学校特集
光英VERITAS中学校・高等学校2020
掲載日:2020年9月1日(火)
千葉県松戸市にある女子校・聖徳大学附属女子中学校・高等学校が2021年4月より、校名も「光英VERITAS中学校・高等学校」に改称、共学校としてスタートします。同校は1983年に創立。かつては併設する聖徳大学にほとんどの生徒が内部進学していましたが、今ではその割合が逆転、7割の生徒が外部進学する進学校に。国公立大学や難関私大への志望者が急増し、医学部をはじめとする理系志望者も増えたことから、進学校としてのさらなる進化が期待されています。そこで、校長の川並芳純先生は「進路の多様化に対応したい」と共学化を決断。川並校長に新しい学校「光英VERITAS(ヴェリタス)」にかける思いを伺いました。
目を引く個性的な新校名。
その由来と意味、そして込めた「思い」とは?
新校名「光英VERITAS」に込めた思いやその意味について、校長はこう語ります。
「新たな校名は、本校の決意を示すものです。『英』には『優れた』という意味があり、グローバル社会への意識もあります。そのうえで、『光』は自分が光り輝き、周囲も輝かせてほしいという願いを込めています。『VERITAS』は『真理』を意味するラテン語です。真理の探究に挑み続け、成長し続けようとするメンタリティー、地球規模での課題解決に挑む探究意欲や知的好奇心を伸ばしていきたいと考えています」
また、「英」には「英知」や「秀でた人」「グローバル」という意味がありますが、「生徒たちはダイヤモンドの原石です。一人ひとりが6年間を通じて原石である自分を磨き、広く世界に羽ばたいていってほしいという願いを込めました」と言います。
「VERITAS」(ヴェリタス)は、学校名としては珍しいと言えるでしょう。
「『VERITAS』はラテン語の『Optima est veritas /真理こそ最上なり』に由来します。知的好奇心をもって課題を解決しようとする志、また、学問の真理(ヴェリタス)を追究し、その力をもって将来、地球(人・社会・自然)を守る自覚と実践力のあるリーダーとなって、仲間たちを牽引していってほしい。そんな願いを込めました」
そして、校長は同校が思い描く「真のリーダー」についても熱く語ってくれました。
「真のリーダーとは、立場が上という意味ではありません。チームのみんなを引っ張っていく、仲間たちを輝かせる力を持っている、そういう人間が『リーダー』であると考えています」
光輝くダイヤモンドの原石が、真理を追究し、やがてリーダーとなる。新しい校名には生徒たちの未来に期待を寄せる、さまざまな願いが込められているのです。
「探究的な学び」×「理数サイエンス」×「英語」×「I C T」で
グローバルな視点を養う
同校はこれまでも「課題発見」から「課題解決」へとつなげる「探究プロジェクト学習」を行ってきました。共学化によって、その「学び」をさらに深めることを目指しますが、重視するのは「グローバル」と「サイエンス」の2大コンテンツ。そして、この2つを大きく支えるのが「I C T(ツール)」と「トルネードラーニング(メソッド)」、「小笠原流礼法(マインド)」の3つになります。
ところで、「トルネードラーニング」とは?
「探究的な学びは、まずテーマを設定します。その後、『情報収集・分析』をし、『課題を発見』、『解決策を査定』し、『発表(表現)』する。グループ学習の中でそのプロセスを相互に評価し、そこからまた新たな課題につなげていくわけですが、この繰り返しを『トルネードラーニング』と言います。これは探究プロセスを体系化させたもの、つまり、課題発見から課題解決を繰り返し行うことで、基礎の定着と応用力の向上を図っていくのです」
この探究的な学びでは、男子生徒への期待も高まります。
「女子にはないダイナミックで奇抜な発想が出てくるのではないでしょうか。男子と女子がお互いに影響し合って、学びを向上させていく。そして、学びの多様化を実現する。そうなっていくことを目指しています。また、学習だけでなく、クラブ活動をはじめとする学校生活全般にもトルネードラーニングを生かしていきます。これはまた、本校が大切にしてきた『和』の精神にもつながるものだと考えています」
ちなみに、「和の精神」とは聖徳学園の創立の理念である、聖徳太子の「和を以て尊しとなす」に由来するもの。新しい取り組みの中にも、創立以来大切にしてきた古き良き精神を大切にする、そんな同校らしさが垣間見えてきます。
※「探究教育」の詳細はこちら→https://www.matsudo-seitoku.ed.jp/feature/inquiry/
新校名にも込められた「英」には、グローバル教育に対する思いもあります。
グローバルの基本は英語ですが、英語では「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能のうち、「話す」を「コミュニケーション」と「プレゼンテーション」に分け、5領域の育成に力を注いでいきます。
また、iPadを使ったオンライン授業や多読、英語劇なども引き続き行っていきます。
「英語は、生徒一人ひとりのレベルに合った個別指導を行うことで、誰一人として『置いてけぼりにしない』授業をめざしています」
英語力の基礎のうえに、世界に向けて自分の考えを発信でき、地球規模で物事を考えられる次世代リーダーを育むためのグローバル教育。英語やグローバル教育にも、新しい学校への思いが詰まっています。
また、同校は今、ユネスコスクールへの加盟申請中です。
※「英語教育」の詳細はこちら→ https://www.matsudo-seitoku.ed.jp/feature/english/
「来年からは理数系もさらに力を入れていきます」と校長。
理科教室だけでも8つある同校ですが、この充実した環境を生かすためにも、さらに実験や自然観察などの機会を豊富に用意する予定だそうです。
「理科では基礎や基本で得た知識をもとに、『探究的な学び』を生かした実験や自然観察などを通して、学んだ知識が正しいかどうかを実証します。また、iPadで実験の様子を記録し、振り返ることで理解を深め、次の学習や課題に生かします。数学でもiPadを活用し、自分の考えを数学的に表現し、論理的思考力、発想力、想像力を養っていきます」
共学化することで男子から刺激を受け、女子の理系志望者がさらに増えるのではないかとも期待しているそうです。さらに、新しい取り組みとして東京理科大学と提携することも決定しました。
「たとえば研究室を訪問したり、講演会を開くなど、主に人的交流を図っていきます」
理系に興味のある受験生は注目です。
進路対応についても、さらに強化しています。今年から、放課後に自習ルームを設けました。
「この自習システムは『VERITAS After School』と名づけました。補習は学年別ではなくレベル別に対応し、チューターとして大学生を招いています。たとえば、今は千葉大学医学部や東京大学の学生にも来てもらっていますが、チューター制の良いところは、個別に大学や入試について質問したり、相談できること。こういったことは、教員よりも年の近い先輩のほうが話しやすい面もありますし、生徒からも好評です。学習に対するモチベーションもアップするなど、良い刺激も受けているようですね」
創立以来、「和の精神」を重んじてきた同校ですが、6年間を通じて行われるのが、精神的支柱とも言える「小笠原流礼法」です。共学化してもそれは変わらず、6年間、全生徒が履修することに。
礼法の授業というと、女子校のイメージが強いのですが、「もともとは武家の作法なんですよ」と校長。「小笠原流礼法は、相手を大切にする心持ちがベースとなっています。『相手の立場になって考える』『相手への配慮や心遣いを育む』小笠原流礼法は、人間形成のもとになるのです」
その典型例の一つに、来校者の誰もが一様に驚く生徒たちの下駄箱があります。見事なほど綺麗に、靴の踵のラインが揃っているのです。これは先生方からの指導ではなく、先輩から後輩へ受け継がれる伝統だとか。
また、「ダイバーシティ」(多様性)を受け入れる素地となるものも小笠原流礼法にはあります。
「生徒たちのマイノリティーに対する眼差しの温かさに感心したことがあります。これも小笠原流礼法を学んでいるからこそだと思います。今後も日本の文化を学ぶことはもちろん、グローバル社会に向けて『国際儀礼』の要素を加えて進化させていく予定です」
6年間の授業で、生徒たちは相手を思いやる心を芯から身に染み込ませていくのです。
また、校長は挨拶も大切にしています。
「私は生徒たちに『泥棒にも挨拶をしなさい』と常々言っています。これは極端な例ですが、忍び込もうとしている時に『こんにちは』と声をかけられたら、さすがに泥棒も盗みには入れないのではないでしょうか(笑)。それだけ挨拶は、人と人との関係を円滑にするツールなのです」
東京ドーム2個分の敷地に緑がいっぱい。
自然豊かな環境で、のびのびと育ってほしい
男子を受け入れるにあたっては、ハード面の準備も進行中です。
制服は男女ともにブレザータイプ。男子にはネクタイ、女子はスカートのほかスラックスも用意されます。また、セーターはグレーと赤の2種類ありますが、男女兼用なのでどちらでも選択可能。
「男子用トイレや更衣室の設置はもちろんですが、野球部やサッカー部も新設する予定です。模擬国連部や鉄道研究会もおもしろそうですね」と、校長は顔をほころばせます。
東京ドーム2個分の広いキャンパスに充実した設備など、男子を受け入れる環境は十分に整っています。そして今、進学校としての本校の将来を考えた時、共学化することが最善だと決断しました。男子が入学することにより、男子が持っている良い点が女子や学校全体に伝播していくことを期待しています。男子がどんなふうに本校に変化をもたらせてくれるのか。まさに今、私たちは『わくわく』『ドキドキ』の気持ちで準備を進めています」
「私が教師として大切にしてきたのは、学校の空気です」と、校長。同校には、卒業後何十年も経っても、学校に顔を出してくれる卒業生も少なくないのだそうです。
「創立当初の卒業生には同窓会の役職に就いている方もいるのですが、本校を訪れた際、いまだに私に気軽に声をかけてくれます。また、若い方は学校に来ると『母校に来ています!』と、本校の校舎とともにSNSに写真をアップするなど、本校には卒業しても『学校大好き』な卒業生が多いのです」
生徒と先生の距離が近く、温かな空気に満ちた校風は昔から変わりません。そして、そこには先生方の常に生徒を見守る眼差しがあります。
「我々教員は、生徒たちが安心・安全に学校生活を送れるよう、また、生徒たちの良いところを見るよう心がけています」
広大な敷地と自然豊かな環境、小笠原流礼法で育まれた心、そして先生方の温かい眼差し。これらが、穏やかで優しい校風をつくり出しているのかもしれません。これらがベースとなり、どっしりと地面に根を張っているのです。この根は共学化されても、校名が変わっても、変わらないもの。そして、この根はますます広がっていくことでしょう。
最後に、校長から「光英VERITAS」第1期生となる受験生へのメッセージをお伝えします。
「来年入学してくる1期生が新しい学校をつくっていく先駆者となります。思う存分、フロンティア精神を発揮してください。学校の空気など良いところや伝統はそのままに、学校を改革していってほしいですね。そして、『いきいき』『のびのび』と6年間を過ごしてほしいと思います。私たちは、新しい学校に『わくわく』『ドキドキ』した気持ちを持った受験生を待っています」
教育の三本柱は、英語グローバル教育、理数教育、そして小笠原流礼法。「Dive into Diversity」を合言葉に、知性と教養、そして他者を思いやる心を備えた「探究型リーダー」の育成を目指す光英VERITASが、いよいよ来年始動します。
「不易流行」の精神が息づく「光英VERITAS」が、主体的に新しい歴史をつくっていく生徒たちの笑顔と活気に満ちる日が今から楽しみです。