室、田んぼの教室、都市の教室など、6つの校外教室があり、中学校3年間は、毎年数回、教室を出て、体験的に学びます。
島田先生:校外教室はその日だけの学びではありません。事前学習で自分の課題を見つけます。それを持って現地へ行き、調べたり聞いたりします。そして入手した情報を事後学習でまとめて、発表し、フィードバックします。その時に、「こんなことが面白かった」「初めて知った」など、いろいろな声が出てきます。そういう気づきがその後の学習につながっていきます。このプログラムが一番醍醐味であり、生徒の探究力向上を図ることができるプログラムだと思っています。
中3では、中学3年間の集大成として、一人ひとりが自分の興味関心のあるテーマについて「探究論文 自問自答」に取り組みます。問い→仮説→調査→結論→発表、という流れで8000字程度の論文を書きます。これは大変な作業ですが、やり遂げたことが生徒の大きな自信になっています。
かつての「進路支援プログラム」は、「二松柏ジュニアキャリアデザインプログラム」と改められ、将来の夢を描けるよう、自分の個性や理想とする生き方について考えを深める機会を数多く設けています。
島田先生:なぜ自分と向き合うことが大事かというと、偏差値ではなく、明確な目的意識をもって大学を選ぶことが必要だからです。今年の大学入学共通テストは過渡期ということもあり、それほど大きな変化はありませんでした。しかし、来年度の高1(新課程1年目)が受験する、4年後の大学受験は大きく変わるでしょう。AO入試に代わり総合型選抜入試が始まりましたが、これからはこの入試の需要が高まると思います。
昨年度の高3生に、中3の卒業論文を機に、高校に進学後もそのテーマについて自分で調べ続けた女子生徒がいました。総合型選抜入試で大学を受験すると、筑波大学や慶應義塾大学などの難関大学にもことごとく合格しました。大学が求めている力を、その子がうまく表現できた結果です。総合型選抜入試では、大学側がアドミッションポリシーとして、求めている力を受験生に示します。それを受けて、受験生側はこれまで何を学んできて、どんな力がついたのか。大学で何を学びたいのか。社会に出たら、それをどのように役立てていきたいか。そういうことを理解して、伝える力が求められます。中高6年間の学びを大学入試につなげていくことができるように、しっかり探究力を身につけていく、それを実現できるコースにしていきたいと考えています。
中高一貫生は高1までの4年間を同じコースで学ぶ
基本的な教育方針は、「グローバル探究コース」「総合探究コース」に違いはありません。どちらも「論語」で人を創り、「探究」で主体的な深い学びを体験しながら、学力を伸ばしていきます。大きな違いは「グローバル探究コース」は中1からグローバルに関連したプログラムに積極的に取り組むところです。その基幹となるのが、4つの柱を持つ「NISHO GLOBAL PROJECTS」です。
■プレゼンテーションプログラム(PRESENTATION PROGRAMS)
世界に通じる発信力をつけることを目的に、中学3年間、7限に実施。SDGsに関連のあるテーマで、プレゼンテーションや資料作りを基礎から学ぶ。
■特別体験プログラム(SPECIAL LEARNING PROGRAMS)
世界に通じる知識を吸収することを目的に、毎年1学期にJICAや大使館を訪問。2学期、3学期はグローバル講演会や英語でクッキングなどイベントを通して世界に通用する知識をつける。
■パワーアップイングリッシュプログラム(POWER UP ENGLISH PROGRAMS)
世界に通じる英語力をつけることを目的に、中学3年間を通じて、英語でショートプレゼンテーションをしたり、海外研修や旅行で役立つ英会話を学んだり、世界各国の文化をゲーム等を通じて学んだりする。
■海外研修プログラム(STUDY ABROAD PROGRAMS)
世界に通じる経験値を高めるために、カナダ、オーストラリア、セブ島等の海外研修プログラムを実施。国内研修プログラムもある。
島田先生:「グローバル探究コース」「総合探究コース」は中1から高1まで、4年間続きます。本校には高校から入学する生徒(高入生)が多数いますが、中高一貫生は4年間、少人数制を生かした学習方法で力を伸ばしていきます。そして高2から高入生と混ざって世界を広げます。個性豊かな生徒がいる中で新たな人間関係を構築し、新しい活動に取り組みます。
「グローバル探究コース」では高1で「SDGs 探究プログラム」に取り組みます。SDGs17の項目に関わる社会課題を選んで、グループごとに活動しますが、海外の関係各所とオンラインでつなげてワークショップを実施し、現地の高校生と具体的な改善策をまとめあげます。「総合探究コース」にも、夏休みに自由参加できるプログラムを設ける予定です。
高2、高3は従来どおり、3コース制で、中高一貫生も国公立大学・最難関私立大学を目指す「SG(最上位の学力とグローバル)クラス」、難関私立大学を目指す「特進クラス」、私立大学を目指す「進学クラス」のいずれかに進みます。
「グローバル探究コース」の生徒は、基本的に「SGクラス」に進むと考えています。「SGクラス」では、高2で英字新聞作成に取り組みます。さらに自分で決めたテーマで、英語によるプレゼンテーションを行いますので、5年間にわたり、世界に通じる力を磨くことができます。「総合探究コース」の生徒も、成績いかんでは入学後に「グローバル探究コース」や、高校の「SGクラス」「特進クラス」に進むことができますので、向上心をもって学校生活に取り組んでほしいと思っています。
現在はコロナ禍で海外に行くことは難しい状況ですが、高校でも全員参加の台湾修学旅行をはじめ、数多くの海外研修プログラムを設けています。また、中国語や韓国語を学べる選択授業もあります。中学時代に自分の将来や、興味ある学びを見つけることにより、充実した高校生活につなげることができる環境です。学力に加え、人間力、探究力を養うプログラムが充実している同校に、ぜひ注目してください。
中学校は創立11周年を迎えます。『東洋の精神による人格の陶冶』『己を修め人を治め一世に有用なる人物を養成す』の建学の精神のもと、これまで地域や社会に貢献する有為な人材を多く輩出してきました。これからは、校訓「仁愛」「正義」「誠実」の精神のもと、[論語]による人間力の向上、自問自答をキーワードにした学力の向上を目指した教育活動を以って、さらなる発展へと新たな目標に向け力強く邁進していきます。