学校特集
千葉明徳中学校・高等学校2021
掲載日:2021年9月22日(水)
2011年に、21世紀型スキルである「G(グローバル力)」「P(プレゼンテーション力)「I(ICT活用力)」を身につけた「行動する哲人」の育成を目標に開校して10年。年々受験者数を増やし、進化を続ける同校では、2022年度の入試改革を進めています。開校以来、「まとめて・書いて・発表する」教育を実践し、ICTと手書きというデジタルとアナログの両立を基軸とした「思考する学び」に力を注いでいる同校の学びについて、副校長の宮下和彦先生にお話を伺いました。
※上の写真は、中3で作成する「課題研究論文」のためのゼミ活動の様子
多様な個性を求む! 千葉明徳の入試改革
開校以来、千葉明徳が育成を目指しているのは「行動する哲人」です。高い知識と見識を備えるだけでなく、自ら思考し、独自の判断力や意見をもち、正しい行動ができる人。
コロナ感染拡大で世界中が大きく揺れ動いていますが、日々刻々目まぐるしく変化する予測不可能な時代であっても、自らの意志で人生を切り拓いていける、未来に羽ばたいていける人を育成しています。
中学3年間の学びの基本は、「まとめて・書いて・発表する」力を身につけること。その柱となるのは、論理的思考力(=考える力)と高いプレゼン能力(=伝える力)です。
2022年度の入試改革でも、「考える力」と「伝える力」を重視したさまざまな入試スタイルを用意。
「第一志望入試」「ルーブリック評価型入試(プレゼンテーション+グループディスカッション)」「一般入試」と「適性検査型入試」の計4種類で、「適性検査型入試」は県立型・市立型・都立型に完全対応し、「第一志望入試」と「一般入試」では英検優遇制度を採用しています。
宮下副校長:「本校は入試でも多様性を意識していますので、それぞれの勉強スタイルに合った試験を選んでいただき、いろいろな力を持った生徒に入学してほしいと願っています」
では、多様な資質をもつ受験生と出会うために準備されている、各スタイルについてご紹介しましょう。
【国語・算数+個人面接】
同校を第一志望とする生徒に志望動機などを中心に面接。入学意欲を重視。
■ルーブリック評価型入試 12/1(水)午後
【プレゼンテーション(ポスター作成)+グループディスカッション】
SDGsの17テーマから選択した課題について、事前に模造紙にまとめて発表(10分)。その後にディスカッションを行う。
宮下副校長:「『ルーブリック評価型入試』は、プレゼンテーションの機会が多い本校の特徴を表したような、表現力・コミュニケーション力を問う入試スタイルです。課題について学習したことを表現し、自分の言葉で説明できる力が求められます」
【2科(国語・算数)or4科(国語・算数・理科・社会)+個人面接】
オーソドックスな設問を中心に、小学校での基礎学力を問う。
■適性検査型入試 1/21(金)
【本校会場/Aパターン(県立型)適性Ⅰ・Ⅱまたは適性ⅢA・ⅢB+グループ面接】
【本校会場/Bパターン(市立型)適性Ⅰ・Ⅱまたは適性ⅢC+グループ面接】
【市川会場/(都立型)適性Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ】
宮下副校長:「来年度4月に中高一貫教育を行う千葉市立中等教育学校が開校されることに合わせて、適性検査型入試を公立中高との併願に合わせて準備できる県立型・市立型としました。Bパターンの適性ⅢCは、英語(外国語)の活用力を含む新しいスタイルです。A・Bパターンともに、それぞれ県立・市立の一次検査と二次検査に合わせて科目を選択できますから、適性検査型だけで5種類の受け方があります」
■一般入試2 1/25(火)...※一般入試1と同様
■一般入試3 1/29(土)...※一般入試1と同様
【国語・算数+個人面接】
今回の入試改革では、「英検優遇」と「特待生制度」も充実させています。
「英検優遇」は、生徒の英検取得級に応じて入試合計得点に加算するシステムで、【英検5級=10点、4級=20点、3級以上=30点】が加算されます。
宮下副校長:「最近は、小学生でも英検取得者が増えています。稀に準2級取得者もいて、3級を取得している受験生も年に2〜3人はいます。本校では入学後も英検取得を推奨していますので、英検優遇制度を機に英検へのモチベーションを高めることにつながればと考えています」
「特待生制度」は、すべての1月入試を対象に特待生選抜を実施します。
A特待は、入試得点率85%(目安)以上の成績上位者は入学金・初年度施設設備費・3年間の授業料の全額を免除、B特待は同じく半額免除。また、「特待生チャレンジ制度」として、「第一志望」「ルーブリック」の合格者及び、特待生に認定されなかった「一般入試1」「適性検査型」の合格者が、「一般入試2」(1/25)で特待生選抜に再チャレンジ(受験料無料)することが可能です。
今回の入試改革のポイントは、受験生が得意なスタイルを選んで受けられること。生徒に寄り添った改革と言えるでしょう。さまざまな入試スタイルの中から、自分の実力が発揮できる方法でチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
宮下副校長:「適性検査型入試では思考力を問う記述式問題が出題されますが、本校教員も問題作成には頭を捻っています。思考力を問う問題では、本校が大切にしている『まとめて・書いて・発表する』活動に適した探究型学習の力を重視しています。試験中にも、問題の中に学びを発見してほしいという意図で問題を作成していますので、じっくり取り組んでほしいですね。記述式問題の答案からは、生徒がどれだけ考えたのか、思考の足跡がよくわかります。たとえ明確な結論に達していない答案でも、部分点を加算するなどきちんと採点しているので、諦めないでほしいですね」
「記述式問題の答案からも生徒の個性や特性を見つけられる」と、宮下副校長。こうした先生方の細やかで丁寧な対応こそが同校のこだわりですが、一人ひとりに寄り添う姿勢は、入試の段階でも同じです。
開校以来の、不変の教育理念は「まとめて・書いて・発表する」
全生徒がiPadを所有し、さまざまなアプリケーションを使いこなしながら学習を進めている同校では、ICTの活用技術もどんどんスキルアップしています。
授業をはじめ、課題の配信や作成ファイルの提出、委員会活動、グループでの協働作業、さらには遠隔授業など、あらゆる学習活動で、ICT活用はもはや「当たり前」のこと。緊急事態宣言下で自宅学習を行った期間も、ZoomやGoogle Meetを使ったウェブ会議システムが大活躍しましたが、「学びの形」は大きく変化しています。
Google Workspace for Educationやロイロノート・スクールなどを中心に、先生とも、生徒同士も双方向のやりとりができるアプリ・システムを構築。自分自身の取り組みを、先生やクラスメイトと共有しながら、学びをさらに深めていくことが可能になっています。
中1から数学ではAI学習アプリQubena(キュビナ)を使い、自分の習熟度に合った問題に取り組むことができます。中3からはスタディサプリも導入しているため復習に活用する生徒もいれば、アプリで予習をして授業を復習の場とする生徒も。つまり、学びが個別最適化されているのです。
このような環境で学習するなか、ポートフォリオのフォーマットを自分流に工夫したり、動画制作やプログラミングに挑戦するなど、柔軟な思考力や創造力も身につけていくといいます。
日常の学習でICTを駆使する一方で、アナログの学びも意識的に取り入れています。
まず、中1・2の総合で行う「土と生命の学習」は開校以来の取り組みですが、校舎前の自然フィールドで体験する農作業で米作りや夏野菜を栽培。グループに分かれて、食文化や社会の仕組み、環境などへの関心を広げます。うまく育たない時にも、「失敗」から学びを深めていきます。
学習成果の発表は、紙のポスターで行います。グループみんなで相手に伝わりやすいレイアウトを考えて仕上げていく、その工程は思考力・論理構成力・協働力が詰まった「思考する学び」そのものです。
こうしたグループでの活動を経験し、中2の後半からは個人の取り組みにシフトチェンジ。自ら興味・関心のあるテーマについて、課題研究論文の作成に取り組みます。
研究自体は個人の取り組みですが、ゼミ活動(7〜8名)の中で、研究の成果をプレゼンテーションし合い、質疑応答を繰り返して内容をレベルアップさせていきます。
宮下副校長:「ゼミでは、研究の途中経過を紙に書いて提出する『進捗報告会』が毎週行われます。生徒が作成したレポートはデータとして保存されるだけでなく、印刷して『壁新聞』として廊下の掲示板に張り出され、そのままポートフォリオとして蓄積されます。このように体験を積み重ねていきますから、生徒たちのプレゼン力は相当鍛えられていると思います」
iPadで制作する「壁新聞」は、大まかなフォーマットが決められているだけのA4サイズの紙で作成。見る人の目を惹きつけ、読む人にわかりやすくするため、文字の大きさや形、配置や色使いなど、個々に工夫を凝らします。
その工夫や思考は、情報を整理・編集し、自分の意見をまとめていく際にも役立つ重要なプロセスです。
同校の特徴は、この手法を探究学習だけでなく、理科や社会、音楽、美術など教科学習のあらゆる機会で取り入れていることです。デジタルとアナログ両方の有用性を認識し、臨機応変に使いこなしているのです。
日々進化を続ける論理的思考力を土台に、プレゼンテーションを行う。そこに、生徒たちの創意工夫が発揮されるわけですが、その工程は思考や表現の手段を重層的に身につけることや、課題解決の突破力育成にもつながっています。
中学開校から10年。
同校は「まとめて・書いて・発表する」教育を中高6年間かけてじっくり行い、「考える力」と「伝える力」の育成に力を注いできました。同校の教育成果について、「人前で表現することに長けている生徒が多いと実感しています」と宮下副校長は話します。
宮下副校長:「本校が開校以来取り組んできた教育の方向性は、現在の大学入試改革の流れを先取りするものでもありました。中学課程から培ったプレゼンテーション能力を発揮した多くの卒業生が、主体性を評価される総合選抜型や推薦型の入試で自分自身を表現することに成功し、希望進路を叶えてきました。その結果が、難関大学の合格実績にも表れています」
そして、副校長はもう一つ、同校らしいエピソードを教えてくれました。
難関私大にも十分合格できそうだったある卒業生は、高3の4月に「自分はどうしても美容師になりたい」と、親ごさんを説得したそうです。また、やはり成績優秀だったある卒業生は、キャビンアテンダントになりたいと専門学校に入学し、希望通り航空会社に就職しました。「彼らなら、どんな仕事でも結果を残せる」と先生方は太鼓判を押しています。
これらは一例ですが、同校の卒業生たちは、それぞれが自らの意志で主体的に人生を生きています。まさに、同校が理想とする「行動する哲人」です。
宮下副校長:「大学進学についても、大学名より入学後の学部・学科で何を学べるかを考えさせるように指導し、『何をやりたいの?』と問い続けています。もちろん、漠然とした将来像を口にする生徒もいますが、『まとめて・書いて・発表する』ことを繰り返し、課題研究論文をまとめたり、仲間や先生方と語り合う中で、自身の関心・興味や未来像を収斂させていく生徒が多いように感じています」
中高6年間の「思考する学び」の中で生徒たちは自らの意思で未来を見つけ、先生方は既成の枠にはめ込もうとせず、一人ひとりの個性を尊重しながら背中を押す。それが、同校の教育の姿です。
とくに中高一貫教育は高校受験にとらわれることがないために、日頃からプレゼンテーションに取り組んだり、英語をコミュニケーション重視で学んだり、さまざまな体験学習に参加したり、課題研究論文で1年間一つのテーマに向きあったりと、幅広く多面的に学ぶ機会が数多く用意されています。
中学開校から10年。今春、ほとんどの1期生が大学を卒業し、ようやく社会人になったところです。
「若い」学校ではありますが、卒業生たちが口をそろえる「千葉明徳で繰り返しやっていたことが、大学入学後にとても役に立っている」という言葉が、同校の教育成果を端的に表しているように思います。