学校特集
昭和学院中学校・高等学校2019
掲載日:2019年7月1日(月)
2020年に創立80周年を迎える昭和学院(千葉県市川市)は、「明敏謙譲」を校訓に掲げ、知・徳・体の全人教育を実践してきました。大井俊博先生は校長に就任した2016年4月から「昭和リバイバルプラン」をスタートさせ、入試改革や海外留学制度創設などさまざまな改革を力強く推進してきました。来年度はさらなる飛躍を目指し、新コース制を導入して新たな一歩を踏み出します。今回は、新コース制を中心に、昭和学院の学校改革とその成果について大井先生に詳しく話を伺いました。
2020年度から新コース制を開始
首都圏では公立や私立の中高一貫校を受験する生徒が増加しています。その中で、受験生や保護者の注目を集めて年々受験者数を伸ばしているのが昭和学院です。2016年度の中1は3クラスでしたが、2019年度の中1は142人で5クラスと過去最高の人数となり、その人気ぶりがうかがえます。
校長・大井俊博先生は2016年4月に着任し、現在5年目を迎えました。大井先生は都立中高一貫教育校である両国高等学校・両国高等学校附属中学校で、その手腕を振るってきた先生。オールイングリッシュの授業や、都立校としては異例の"全員参加の海外語学研修実施"を断行して、「両国」の実力と人気を不動のものにしました。そんな大井先生の着任で、昭和学院も明るい未来へと大きくかじを切ったのです。
2020年度から実施するのは、「昭和イノベーション元年」と銘打った新コース制で、令和時代の幕開けにふさわしい斬新な内容です。新制度は「100周年になっても通用し、活躍できる人を育てる」ことを目指して、昭和学院が変わっていく姿勢を打ち出しています。
インターナショナルコースを新設
来年入学する新中1と、高校から入る外部生も加わる新高1で、この新コース制がスタートします。中1・中2はIA(International Academyインターナショナルアカデミー)コース、AA(Advanced Academyアドバンストアカデミー)コース、GA(General Academyジェネラルアカデミー)コースの3つの編成になります。
「今や特進コースと総合進学コースだけでは、受験生や保護者のニーズには応えられません。生徒一人一人の個性・感性・能力・適性がいかせるようにと考えて、この3つのコースを設定しました。昭和学院では自分をいかせる場所がたくさんあり、大学進学や将来につながるカリキュラムを用意しているのです」と大井先生は力強く話します。
IAコースは国際教養コースで、、授業はオールイングリッシュ。英語を媒体として国際的な分野・テーマを研究をし、教養を深めていきます。海外の大学への進学や日本の大学の中でも人気が高い国際教養系学部受験を視野に入れており、全員が留学する可能性もあります。ネイティブ教員と日本人教員の共同担任制で、英語のシャワーを浴びる生活になります。
文武両道で難関大を目指す生徒を応援
AAコースはこれまでの特進コースで、難関大学受験に対応したカリキュラムを組んでいきます。「わが校はスポーツも盛んで全国レベルの部活もたくさんありますが、その中で勉強を頑張って筑波大や早稲田大に進学する生徒はいます。このように、"勉強も頑張るし運動も頑張りたい"という生徒は昭和学院に来てほしい」と大井先生は頑張る生徒への熱い思いを語ります。中1・中2はIAコースとAAコースをまとめて1クラスとする予定ですが、入学者が多ければIAコースとAAコースがそれぞれ1クラスずつ独立する可能性もあります。
そして勉強だけでなくスポーツや部活、行事や趣味なども頑張りたい、のびのびとマイペースで過ごしたい生徒のために、GA(ジェネラルアカデミー)、つまり総合進学コースを用意しています。「GAは、それぞれが希望するキャリアを選択する、キャリアをデザインしていくコースです。文系は英・国・社、理系は英・数・理といった既成概念にとらわれず、自分の目指すキャリアに向けて自由に科目を選択して学べます。もちろん、従来の大学受験の科目に集中してもいいし、興味関心を広げるためにリベラルアーツ的に幅広い学科を選択することもできます」
さらに、中3からはこの3つに加えて、TA(トップグレードアカデミー)コースを設けます。TAコースは東京大学はじめ最難関国立大学進学を目指しハイレベルな授業を行うコースです。5教科の中の3教科の先生による複数担任の形をとる予定です。TAコースとAAコースは文系・理系に分けますが、それ以外は文理を分けず選択授業を増やして対応します。また、「中1・中2」「中3・高1」「高2・高3」は同じコースで学びますが、中2から中3、高1から高2に進級する時にはコース変更が可能です。
昭和学院が育てたい生徒像は「自ら学び、自ら考え、自ら行動できる生徒」「高い志を持ち、学習・スポーツ・文化活動に励み、文武両道を目指す生徒」「自らを律することができ、心を思いやることのできる人間性豊かな生徒」の3つです。新コース制で生徒のもつ力、将来への夢を力強く応援することができるのです。
4種類の入試で多彩な能力をもつ生徒が入学
大井先生が推進してきた昭和学院の改革の中で、他校からも大きな注目を集めているのが入試改革です。同校では2017年度にマイプレゼンテーション入試、2018年度に適性検査型入試をとり入れるなど、毎年、大胆な入試改革を断行してきました。
「適性検査型入試」は都立中高一貫教育校の「適性検査」に準じたもので、「適性検査Ⅰ」(読解力や表現力を見る国語的な試験)、「適性検査Ⅱ」(教科横断型の思考力・判断力・表現力を推し図る問題)の2つの検査を行います。
「適性検査型入試は受験生も増えているし、入学者も増えました。実際に昨年度は6人、今年度は10人がこの入試を経て入学しています。両国、白鷗、桜修館といったハイレベルな都立中高一貫校を第一志望にしている受験生が"昭和学院を併願しよう"という流れができたんですね。都立校が残念だった生徒でも、わが校に来れば同様の教育が期待できるし、リーダーシップを発揮できるし、学び合ったり教え合ったりと刺激的な環境が整っています」(大井先生)。
英語でプレゼンや質疑応答を行う入試も
2018年度に新たに取り入れたのが、午後入試で実施した「マイプレゼンテーション in イングリッシュ」にも注目が集まりました。午前中に行う「マイプレゼンテーション」入試と同様に日本語で作文を提出し、面接官の前では英語で自己アピールを行い、ネイティブ教員が英語で質疑応答を行います。受験資格は英検2級レベルを想定したというこの入試、実際にどんな受験生が応募したのでしょうか?
「インターナショナルスクールで学んだ生徒など、優秀な受験生が試験を受けてくれて、推薦と一般入試で1人ずつ入学してくれました。英語ができる生徒だけを取り出して別授業を行うのではなく、敢えて皆と一緒に授業を受けてもらっています。先生がその生徒に発音させると、やはり段違いに上手なので、ほかの生徒が称賛の目で見るんですよ。そして"同級生なのにすごい""自分もあんな風に上手になりたい"と刺激を受けて、ほかの生徒にもその熱量が波及していきます」(大井先生)。
生徒が切磋琢磨し、期待値は無限大
適性検査型入試は2年実施し、受検者も合格者も増えています。「偏差値が10~15高くてよく勉強する生徒が多いから、ほかの生徒にもいい刺激になっています。今年は特進クラスが2クラス作れて合計5クラスになったことは、わが校にとって嬉しいニュースです。多様な入試のおかげでいろいろな宝を持った生徒が入学しているから、これを発掘して磨いていくのが我々のミッションです。休み時間になると、総合進学クラスの生徒が"どんな勉強しているのかな"と特進クラスを覗きにいく姿も見られます。特進クラスの生徒は休み時間も教え合ったり勉強しているから、それを見て"自分も頑張らなくては"と思うようです。ここまでお互いを意識して頑張るとは、我々も予想していなかったですね」(大井先生)。
2月に中3全員参加のオーストラリア語学研修
これまでは先行実施として希望者のみ、春休みに1週間のオーストラリア語学研修を行いましたが、現在の中3は2月に全員参加のオーストラリア語学研修を実施します。
これまでの留学先の学校を母体に、4校に120人を分散しますが、「新しく実施する3校に挨拶に行ったところ、いい関係ができたらぜひ交換留学をしたいという話も出ました。短期・長期の留学先がオーストラリアで4校確保できるのは生徒にとっても保護者にとっても朗報。全保護者の前でこの話をしたところ、さっそく数人の保護者が反応してくれたほどです」と大井先生は嬉しそうに話します。
春休みではなく2月に変更したのは先方の学校が春休みになる前に実施するのが目的で、10泊11日で行い、英会話レッスンのほか授業にも参加します。体育、数学、美術、映画作成など、多彩な授業展開でそれだけでもワクワクしますよね。現地では同い年の生徒がバディになってペアで行動してくれるから、生徒も安心です」(大井先生)。
英語の学習だけではなく現地の授業や学校生活をまるごと体験できるのは大きな魅力。この語学研修を目的に受験する生徒も増えています。今年度の実施を経て、生徒たちがどれだけ伸びるか、先生たちも大きな期待の目で見守っています。
授業改革も実践し、大学進学実績も急伸
また、先生方の意識改革も継続して行っています。現在は「学校経営計画」を中高それぞれで作成し、先生方全員に渡して自分なりにどう関与していくかを提出させています。そしてその自己申告書をもとに、大井先生が全員と面接して学校改革の方向性をまとめ、皆が同じベクトルで改革を推進するように応援しています。
「アクティブラーニングやICTも、単にペアワークやグループワーク、タブレット使用だけでは意味がない。授業で学んだことをもっと広げたい、深めたい、図書館で調べてみようと、次につながる授業が目標。そのために、教師同士がお互いに授業を見学して感想や意見を言い合うなど、教師同士も刺激しあい、切磋琢磨する空気を醸成しています」(大井先生)。
大井先生が着任した3年前は、国公立大の現役合格者は1~2人でしたが、昨年度は現役で11人(過去最高)、この春は国公立大に現役で8人が合格しました。定員厳格化で厳しくなった昨今の大学入試の現状を踏まえると、目覚ましい伸びといえるでしょう。さまざまな入試制度を経て個性豊かな生徒が入学し、先生の意識改革で授業も変わり、新コース制でさらに力を伸ばす――まさにこの3つの輪がうまく回っていくことで、昭和学院はさらなる飛躍を遂げるに違いありません。ぜひ学校説明会や文化祭に足を運び、同校の勢いに触れてみてください。