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学校特集

サレジアン国際学園中学校高等学校(現・星美学園中学校高等学校)

2022年春 共学化校名変更「サレジアン国際学園」がスタート
PBLの全教科展開とオールイングリッシュ授業のクラスも新設

掲載日:2021年4月6日(火)

星美_副校長の小泉三千代先生
副校長の小泉三千代先生

北区赤羽台の女子校・星美学園中学校高等学校が2022年4月より共学化し、「サレジアン国際学園中学校高等学校」として新たにスタートします。「21世紀に活躍できる世界市民の育成 」を教育目標に掲げ、PBL 型授業を全教科で展開、主要教科を英語で学べるインターナショナルクラスも新設されます。キリスト教価値観に基づく建学の精神を受け継ぎながらも、次の時代につながる学校改革に取り組む同校。刷新されるその教育内容について副校長の小泉三千代先生にお話を伺いました。

変革と混迷の時代の教育に尽力した創立者
その意志を受け継ぐ学校改革

星美_学園内で子ども達を見守る聖ヨハネ・ボスコ像
学園内で子ども達を見守る聖ヨハネ・ボスコ像

現・星美学園中学校高等学校はカトリック女子修道会「サレジアン・シスターズ」を設立母体とする女子校ですが、このたび教育内容を刷新、校名を「サレジアン国際学園」に変更し共学化にも踏み切ったことにはどのような背景があったのでしょうか。
「サレジアン・シスターズは、『サレジオ修道会』の創立者である聖ヨハネ・ボスコと聖マリア・ドメニカ・マザレロによって1872年に設立されました。当初は『女子にも教育を』との求めに応じて設立されたのですが、現在では世界97ヶ国に広がり、男女問わず若者の教育に携わっています。サレジアン・シスターズの学校である本校にとっても、共学化は時代の要請に応えるという意味で必然的な選択だったといえます。
聖ヨハネ・ボスコが生きたのは、19世紀の産業革命のただ中のイタリアでした。サレジオ修道会は、満足に教育を受けることのできない子どもたちのために日曜学校を開いたことが始まりです。また、創立者は職業専門学校に当時最新式の印刷機を導入するなど手に職をつけさせることにも尽力しており、進取の気性に富んだ人物としても知られています。
新しい校名に冠した「サレジアン(salesian)」という言葉は、英語で「サレジオ的」を意味する形容詞です。変革と混迷の時代に生きる子どもたちに必要な教育とは何かを考え実践した創立者の意志を受け継ぎ、変わりゆくグローバル社会の一線で活躍できる世界的な市民を育てていくという決意が込められています」(小泉先生)

星美_インタビューに答える小泉副校長
インタビューに答える小泉副校長

サレジアン国際学園では、「21世紀に活躍できる世界市民の育成」という教育目標とともに、必要な力として「考え続ける力」、「コミュニケーション力」、「言語活用力」、「数学・科学リテラシー」、そしてそれらを培う土台となる「心の教育」を挙げています。この5つのキーワードに基づいて新たな教育プログラムも組み立てられているといいます。
「聖ヨハネ・ボスコが掲げていた教育目標は『善良なキリスト者、誠実な市民の育成』というものでした。この目標を、テクノロジーが急速に進化し、グローバル化も進展する21世紀という世界において新たに捉え直したとき、この時代に輝き生き生きと活躍する『世界市民』という生徒の将来像が浮かんできました。
世界市民として活躍するために必要な力は何だろうかと考えて、この5つのキーワードを導き出しました。経験したことのないさまざまな問題に直面したときに、それらの解決のために主体的に『考え続ける力』がまず必要だろうと位置づけました。そうしたタフな思考力を培っていくために関連する力として、日本語や他言語を用いて考えを表現するための『言語活用力』、多様な文化的背景や価値観を持つ人々と関わり、協働し共創していける『コミュニケーション力』、複雑かつ高度にヒトとテクノロジーが関連し合う社会において科学的な思考、判断ができる『数学・科学リテラシー』が挙げられます。
ただし、これらの能力の向上はやはり生徒一人ひとりの心の成長なしには達成し得ないものですので、そのためにもっとも大切なのが『心の教育』です。能力と人間性のどちらもが最大限に引き出されることによって世界市民として活躍するということが実現されていくと考えています」(小泉先生)

自ら学び考え続ける力を培う
PBL型授業を全教科で導入

星美_PBL 型授業の様子
PBL 型授業の様子

同校が新たな教育プログラムの中心に据えたのが、PBL(=Project Based Learning)です。PBLとは、課題解決型学習とも呼ばれ、知識を詰め込むような従来型の受動的な学習ではなく、自ら問題を発見し、解決することを重視した能動的な学習法ですが、これを全教科で導入するといいます。
「本校では以前から、ICTを活用したグループ・ディスカッションやグループワークなどアクティブラーニングは実施していましたが、学校全体の取り組みとしてはまだまだ十分とは言い切れない状況でした。しかし、考え続ける力を培うためには主体的な学びを促すPBL型授業を全ての教科で取り入れ、継続的に実践していくことは必須と考え、2020年度から全教員が参加する研修や模擬授業の研究会を実施して、本格的な授業改革の取り組みが始まりました。
PBL型授業では、ディスカッションや自分の考えをプレゼンテーションする機会も増えることで、思考力だけでなく、コミュニケーション力、言語活用力を身につける一助となります。多様な考え方に触れながら自分の考えを再構築して、結論を導き出すという、『論理的に考えるプロセス』を体得していくことを大切にしています。
また、日々学ぶ中で生徒たちに確立してほしいと思っているのが、『シェアド・リーダーシップ』という考え方です。一人ひとりがリーダーシップを発揮することでそのグループ全員の能力を最大化させる手法で共有型リーダーシップとも呼ばれています。友達の得意なところを見つけたらフォローに回って手助けをし、自分の得意な場面が巡ってきたらリーダーとなって、自身の力を思う存分に発揮する。そうした相互作用によって、授業は活性化され、互いの成長にもつながっていきます」(小泉先生)

星美_タブレット端末を活用してプレゼンテーション
タブレット端末を活用してプレゼンテーション

PBL型授業の展開においてはICTの活用も欠かせないといいます。同校では、2018年度から順次、生徒がタブレット端末を1人1台所持するようになり、2020年度にはすべての学年でタブレット端末を用いて学習しています。その用途は調べ学習に止まらず、アプリや教材を取り入れ、問題解決の過程で「考える」ことをサポートしたり促進したりするツールとして活用されています。こうした下地があったため、新型コロナウイルスの感染拡大による休校措置の期間にも、オンラインへの対応は保護者の援助にも支えられ比較的スムーズに行われました。そして登校再開後にも、状況に応じて柔軟に学校活動のオンライン化を行っています。
「本校が目指している数学・科学リテラシーを高める教育というのは、思考することを促進したり、自分の考えを表現するためにICTツールを使いこなし、テクノロジーを駆使できるようになることに止まりません。多様な問題を解決するために、新たな技術やサービスを生み出していくクリエイターとなる将来の姿も見据えています。ICTの担当教員を中心に各教科が連携し合いながらアプリや教材の研究もますます活発に行われていくでしょう。また、高校だけではなく中学でもプログラミング思考を育てるための授業を導入するなど、学びの機会を豊富に設けていきたいと考えています」(小泉先生)

主要教科をオールイングリッシュで学ぶ
インターナショナルクラスを新設

星美_インターナショナルクラス
インターナショナルクラス

同校の学校改革においてPBL型授業に次いで特筆すべき点として挙げられるのが、「本科」と「インターナショナル」、異なる特色を備える2つのクラス展開ではないでしょうか。本科クラスでは、PBL型授業を中心に思考力を培うとともに、英語授業も週8時間あり、言語活用力も同時に伸ばしていきます。また、生徒がテーマを設定し研究を行う「個人研究」という探究型の学びが用意されています。
「本科クラスは、5つのキーワードに基づくサレジアン国際学園ならではの教育が余すところなく盛り込まれたクラスといえます。思考力や数学・科学リテラシーなどの力が養われると同時に、生徒の興味関心のある分野を『個人研究』によってさらに深く学ぶことで、生徒一人ひとりの個性も輝きます」(小泉先生)
一方、インターナショナルクラスでは、中学から英語学習を本格的に始める生徒と、帰国生など英語が堪能な生徒をともに受け入れ、ひとつのHRクラスで学校生活を過ごします。英語授業は週10時間あり、言語活用力の伸長に注力したクラスといえます。授業は英語力に応じてStandard Group(SG)とAdvanced Group(AG)の2展開で実施し、AGでは英語、数学、理科、社会の授業はオールイングリッシュで行います。
「SGの生徒にとっては帰国生がそばにいるだけでなく、外国人教員が副担任を務めるため、休み時間や課外活動の時間など、英語でのコミュニケーションが当たり前の環境で刺激を受け、英語力を飛躍的に伸ばすことが期待できます。また、AGの生徒はもともと持つ高い英語力を維持・向上させながら、中高6年間学ぶことができます」(小泉先生)
AGの対象はネイティブレベルの英語力をもつ生徒を想定しているため、2022年度募集では帰国生入試も実施予定。
また、一般入試は英語1科目+英語エッセイと英語+日本語での面接を行う予定のため、帰国生の基準に満たない場合も相応の英語力があると認められればAGの授業を受けることが可能だといいます。
また、SGの場合は入学時の英語力は問わないため2科目入試でも挑戦することができます。
高校も中学と同様、本科コースと並んで、2022年度入学生が高校に上がる2025年度にインターナショナルコースを設置予定で、インターナショナルコースのAGでは中学に引き続き主要教科の授業は英語で実施、海外大学への進学も視野に入れ、進学準備のバックアップも行っていくということです。

自己肯定感を高め一人ひとりを輝かせる
アシステンツァ教育

星美_2021年度完成予定 休憩スペース
2021年度完成予定 休憩スペース

大きな学校改革に乗り出し教育内容を一新することとなった同校ですが、その学びの基礎となっていくのが心の教育であると小泉先生は強く語ります。
「さきほどお話ししたシェアド・リーダーシップという考えは、授業の中だけでなく、学校生活すべてにおいて求められる姿勢だと考えています。互いが互いに認め合える空間の中で芽生えるのは、『自分は自分のままでここにいて良いんだ』、『自分がここにいる意味はあるんだ』という自己肯定感です。それは、人の人生ではない、自分の人生を、自分で生きていくための原動力となるのではないでしょうか。その自己肯定感というのは、心の教育があってこそ育まれ、だからこそ生徒は安心してシェアド・リーダーシップを発揮することができると思います。
そのためには毎日の学校生活の中で、教員や家庭が生徒と関わりをもちながら、生徒一人ひとりの心に愛情と信頼を形成することが必要です。こうした働きかけによる教育を私たちは『共に喜び、共に生きる(アシステンツァ)』教育と呼んでいます。この考え方をすべての基礎として、本校独自の教育プログラムが組み立てられているともいえます。

星美_2021年度完成予定 図書室エリア
2021年度完成予定 図書室エリア

校舎リフォーム計画が進行中で、2022年春には完了予定です。また、男子を迎えるためのトイレ等の施設整備だけでなく、理科室や図書室もリニューアルされ、考えることやコミュニケーションを活性化させるような学びのための環境整備もなされていきます。世界市民として一人ひとりが輝き、変わりゆく世界に飛び出していくための、その土台となる6年間を、ぜひサレジアン国際学園で過ごしてもらいたいと考えています。皆さんと出会い、一緒に学ぶ日を心待ちにしています」
創立者の思いを受け継ぎながらも、時代の要請に応える学びを生徒に届けるために学校改革に乗り出したサレジアン国際学園中学校高等学校。1年後の春、同校に入学した生徒たちが伸びやかに学び、一人ひとりが輝く姿を想像すると、期待に胸が高まりました。

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