学校特集
昭和学院中学校・高等学校2021
人材を育てる革新的な英語教育
共に学んでより良い未来を目指す-
掲載日:2021年8月16日(日)
創立81年目を迎えた昭和学院(千葉県市川市)は「明敏謙譲」を校訓に掲げ、知・徳・体の全人教育を行う中で、2016年度からさまざまな改革を断行してきました。ユニークな入試制度の導入や全員海外留学実施、個性を伸ばすコース制創設などの取り組みで、受験者は増加の一途をたどっています。今回は同校が力を入れている英語教育についてネイティブの2人の先生に話を伺い、中1・中2の授業の様子もご紹介します。
週3回のネイティブの授業で4技能を磨く
1940年に創立された昭和学院は、2015年に就任した校長・大井俊博先生の下で順次、学校改革を進めてきました。入試改革や新コース制始動により多彩な力を秘めた生徒や帰国生が続々と入学し、校内には活気とパワーがみなぎっています。
2020年度からは新しいコース制が始まり、中学はIA(International Academyインターナショナルアカデミー)コース、Ad(Advanced Academyアドバンストアカデミー)コース、GA(General Academyジェネラルアカデミー)コースの3コース制となりました。IAは英語力や国際感覚を磨くコース、Adは難関国立大や難関私立大への進学に対応するコース、GAは興味関心に合わせた授業を選択できる柔軟なカリキュラムで個性を伸ばします。
同校にはネイティブ教員が6人在籍していますが、今回は中1のIAコース担任を務めるクリストファー・メイ先生(以下、クリス先生)と、中1~高2までの5学年を教えるクリスティン・クロナブッシュ先生(以下、クリスティン先生)に話を聞きました。
同校ではIAに限らずすべてのコースで英語教育に力を注ぎ、中3の2月に行う全員参加のオーストラリア研修(2020年度は中止)に向けて英語力教化に努めています。たとえば中1の英語は週6時限で、内訳は
リーディング(フォニックス) 1
スピーキング 1
探究 1(IAコースは2)
<日本人教員>
英文法 3
となっていて、ネイティブ教員が英語の授業の約半分を担当する体制です(フォニックスは正しい発音を学び、探究は英語で調べたり発表したりする授業)。
中1の1学期から何度もプレゼンを実施
英語への苦手意識をなくすために、クリス先生は「YouTubeなどで生徒の好きなものについて、情報を仕入れています」と話します。たとえば生徒に人気のK-POPグループの名前や人名、曲名などを調べて、プリントや会話の中に組み入れているのです。「お気に入りのグループの名前などが出てくると英語に対するハードルが下がるし、授業も大いに盛り上がるんですよ(笑)」。
英語に興味を持ってもらう工夫をしたうえで、4技能を伸ばすためにさまざまな取り組みを行っています。中1では入学から6月までのわずか2か月の間にショートプレゼンテーションを2回行っており、この日が3回目。1回目のテーマは"日本のトップ10"で山や川、食べ物などについて発表し、2回目は"my favorite Character"で、お気に入りのキャラクターを紹介しました。
そして6月末のこの日のショートプレゼンのテーマは"発明"です。「発明品について調べて、写真などのスライドを投影しながら紹介します。前々回の授業では5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、何のために作ったか)をおさえながら発明品の例・バンドエイドについて説明しました。その後は各自で自由に発明品を調べて発表の準備を進めます。今回は皆に人気のあるスマホやパソコンはNGにし、他の生徒と重ならないように調整しました」。
生徒はiPadを使い慣れているので、先生が「調べてみて」と話すとすぐに調べ始めますが、先生は「発明というのは機械や物だけではなく、レストランやサービスなどいろいろな種類がある。じっくり、深く考えて探してみて」とアドバイスしました。調べる段階では日本語OKで、自分のメモ書きを元に必要に応じて先生に聞きながら発表用の英文に直していきます。
5W1Hは既習事項ですが、発表の冒頭は「××× was invented(×××が発明された)」という受動態(be動詞+過去分詞)から始めます。これは中2~中3で習う内容ですが、今回の発表用に受動態の型だけ先に教えました。「必要に応じて未習事項も体験してもらうことで、知識に幅を持たせてます。今は詳しい内容や使い方は分からなくても、中2の英文法で受動態を習った時に"あ、これ知ってる"と親近感がわき、記憶が定着しやすくなるはずです」(クリス先生)
この日の授業では、最初に各自で発表の準備や練習をする時間をとりました。クリス先生とTTの日本人の先生が教室を回り、「inventionのイントネーションを教えて」といった質問に答えます。「読み方が分からない」という生徒には「カタカナでフリガナをつける...No problem!」と答えて生徒の緊張をほぐしていました。また、「1984年の読み方は?」といった生徒の質問には板書しながら答え、ほかの生徒にも「2004はどう読む?」「1903の読み方は...」といろいろな数字の読み方について説明します。
発表は1人あたり30秒~1分ほど。最初に「Hello」と挨拶すると、聴いている生徒たちも「Hello 」と元気に返事をして、いよいよ発表が始まります。生徒たちがとりあげた発明品は、電球、ノリ、メガネ、くし、消しゴム、車、バスケットボールなどバラエティに富んでいました。発表を終えて、クラスメートの大きな拍手に見送られて席に戻る生徒は、安堵と同時に誇らしげな表情を浮かべます。自分で調べて資料を作り、皆の前で英語での発表をやり遂げる経験は、生徒たちの中で大きな自信になり、次のステップへとつながっていくのです。
中2では話し合いも資料作成もパワーアップ
中1から高2まで5学年を教えているクリスティン先生は、「授業の冒頭はゲームやいろいろなアクティビティをとり入れて、軽いノリでたくさん英語を話して自信をつけてもらうことを心がけています」と笑顔で話します。中1の最初はネイティブ教員と話すのを恥ずかしがったり緊張する生徒もいるので、友だち同士で話す「スピーキングゲーム」も積極的にとり入れています。たとえば「What is your favorite color?(何色が好きですか?)」など自分で質問を作り、教室の中を歩き回ってクラスメートに質問したり答えたりして、なるべくたくさんの答えを集めるというもの。立って体を動かしながら話せば緊張もほぐれるし、ゲーム感覚でできるので笑顔も見られます。
この日のクリスティン先生の中2の英語は、グループ発表に向けての準備でした。テーマは「日本のエチケットやマナー」です。前回の授業で「やっていいこと、いけないこと」という英文を読み、「フランスでは歩きながらコーヒーを飲むのはマナー違反」といった海外のエチケットについて学びました。それを受けてこの日の授業では、2人または3人で日本ならではのマナーについて調べて発表の準備を開始。「麺類の食べ方なんてどうかな?」「家に入るとき靴を脱ぐのも日本人だけだよね」など、いろいろな意見が飛び交います。
生徒たちは「毎日お風呂に入る習慣」「土足で家に入らない」「ノックの回数」「いただきます/ごちそうさま」といった意見を出し、話し合いながらテキパキと発表内容をまとめていきます。誰かが「麺(ヌードル)のスペルは?」と言うとすぐに隣の生徒がiPadで調べて「noodle。あ、でもsをつけてnoodlesにする必要があるんじゃない?」と答えたり、「どんなイラストをつけようか?シャワーでいい?」「Take a bathだからバスタブのイラストがいいよ」など、積極的に意見を交わしながら資料作成にとりかかっていました。
クリスティン先生は「しっかり意見を出し合い、英訳を調べたり資料を作ったりと役割分担も上手で、手際よくスムーズに進めていますね。でも発表の機会が多いので、中3になると資料も発表もさらにレベルがあがりますよ」と話します。こうした学びを積み重ねた生徒たちが高校生になったとき、どれほど成長しているのか、期待が膨らみます。
多様な生徒が混じり国際的感覚を養うIAコース
海外で活躍する人材を育てるIAコースでは帰国生を積極的に受け入れています。現在の中1のIAコースには帰国生が8名在籍しており、ネイティブ教員と日本人教員のチームティーチングでHRも段階的に英語で行うのが特徴です。
ただし、同校では英語をあまり学んだことのない生徒でも、英語に対する意欲が高ければIAコースに入ることができます。「海外在住経験があり英語が話せる生徒と、英語はこれからだけどやる気のある生徒――そのどちらも同じクラスで育てて行きたい」とクリス先生は力をこめます。IAコースでは英語だけでなく国語の授業も習熟度別で行っています。というのも、帰国生の中には英語が得意でも日本語が苦手な生徒もいるからです。IA コースでは総合的な語学力を高めるカリキュラムを組んでいるのです。
個別最適化でリーディングやライティングを進めているので、たとえば授業の中で取り組む多読もマイペースで進めます。最初は150語くらいの洋書から始めますが、上位層では1千語を読みこなす生徒もいます。読み終わったらiPadを使って質問に答え、正答率が高ければポイントをゲット! 自分なりの目標を決めたり友だちと競い合うことでレベルアップを目指します。
探究の授業は中1は他コースより1時限多く、中2では2時限多くなります。たとえば中2の探究ではマーケティングについて調べ、顧客調査後に具体的な商品を考え、開発して投資家(先生)にプレゼンするという授業を行いました。「説得力があるか」「必要事項を盛り込めているか」などで採点しますが、現品を持参したり効果音を使ったりCMを作ったりと工夫をこらした発表に、先生がたも驚いたと言います。
英語が得意な生徒とこれから学んでいく生徒を同じクラスにすることには、大きなメリットがあります。「英語ができない生徒にとっては、入学時点ですでに目の前に目標がある。ネイティブ教員とお喋りしている姿を見て"かっこいい""あんな風に話したい"と思うことでモチベーションが高まり、学ぶ意欲につながります。逆に英語が得意な生徒にとっては"英語以外のことは皆のほうが得意だ""いろんな個性や能力があってすごい"と感じる場面も多く、お互いに助け合ったり教え合ったりすることでクラスの雰囲気がよくなっています」(クリス先生)。
皆が同じスタートラインでなく、「違う」ところからスタートすることは、多様性を認め合い、受け入れることは国際的感覚にもつながっています。大学受験は大事な目標ですが、目先のことにとらわれるのでなく「海外大学進学を目指すときも、欧米圏だけでなく他の地域にも目を向けてほしい。英語力をつけてグローバル社会で活躍してほしい」と先生たちは考えています。
その意識が生徒たちの中で育まれていると感じる出来事がありました。今年6月に開催された全校生徒対象のSG(昭和学院)アカデミー「日本から見た世界 世界から見た日本」で 、APU(立命館アジア太平洋大学 )の東京オフィス室長・伊藤健志氏の講話を聞いた時のことです。伊藤氏が世界中を渡り歩いた経験を元に「Agree to disagree(違いを認めること)が大切。自分と相手は相容れない存在だと認め合ったうえで、よりよい世界を作っていくのが次世代を担う君たちの役割」と話したとき、多くの生徒から共感の声が上がりました。終了後は「多数意見を採用するのでなく、それぞれの意見を聞いて結論を出すようにしたい」「きまりをただ守るのでなく、目的を思い出したい」「他国人との会話の中でさまざまなずれについて考え、批判的な考え方と肯定的な考え方の2つを持ち合わせて会話の中で生かしていきたい」といった感想が寄せられ、先生がたは自分たちの思いがしっかり伝わっていることに大きな手ごたえを感じています。
多様な人材が共に学ぶ中で、英語力だけでなく国際感覚や支え合って生きていく術を自然と育んでいる同校。来るべきグローバル社会に向けてどんな人材が育っていくのか、躍進を続ける同校にはますます大きな期待がかかっています。