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学校特集

桐朋女子中学校・高等学校2019

自分の居場所を見出し、生きる力を培う
『ことばの力』を育成して、いかなる環境でも自己表現でき、創造力を発揮しながら自立して歩む女性に

掲載日:2019年11月1日(金)

1941年に山水高等女学校として創立し、1948年、現校名に名称変更した桐朋女子。『こころの健康 からだの健康』をモットーとして、創造性豊かな女性を世に送り出しています。一人ひとりの個性や特性を尊重した指導と、『ことばの力』をすべての活動の土台とし、その育成と強化を目指した教育を推進しています。今年度から校長に就任した今野淳一先生は、数学科の教員として30年来桐朋女子を見続けてきた、同校のベテランです。新校長に、同校の現在、そして今後の桐朋女子の学校生活について伺いました。

■生徒一人ひとりに合わせたカリキュラム作りで未来を思い描く

桐朋女子_校長の今野淳一先生
校長の今野淳一先生

今野先生は「生徒たちが学校生活を送る上で、我々教職員が最も重視していることは、一人ひとりを大事にするということです」と話します。

桐朋女子に入学した生徒たちに約束されているのは、教師陣のきめ細やかな指導です。とはいえ、手取り足取りの受け身の教育ではありません。自ら進んで学びたいことを選択し、それを教員が徹底的にフォロー。生徒自身が努力して体得することを目指します。担任となる教員は、生徒一人ひとりに細やかな目を向けるために、普段から密なコミュニケーションを取り、信頼関係を築いています。

その関係性の密度がわかり、同校の教育で特徴的なのが、6年間を通じて評価の伝達に通知表を使用しないこと。前期・後期各学期の終了時期に、担任教師との面談で評価が伝えられます。面談では、学習状況だけでなく日常生活のこと、将来についても話が及びます。
一方、生徒は「テスト直しノート」や「面談ノート」などを見て自身の学校生活・学習の練度を振り返ってから臨み、担任から講評やアドバイスを聞き、それを今後の学校生活につなげていくのです。

「中学生のうちは徹底的に手をかけ、学年が上がるにつれ、見守る体勢に移行します。私たち教員は、アドバイスはしますが、主体的に動くのは生徒です。失敗することもありますが、学校内での小さな失敗を重ねて、失敗を恐れずに挑む精神を養ってもらいたいのです」と今野先生は語ります。

桐朋女子_先生に提出するテスト返しノートには、返却時に温かなメッセージが記されます。生徒たちに安心感を与えると同時に発奮材料になっています。
先生に提出するテスト返しノートには、返却時に温かなメッセージが記されます。生徒たちに安心感を与えると同時に発奮材料になっています。

中高6年間をA、B、Cの3ブロック制に分け、中1・中2にあたるAブロックでは、学習や物事に取り組む姿勢、協働作業でのふるまいなどを反復しながら身につけていきます。
低学年で基礎を固め、Bブロック(中3・高1)では体験や経験を積み重ねて自己理解を深め、将来を考えて、それを表現する力を培います。そしてCブロック(高2・高3)からは、個性に磨きをかけ、創造力を開花させるプログラムへ。選択制の授業が始まりますが、その内容は多くが自由選択です。

「文系・理系と分かれる学校が多いですが、本校では生徒に選択権をゆだねています。高2生は21コマから、高3生は54コマからとさらに細分化された中から自分の学びたいものを選択し、カリキュラムを組み立てます」(今野先生)

自らの目標や学びたいことが理解できていないと、その選択も難しいもの。そのため、生徒たちは自分の得意とすること、学びたいことを折に触れ真剣に考え、信頼する教師への相談、先輩との対話などを通して、未来へのヴィジョンに思いを馳せ、決定していきます。

■『ことばの力』から創造力を生み出す

桐朋女子_英会話教室での授業の様子。中高6年間を通して、英語を用いる機会も多数用意されています。
英会話教室での授業の様子。中高6年間を通して、英語を用いる機会も多数用意されています。

こうした教育を通じて、同校で最も重視されているのが『ことばの力』の育成です。

人は「ことば」を通して考え、「ことば」で他者に伝えます。『ことばの力』はすべての活動の土台になると考え、論理的な思考力や発想力、表現力、主体性や協働性を養い、豊かな創造力を作り出すこと−−。これが、桐朋女子の教育の根幹です。

そのために実施されているのが、『DLP(デュアル・ランゲージ・プログラム)』です。これはグローバルスタンダードな「ロジック」と「発信力」を獲得し、日本語と英語をツールとして使いこなすプログラム。自分の言いたいことを論理的に組み立てて他者に伝え、対話して深めることのできる人材を育成します。

Aブロックでは、国語の授業で『論理エンジン』を用いて、日本語の論理的な使い方、要点を読み取る訓練をし、言葉を扱う力の基礎を徹底的に学びます。社会科や理科でもレポートや実験を数多く実施し、調べ、まとめ、書くことを繰り返し、自分で考えられるよう取り組みます。

Bブロックでは「つくば言語技術教育研究所」と連携し、言語技術教育を体系的に学習。グループで議論し、その内容をクラス全体で整理、授業内容を作文にまとめ、それをルーブリック評価をもとに採点するまでを一連の学びとしています。この授業を反復することで、日本語による「対話」「物語」「説明」「論証」「分析」という5技能の訓練を行います。

桐朋女子_Cブロックの『DLP外国語特講』では、自然科学や医療など現代社会で起きている様々な問題を網羅して学びます。
Cブロックの『DLP外国語特講』では、自然科学や医療など現代社会で起きている様々な問題を網羅して学びます。

Cブロックは、『DLP外国語特講』という自由選択科目を用意しています。この授業で目指すのは、言語というツールを使って世界を理解し、その上で世界の諸問題について自分の意見をもち、発信することです。1つのテーマを2週に渡り、日本語と英語のそれぞれの授業で2つの目線から掘り下げて考え、自分の意見をまとめ、発表します。そして、英語と母語、両方で自分の思いや考えを伝えること、これまでの知識や教養、世の中の事象を分析して組み立て、効果的に発信することを身につけていきます。

このように、同校が継続してきた数々の取り組みが、表現力や論理的思考力を重視する、昨今のAO入試や推薦入試における、高い合格率につながっています。

「自ら考えて、論理的にまとめ、それを人に伝えるという本校がずっと大切にしてきたことは、卒業後に社会で活躍していくために必要な技能であると教え続けてきたものです。これが実り、生徒たちが目標とする進路への推進力になっているのは喜ばしいことです」(今野先生)

■「自分の居場所」を見つけ、生き生きと輝く生徒たち

桐朋女子_6学年対抗、全14種目で競う体育祭。閉会式では全校生徒が肩を組み、学園歌を歌い、団結のエネルギーを実感します。写真は開会式の様子。
6学年対抗、全14種目で競う体育祭。閉会式では全校生徒が肩を組み、学園歌を歌い、団結のエネルギーを実感します。写真は開会式の様子。

今野先生が30年以上桐朋女子の生徒を見つめて感じているのは、自分の居場所を見つけた者の力強さです。

「恐がりで引っ込み思案だった生徒が自信をもち始め、校内で朗らかに過ごし、ひいては社会に出て様々な業種で活躍する姿を何人も見てきました」と今野先生。

同校では、学業以外にも、主体性や協働性を育む行事が数多く設けられています。6学年対抗で競う体育祭や、毎年クラス・クラブなど100以上の団体が展示や発表を披露する文化祭などを筆頭に、自分たちで企画運営し全力で準備して楽しむ気風があり、生徒たちは濃密な青春時代を過ごします。

また、帰国生は104名と全校生徒の約1割を占め、1クラス平均2~3名在籍しています。このように、帰国生のような多彩なバックグラウンドをもつ生徒が多いことも、桐朋女子が他者を受け入れ、協働するスタンスを身につける一助になっていると今野先生は語ります。

「本校では多様な生徒とふれあい、新たな考えを学び、互いを尊重する風土があります。そして皆が『自分はここにいていいのだ、ここでやりたいことがある』と夢や目標に向き合い、邁進していくのです」(今野先生)

桐朋女子_「本校の口頭試問のために特別な対策は必要ありません。先生の話を聞き、粘り強く考える。そういった学習の基本を日頃から意識してください」(今野先生)
「本校の口頭試問のために特別な対策は必要ありません。先生の話を聞き、粘り強く考える。そういった学習の基本を日頃から意識してください」(今野先生)

輝くような個性をもった生徒が集まる理由の一つに桐朋女子ならではの入試があります。

中学受験は一般的に、学力を審査されて合否が決まりますが、同校はその方法だけに重きを置いていません。半世紀以上前から入学試験に口頭試問を取り入れ、生徒の「聞く力」「理解する力」「考える力」「粘り強く取り組む力」に焦点を当てています。 2017年度からは『論理的思考力&発想力入試』、2019年度からは『Creative English入試』を取り入れ、さらに生徒の資質を計る試みを強化しています。

現在、同校が実施している入学試験の内容は以下の通り<( )内は2020年度の実施日・募集人員>。

・A入試(2月1日午前・約130名)
口頭試問と国語・算数の筆記による入学試験。口頭試問は20~30名のグループで授業を受け、いくつかの課題に答えてから、試験官との対話に臨みます。

・Creative English入試(CE入試)(2月1日午後・約10名)
英語一教科入試。英検3級程度の学力を想定しており、準備室で課題に答えた後、英語でのインタビューが行われます。

・論理的思考力&発想力入試(2月2日午前・約40名)
言語分野と理数分野、2種の記述型試験。教科の枠を超えて様々な角度から出題。文章の読解力やそれを発展させる発想の豊かさ、資料や図表を読み取り、論理的な判断力を表せるかを見ます。

・B入試(2月2日午後・約40名)
国語・算数の2科、または国語・算数・理科・社会の4科の筆記試験を行います。A入試の筆記試験と大きな違いはありません。

・中学帰国特別入試(12月1日・1月22日・約20名)
海外に1年以上滞在し、小4以降に帰国した生徒対象。英仏独いずれかの外国語による作文と日本語による面接で合否を決定します。

桐朋女子_活発に発言が飛び交う授業。より深い論理的思考力や発想力を磨く日々を送ることができます。
活発に発言が飛び交う授業。より深い論理的思考力や発想力を磨く日々を送ることができます。

特にA入試は、一見難解な試験に感じられますが、内容は、小学校で学習したことを踏まえた総合的な問題です。筆記試験は、難問・奇問に答えるまでの能力や知識は必要とされません。口頭試問では対話を通して、自分で学ぶ意欲をもち、考える力やコミュニケーション能力、表現する力、すなわち基礎の上に成り立つ、潜在的な総合力を計っているそうです。

「受験生の皆さんは、もちろん大変緊張して臨みますが、あまり構えずに来てください。上手に話せなくても、それは大きな問題ではありません。試験官の教員がその都度ヒントを出しますので、それを受けたやりとりの中で、受験生がどのように考えているのか、自分の言葉で表現できているか、また、間違えても諦めずに取り組む姿勢があるかを見ています」(今野先生)

なお学校HPでは、各入試について詳しく述べられているので、ぜひ参考になさってください。

桐朋女子_クラブは全32種類あり、非常に熱心に行われています。写真は中高で活動している「音楽部音楽班」。
クラブは全32種類あり、非常に熱心に行われています。写真は中高で活動している「音楽部音楽班」。

また19年度入試からは、英語に長じた生徒たちのために「英語アドバンストコース」を新設しました。
『CE入試』合格者や帰国生たちが対象で、英語力をさらに伸ばすことが狙いです。

こうして桐朋女子に入学した生徒は、多様性を認める柔軟な思考力と自己肯定感、自律することを身につけ、学業、部活、行事に本気で取り組み、『ことばの力』を使って自己表現し協働する術を学びます。その姿勢は『生きる力』につながり、その力をもった生徒たちは、社会のどこにいても輝く女性になると先生方は自負しています。

子どもから大人につながる重要な6年間を、『こころの健康 からだの健康』を育成し、『ことばの力』と『生きる力』を磨き上げる桐朋女子の精神の下、真摯に闊達に過ごしてみてはいかがでしょうか。

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