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学校特集

武南中学校2020

人間教育と進学指導の両輪により真のグローバルリーダーを育成
2期生を送り出したこの春、新たな挑戦が始まる

掲載日:2020年9月1日(火)

「羽ばたけ、世界へ」。このヴィジョンを掲げて武南中学校は2013年、武南高等学校の併設校として誕生しました。以来、高度な英語能力の育成、双方向のICT教育、国内外のフィールドワークなど21世紀型の最先端教育を実践してきたのです。2019年には1期生が卒業。最難関大学に多くの生徒が現役合格を果たしました。1期生の背中を見て成長した2期生も今年の大学受験で大いに健闘し、武南はさらなる進化を遂げようとしています。同校の新たな挑戦について英語科の佐藤新平先生と入試広報担当の鷲田雅幸先生に聞きました。

海外大学進学も視野に入れた「アカデミック英語コース」開講

武南_ベトナム研修での現地校との交流
ベトナム研修での現地校との交流

武南の教育目標は「世界に通用する高い学力・知性を養い、確固たる人間性を育成」すること。その実現に向け、武南では開校以来、世界の共通語である英語力の強化に力を注いできました。たとえば、中学3学年の英語の授業時間は、約665時間。公立中学校の約1.5倍です。また、中1からiPadを駆使してプレゼンテーションやディベートを行いながら、リスニング力も強化。さらに中2では全員が「アジア研修」に参加します。この研修の前半はカンボジアで過ごし、後半はベトナムのホーチミン市を訪問。現地校の生徒と英語で交流します。高1では全員が「ボストン研修」へ。MIT(マサチューセッツ工科大学)やハーバード大学など世界トップレベルの大学で学ぶ学生たちと英語で意見を交換します。武南では学んだ英語を実際に活かせる海外研修が6年間に2つも用意されているのです。
こうした英語教育を体系化して昇華させたプログラムが、今年度から始動しました。それが「アカデミック英語コース」。カリフォルニア大学デービス校国際教育センターの監修により、週に1回行われる英語講座です。海外の大学の授業では、文献を読んだり、ディスカッションをしたり、エッセイ(小論文)を書いたりします。そこで、海外の大学に留学や進学をした際、現地の授業についていくために必要な"アカデミックスキル"を身につけることがこの講座の目的のひとつです。6年間をかけて英語の4技能(聞く・話す・読む・書く)を高めながら、クリティカル・シンキング(批判的思考力)を養います。

武南_佐藤新平先生
佐藤新平先生

佐藤先生:「『アカデミック英語コース』の対象は、中1から高3までの希望者です。コースは学年によって3段階に分かれています。中1と中2が『コミュニカティブ英語コース』、中3と高1が『アカデミック英語基礎コース』、高2と高3が『アカデミック英語発展コース』です。講師は同センターから派遣された2名のネイティブの先生が務めています。
中1と中2の『コミュニカティブ英語コース』では、リスニングやスピーキングの力を養うための第一歩として、同センターのオリジナルテキストを使い、発音から鍛えます。中1なら『s』や『th』の発音から順を追って練習するのです。
中3と高1の『アカデミック英語基礎コース』では、ひとつのトピックが生徒に与えられ、それをもとにエッセイ(小論文)を書いたり、ディスカッションしたりします。エッセイはiPadで作成し、オンライン上のファイル保管サービスであるグーグルドライブに送信します。ネイティブの教員がそれを読んで添削などの指導をします。
たとえば、新型コロナウイルスで休校中には『What do you know about coronavirus?(コロナウイルスについて、あなたが知っていることは何ですか?)』というトピックがオンラインで出題されました。このようにトピックには、時事問題が多く出されます。中3の生徒が全員、長文のエッセイを書けるわけではないので、まず、生徒は調べたことをワンセンテンスの英文にすることから始めます。そのセンテンスをネイティブの先生に送ります。こうしたトレーニングを積み重ねて、本格的なエッセイを書く力が身につけば、高度なディスカッションやプレゼンテーションができるようになるのです。
今まで、本校の英語の授業では中1で英語の紙芝居をつくって発表し、中2、中3ではiPadでスライドを作成し、英語でプレゼンテーションをしていました。この『アカデミック英語コース』の開講によって、これらのクォリティが高まることが期待できます。
高2・高3の『アカデミック英語発展コース』では、スピーキングやリスニングの力をさらに向上させ、活発なディスカッションやプレゼンテーションができるようにします。また、論理的に文章を組み立て、完成度の高いレポートを作成できるようにします」

武南_高1のボストン研修
高1のボストン研修

社会のグローバル化に対応して、2021年には学習指導要領が改訂され、これまで高校の範囲だった英語の仮定法や現在完了進行形などを中学で学ぶことになります。また、同年には大学入試改革もスタート。国公立大学センター試験の英語はリスニングの配点が50点でしたが、新たにはじまる大学共通テストでは2倍の100点になります。この大学入試改革に向けて、難関私大の入試でも英語の4技能がますます問われるようになりました。

佐藤先生:「そこで、できるだけ多くの生徒が参加できるように、中3から高3までの2コースを習熟度別のクラス編成にしています。英語にあまり自信がないという生徒のクラスでは、同センターのネイティブの先生と、本校のネイティブ教員であるビーソム先生がティームティーチングで教えます。ビーソム先生は日本語が話せるので、とまどっている生徒がいれば、日本語でサポートします。
本校の生徒たちにとってネイティブの先生は、これまでビーソム先生だけでした。しかし『アカデミック英語コース』の開講によって2名のネイティブの先生が来校することになったのです。生きた英語にふれながら、英語でコミュニケーションする機会が増えたのです。そのため、生徒たちは英語が通じる楽しさや喜びを感じ、学ぶ意欲をこれまで以上に高めています」

武南_古典芸能鑑賞会
古典芸能鑑賞会

武南では国際人としての教養を身につけるために芸術を鑑賞する機会が多く用意されています。そのひとつが古典芸能鑑賞会です。歌舞伎や能、狂言、文楽など日本を代表する伝統文化を鑑賞。感じたことや学習の成果をiPadにまとめて発表します。「アカデミック英語コース」を受講して"アカデミックスキル"を高めていけば、研修先のカンボジアやベトナムやアメリカ、あるいは大学進学後の留学先で、現地の人たちに鑑賞会で学んだ日本の文化について英語で雄弁に語ることができるでしょう。また、努力次第で同センターが提携する海外大学や、提携外の海外大学に進学する道も拓けるのです。

鷲田先生:「今年の春には、本校の卒業生が中国でトップクラスの大学である北京大学に合格しました。今後は『アカデミック英語コース』により、国内の最難関大学から海外大学まで、一人ひとりの多様な将来像の実現をサポートするとともに、真のグローバルリーダーを社会に送り出していきたいと考えています」

休校時に功を奏した、開校以来のICT教育

武南_休校時は各教科から動画の配信も!
休校時は各教科から動画の配信も!

グローバルリーダーとして社会に貢献していくために必要な要素が21世紀型スキル。そのひとつがICT機器を自由自在に使いこなす力です。武南では開校以来、電子黒板が全教室に備えられ、生徒全員にiPadを支給されています。こうしたICT教育の推進が、新型コロナウイルス感染拡大防止のための休校時に功を奏しました。

佐藤先生:「生徒のiPadには、学校用クラウドサービスの『Classi』が入っています。これによって、生徒が日々の学習計画などを自分で管理できるようにしています。本校が休校中は、この『Classi』の他、本校の関係者しか見ることのできないGoogleのポータルサイトも活用しました。『Classi』やこのポータルサイトに連絡事項や本校の教員が撮影した授業の動画をアップして、生徒が自宅で学んだり課題に取り組んだりできるようにしたのです。
さらに生徒全員が加入しているWebサービスの『スタディサプリ』や『スタディサプリENGLISH』も活用しました。こうしたオンライン授業の板書はすべてノートに写すように生徒に伝え、学校再開時に提出させました。手で書くことの大切さも知ってほしかったからです」

武南_ZOOMによるオンライン英会話
ZOOMによるオンライン英会話

動画の内容については、各教科の教員が話し合いながら連携を図り、心をひとつにしてオンライン授業の質を高めていったそうです。
「アカデミック英語コース」では、ビデオ会議システムのZoomを使い、リアルタイムでオンライン英会話講座を開きました。朝10時に講座がスタートするため、生徒はその時刻にiPadの画面と向き合わなければなりません。休校中も「規則正しい生活ができる」と保護者からは感謝されたそうです。
そして6月1日、ついに授業が再開。教室は生徒たちの笑顔でいっぱいになりました。

鷲田先生:「本校の開校以来、オンラインでつながる環境が整っていたことが幸いし、生徒たちの学びを止めることなく、授業を無事に再開できました。深い理解が必要な範囲は、夏期講習や冬期講習で補う予定です。コロナ第二波の備えもできています。
一方、久しぶりに友達や私たち教員と顔を合わせ、うれしそうにしている生徒たちを見て、私たちは『人間教育はオンラインではできない』と改めて認識しました。今後はオンラインを活用しつつ、人と人との心が直にふれあう教育をさらに大切にしていきたいと思っています」

東工大などの国立大学に1・2期生を合わせて7名が合格

世界に通用する高い学力・知性の養成をめざす武南。ここでの6年間の学びは、大学受験で豊かな実を結んでいます。去年卒業した1期生と今年卒業した2期生。この2学年を合わせた68 名の中から、東京工業大学や横浜国立大学などの国立大学に7名、早慶上理に 13 名が合格したのです。MARCHクラスの合格者は16名となりました。

武南_鷲田雅幸先生
鷲田雅幸先生

鷲田先生:「先日、1期生3名が学校に集まって、本校での学校生活を振り返りながら、近況を報告してくれました。早稲田大学文化構想学部2年生の児玉遼平くんは、本校在学中、ずっと早稲田に憧れていて、私たち教員や友人たちに『絶対に早稲田に入る』と公言していました。『みんなの前で口にした以上、後へは引けない』と固い決意で受験に臨んだのです。そして 猛勉強し、その意志を貫きました。
慶應義塾大学文学部2年生の田村龍仁くんは国公立大学志望でした。しかし、教員たちの『得意な英語を活かして、慶應を受験してみよう』というアドバイスを受けてチャレンジし、合格を果たしたのです。
慶應義塾大学商学部2年生の大根田真由さんも、教員たちのアドバイスを素直に受け入れた一人です。しかも、大根田さんは、併設の武南高校の生徒も合わせた卒業生の中でトップの成績を収め、卒業生総代となりました。2019年の武南高校の卒業生は、約500名です。一方、本校の卒業生はわずか39名でした。10分の1にも満たない一貫生の中から総代を出せたという快挙は、本校の教員たちに揺るぎない自信を与えました。『私たちの教育は間違っていなかった』と確信できたからです。
この3名は『最難関大学に現役で進学できたことは常に自分を支えてくれた先生がたの指導があったからこそ』と感謝の念を忘れずにいてくれています。そして、全員が大学生を楽しみながら、自分の将来に対して明確な目標を持って勉学に励んでいます」

1期生からは東工大や横浜国大、茨城大学、上智大学、東京理科大学にも現役合格者を輩出しています。MARCHには8名が合格しました。しかし、この生徒たちは入学時から成績優秀だったわけではありません。6年間をかけて力を少しずつ伸ばしていったのです。その背景には少人数の生徒を手塩にかけて育てるという武南独自の教育があります。また、1期生にとって文化祭や体育祭から部活動まで、すべてがゼロからのスタートでした。それらを自分たちの手で創り上げてきたのです。この3名を中1から指導してきた津島亜沙子先生は「1期生は開拓者精神にあふれていました、教員から指示されなくても、何をすればよいのか、自分たちで考えて決め、突き進んでいったのです。その姿勢が志望校合格につながったのでしょう」と述べています。

武南_理科フィールドワーク
理科フィールドワーク

鷲田先生:「6年間の学校生活の中で1期生としての矜持が生まれ、受験でも誇れる結果を出そうというモチベーションが強くなっていったのだと私は思います。また、中1から7時限目が週に1回あるなど授業数が多く、それらをこなすことが本校では当たり前になっています。そのため、勉強に時間をかけるのは1期生にとって特別なことではありませんでした。さらに生徒と教員の絆が強く、教員が全生徒の長所も個性も知り尽くしているので、一人ひとりの進路希望にあったアドバイスができました。そのため、塾や予備校などに行かなくても、難関大学を突破できる力を培うことができたのだと思います」
しかも、武南の学習スタイルは、自ら調べ、 理解し、活きた知識を蓄積すること。このスタイルが、フィールドワークなどの体験学習の中でも繰り返されてきました。これらの積み重ねによって、1期生たちは自分には何が足りないのかを分析し、自ら立てた学習計画に反映しようとする姿勢も身についていたのです。
2期生はこうした1期生の姿を間近に見て育ちました。武南では中高一貫生専用の校舎で6学年がともに学んでいるためです。大学受験が近づくと1期生は朝早く来校し、放課後は遅くまで残って勉強してから帰宅していました。年末年始も登校していたそうです。勉強していて分からない箇所は、職員室に行き、教員たちに納得がいくまで質問していました。1期生は自分がよく知っている先輩が、こうして努力を積み重ね、次々に難関大学に合格していくのを見て「自分も頑張ればできる」と勉強に意欲を燃やしたのです。今年の春の合格実績には、以下のようにその結果が現れています(私大は述べ人数です)。

大学合格実績

【海外】北京大学1
【国立大学】電気通信大学2・東京農工大学1・宇都宮大学1
【MARCH他】東京理科大学5・明治大学2・青山学院大学1・中央大学2・法政大学3
【有名私立大学】芝浦工業大学7名・武蔵大学1・成蹊大学1・成城大学1・津田塾大学1・東京女子大学1・日本女子大学1


鷲田先生:「1期生は39名でしたが、2期生はそれよりも少ない29名です。わずかな生徒数でこのような実績が出せたのですから、1期生と比べても見劣りはしないと自負しています。しかし、大学合格はあくまでも通過点に過ぎません。中高時代に得たことを糧にして大学でどのように学ぶか。社会人になった時、正解がひとつでない問題にどのように向き合い、解決していくのか。これらが今後、問われてくるでしょう。本校の人間教育と進路指導をさらに充実させて、グローバル社会に貢献できる人材の礎を築いていきたいと考えています」

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