学校特集
東京成徳大学中学・高等学校2021
掲載日:2021年6月5日(土)
東京成徳大学中学・高等学校の創立は1926年。4年後の100周年に向け、「東京成徳ビジョン100」のもと、様々な学校改革を推進しています。世界470校のうち国内は10校のみという「Apple Distinguished School」認定校としての革新的なICT教育、多彩な留学制度などの取り組みを通じ、生徒が自分を知り、数ある選択肢の中から未来の可能性をつかみ取っていく力を育成します。同校の教育への姿勢を、国際交流部長を担当する英語科の茂原輝光先生に伺いました。
6年間の学校生活の先に広がる未来を見据えて
「未来を見据え、世界を知る、自分を拓く」を掲げる東京成徳大学中学校・高等学校。
生徒の力を伸ばす様々な教育実践を叶えるべく、大胆なアップデートを行ってきた同校ですが、2022年度にさらなる学校改革を推進します。多様かつ正解のない世界の中で自分の可能性を広げるスキルを身につける新カリキュラムを展開。完全中高一貫校として、学習面はもちろん、創造性とグローバル力育成においても生徒たちの成長を促しています。改革の大きな柱はこの2点です。
1.英会話力と共に自立心・積極性を育成する「新留学プラン」
2.グローバルな発想や価値観を伸長する「自分を拓く学習」
生徒自身が学習する理由を見つけ、自主的に学ぶ姿勢を養成します。「学力」「心身」「人間性」「創造性」「グローバルマインド」「社会の変化に対応する力」を培い、自ら未来を切り拓く人物になることを目指します。
「中高卒業後の進路として大学進学はもちろんですが、私たちは生徒たちの10年、20年先の未来を共に見据えたいのです」(茂原先生)
「新留学プラン」と「自分を拓く学習」により、生徒たちにどんな変化が訪れるのかを見ていきましょう。
広い視野と深い理解力を涵養する新留学プラン
単なる観光にはさせない、学習面でも行動面でも充実した経験ができると定評のある東京成徳の留学制度。2022年度からは世界を知る第一歩として、よりアップデートした新留学プランが始まります。中2全員で2週間の短期留学を行い、中3の3学期はNZ学期留学と国内グローバル型の選択制となります。
同校では、18年前より中3でニュージーランド(以下NZ)への学期留学を実施。現地の学生と同様の授業を同校の生徒たちが抵抗なく受けられるよう、事前準備を年々パワーアップしてきました。
ネイティブ教員によるオールイングリッシュの授業、毎学期各1回行われる英語漬けのイングリッシュキャンプ、全教科でのグループディスカッションやプレゼンテーション、外部講師による「Global Competence Program」などによって、生徒たちは英語をツールとして自分の考えを発表し、相手と議論、協働できるスキルを身につけます。
生徒たちはその経験を携えてNZへ赴き、約3ヵ月生活します。その結果、英語力の向上だけではなく、現地の学生や家庭との交流により積極性や自主性も育つと好評を博しています。
それをさらに密度の濃いものにするのが、中2、中3の二段階に分けた新留学プランです。
茂原先生はこのプランについて「中2で一度海外生活を体験し、『もっと海外に行ってみたい』『外国で過ごしたことで、日本の良さに気づいた』『部活動に集中したい』などいろいろな声が出るでしょう。そのように自分の尺度を広げた上で、中3の3学期を海外で過ごすか、国内で学ぶかを選択します。義務教育とは様々な物事を知り、それを俎上に並べ自分が続けたいものをじっくり吟味すべき期間です。本校では可能な限り関心の幅を広げられるよう準備し、生徒たち自身の決断を尊重したいと思っています」と話します。
海外研修の各概要は以下の通り。
<中2時の短期語学留学>
・全員参加
・3学期に2週間、セブ島で合宿生活を行う
・現地の語学学校で、ほぼマンツーマンの英会話レッスンを受講
・PBL学習も実施
平日は英会話を中心に学び、毎日1コマずつPBL(問題解決型)学習も履修。土日には現地のスラム訪問や電気の通っていない離島で生活する人との対話など、実地踏査型のアクティビティも予定されています。日本と世界との違い、社会制度や教育環境の差異などを実感し、各々の思考を深める2週間です。
「日本と外国は違うと頭ではわかっているつもりでも、例えば歯磨きをする時に水道の水を使うことさえNGと言われたら、改めて驚くはず。普段の環境のありがたみを肌で感じてほしいのです。親元を2週間離れ英語漬けの生活をし、生徒がホームシックになることも成長の一助となります」と茂原先生は言います。
生徒たちはこの2週間で世界の多様性を垣間見て、大きなカルチャーショックを受けるでしょう。かつ英会話力に自信を持ったり、足りない部分を認識したりすることで、帰国後の英語の授業にも意欲的に打ち込めるはずです。
そして中3の1学期中にNZ学期留学または国内グローバル型プログラムのいずれかを選択した上で学びを進めます。
<中3NZ学期留学>
・国内グローバル型プログラム(後述)との選択制
・3学期に3ヵ月間、1家庭に1人のホームステイ
・現地校1校につき東京成徳の生徒は3人までの少人数制
・現地校の通常クラスで実際の授業に参加し、評価を受ける
参加する生徒たちは、英会話力やプレゼン力を高め、現地事情なども学習した上で参加。学校では、現地在住の同年代の学生と英語で交流することが必須です。留学中の3ヵ月間は困ったことがあれば現地在住の日本人アドバイザーに相談して解決するという、自立した留学スタイルを貫きます。日本とNZの文化の違い、進路に対する考え方に衝撃を受けて帰国する生徒も少なくありません。
過去にNZ学期留学に参加した生徒は、「自分から発信しないと何もかもが進まなかった」と語っています。こうして自分で考え自ら動くという姿勢が身につくのです。
茂原先生は、このNZでの体験をタフな留学だからこそ得るものが多いと説きます。
「3ヵ月間、海外で、現地の評価基準の中で授業を受け、現地家庭の習慣に合わせて生活します。『決して人のせいにしない』を合言葉に、留学の成果は自分次第、何事も自分の責任であるという覚悟を持って出発してもらいます。一見厳しく感じられますが、生徒たちにはこれを乗り越える力があります。帰国後は家庭生活も学習面においても、自主的に精力的に活動するようになります。英会話力の向上以上の大きなものを受け取ってくるのです」
このNZ学期留学を契機に、高1時に1年間のオーストラリア留学に参加したり(私学財団による助成金有り)や、非英語圏に留学したり、卒業後は海外大への進学や海外での就業を志す生徒も増えています。
一方、国内での学習を選んだ生徒たちにも、グローバルマインドを高めるプログラムがしっかりと用意されています。
<中3国内グローバル型プログラム>
・NZ学期留学との選択制
・国内での宿泊研修
・英語と探究的学習を複合した「Global Competence Program」の強化版
・少人数制で、STEAM教育(科学、技術、工学、芸術、数学などの教科を横断し、課題発見、問題解決、新しい価値の創造を実現していくための教育手法)を意識した課題探求の実施
生徒自身で考え、意見を創り、英語でのアウトプットに重点を置きます。ヨーロッパ、アジア、オセアニアなど世界中の人々と共に学び、よりグローバルな視点を習得できるカリキュラムとなる予定です。
「NZで現地固有の文化・生活に深く浸かってきた生徒と、国内プログラムにより世界の様々な文化圏の価値観に触れてきた生徒のお互いが『おもしろいことをしているな』と刺激を受け合い、そして互いが得たものを持ち寄って相乗効果を生むことを期待しています」(茂原先生)
中3は多感な時期である一方、中高一貫校においては中だるみしやすい時期でもあります。その時期に、生徒たちのニーズに応えつつ知的好奇心を大いに刺激するプログラムを組み、さらなる成長を促します。どちらのプログラムを選んだとしても、広い視野と今までとは異なる着眼点の獲得が狙いです。
主体的に学び、考え、行動し、自分を拓く取り組み
基礎学力や語学力を身につけるほか、創意工夫する力を培う「Science Project」や、自分の生き方を考える「自分を深める学習」、英語×探究的学習の「Global Competence Program」「Diversity Seminar」など、興味・関心・探究心を伸ばすアクティブラーニング型の取り組みも盛んです。
中1から始まる思考する時間を重視した「自分を深める学習」や高校から開始する自分の視点を多角的に捉える「探究型学習」は、自分を拓く学習の軸となっています。「自分を深める学習」では、日々の学校生活や授業、セブやNZ留学、国内グローバル型プログラムでの気づきを柔軟に受け入れる感性を培います。その後、広い観点でものを見られるようになってきた生徒たちの自主性や創造性を「探究型学習」によってさらに伸ばすのです。
そのため、2020年度から新たに、高校1年生に実地踏査型の探究型授業「Diversity Seminar」を週2時間行っています。
初年度である2020年度には、下記の6つのゼミを開講しました。
1 人と自然の関わり(尾瀬や沖縄などで実地研修)
2 アプリ開発(Apple professional learningによる)
3 沖縄から学ぶ基礎教養
4 SDGsと社会貢献
5 芸術文化から世界を見る
6 あなたが住む街を舞台に小説を書こう
教員は担当教科にとらわれず、自身の得意な分野で参画し、生徒たちに各々のゼミのプレゼンテーションを2コマ約100分行います。生徒は6つのゼミをすべて1度体験した上で自分が参加するゼミを選択。生徒の興味を優先するため、必ず第一希望のゼミに入れるように配慮しました。
この授業での成果物は必ず外に発信し、外部から評価を受けるという指針を取っています。
例えば6の小説講座では、作品をまとめて同人誌として頒布。4のSDGsと社会貢献においては、日本数学検定協会らが主催した、「数学の風景、色や形を自由に表現する」というコンクールに出品、優秀賞を多数獲得しました。
その他、LGBTに共感する者=アライについて理解を促すセミナーや商品開発を行い、高校生が社会貢献プロジェクト作成・実行していくためのコンテスト「第8回SAGE JAPAN CUP」で、3位という輝かしい成績を収めています。
「『表立って声は出さないけれどLGBTに理解がある』、すなわち"アライ"であることを表明するためのシールを作りたいので寄付を募りたいと、生徒たちが職員室でプレゼンテーションを行いました。その後、継続的な活動になるように、下級生たちにも広めるといったリーダーシップが自然発生的に出てきています」と茂原先生。
自らの頭で具体的に考え主体的に行動する上級生の姿に、下級生は憧れを抱き倣います。そして上級生は自分たちの知見を下級生に惜しみなく伝えます。このように生徒たちが士気を高め合う文化がある、これが東京成徳の校風となっているのです。
知的好奇心を刺激し、学びの自走につなげる
同校の生徒たちがこのような華々しい成果を上げられる理由は、英語やICT機器をツールとして巧みに利用し、自分の考えを伝えること、表すことに長けているからです。
「Apple Distinguished School」認定校としてiPadを一人1台所有し、授業に活用している同校。カリキュラムにICTを全面的に導入したのは2016年度、当時のICT担当は英語科の教員ですが、授業内容を大きく刷新。英語によるスライドの作成、プレゼン発表をメインにして、スライドの色使いや余白の使い方まで見せ方を徹底指導し、生徒たちの表現力を高めることに成功しました。
2020年度の高1国語の授業では、「文学作品を探究する」というテーマでレポートを書き、動画内で語るという課題が出されました。その際には事前にルーブリック評価の採点基準を明確にしたことで、制作物に客観的な視点を持たせるようにしました。創意工夫に満ちた作品が居並び、そのできばえに担当教諭は目をみはったそうです。
「生徒たちの柔軟性と伸びる力は目覚ましいものがあります。例えば生徒に最新のICTについて『こんなことができるらしい』と情報を提示すると、すぐに自分たちで調べ、実現させてしまう。学びが自走化してきているのです。私たち教師も努力し続けますが、軽々と超えていってほしいと期待しています」(茂原先生)
東京成徳の大きな特色である英語コミュニケーション能力×ICT教育。これが組み合わされば、どのような場面においても他者と協働できます。生徒たちの未来のための強力な武器となるのです。
6年間の学校生活を礎に、理想の未来へ
様々な成果を生み続ける東京成徳の生徒たちですが、ごく一般的な小学校で学んだ者ばかり。入学当初から特別な資質や志があったわけではありません。
2022年度入試の科目は4科もしくは2科で、基礎的な学力があれば十分と学校側は考えています。それは、英会話力やプレゼン能力、思考力などは、同校での授業を受ければ養えるという自信があるから。
また、入試の得点による奨学金特待生の選抜は2年ごとの更新制。在学中の伸長も評価し、より多くの生徒にチャンスを与えたいという思いがあるからです。
「我々が意識していることは、とにかく多彩な選択肢を用意することです。その中から自分の学びたいものを見出し、自走していってほしい。それを後押しするツールとして、本校でのカリキュラムを利用してほしいのです」と茂原先生は話します。
自分が学ぶべきことを認識した結果、在学中に偏差値が劇的に向上した生徒が多数います。また、卒業生の中には、海外でプロチアリーダーとして活躍する者、大学入学後に自分の道を見つけ、卒業後は会計士として躍進する者もいます。
「生徒たちにとって、中学・高校の6年間は人生の通過点に過ぎません。その通過点に『自分にはこれだ』という可能性を信じ、目標を定め、主体性を持って学び続け、未来を切り拓いていく。我々教師にできることは、生徒にこの姿勢をつけてもらうことです。本校での『世界を知る、未来を見据える、自分を拓く』6年間が、彼らの将来を支える礎になってほしいと願っています」(茂原先生)
東京成徳大学中学・高等学校は、学校説明会の他、オープンスクールや校舎見学会&体験授業など、同校の雰囲気を体感できる催しを精力的に行っています。個別見学も可能なので、同校の魅力をご自身の目でご確認ください。