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学校特集

品川女子学院2020

SGH指定校のノウハウと学校文化でコロナ禍を乗り越える
休校期間中も磨かれた“品女”らしさ。オンライン授業と夏休みの取り組み、新校舎設立で新たな歴史の幕開け

掲載日:2020年10月26日(月)

1925(大正14)年の創立以来、目標を達成するために努力を続ける「志願無倦(しがんうむことなし)」の精神のもと、「自ら考え、自らを表現し、自らを律する」女子を育成してきた品川女子学院。
教育目標に「私たちは世界をこころに、能動的に人生を創る日本女性の教養を高め、才能を伸ばし、夢を育てます」を掲げ、2014年には文部科学省からスーパーグローバルハイスクール(SGH)の指定を受けるなど、グローバル教育を実践してきました。
新型コロナウイルス感染症の拡大防止による政府の緊急事態宣言下では、SGH指定校として培ってきたICT教育を活かしたオンライン授業を展開。学年ごとに定めたシラバスは1学期分をきちんと終了し、通常通りの夏休み期間を過ごすことができました。今回は、広報部長の平川悟先生にオンライン授業と夏休みの取り組み、新校舎建設についてお話を伺いました。

春期講習からオンライン授業を試験導入

コミュニケーションの維持と通常通りの時間割によるエンゲージメントの向上

品川女子_広報部長の平川 悟先生
広報部長の平川 悟先生

新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため3月上旬から休校していた品川女子学院。迅速なオンライン授業導入に向けての準備は、3月末に行った新中2~高3への春期講習から始まりました。試験的に数学や英語の講習でオンライン授業を実施したのです。

さらには同感染症の広がりを見て、4月2日に教員7名でオンライン授業に向けたプロジェクトチームを立ち上げました。プロジェクトチームは2日間で案を作成し、教員に向けた説明会で共有。新学期の授業が始まる予定だった13日からオンライン授業を開始しました。

オンライン授業への転換は、SGH指定校としてタブレット端末の利用やさまざまなアプリを使ってきた授業のノウハウ、そして、目標を共有し、スピード感をもってものごとを推し進めるチャレンジ精神のある校風がものをいいました。

「このように環境が整ったのは前提条件として、SGH指定校としてタブレット端末やアプリなどのICTをフル活用した授業が生徒にも教員にも浸透していたからだと思います。オンライン授業にも大きな混乱なくスムーズに移行できました」

オンライン授業をスタートするにあたり、最も大事にすべきことを生徒の安全と学習機会の確保に据えました。また、学校の価値についても話し合い、クラス担任との生徒面談などによるコミュニケーションの維持と、通常通りの時間割によるエンゲージメントの向上を目指しました。

「まずはきちんとこれまで通り、朝から夕方まで学校と同じ生活リズムを作ってあげようと考えました。勉強の定着だけを重視すれば、もっと違うやり方があったと思います」

生徒はコロナ禍で初めての対応を強いられ、自宅で孤独に過ごしています。その不安を解消できるように心を砕きました。

オンライン授業で重要視したのは冗長性の確保

イレギュラーな対応で負担がかかりすぎないよう、授業や課題は「やりすぎない、やらせすぎない」

品川女子_普段の授業からICTを大いに使いこなしています。
普段の授業からICTを大いに使いこなしています。

通常通りの時間割を心掛けた同校では、朝のHRと50分授業×6時間の授業をオンラインで実施。放課後は生徒と担任のオンライン面談などを行いました。

コロナ禍で新しく導入したものはウェブ会議などに利用する「Zoom」くらいで、それ以外にはあまりなかったと話す平川先生。これこそが、コロナ禍での大きなアドバンテージだったと振り返ります。

オンライン授業は主に3つのパターンで行いました。
1.課題を配信し、ノートや「Google ドライブ」で生徒が教員に回答を共有する方法
2.授業の動画をYouTubeなどで配信し、生徒がインターネットを介して使用するWebアプリケーション「Googleスプレッドシート」などにコメントを記入する方法
3.Zoomを使った双方向のオンライン授業

教員のスキルや扱う単元により使うツールを選定。生徒が慣れてくるとグループワークもZoomでできるようになり、「教室でのグループワークより簡単でスムーズにできた」という感想があったほどです。

「コロナ禍のオンライン対応で最も重視したのが冗長性の確保です。生徒も教員もイレギュラーな対応を迫られ孤独を感じる日々の中、パソコンの画面を見続けるのはつらいもの。間にクイズを出したり、癒される映像を取り入れたり、さまざまな工夫をしました」

生徒からは「オンライン授業だとアーカイブ映像が残るのがうれしい」と好評だったそう。また、画面を共有して授業が進むので、まるでクラスの一番前の席で授業を受けているような緊張感があり、集中して臨むことができたと言います。

「授業をやりすぎない、生徒にやらせすぎないを大事にして、課題は負担がかからないように教員同士で状況を共有していました」

オンラインでは対応しにくい単元や総合的な学習の時間などは、登校が始まってから行えるようにカリキュラムを組み替えて実施しました。

分散登校開始後の中間試験では、遅れをしっかりとフォロー

通学時間を勉強にあてることで成績がupした生徒も

品川女子_開放感のある屋上は生徒たちの人気スポットです。
開放感のある屋上は生徒たちの人気スポットです。

新型コロナウイルス感染症の状況を見て、6月1日から分散登校を開始。中間試験を実施し、遅れが出ている生徒には別途フォローしていきました。なお、分散登校は、友達作りができていない中1と大学受験を控える高3から始まり、その翌週には中2と順に開始しました。

「最初の頃は、密にならないように1つの校舎に1つの学年で登校を始めました」

6月半ばには全員が登校をはじめ、7月上旬には期末試験。ここでも遅れが見える生徒はフォローします。結果的に、1学期のカリキュラムは通常のスケジュール通りで進み、夏休みの期間も当初予定していた通りに取り入れることができました。

「クラス担任を受け持つ教員は、生徒が一人ひとり孤独になってしまわないよう少しでも繋がりを感じる取り組みを朝のHRなどで取り入れていました。そのような工夫のおかげで、1学期に十分な授業数を確保できました」

品川女子_学習指導は各学年の現状に応じて柔軟に対応しています。
学習指導は各学年の現状に応じて柔軟に対応しています。

オンライン授業の期間中には、本来の通学時間を勉強にあてて、成績が伸びた生徒もいたそう。

「マイナス面は、休み時間に授業の質問が気軽にできないことですね。もちろん、授業中にチャットを使って質問はヒアリングするのですが、授業終了後にわざわざ聞きに来ようとする生徒は多くありません。それが難しかったですね」

オンライン授業期間は生徒発案のイベントも開催されました。毎年5月に行う体育祭が実施できなかったため、体育祭実行委員を中心に、体育祭にまつわるクイズや学年ごとに自宅でスクワットをする様子をZoomでつなげて回数を競うなどの「体育祭王」を開催。1時間ほどの催しでしたが、中2から高3が参加し、楽しい時間を共に過ごしました。

「タブレット端末は学校で設定済みのものを渡しています。中1は一度も登校することなく緊急事態宣言下に入りましたので、他学年がオンライン授業をしている間は、手紙と保護者に協力いただきながらメール対応、家庭にある端末(パソコンやスマホなど)でオンライン対応をしていました。実際にタブレット端末が手元に届いたのは分散登校が始まった6月でした」

これ以外にも、授業時間外に自習を企画し、オンラインでつなげて勉強時間を共有したり、クラブ活動をZoomで行ったり、生徒の自主的な活動が目立ちました。

「自宅で孤独を感じながら勉強するよりも、友達や教員と一緒に勉強する時間を共有するのが励みになったようです」

学校の根本指針である「自ら考え、自らを表現し、自らを律する」を体現する生徒たち。これまでの学校教育のすばらしさが、オンライン授業期間にも生かされました。

44日間を有効活用した夏休み期間

Webで一般公開した「白ばら祭」の準備やクラブ活動の練習も

品川女子_主体性が伸びる校風のもと、行事は生徒による委員が運営しています。
主体性が伸びる校風のもと、行事は生徒による委員が運営しています。

同校は、1学期の授業カリキュラムを、オンライン授業を導入することで無事に終えられたため、7月19日から通常通りの夏休みに入りました。

「8月31日まで休みで、この期間は夏期講習やクラブ活動を行いました。まさに、1学期にやりたかった友達との交流など、勉強以外の部分に使えていましたね。オンライン授業を全員でがんばったからこそ捻出できた44日間です」

夏期講習も通常通り4日間で1ターム×5ずつしっかり取れ、苦手科目を基礎から振り返ったり、大学受験に向けた勉強に励んだりする時間となりました。これも分散登校が始まった6月と7月に生徒たちの勉強の遅れを取り戻すフォローを、しっかりと実施していたからこそです。

なかでも、ダンス部は練習の甲斐あって、日本高校ダンス部選手権 全国大会決勝戦で見事7位入賞。審査員特別賞も受賞しました。周りは高3生が出場する中、高2生グループでの大活躍です。

「さすがに合宿はできませんでしたが、夏休み期間中にクラブ活動をできたことは良かったです。ダンス部の生徒たちをはじめ、様々なクラブががんばっていました」

品川女子_白ばら祭で創造性豊かな踊りを披露するダンス部。
白ばら祭で創造性豊かな踊りを披露するダンス部。

9月に2日間をかけて行われる白ばら祭(文化祭)は、例年、およそ1万人弱もの来場者がある大イベント。残念ながら今年は新型コロナウイルス感染症拡大防止のために、一般公開は行わない方針を決めました。

「一般公開はwebで行いました。動画配信したり、調べ学習をPDFなどを使いオンライン上で発表しました」

web公開の準備などの企画・準備は、生徒が中心となって進めています。白ばら祭当日は中1から高2の生徒が2日間の分散登校。在学生の保護者も午前、昼、午後の3つの時間帯に分けて入場を調整して行われました。

今後は新型コロナウイルス感染症の状況を見ながら、登校を続ける予定ですが、オンライン授業で培った学びは取り入れる予定です。

「コロナ禍の学校教育は、教員にとっても勉強になり、何より、オンライン授業は工夫次第でおもしろくできることがわかりました。今後は宿題の出し方や提出の方法、小テストなどでもGoogleフォームなどを利用することが増えると思います。

通常であれば3年間はかかる改革を3週間で行えたのではないかと言われています。これも、教員同士のオープンな関係性と、能動的でスピード感をもって進める学校文化が活かされたからこそ。

6割見通しが立ったらやってみようという職員室内の文化が、今回のピンチで活かされました」

実際に実施してみれば、6割から完成へと近づくもの。今後も、品川女子学院のスタンスを大切にしながら、スピード感をもって実践し、生徒に還元する方針です。

なお、「白ばら祭」の特別サイトは小学生親子なら2021年1月末まで閲覧可能なので、ぜひ学校H Pよりお申し込みください。

100周年を目指し、2024年には全校舎建て替え予定

生徒が仮の校舎を使わず過ごせるよう配慮したスケジュール

品川女子_完成予想図。もっと学校が好きになる校舎です。
完成予想図。もっと学校が好きになる校舎です。

今年、2018年11月から着工していた南側の校地に新校舎であるC棟が完成しました。今後はC棟を活用しながら、2022年に西にあるB棟が、2024年には東側のA棟が完成する予定です。

「5年後に控える100周年を目指した建て替えです。最終的には校舎にホールでき、これまで別のホールを借りて行っていた合唱祭などのイベントを実施できるような計画です。また、地下と渡り廊下で3つの校舎をつなぐことで、生徒の行き来もしやすくなる予定です」

C棟には、壁が一面鏡張りになったダンススタジオや作法室、理科室、屋上運動広場などの施設をそろえています。B棟ができあがると、C棟にある作法室を理科室に改造し、理科室の部屋数は最終的に3部屋に増えます。また、窓を全開にしなくてもエアコンと換気扇で24時間換気に対応でき、コロナ禍においても安心な施設となっています。

「本校らしいのは、生徒が仮の校舎を使わずに過ごせるよう工夫した点です。C棟にはまず、卒業を控える高1~高3のクラスが入ります。うまく旧校舎と組み合わせながら、教室を利用することで、2年後には新設されたB棟も使って、生徒全員が新しい校舎で過ごせる予定です」

空間にゆとりを持った校舎となり、緑が増える予定の同校。今後も、品川女子学院だからこそできるパワーある実践と慎重さを大切にしながら、生徒たちと共に成長していきます。

2021年度入試は、4教科入試のほかに算数1教科午後入試、4科目表現力・総合型入試を例年通り実施予定です。

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