受験生マイページ ログイン

学校特集

東京家政学院中学校・高等学校2021

「自己のあり方」を見つめ直し、将来の進路選択に繋げる探究活動
中1から高2までの5年間をかけて学ぶ、体系的な学習プログラム

掲載日:2021年8月1日(日)

 知識(Knowledge)を高め、技術(Art)を磨き、徳性(Virtue)を養う。「KVA(知識・徳性・技術)精神」が、東京家政学院の建学の精神です。1923年の創立以来、時代に即応していく理想の女性像を描きながら知性と品格を磨き、実践力を身につける教育を行ってきました。多様な価値観が共存すると同時に世界共通のさまざまな課題が浮上する今、建学の精神KVAをベースとしてSDGs(持続可能な開発目標)を考える教育システムを再構築しています。中1から高2まで5年間をかけて体系的な探究学習を実施する狙いについて、探究プロジェクトの責任者である川邊健司先生(社会)と児島豊先生(国語)、入試広報係の髙橋祥乃先生にお話を伺いました。

地域(Local)から世界(Global)へ広がる「SDGs探究プログラム」

中1・2のキャリア教育は「大人に出会おうプロジェクト」

東京家政_「Job Tavi」のオリジナルテキスト
「Job Tavi」のオリジナルテキスト

 同校の探究学習は、中1から高2までの5年間をかけて体系的に行われることが大きな特徴です。中1・2では、まずキャリア教育の一環として「大人に出会おうプロジェクト」に取り組みます。
 地域の働いている大人に出会い、仕事の内容ややりがいなどについて話を聞く体験型協働学習「ポスタビ」と「JobTavi」を実施。地域社会や世界の仕組みを知って「社会で生きることはどういうことか」を考えるきっかけとし、将来の進路選択につながるキャリア教育のスタートにもなっています。

 中3では、引き続き地域と連携しつつ、社会課題解決に向けた知識・技能・態度を育成します。調べてまとめ、発表するという機会をくり返し設け、高校での学びに繋げていきます。

 そして高1・2は2年間をかけてSDGs(持続可能な開発目標)の諸問題について学び、その解決策を考えます。
高1ではSDGsの17のゴールから任意のテーマを選んでグループを組み、グループごとにテーマに沿った探究活動を進めていきます。高2ではそれをさらに発展させた探究ゼミで学び、2万字の論文作成とプレゼンテーションをゴールに設定しています。

東京家政_入試広報係で理科担当の髙橋祥乃先生
入試広報係で理科担当の髙橋祥乃先生

髙橋先生:「コロナ禍の休校期間で始まった昨年度は、『おうちで取り組むSDGs』を入り口としました。金沢工業大学が開発した「STAY HOME for SDGs」という教材を中1〜高2の5学年で活用し、自分が書き上げたワークシートを写真に撮って提出するスタイルでした。今年度の高2は、かなり自由にテーマ設定をしているチームが多いですね。事前にアンケートを取って10人程度で1組のチーム分けを行って進めています」

 地域(Local)から世界(Global)へ。協働学習を経験することでリーダーシップやフォロワーシップを身につけ、探究活動を通じて世界に目を向け、生徒たちは主体的に課題を設定して解決する能力を養っていきます。

中1と中2の合同チームで体験する「ポスタビ」と「JobTavi」

 同校がある千代田区三番町は、明治時代には多くの文人が居を構えていた文教地区です。総合学習の時間を使って行う「ポスタビ」では、歴史ある商店街や地域で働く大人にインタビューをし、「JobTavi」は地域にあるグローバル関連団体・企業などで働く方にお話を伺って、そこで見たこと感じたこと、働く「想い」を題材にポスターを制作したり、プレゼンを行っていきます。
 中1と中2で縦割り合同チームを編成して役割を分担しながら、それぞれがリーダーシップとフォロワーシップの重要性を体感します。


「スパイダー討論」でリーダーシップとフォロワーシップを養う

 同校の探究学習では、グループワークによる協働作業を大切にしています。グループにはリーダーに向いている生徒もいれば、そうでない生徒もいます。リーダーシップと同様に、リーダーをサポートするフォロワーシップを養うことも重要視しているため、話し合い活動に「スパイダー討論」を導入しています。
 スパイダー討論とは、発言者と発言者を線で繋いでいくと蜘蛛の巣のような形が出来上がることから、その名前がついています。可視化された図を見ながら、振り返りで生徒同士が評価し合うことがポイントです。

髙橋先生:「評価内容を見ると、発言数の少なかった生徒は『周りの生徒に頼ってしまった』と振り返り、リーダー役の生徒は『自分は言いたいことを言えたけれど、周りの意見を聞き出せなかった』と書いていました。このように、話し合いの練習を通して、自分を客観視できるようになっていくのです」

東京家政_探究プロジェクトの責任者を務める国語科の児島豊先生
探究プロジェクトの責任者を務める国語科の児島豊先生

児島先生:「話し合いが盛り上がらなければスカスカな図になりますし、盛り上がれば線が密になる。生徒自身が可視化された図を見て気づくことが重要で、それが探究に生きてくれればと思っています」

今年度の探究活動は課外活動として放課後に行っていますが、SDGsと関連性の高い理科・社会・英語・家庭科の先生方をサポートスタッフに加えた、手厚いサポート体制を構築しました。

東京家政_同じく探究プロジェクトの責任者を務める社会科の川邊健司先生
同じく探究プロジェクトの責任者を務める社会科の川邊健司先生

川邊先生:「より深く探究を行っていくうえで、専門的な知識を持ったスタッフのサポートが必要と考えました。少人数規模の教育を特徴とする本校だからこそ、生徒一人ひとりに寄り添った手厚いサポート体制を組むようにしています」

情報リテラシーを扱う側にハートがなければ意味がない

 体系的な学びを定着させ、アウトプットしていくためにはプレゼンテーション能力を高めることが重要です。
 同校では、中学も高校も全員がタブレットを所持しており、教科学習はもちろん、ホームルームや体験学習、クラブ活動と学校生活全般で活用されています。生徒たちのパワーポイントや動画作成のスキルも日々アップしていますが、探究活動の情報収集においてもタブレットは欠かせないツールとなっています。

川邊先生:「中学の総合的な学習の時間で、情報の精査など調べ学習のノウハウを教えていきますが、デジタルネイティブの生徒たちは、我々世代よりもネット上の情報に対する抵抗感が薄いのが現実です。その情報の真偽を確認する大切さや、新聞や書籍などで理解を深めること、さらには出典や参考文献の書き方なども、中1の早い段階から教えるようにしています」

東京家政_探究学習ではグループワークも重視
探究学習ではグループワークも重視

児島先生:「中学の調べ学習でも、情報ソースを生徒に尋ねると、検索でトップに出てきたからという答えが多く、まだまだ覚束ないところがあります。高校生は情報リテラシーのスキルがあっても、まだ安易に流れる傾向があるような気がします。探究学習において最も大事なことは、さまざまな社会的課題に対する誠意であるとか倫理観、玉石混交の情報に対する誠実な姿勢を育むこと。どんなにスキルがあっても、情報を扱う側にハートがなければ意味がない。主体的に課題を設定して解決策を考える探究の主たる目的は、むしろそうしたモラルの育成にあるのではないかと思っています」

 世界平和や環境問題、紛争などSDGsに掲げられたテーマは、生徒たちにとってはどこか遠い出来事かもしれません。でも、それを身近な問題に引き寄せて、生徒自身が「自分事」として考え、熱量を持って学びに取り組む。建学の精神である「KVA精神」を以って世界課題を考え、自分や周りの人の幸せを追求し、社会のために役立てられるようになることが、同校が育成を目指す生徒像です。

蓄積した探究成果をGPAで披露。自信と成長の場に

全学年が参加する学習発表会GPA(Global Presentation Award)が昨年度からスタート

 探究活動では答えのない解決策を導くために、生徒たちは話し合いを重ねます。自主的に問いと仮説を立てて、検証を重ね、新たな問題意識や価値観を創出していくのです。そうした探究活動の集大成を披露する場として、今年3月、中1〜高2の生徒全員による学習発表会GPA(Global Presentation Award)が初めて開催されました。
 学年の枠を超えて、中高生が一緒にプレゼン大会を行うのは初めての試みです。

東京家政_中間発表でプレゼンする生徒たち
中間発表でプレゼンする生徒たち

 第1段階として、12月に中間発表のプレゼンが行われます。全学年の全チームが参加し、1年間かけて蓄積してきた探究の成果を披露。そこではチーム全員が話すことが決まり事です。そこで選ばれたチームが、第2段階の3月のGPAに参加します。

 今年の第1回GPAは、予選を通過した中学6チーム、高校14チーム、合計20チームによって開催されました。各チームの持ち時間は5〜7分。発表風景はZoomを利用して校内各教室の電子黒板に配信されたほか、在校生の保護者や4月からの入学予定者、受験生の家庭にもライブ配信されました。

東京家政_大賞に選ばれ、校長から賞状を授与されるチームの代表者
大賞に選ばれ、校長から賞状を授与されるチームの代表者

 生徒たちの投票によって大賞に選ばれたのは、「米中対立と日本」をテーマにした高2のチームでした。
「第3次世界大戦が起こるのではないか」という仮説をもとに過去の大戦の経過を検証し、現在の世界情勢を分析。そして、武力衝突を回避するための解決策を提示し、未来を展望するという内容でした。
 探究ゼミで討論していた時はどうなるかと心配していた川邊先生も驚くほど、明快な論旨が展開されました。

 自分たちが積み重ねてきたことが他の人に評価されることは、自信や学びのモチベーションに繋がります。オンラインを活用するなど外部に発信する場として、今後も積極的にGPAを活用していく予定です。

探究学習によって自己のあり方を問い直す

東京家政_どの教科でも、普段から発表する機会が豊富
どの教科でも、普段から発表する機会が豊富

 チームで行う探究では、メンバーそれぞれ問題意識の持ち方も関心のあるテーマも違います。時にはぶつかり合ったり、空中分解寸前になることも。
 それでも、先生方は内心ハラハラしながらもできるだけ口を出さず見守ることに徹しましたが、全チームが目標をクリアし、生徒たち自ら解決する力が育まれていることを実感したと言います。

川邊先生:「とにかく無関心を装って(笑)。教員が関わらないほうがむしろ、生徒たちの独創性とクリエイティビティが発揮されて良いものが出来上がってきます。その意味では、生徒たちに教わることが本当に多いと感じています」

 生徒からアドバイスを求められた時以外は、極力関わらないように我慢すること。「教えない」ことによって、「導いていく」のです。もちろん、全員が成功するとは限りません。むしろ「失敗してもいい」と川邊先生は話します。

東京家政_探究では、リーダーシップやフォロワーシップなど、グループ内の関係性のあり方も問われている
探究では、リーダーシップやフォロワーシップなど、グループ内の関係性のあり方も問われている

川邊先生:「探究は、自問自答することに意味がある。たとえ答えに辿り着けなくても、主体的に考え、解決しようと努力した思考回路は生徒たちの中に残ります。自分が興味のあるものに出会った時、どうやってアプローチすべきか、その術を身につけることは、将来を生き抜く大きな力となるはずです」

 探究とは、「自己のあり方を問い直すこと」。同校が目指す探究活動の根底にあるものは、リーダーシップやフォロワーシップを身につけ、公平性やそれぞれの関係性を養っていくこと。そして、地域から世界に目を向け、主体的に課題を設定して解決する力を育んでいくことです。

川邊先生:「探究学習を通して、自分はどうありたいか、どう生きていきたいか、自分を見つめ直す契機としてほしい。将来の進路選択に繋がるような、自己実現に結びつけていってほしいと願っています」

児島先生:「探究活動については、まだ試行錯誤の最中です。探究を通して、教員も生徒もお互いに成長していけたらと思っています」

千代田区三番町を第二の故郷に

 東京家政学院は、千代田区三番町という都心中の都心にあり、約100年近い歴史と伝統があります。親子三代にわたって同校に学ぶ生徒も多く、中学・高校・大学と10年間在籍する生徒も少なくありません。彼女たちの10代は、同校と共にあるのです。

川邊先生:「成人式の時、『私、行くところがないんです』と言って、学校へやってきた卒業生の言葉が忘れられません。考えてみると、県境を跨いで通ってくる生徒たちにとって、自宅のある地元よりも、本校のある千代田区三番町で過ごす時間のほうが長いのです。そうした生徒たちに、ここを第二の故郷にしてあげたい。ここで過ごした思い出を作ってあげたい。そうした思いが、地域と連携した活動の根本にもなっています。逆に言えば、そうした活動は大規模校では難しいこと。少人数教育を徹底し、突き詰めてきた本校だからこそ可能な教育だと自負しています。

資料請求はこちらから 学校ホームページはこちら 学校データベースはこちら