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学校特集

和洋九段女子中学校高等学校2020

全教科型のPBL学習で困難にも立ち向える自立した女性を育む
ICTの活用&SDGs等への深い学びで、世界の諸問題から身近なことまで柔軟な発想で解決する

掲載日:2020年9月10日(木)

2022年、創立125周年を迎える和洋九段女子。中学はPBL(Problem Based Leaning・双方向対話)型学習の徹底とプレゼンテーション能力の育成、日本文化教育を重視する「本科クラス」と、オールイングリッシュの英語授業を行い、海外大学進学を視野に入れる「グローバルクラス」に分かれています。
ICT教育や熱心に取り組んでいるSDGs、そしてポストコロナの教育などについて、主幹教諭の本多ゆき先生にお話を伺いました。

オンラインで一人ひとりと繋がる

和洋九段_主幹教諭の本多ゆき先生
主幹教諭の本多ゆき先生

未だ収束への糸口が見えない新型コロナウイルス感染症。和洋九段女子では、4・5月の休校期間中と6月以降の密を避けた分散登校時も含めて、双方向型のオンライン授業で生徒たちの学びを支えました。

「まず大切にしたのは、生徒たちの学習をきちんと担保することです。本校では2017年度から進めている学校教育改革により、全員がタブレット端末を持ち、ICTを日常的に使いこなしています。幸い授業はオンラインでも差し支えなく、課題提出なども含めてスムーズに行うことができました」と本多先生は話します。

新単元の学習はもちろん、ネイティブ教員による英会話の授業や検定試験対策なども行い、7月には予定通り期末試験も実施。遠隔授業で1学期の学習範囲には十分対応できていたものの、足りないと判断された分は夏休みの講習や補習で補いました。

和洋九段_5月に行われた中1の地理では、世界時計を使って考えたことをまとめ、ディスカッションし、振り返りまで行いました。
5月に行われた中1の地理では、世界時計を使って考えたことをまとめ、ディスカッションし、振り返りまで行いました。

「学校でみんながいると恥ずかしくて質問できないという生徒も、オンラインがよく作用して、しっかりと質問できていました。他の教員からも、通常時の休み時間のように残って質問を積極的にしていたと聞いています。生徒たちなりに制約がある中で、できる限りのことをしようと頑張っているのだと心強く感じました。
オンライン授業は思っていたよりもうまくいったので、今後まだまだいろいろなことができそうですし、もっとできることがあるのではないかと感じました」と明るい笑顔で話してくれた本多先生。

社会科の教諭でもある本多先生は今年、中1の授業を持っていますが、例えば「授業の中で先生はこうお話しされましたが、こちらではどうですか?」と積極的な質問をした生徒がいたそう。どんな状況下でもたくましく学ぶ生徒たちの姿が見られました。

人と人のつながりの中で成長を実感する

和洋九段_例年は入学後すぐに学校の周辺を散策しながら、友だちのこと、学校のことなどの理解を進めます。
例年は入学後すぐに学校の周辺を散策しながら、友だちのこと、学校のことなどの理解を進めます。

この時期、先生方が特に心を砕いたのが「生徒を一人にさせない」ということです。「コネクテッドスクール(外とつながる学校)」を掲げ、学校生活の中で様々な人と関わることを大切にしている同校。学内外の人々との交流を通じて、普段と異なる環境や要素から多くの刺激を受けて生み出される、創造的な学びを重視しています。

「休校期間中、リアルにつながることは無理でも、生徒や保護者とできるだけ関わろうと心がけました。生徒たちのメンタル面のサポートは、オンラインのホームルームで自己紹介やクラスレクリエーション、クラス目標を決めるなど、活発に行いました」(本多先生)

和洋九段_今年は代々木第一体育館で高3の『扇の舞』のみの開催に。準備期間の短さを感じさせない息の合った舞が見られました。
今年は代々木第一体育館で高3の『扇の舞』のみの開催に。準備期間の短さを感じさせない息の合った舞が見られました。

さらに例年6月に実施される体育祭の実施について、オンライン上で熱く議論されました。
「体育祭で大トリを飾る高3の『扇の舞』は和洋九段生にとって集大成です。私たち教員が開催の是非を決めるのは簡単ですが、高3生が全員で話し、様々な意見を出し合いました。受験に差し支える、新型コロナに感染したらなど不安視する声も上がりましたが、それでもどんな形であっても、最終的にみんなでやりたいと生徒たち自身が話し合いを重ねて決めたので、私たちは見守り、サポート役に徹しました」と本多先生。

三密を避けることを念頭に、振り付けや構成などを生徒たちが考えて開催された「扇の舞」。本多先生が「私たち教員も斬新な『扇の舞』が観られると、期待しました」と語るように、高3生たちが素晴らしい演技を披露しました。
なお、この「扇の舞」の動画は学校説明会にて見ることができます。説明会はオンラインでも開催しているので、美しい舞をぜひご覧ください。

PBL型の学びで自由な発想を育む

和洋九段_6年間のPBL型学習を通じて、答えなき問への自分なりの最適解をみんなと一緒に探っていきます。
6年間のPBL型学習を通じて、答えなき問への自分なりの最適解をみんなと一緒に探っていきます。

このように柔軟に話し合える素地を涵養しているのがPBL学習です。同校では、すべての教科でグループワークを中心に、それぞれの意見を出し合い、多様性を認め合う双方向対話型の教育実践を行っています。

「本校の校名『和』と『洋』は、"なご(和)やかに、ひろ(洋)らけき"と読めますが、学校の雰囲気として、人と良いつながりを持ち、広い心で向き合っていくことを大切にしています」(本多先生)

休校期間中もZOOMを使用し、様々なクラスでグループでの対話が行われていました。本多先生は「中1でも意見を出したり、しっかりと話し合いができていたことに少し驚きましたが、本校の教育を理解し、発信しようと頑張っている生徒たちを喜ばしく感じました」と話します。

同校ではSDGs(持続可能な開発目標)などを通じて世界のことを学び、様々な境遇に置かれている人々に思いを馳せます。その上で自分は将来何ができるのかを PBL型授業などで考えます。

SDGsへの取り組みは、総合学習だけでなく普段の授業や行事の中に息づいています。

和洋九段_GEP後に実施されたプレゼンテーションの様子。社会で奮闘する大人との出会いは生徒たちにとって大きな刺激となります。
GEP後に実施されたプレゼンテーションの様子。社会で奮闘する大人との出会いは生徒たちにとって大きな刺激となります。

中1ではまずSDGsの17項目のうち、自分の関心があるテーマを一つ取り上げて知るところから始まります。その後自分なりの問題意識を持って調べ、SDGsに貢献している企業や団体を訪問して、学習する機会を得るのが中2で実施する「企業・大使館訪問(Global Experience Project)」です。

「SDGs以前は、経済面や効率を優先するような社会だったと思いますが、生徒たちが一緒にSDGsの世界を考えるのは、それだけではない調和や人間としての優しさ、自然などへ価値を見出し、実践されている方々。それぞれの立ち位置なども鑑みながら、多様な考え方に触れ、新しい価値観の形成ができていると感じます。生徒たちにとって、こうした活動に積極的に取り組む企業や団体の方々と関われることは、憧れを抱く対象となり、"私も人の役に立てる人間になりたい"と思うロールモデルとなっています」(本多先生)

和洋九段_シンガポール修学旅行の一コマ。その他、希望者参加型のオーストラリア語学研修なども実施されます。
シンガポール修学旅行の一コマ。その他、希望者参加型のオーストラリア語学研修なども実施されます。

こうした体験をさらに世界へと広がりつなげていくのが、中3の「シンガポール修学旅行」です。
シンガポール国立大学の学生や現地の高校生などとの交流を図り、SDGsへの意見交換を行ったり、同年代ならではの悩みを語り合ったりと、例年生徒たちが飛躍的に成長する機会となっています。

世界的な共通認識になりつつあるSDGsへの取り組み。そして自由な発想で相互理解を深めるPBL学習。それらの理念は、和洋九段女子が伝統的に大切にしてきた考え方と共通しています。

「4年目を迎えた教育改革も少しずつ形になり始めてきたように感じています。一人ひとりの人生において何が大切なのか、自分の進むべき仕事はなど進路を考えるきっかけにもなっています。単に大学へ進学するということではない、生きる意味や価値ということを生徒たちが確かに考え始めているのだと思います」(本多先生)

アントレプレナーシップを育む

和洋九段_「SDGsすごろく」の活動は大きな反響を呼び、ラジオなどマスコミの取材も受けました。
「SDGsすごろく」の活動は大きな反響を呼び、ラジオなどマスコミの取材も受けました。

現高1生たちがSDGsの普及をめざして自発的に創作したのが「SDGsすごろく」です。楽しみながらSDGsが学べると好評のすごろくは、生徒が放課後に集まれる時間を自分たちで調整しながら取り組みました。
このすごろくは、945件のエントリーがあった「SDGs探究AWARDS2019」の中高生部門にて、優秀賞に輝くという快挙を達成。実際に中1の講習や学校説明会の体験授業などでも使用されています。

「外部へのアピール方法や協力の得方なども事業として捉えるべく、起業家教育に取り組んでみようと徐々に進めています」と本多先生が語る通り、資金なども含めた様々なアプローチから社会貢献に取り組んでいます。
現在、彼女たちは「このすごろくを各学校に無料で頒布したい」と考え、材料費などをクラウドファンディングで集められるかを検討しています。

和洋九段_高校にはサイエンスコースを擁する同校。理系教育もしっかりと行われています。
高校にはサイエンスコースを擁する同校。理系教育もしっかりと行われています。

高1で実施する「農業体験」では農村地域の方々と触れ合いながら、現地が抱える問題点を探り出し、解決に向けた方策を考えていきます。
「問題を解決する手段の一つとして、やはり先立つものや新しい技術が必要になることも多々あります。その際に起業などの仕組みを作るということを考えてもいいのではないでしょうか」(本多先生)

現在高2の生徒たちが高1の時に訪ねた限界集落では、名産品のりんごやじゃがいもでジャムや石鹸などの商品開発を行いました。
「道の駅での販売を目指して取り組みましたが、本当に作って売るとなると、綿密な企画でなければなかなか通りません。
そのため、先々を考えながらきちんと数字を出したり、採算についても勉強することで、皆さんにアドバイスや協力をいただきながら活動を続けていける仕組みづくりを行っています」と本多先生。

こうした活動を進める上で欠かせないのがプレゼン力です。こうしたプレゼンは、毎日の授業の中でも必ず行い、例えばポスターを作ってアピールする、惹きつけるトーク力を磨くなど、生徒たちは日々切磋琢磨しながら相乗効果を生み出しています。

和洋九段_生徒たちの発信力は年々上達しています。和洋九段女子から起業家が誕生する日も近そうです。
生徒たちの発信力は年々上達しています。和洋九段女子から起業家が誕生する日も近そうです。

なお、本多先生は中1生の夏休みの宿題に「世界の国調べ」を課しました。世界の国を一つ取り上げて、困っていることや問題になっていることを調べて探り、2学期にみんなの前で発表するというものです。
各自の考え方や発表方法の工夫を共有するだけでなく、その問題はSDGsのどのナンバーと関係があるのかをあわせて深く学ぶ予定です。

さらにグループに分かれてその国を助けるための具体策を話し合い、それぞれの班のプレゼンに注目したり、様々な角度から取り組む中で自由な発想も生み出していけるプログラムを展開する予定です。
「解決方法を見出し、こちらでもクラウドファンディングを行おうと考えています。そのための様々な調べ学習を通じて、いろいろな企業での取り組みを知ることができるでしょう。この企業への憧れは中2のGEPへとつながりますし、将来こういう企業で働いてみたいという気持ちも湧いてくるのではないでしょうか」(本多先生)

和洋九段女子では、このように学びと実社会を積極的に結び付けて、生徒たちの視野を広げているのです。

時代を超えて育まれる、自立した女性としての生き方

和洋九段_伝統として大切に育まれてきた教育に加え、21世紀型教育を取り入れ、同校ならではの学びに発展させています。
伝統として大切に育まれてきた教育に加え、21世紀型教育を取り入れ、同校ならではの学びに発展させています。

先述の通り、2022年に創立125周年を迎える和洋九段女子。伝統校という印象や保守的な校風をイメージされる方もいるかもしれません。

本多先生は「本校が設立された時と、現代のこの状況はとてもよく似ています。江戸から明治という、社会が劇的に変化し先行きが見えない中で、これからの人には洋裁が必要と創立者の堀越千代が立ち上がったのが本校創立の経緯です。
現在、私たちはまったく同じような、つまりこの新型コロナウイルス感染症や2030年のSDGs、2045年のシンギュラリティなど、先が見通せない状況下にあります。これからの女の子たちには何が必要なのだろうと突き詰めたことが結果として、これらの教育改革につながっています。
現代的に言葉を捉えたり、新しい技術を取り入れるなどしますが、伝統として受け継がれてきた理念というのは、基本方針は変わってないのだと、最近我々も再認識したところです」と話します。

同校の創立時、和裁は当然ながら新しいスキルとして洋裁も教え、自立した女性としての生き方を模索しました。これは現代に置き換えれば、しっかりとした学力に加え、PBLで問題解決能力や協働する力を養うこと、 ICTや英語といったスキルを指すのでしょう。

和洋九段_
"やるべきはことはやる"姿勢が備わっています。写真は放課後のスタディステーションの様子。

「目指すものも結局一緒だと思うのです。自立するということは、自分だけのためではなくて、何か人の役に立つということです。本校のルーブリックの最終目標は『社会貢献』であり、他の誰かのために何ができるのかを考え、実行する『For All』という思いが含まれています」(本多先生)

本多先生は社会科の授業の中で、明治時代の女性が置かれた状況や女子の就学率などを学びながら、同校の建学への思いをみんなで考えるそうです。

「校訓の『先を見て齊える』というのは、先々を予想して準備をするということです。"齋"という字には、きちんとする、その時にスムーズにいけるようにするという意味合いがあります。
多様化し価値観もバラバラでこの先どうなるかという不確定要素が非常に多い中で、どんな風になっても先に行けるというような、この先必要なことは何かを自分自身で考えて準備ができるマインドを持てる大人になってくれることを願っています」と本多先生は教えてくれました。

和洋九段_しっかりと話し合える信頼関係が構築される教育と温かな校風が自慢です。
しっかりと話し合える信頼関係が構築される教育と温かな校風が自慢です。

さらに、本多先生が付け加えます。
「本校が大事にしていることに、"バランス"があります。これからの社会を乗り切る方法は、2つあると考えており、1つはその波に絶対に飲まれない強さを持つこと。それは例えば、グローバルクラスや高校に設置されているサイエンスコースなどで、自分の好きなことや誰にも負けないものを構築していくことです。

もう1つは、その波の中を泳いでいけることなのではないでしょうか。それはわかりやすい強い力ではなく、柔軟性や寛容性といったPBL型学習などを通して培われる様々な対応力など、本校の本科コースで身につけられるものだと考えています」

人に愛される心配りと人生を泳ぎ抜く智恵は数値では測ることのできないもの。そういう優しさやバランスの取れた人間性、その上で自立した女性を育むという、和洋九段女子の教育はこれからの時代にますます重視されるものだといえるのです。

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