学校特集
桜丘中学・高等学校2020
掲載日:2020年10月15日(木)
桜丘中学・高等学校は1924(大正13)年に創立され、「勤労」と「創造」を校訓に掲げて生徒の個性を見極めて伸ばし、「自立した個人」を育ててきました。生徒一人一人に目を配るきめ細かい指導と先進的かつ多彩な教育で定評があり、今春は一貫生の中から一橋大学合格者も出るなど、着実に成果をあげています。さらに2021年度からは高校で新たな4つのコース制を始動。学ぶ楽しさを知り、大学受験にとどまらない力を育む斬新な教育内容に、受験生からも在校生からも注目が集まっています。進学部長・樋山陽亮先生とグローバルキャリア教育推進課長の寺澤一貴先生に各コースの特徴を詳しく伺いました。
勉強の楽しさを知り個性を伸ばす4コースを用意
桜丘中学・高等学校は高校から「普通コース」「CL(クリエイティブリーダーズ)コース」の2コース制をとっていますが、2021年度から未来を見据えた4コース制をスタートさせます。ここ数年で大きく変わってきた大学入試に合わせて、それぞれの目標に合わせたカリキュラムが必要だと考えたからです。
中学からコース分けする学校も多いですが、同校は敢えて高校からコース制をスタートします。「中学生はいろいろな可能性を秘めているし、3年間で大きく成長します。中学でいろいろな体験をしたうえで中3の段階で自分の可能性や将来の希望を考え、それに合わせたコースを選んでほしいからです」(進学部長・樋山陽亮先生)。
来年度から始まる高校のコースは次の4つで、☆印(SコースとCコース)が新設されるコースです。
●難関選抜「スーパーアカデミーコース」(Sコース)☆
●文理特進「アカデミックコース」(Aコース)
●グローバル探究「グローバルスタディーズコース」(Gコース)
●キャリア探究「キャリアデザインコース」(Cコース)☆
2021年度に新設されるコースの目玉が「スーパーアカデミックコース」。東大・早慶上理などの最難関大学を目指し、学力だけでなく主体性、表現力、思考力を育てます。コースの立ち上げを主導してきた進学部長・樋山先生は「これまでも難関大学合格者はいましたが、今春は一貫生から一橋大学合格者が出ました。そうした本気の子たちを集めたコースを作り、これまで培ってきた教育内容を体系化して提供します。コースを作ることで"本気で最難関校を受験する子をバックアップする"という学校の意気込みが生徒にも伝わるはずです」とコース新設の経緯を話します。
このコースの特徴は
1)文章能力養成講座(日本語・英語)
自分の考えを論理的に文章で表現し、相手に伝える力を育てます。日本語と英語(ライティング)2本立ての指導です。これまでも国公立大受験者には2次試験対策として個別に指導していましたが、このコースでは高1から体系的に文章力を育成します。
2)朝時間にオンライン英会話
オンラインで外国人講師とマンツーマンで話して会話力を磨きます。これまでも授業で採り入れていましたが、来年度からは朝読書の時間を使って1週間に数回はオンラインで英会話をする時間を設けます。
3)難関大学教授による学問探究ゼミ
難関私大の教授が週1回、探究の授業を受け持ちます。自分でテーマを見つけて学ぶ探究学習の時間に大学教授の指導を受けることで、より深く学ぶことができます。国際教養学部で国際経済やゲーム理論といった最先端の学問に携わる教授なので、生徒たちにとっても意義深い時間になるはずです。
4)東大生による放課後講座
現役東大生が放課後に学習指導にあたります。
中でも一番の目玉は「学問探究ゼミ」。単なる出張授業ではなく、大学教授に毎週直接教えてもらうという貴重な機会となります。「高校生は"授業を受け、暗記や演習してテストを受ける"という流れに終始しがちですが、根本的に違う時間を提供したい。大学教授の底知れない知識量、深い学びに触れることで、生徒たちは大学や将来をより楽しみに感じられると思います」(樋山先生)。
ただし、このコースは放課後はかなり忙しくなるので、本格的に最先端、最高レベルの勉強をしたいと生徒向けです。「ひたすら勉強して詰め込むのではなく、学問の本当の楽しさを知ってほしい」と力強く話す樋山先生。最難関を目指す強い志のある生徒を少数精鋭で育てていくことになり、大きな期待がかかっています。
これまでの特進コースのよさを生かし、さらにパワーアップしたのが「アカデミックコース」。難関大学を目指して総合的な学力を身に着けるコースで、文系・理系の両方に対応します。高1は文理混在クラスですが、高2からは国立と私立に分かれ、私立大学志望者は選択科目を受講することで早い段階から入試科目に注力することができます。
このコースの特徴は
1)学習のPDCAサイクル確立
計画(plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Action)という企業で用いられるフレームワークを教育に応用。自分の学習内容を振り返りを行って課題を見つけ、解決することで学力の土台を築きます。
2)興味関心に合わせて選択科目を受講
高1の段階で進路を考え、高2から選択科目を受講します。私立入試に必要な科目を早い時期から集中して学ぶことができます。
3)ICTを活用
1人1台ずつタブレットを配布しているので、それぞれの能力に合わせた演習問題を選べたり、特定の単元を集中して学ぶことで深い学びや苦手克服などが可能になります。
「スーパーアカデミックコース」は放課後講座などもあり忙しくなりますが、「アカデミックコース」は放課後は自由に過ごせます。クラブ活動に力を注ぐ生徒もいれば放課後講習や自習室を利用する生徒もいて、自分でやりたいことを決めて過ごせます。
英語学習や留学制度など語学教育で定評のある同校ですが、英語力に加えて探究力やプレゼンテーション能力も伸ばすのが「グローバル探究コース」。世界で活躍できる人材となる基礎を培います。グローバルキャリア教育推進課長の寺澤一貴先生は、現在のCL(クリエイティブリーダーズ)コースの生徒の面談時に「世界で活躍したい」「英語を使った仕事がしたい」という声をよく耳にしていました。そんな生徒たちの期待に応えるために新設されたのがこのコースです。語学留学と探究学習の2本柱で、英語力を伸ばしながら視野を広げ、 英語力と探究力を武器に世界で活躍したいという夢に近づきます。
このコースの特徴は
1)10週間のセブ島語学研修
高1で全員が12月~2月にかけて10週間、セブ島語学研修を実施します。現地では(50分授業×1日8時限)で週40時限、英語のレッスンを受講します。これが10週続くので、合計400時限も英語のレッスンを受けることができます。また、貧困層を支援する現地NPOの活動に参加し、施設などの子どもたちを訪問します。
2)日常的に英語を使う環境
Native English Teacher(NET:ネイティブ英語教員)が副担任となり、副担任が担当する日はホームルームも朝礼での連絡も学級日誌もすべて英語を使用。日常的に英語を使う環境を作り、リスニングやスピーキングの能力を伸ばします。
3)第2、第3外国語を学習
高2と高3で週1時間、フランス語と中国語を学びます。詳細はまだ未定ですが、たとえば高2・高3の前期は中国語、後期はフランス語など、1年間の中で2つの言語を学ぶ機会を作る予定です。
4) 地球規模の課題に取り組む探究学習(Global Issues)
全員に配布されているiPadを活用し、外部講師の指導も受けながら活動します。たとえば高2では「食とグローバル」、高3では学びの集大成として「社会課題を解決するソーシャルビジネス提案」などがテーマ。1~2つの学期ごとに決まったテーマに取り組み、教員や外部講師のレクチャーを受けて興味関心を高め、個人またはグループで探究学習を行います。
このコースの一番の特徴は「セブ島語学研修」です。「フィリピンはキリスト教の国なので、クリスマスは荘厳なミサやお祝いが行われ、思い出深い行事になるでしょう。海外でお正月を迎えるのもめったにできない経験です」と寺澤先生は話します。
これまでも全コースの高1以上の有志対象に2週間のセブ島語学研修を行っていますが、人気が高く常に定員いっぱいの50~60人が参加しています。貧困層の子どもたちの施設見学やお手伝いなどに行くと、生徒たちは「電気も水も通っていないのに、子どもたちがはじけるような笑顔で過ごしている」ことに衝撃を受けます。「自分の当たり前と世界の当たり前は違うことを知り、世界観が広がる――そうした社会勉強の意味でも、セブ島留学はとても意義深いのです」(寺澤先生)。
スーパーアカデミックコースでは大学教授が講師を務めますが、このコースでも元五輪選手や経営者などを講師に迎えます。東京五輪は延期になってしまいましたが、元五輪選手から「五輪の精神、価値」といった話を直接聞くことで、生徒たちは五輪を体感し、自分のこととしてとらえられるようになります。こうした一つ一つの学習や経験の積み重ねが、将来のグローバルキャリアにつながっていくのです。
2021年度から新設されるコースの1つが私立文系志望者対象の「キャリアデザインコース」です。「社会に対する興味関心を広げ、多様な進路を切り拓いてほしい」という思いで立ち上げたコースで、「自分の強みを把握して伸ばす」のがコンセプト。大学の総合型選抜や学校推薦型選抜にも対応できる力を育てます。
このコースの特徴は
1)1年かけて行う企業体験
千葉のピーナッツバターメーカーの協力を得て、落花生の種を植えるところから収穫、加工、パッケージのデザインから販売まで、すべての工程を1年がかりで体験します。社会のいろいろな場面で「価値をつける」仕事があることを体験できる活動です。
2)強みを生かして大学入試を突破する力を育てる
今や大学入試は総合型選抜や学校推薦型選抜が半分を占めています。自分の強みを把握して伸ばし、大学での勉強と将来のキャリアをリンクさせて考え、それをしっかりアピールできることが大切。志望動機書などの書き方も指導し、希望の大学に合格する力を育てます。
3)次世代型キャリア教育
時代の変化に対応できる力を育成する次世代型キャリア教育の授業を実施します。今ここにないものを創り出すために必要なことを考えるなど、課題を見つけて解決する力を育てます。
4)地球規模の課題に取り組む探究学習
「グローバル探究コース」と同じように、テーマを決め、外部専門家の指導も受けながら探究学習を行います。校内で研究結果を発表する時間もとっています。
このコースの目玉は1年通した企業体験です。1週間前後の企業体験やインターンシップを行う学校はありますが、1年間の企業体験はあまり例がありません。「1つの商品を販売するまでにはさまざまな仕事があります。自分は社会の中でどんな価値を生み出していくのか、この体験を通して自分のキャリアにつなげてほしいと考えています」(寺澤先生)。
家庭学習ノートなどきめ細かい指導
新コース制は華やかな改革に見えますが、同校の神髄は「コツコツ努力する生徒を育てる」ことにあります。高校から4つのコースで希望のキャリアに邁進する素地を作りますが、中学ではそのためのしっかりした土台を築きます。
そこで役立つのが、毎日提出する家庭学習ノート(通称・カテガク)と、週1回提出のセルフスタディ(SS)ノート。SSノートはPDCAサイクルを完成させるのに役立つスケジュール帳で、カテガクは日記付きの自習ノートです。毎日の学習を記録して提出すると教員が「好きな科目に偏って勉強しているから、もう少しこの教科を勉強する時間を作ったほうがいい」などと全体を俯瞰したアドバイスを送ることもあります。
「でも、書かせることだけが目的ではなく、教員との絆を作り、我々が生徒の変化に気づくきっかけにもなる貴重なツールです」と樋山先生。いつも丁寧に書いている生徒がほとんど書かずに提出したり、日記を書く部分に悩みを書いてくることもあります。そんなときは先生が「どうした?」と声をかけたり、面談して対応しています。
きめ細かい丁寧な指導と将来を見据えた先進的な取り組みの両輪で生徒を伸ばしている同校。学ぶ楽しさや喜びを知り、しっかりした学力の上にさまざまな体験や活動を積み重ねた生徒たちは、ひとりひとりが輝かしい未来に向けて力強く羽ばたくに違いありません。