学校特集
江戸川女子中学校・高等学校2020
掲載日:2020年10月13日(火)
今年創立90周年を迎えた伝統校の江戸川女子中学校・高等学校。"江戸女"の愛称で親しまれている同校は、1986年より来たるグローバル社会を見据え、都内で初めて高校英語科を設置した英語教育の先進校です。英語科で培ったノウハウは学校全体に好循環を招き、国内生・帰国生共に選ばれる充実した英語教育を展開しています。その江戸女が、2021年度から『国際コース』をスタート。英語教育をより進化させ、あわせて「一般英語特化型入試」を新設します。これは帰国生のみならず、"英語が好き"という国内生にも門戸を開いた注目のコースとなります。世界を舞台に活躍できる真の国際人の育成を目指す『国際コース』の取り組みについて、英語科主任の熊川美帆子先生に伺いました。
『国際コース』で世界の人々と交流できる力を身につける
都内でも有数の英語教育を実践している江戸川女子中学校・高等学校。およそ10年前からは帰国生の受け入れも開始し、特に英語力の高い生徒にネイティブスピーカー教員による取り出し授業を行い、生徒たちの英語力をさらに伸ばすべく尽力してきました。
長年、高い英語力を持つ生徒を育成している同校ですが、昨今の社会情勢を考えると、英語へのニーズが変化してきたと熊川先生は話します。
「グローバル化が進み、現在はネイティブスピーカーと会話するよりも、英語を母国語としない人同士がコミュニケーションを取る機会が増えていると感じています。現代の英語教育に求められているのは、多様な価値観を尊重しながらも自分の意見を英語で主張できる力を育むことではないでしょうか」
そのため、英語をツールとして使用できるように四技能の向上と、個人のバックグラウンドを理解した上で意志を伝えられる生徒を育てることを目標とした『国際コース』を来年度よりスタートします。
これまで同校が蓄積してきた英語教育のノウハウをブラッシュアップして作られるこのコースでは、6年間を通して以下の4つの力を習得することを目指します。
少数精鋭でレベルに合わせ英語を多角的に学ぶ
初年度は30人程度のクラス編成を目指す『国際コース』。帰国生など英検2級相当の力を持つ生徒で構成する「アドバンストクラス」と英検3級相当の力を持つ生徒を対象とした「スタンダードクラス」に分け、少人数制を敷いて、それぞれの生徒が持っている英語力を一層伸ばす教育を展開します。
『国際コース(アドバンストクラス)』の英語の授業は週6時間実施。ネイティブ教員と日本人教員が担当する「Reading Writing Listening Speaking」、「Global Studies」「Grammar」の授業を展開し、元々得意とする英語をさらに磨き上げていきます。
世界の問題を知り、考える「Global Studies」は、ネイティブ教員による探究授業です。
初年度は『世界がもし100人の村だったら』を基底として、言語や宗教、ジェンダー、貧困などから自分なりのテーマを選び、調べて英語で発表する予定です。
「担当するネイティブの先生方は、幼い頃から自分の意見を発表するスタイルの教育を受けてきています。日本語と英語の表現の違いはもちろん、プレゼン方法、効果的に伝わる資料作りなども彼らから学んでほしいと思っています」
先にも触れたように、これまで多くの帰国生を受け入れてきた経験から、帰国生たちの弱点について熊川先生が教えてくれました。英語を「話す」、「読む」のは感覚的には得意でも、「書く」ことは苦手、つまりきちんとした文法力が身についていない傾向があるのだそう。その弱点をカバーするのが、アドバンストクラスで週2時間行われる「Grammar」の授業です。
「今後、大学での論文やレポート作成、社会に出た後もビジネスメールなど、書くことが自己発信する上で重要です。そのための前段階として文法からしっかりと学び直し、文章で表現できるようにします」
中学校で正確な文法を身につけて自分の考えを書ける土台を作り、高校からはネイティブ教員によるエッセイライティングなどの指導を受け、語彙力を増やします。
この他にも同校では、例えばネイティブ教員が副担任を担当するなど、英語の授業以外の様々なシーンでも深く関わります。
「授業では間違ったことを言ってはいけないという緊張感を持ちやすいので、それを払拭しようと意図しました。英語を日常的に、より自由な表現で話すことを習慣とするためです」
また、英語を使ったイマージョン教育として、美術や音楽の授業も計画されています。
「具体的な教科内容を日本人の先生が教え、ネイティブの先生が補足するチームティーチング方式です。例えば絵画鑑賞時に感想をどのように英語で表すのかなどを伝えることで、教養として国際社会でも役立つような表現力を身につけることができます」
日常生活での表現力や語彙力を豊かにしながら、英検やGTECなどでの成果をきちんと出す学習も並行する、それが同校の英語教育です。
国内外での体験が、広い視野と自立心を育てる
上記のように授業などを通して世界への問題意識や英語での表現力を蓄えつつ、同校の生徒は様々な地へと研修に赴きます。
全員参加で実施される中3の「マレーシア海外研修」、希望者を対象とするプログラムでは、23日間の「オーストラリア短期留学」(高1・高2)、高校では語学研修として「ニュージーランドターム留学」、ニュージーランドやオーストラリアへの「1年留学」、フィリピンやアメリカへの「語学研修」などが用意されています。
最初の海外研修の行き先を非英語圏のマレーシアにした理由は、英語を共通語として意思疎通を図れるという感覚をつかんでもらうことが目的です。1週間の研修中に、語学学校での授業、現地校訪問やホームステイ、観光などを企画しています。
「マレーシアはアジアの中でも英語教育の先進国です。ここを訪れて、英語を使えば世界のどこでもコミュニケーションが取れるのだと自信を持ってもらいたいと思っています。また、この交流を通して、アジアの中における日本の位置づけを知り、その中で自分たちができることは何かを考えてほしいですね」(熊川先生)
この研修の準備のため、通常授業や国内研修で日本を知る機会も豊富に持ちます。
例えば日本文化を知るために、また情操教育の一環として、1年生は茶道、2年生は箏曲、3年生は華道を必修としています。基本的な立ち居振る舞いから、お手前、演奏、花を生ける知識や技術などを学びます。
「日本の伝統的な文化を体験して知ることで、世界へ出た際に日本のことを伝えられますし、ひいては相手国の文化への理解を深めることができるのではないでしょうか」
国内研修や社会科見学なども多数設けられていますが、特に注目すべきは現地集合・現地解散としている点です。
入学直後の5月に実施される「軽井沢校外学習」は、荷造りも生徒自らが行い軽井沢へ。年に2回実施される「社会科見学(自主研修)」では、事前学習をしたあと、班ごとに現地集合→自主研修→現地解散という行程で行われます。
中2の「奈良京都修学旅行」でも班ごとに行動し、新幹線の席を予約して奈良の宿舎に直接集合します。
これらの活動を通して生徒たちは、自分で考え、予測し、実行する、すなわち自立した行動を取るというスキルを身につけていきます。
面倒見の良さが光る、江戸女独自の学習姿勢
このように自立した学習者としての意識を育む一方、あわせて同校の大きな特長として面倒見の良さが挙げられます。
1学年約300名のほとんどが塾に通わずに(通塾率は中1で1割程度、高3で5割程度)、2019年度の卒業生は国公立大が54名、早・慶・上智・東京理科・ICUは76名、明治・青山学院・立教・中央・法政・学習院に171名が合格という実績を出しています。
中学では英語と数学は習熟度別授業とするなど、基礎学力定着のために徹底的にサポート。全教科を通して1コマ65分の授業体制を敷き、その時間内に理解することを目標とします。そして小テストで理解度を測り、補習を実施してフォロー。基礎をしっかり固めた後にその学力を引き上げていくという、綿密な体制を取っています。
「宿題を課したり、テスト後の間違い直しの方法など、折々にノートを点検してノートの取り方も指導しています。英語の場合、間違えた部分の英文と訳を書き、イディオムなどのポイントを書く。数学では、途中式をきちんと記入する。これらをしっかりと徹底することで自分で振り返りができる習慣を身につけ、生徒たちの学ぶ力が自然と養われていきます」
なお、『国際コース』の生徒には、英語1科目のみで実施される「英語特化型入試」で選抜された入学者もいます。そういった生徒は、中学受験対策の学習をしていない場合もあり、国語と数学の学力に不安を覚えるかもしれません。そのためのフォローアップも実施されます。
しかし、同校での学校生活は勉強一辺倒で終わるわけではありません。
文化祭や体育祭はもちろん、中2での「箏曲発表会」、中3の「弦楽発表会」、毎年行われる「ビブリオバトル」、1月の「百人一首大会」、さらに高1の時にはベートーヴェンの第九を教員やお父さんと一緒に歌う「第九発表会」と、独自の行事も多彩です。
これらの行事は『国際コース』と『一般コース』と共同に行われ、学校生活での鮮やかな思い出となっていくのでしょう。
海外大学、理系志望にも対応できる『国際コース』での英語教育
『国際コース』に入学するための入試は6種類設定されています。
①帰国生による英語特化型入試(11月23日)
②一般英語特化型入試(2月2日)
③帰国生による基礎学力入試(11月23日)
④AO入試(2月1日)
⑤一般4科入試(2月1,2,3日)
⑥一般2科入試(2月2日)
①②の特化型入試で合格した受験生は全員『国際コース』へ、③〜⑥の入試で合格した受験生は『国際コース』と『一般コース』のいずれに進むかを選択できます。
もし合格時に『国際コース』の合格条件である英検2〜3級を取得できていなくても、2月下旬に実施予定のリスニングと筆記からなる「チャレンジテスト」での結果により『国際コース』に進むことができます。
また入学後でも、学年が上がるタイミングで英語力の基準を満たす希望者がいた場合には、『一般コース』から『国際コース』への編入も認める予定です。
同校では、中1から自分のキャリアについて考える機会があり、高校からはより具体性をもって進められます。高2次のアメリカ研修時には現地大学と連携を取り、海外の大学生と対話して、生徒たちのロールモデルとする構想も練られています。
「現地の学生たちと触れ合うことで、海外の大学に進学したいという生徒もいます。対して、理系を希望する生徒も出てくるでしょう。理系志望の場合は『国際コース』を離れ普通科の理系に所属しますが、理系でも英語力は必要ですから、英語は取り出し授業を受けることも可能です。生徒一人ひとりのやる気と努力に応えていきたいと思っています」
同校の校訓は「誠実・明朗・喜働」。喜働とは「働くことに喜びを感じる」という意味を込めた、独自の造語です。熊川先生は生徒たちの未来を次のように語ります。
「高校卒業はあくまでも通過点です。先にお話しした4つの力を携えて、自分のキャリアや進路につなげていけるか、自分が喜んで働ける道はどこかを常に考え、他者との協働、切磋琢磨を経て、国内外で活躍できる人物になってほしいですね」
生徒自身の未来に種を蒔き、大きな実を結ぶまでの道しるべとなる『国際コース』での充実した6年間。
江戸川女子中学校に新たに設置される『国際コース』にどうぞご期待ください。