学校特集
青山学院大学系属浦和ルーテル学院中学校・高等学校2020
掲載日:2020年9月2日(水)
1953年の創設以来、キリスト教の精神を柱に、生徒の個性を引き出すことを使命としてきた同校。教育方針に「ギフト教育」を掲げ、ギフト=神様からの贈り物である一人ひとりの才能や個性を活かし、周りの人々を幸せにし、自らも幸せな人生を歩むことを目標としています。この目標を実現するために、1クラス25名の少人数教育を貫き、特色ある英語・国際教育に力を入れ、また才能を伸ばすフィールド・プログラムを行っています。2015年には新校舎を完成。その後、さらなる発展を目指して、昨年から青山学院大学の系属校となり、校名も「青山学院大学系属 浦和ルーテル学院」と変更しました。系属校となったことでの具体的な変化、そして同校が守りつづけるギフト教育について、福島宏政校長にお話を伺いました。
キリスト教に基づく教育を、大学でも継続したい
青山学院大学の系属校となることで、3つの目標を達成したいと考えていた同校。その1番にあったのは、キリスト教に基づく教育でした。
第1 キリスト教教育の使命の継続・発展。共通の教育理念を掲げる青山学院大学と系属関係を結ぶことで、キリスト教教育の使命をいっそう力強く達成したい。
第2 教育改革の時代の高大連携。青山学院大学が同校の生徒たちの長所を引き出し、世界に奉仕する指導者に育ててくれることへの信頼。
第3 教育の質的向上。高い水準の大学との連携をとおして、教育の質の向上に取り組む環境を整えることができる。グローバル化やICT化など、新しい時代の要請に応える教育を充実させることができる。
同校にとっても青山学院大学にとっても、キリスト教信仰に基づく学校として、お互いの建学の精神を尊重しあえる基礎があります。
同校の建学の精神は「神と人とを愛する人間。神と人とに愛される人間」。聖書にある「隣人を自分のように愛しなさい」という言葉に裏付けられた精神です。
福島校長自ら、学院紹介の校長メッセージには聖書の一節を選び、「喜ぶ人とともに喜び、泣く人とともに泣きなさい」「惜しまず豊かに蒔く人は、刈り入れも豊かなのです」と挙げています。
福島宏政校長:「建学の精神は、そこに始まり、そこに終わるともいうべき深い基本です。私からのメッセージは、生徒たちに、そうあってほしいと願う聖書の言葉です。全学年とも、1週間に1時間の『聖書の時間』があり、毎朝、礼拝があります。2015年に完成したチャペル棟は、2~4階部分が礼拝堂になっていて、ここでの礼拝は、クラスごとに、学年ごとに、また中等部全体・高等部全体でと、礼拝堂を中心に日々を過ごしています。大学に進学してもこのようなキリスト教に基づく教育のもとで学びを続けてほしいと考えていました。それが青山学院大学の系属化に結びつきました」
青学大進学希望者の全入は2030年度からだが、
すでに経過措置は用意されている
新校舎が完成した2015年、出願者が前年に比べて2倍近く伸びました。そして青山学院大学の系属校となり、2020年度入試の出願者はさらに激増。反響の大きさに応えるように、系属校としての具体策が着々と進んでいます。
▶一定の募集枠の範囲内で、進学基準を満たせば系属校推薦として優先的に入学できます。
▶高大連携のみならず、青山学院系列の他校とも連携を計画しています。例えば英語ではオリジナル・カリキュラムに加えて、系列校のカリキュラムや教材を取り入れ、いっそうの充実を図っています。
福島校長:「希望者全員というわけにはいきませんが、経過措置としては大きな入学枠の数字が与えられています。他にもいろいろと系属の良さを生かした連携を実施しています」
----学院の正式名称が変わり、大きな反響を読んだことで、すでに学校の中に変化はありますか。
福島校長:「今後、青山学院大学に進みたいという志向の生徒たちが増えてくると、学校の雰囲気も変わってくる部分も出てくるでしょう。とはいっても、学院本来の姿が大きく変わることはありません。教育方針、校訓、校歌、校章、制服などが変わることはありませんし、いままでどおりの教育体制で、生徒たちの個性を伸ばし、幅広い進路の選択肢を視野に入れて生徒たちと関わっていきます。『青山学院大学への進学を目指して入学しましたが、入ってみて学院の温かさ、面倒見のよさを実感し、入って良かったと感じました。』と言っていただいたのがとても嬉しかったですね」
この話に念を入れるように、福島校長はこうも語りました。
福島校長:「青山学院大学の志望者であっても、何年か学ぶうちには進路が変わってくる生徒もいるでしょう。それでも心配はいりません。一人ひとりの個性を大切にする教育方針はいままでどおりです。医学系から芸術系まで、幅広い進路があるのは本学院の特長です。毎年、音大を受ける生徒がいますが、実技試験を想定し、学院教師が審査員になりかわって、本番さながらの雰囲気で入試の練習をします。これまで通り、生徒の希望に添った手厚い指導体制を取っていきます」
キリスト教に基づく「ギフト教育」を支える独自の教育体制
この「ギフト教育」を実現させるために、創設以来、守ってきたものに少人数制があります。中学も高校も、1クラス25名となっています。
福島校長:「この人数だからこそ、教師たちは生徒一人ひとりの理解を深めていけます。担任だけではなく、各教師たちが生徒全員の名前を覚えていて、いつでもどこでも、その生徒に声をかけられます。個々の生徒のことを教師全員で共有し、担任が変わっても、新しい担任へ個人データカードが引き継がれていきます」
----青山学院大学の系属校となり、これから入学志願者が増えていくと思います。それに伴い募集状況が変わる可能性もあると思いますが、それでも少人数制に変わりはないでしょうか。
福島校長:「入学希望者が増え、もしクラスが増えることがあっても、1クラス25名の少人数制を変えるつもりはありません。ギフト教育は本学院の柱ですから」
同校には、少人数制と同様、ギフト教育を実現するための第一義的な教育に、英語・国際教育があります。英語は中1からしっかりとした目標を掲げ、平常の授業のなかでディベートやスピーチ、英語劇などを行い、英語4技能をバランスよく育てます。各学年の目標は、生徒全員に実現してほしい達成目標です。
中1▶︎英検3級取得。英語の基礎と語彙の習得。英語で10文程度のエッセイを書けるようになる。
中2▶︎英検準2級にチャレンジ。様々な英語表現を理解する。英語劇ができるようになる。
中3▶︎英検準2級取得。既習内容の実践力を身につける。英語でディベートができるようになる。
高校▶︎TOEFL ibt 80、英検準1級取得が目標。海外で生活しても不自由のないレベルの英語力を育成。英字新聞を初見で読むことができたり、自分の考えを論じられるようになる。
福島校長:「英語教育は現場で生かされなければ意味はありません。スポーツ選手でもそうですよね。せっかく日本で強い選手が外国に行っても、言葉の壁があるために才能や技術が伸び悩むことがあったり、活躍の場が限られてしまうことがある。これは残念なことです。生徒には、実践的な英語を身につけさせたいと考えています」
英語教育と表裏一体の教育に国際教育がありますが、同校では中・高をとおして、充実した国際交流のプログラムが設けられています。
アメリカ研修▶中3〜高2までの25名。︎毎夏の約4週間、姉妹校のあるカリフォルニアとアリゾナに滞在。姉妹校でオリジナル授業を受け、教会の礼拝に出席。ユニバーサルスタジオやディズニーランド訪問、ボランティア活動、最後はグランドキャニオンへ1泊旅行。「英語能力の育成」「人間理解」「アメリカの生活・文化体験」「キリスト教理解」を深めます。
留学制度▶︎高2の夏〜高3の春までの約1年間という長期研修です。姉妹校のあるアメリカのフェニックスに1年間留学。現地の家庭で「家族」として過ごし、姉妹校へ通学。姉妹校で習得した単位は、帰国後、日本の単位として認定されます。
日本研修▶︎毎年5月、カリフォルニアの姉妹大学から教授と学生が2週間来校し、礼拝や授業などともに過ごします。英語を母語としない子ども達の教育を専門とする学生なので、学院での指導経験は教育実習的な意味合いを持ちます。また、6月中旬の約10日間、アメリカのフェニックスの姉妹校から中高生が来日。生徒宅にホームステイし、一緒に登下校。もちろんクラスに入って一緒に授業も受けます。学院の生徒にとっては、日本にいながらアメリカを体験できる貴重なプログラムです。
ネイティブの先生たちから実践的な英語を学ぶ
アメリカ研修では、夏の4週間をカリフォルニアとアリゾナで過ごす
福島校長:「アメリカ研修では、ステイ先でお客様としてではなく、"家族"として迎えられます。ホストファミ リーと過ごした時間は、生きた人間理解の貴重な体験で、世界に大きく目を開くきっかけになっています。また 留学制度で長期にわたりアメリカで過ごした生徒のなかには、アメリカの大学に進学する生徒もいて、多くの卒 業生が海外で研究職や芸術活動など、多彩な活躍をしています」
週に1時間、自分に関心のあることを掘り下げていく時間があります。3つのフィールドから1つを選択し、1年間かけてとことん好奇心を追求し、理解を深めていく時間です。行動し、実験し、外に飛び出し、自分の個性や才能に触れ、深く知る機会が与えられる。まさに、ギフト教育の実践版です。
フィールドS(サイエンス:自然科学系)▶︎自然観察や、プログラミングにも挑戦。先端科学施設、天文台、大学の研究室などの訪問も行います。
フィールドA(アーツ:人文系)▶︎芸術、歴史、文学作品をテーマに、アクティブラーニングを実施。国内の世界遺産、美術館、博物館などの訪問も行います。
フィールドE(イングリッシュ:英語系)▶︎英語劇、スピーチ、ディベートなどの活動を行いながら、インターナショナルスクールとも交流。大使館訪問や海外研修なども行います。
最後に、福島校長は願うように、こう締めくくりました。
福島校長:「生徒全員に自己肯定感を持ってほしい。中学から入ってくる生徒も高校から入ってくる生徒も、みな同じ。高校から入ってくる生徒の中には、勉強なりスポーツなりの場でダメだと言われて自信をなくしている生徒もいます。そんな生徒たちこそ、個性や才能を見極めて、良いところをほめることで自信をつけさせてあげたい。生徒みんなに自己肯定感を持たせてあげること。それも私たちの大きな使命です。また、これからの時代に必要な能力として、人工知能が苦手とする分野で活躍できる人間になってほしいですね。人工知能には人の心を読み取れません。相手の気持ちを考えながらコミュニケーションをとることや、いろいろなことに配慮しながら創造することもできません。生徒には、あらゆる方面で人間的な活躍をし、社会に奉仕できる人になってほしいと願っています」
生徒思いだと評判の福島校長らしいメッセージを、随所で聞くことができました。青山学院大学系属校となったいま、ますます同校の生徒たちが人間的に成長していくことは間違いないでしょう。