学校特集
女子聖学院中学校・高等学校2019
掲載日:2019年9月10日(火)
1905年の創立以来、キリスト教の教えに基づいた女子教育を推進している女子聖学院中学校。お互いの違いを受け入れ、活かし、自分と他者の理解を深める教育によって、グローバルに活躍できる女性を育成しています。毎朝行われる礼拝にはじまり、1日を通して「ことば」を大切にしている同校。自分の「ことば」で考えを発信することが、自らを突き動かし、リーダーシップを発揮する人になる。社会に出てからも通用する、"語ることば"をもつ女子聖らしい「リーダー」を育みたい。その強い思いを、副校長の渡部克己先生、教頭の塚原隆行先生、広報室長の佐々木恵先生に伺いました。
毎日の礼拝は、「ことば」を届ける時間
礼拝からスタートする同校の一日。礼拝は先生の「ことば」を聴く時間でもあります。先生は自分自身の経験も率直に交えながら、生徒たちに繰り返し大切な「ことば」を伝えていきます。
渡部克己副校長:「15分間、話をするというのは、教職員でもかなり緊張します。生徒たち一人ひとりの時間を占有する大切な時間なので、気概をもって話をしています。生徒たちと同じように自分にも中学高校時代があり、いろいろな落とし穴にはまったりもしました(笑)。でも、落とし穴にはまることは、成長のきっかけにもなります。生徒たちには、つねに対等の人間として価値観をぶつけています」
毎日の礼拝で聴く「ことば」は、生徒たちにとって大きな蓄積になっていきます。
渡部副校長:「一番伝えたいことは、『自分も受け入れられている、相手も受け入れられている。お互いに神様から受け入れられている者同士として良いものを見つけあい、良い社会、良い学校生活をつくろう』ということにあります」
繰り返し伝えることで、生徒たちの日常会話の中に、生徒それぞれが得た「ことば」が出てくるようになる。神様の存在と自分自身が縦につながり、友達と自分が横につながっていることに気づいていく。そして自然に、自分を大切に、他者を大切にする人になっていく。
そうしてお互いを認め合いながら、同校には、成長のためのさらなる影響を生徒たちに与えているものがあります。114年間受け継がれてきた学校行事です。「女子聖三大行事」といわれる「運動会」「合唱コンクール」「記念祭(文化祭)」は、企画から実施まで、生徒が中心になって運営されています。
なかでも、1925年から続く運動会は、各部門のリーダーを中心にすべての生徒がそれぞれの力を発揮する、女子聖の象徴ともいえるプログラムです。
リーダーが育つ、理由がある
1925年から続く運動会
歴史ある運動会の特徴は、中高生が学年を超えて3つのチームをつくり、3色に分かれて競うことにあります。
高校生は学年ごと、中学生は身体面を考慮のうえ、くじ引きで分かれてそれぞれ高校生の各学年に付くという珍しいスタイルです。中学生は高校生を見ながら、企画から運営方法、物事の進め方や真剣に取り組む姿勢まで、様々なことを学び、将来のリーダーになる土台が作られていきます。
渡部副校長:「審判、用具、召集、得点、学年幹部などの部門ごとにリーダーが選出され、約4ヶ月かけて、企画から運営まですべて生徒たちが行います。与えられた仕事のなかでどう行動するか、求められた役割にどう応えるかと、生徒一人ひとりが考えて動くので、それぞれの立場でいろいろなリーダー性を養うことができるのです」
運動会は、赤・青・黄組と、代々先輩たちから色を引き継ぐ団結式からスタートします。
この競技に関しては中学生にこう伝えるといいよ、プリントを配布したよ、などの伝達方法から、競技に勝つための"伝統の秘策"まで、先輩たちから分厚いファイルと想いを受け継ぎます。
まさに渡部副校長が語るように、「自分たちの前の代、さらに前の代、さらに前の代の先輩と、114年間繋がる歴史の一部分に存在している自分は、単独でいるのではない」という感覚が養われていきます。
運動会で何色だったかが卒業してからも話題に上る同校ですが、在校生が街中で卒業生に話しかけられることも多いといいます。同校の絆の強さを感じる話です。
「リーダーは、まず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」というキリスト教の教えが土台となり、同校の考えるリーダー像が形づくられています。
渡部副校長:「指示を待つのではなく、自ら動いて模範になる"リーダー"が本校にはたくさんいます。リーダーというと、大きな集団を特別な力のある人が引っ張るイメージがあるかもしれません。しかし、本校のスタイルは、一人ひとりが自分の立ち位置を理解してリーダーを尊重し、全体を良くしていこうと動くことにあります。運動会中の競技などでのトラブルも、リーダーと生徒間の信頼関係に支えられて、生徒たちで解決しています」
「自分ならどうするか」
運動会をはじめとする行事に全力で取り組み、先輩たちの"リーダーシップ"を間近に見て育つ同校の生徒たち。そうして学校への帰属意識が芽生え、自分の与えられている役割を理解していきます。
渡部副校長:「学校への帰属意識が育たなければ、社会に対する帰属意識も育ちません。つねに他人事ではなく、自分が関われるところで、"自分ならどうするか"と考えるようになることが大切です。多くの課題を抱えるこれからの社会で、自分がどう責任を果たしていくのか。それぞれがリーダーの意識をもたずに関係ないと思っていると、他人事として流されてしまいます」
さまざまな場面で、それぞれがリーダーとなるべく切磋琢磨し、何事にも真正面から取り組む。生徒たちには真摯な態度が育ち、行事で培った経験と絆は、将来の道を切り開く原動力になっていきます。
入ってから、ぐんと伸びる学校
今春も難関大学へ多数合格者を輩出し、「入ってから伸びる学校」として、同校には高い定評があります。
問題解決型の授業によって考え抜く力が育まれ、放課後学習支援センター「JSGラーニングセンター」では、一人ひとりに合わせたサポートが行われています。
また、中3で行われる「ライフプランニング授業」や、高2の「志望理由書を800字で書く」で、進路について徹底的に考える時間をもつなど、成長に応じたキャリア教育が充実。自分自身の将来を生徒自身が考えるチャンスが、数多く用意されています。
大学入試が大きな変革を迎え、年々、各校でAO入試や推薦入試での入学者数が増加傾向にあります。
塚原隆行教頭:「本校でも、行事などを通した成長や、人とつながる力、課題をみんなで解決する力、などを磨くことで、約半数の生徒がAO入試や各種推薦入試で志望校に届くことが顕著になってきました」
近年では国際理解教育プログラムのさらなる充実によって、生徒たちの視野を世界へ広げています。聖学院との共同で行われている「パラスポーツ応援プロジェクト」への参加により、心のバリアフリーの大切さを実感し、「語ることば」が培われ、小論文や面接に生かされて確かな強みになっています。
聖学院と共同で、「パラスポーツの魅力」を世界に届けようというプロジェクト。パラスポーツ選手への取材や、競技体験や実際の試合での応援を行うなど、パラスポーツの魅力を各所で発表しています。
佐々木恵先生:「ミッションスクールの生徒だからといって、選手たちに対して、最初から垣根がなかったわけではありません。しかしある生徒が、『障がいがあっても何も違わない、選手はむしろ私たちよりも強い。弱さではなく個性』と、"ことば化"してくれました。こういう『ことば』があってこそ、垣根がなくなっていきます。これこそ、本校が望むリーダー像です」
また、地域のお年寄りの方に「ポッチャ体験会」を実施して、健康促進と笑顔をプレゼントする活動も行うなど、生きた学びを展開しています。
さらに「ことば」の"強み"を伸ばしていくために、高3の希望者を対象に、今年度から「AO推薦入試対策」プロジェクトがスタートしました。
塚原教頭:「志望理由書を書くなど実践面での学びはもちろん、進学先でもよりよい人生を歩んでほしいという思いでスタートさせました。自分の興味関心と課題をしっかりと掘り下げ、それを"ことば化"することで、大学入学後の学問による解決に結び付けようというものです。数人のグループ学習でお互いが『ことば』を引き出しあいながら、みんなで伸びていく。それが特長です」
目標とする分野が違う生徒同士は刺激を受けあいながら、同じ学校を目指す生徒同士はお互いの良さを引き出しあいながら、受験とその先の将来を見据えた学びです。
今年から開講したのが「JSG大学」です。生徒の志望が多い大学や分野の先生による、高校生向けの出張授業です。マーケティング学科、国際社会学科、薬学部などの授業によって視野が広がり、「大学で何を学ぶのか」を考えるきっかけになるのです。
塚原教頭:「前期のプログラムでは、生徒たちが先生方から次々と質問を投げかけられるなど、白熱した授業が行われました。グループ学習が行われた授業では、下級生がリーダーシップを取る場面も見られ、お互いに大いに刺激になったようです。中3から参加可能であり、先生方の最先端の研究内容に触れることで、将来へのモチベーションも高まります」
上智大学との連携
さらに、上智大学との連携強化も進み、今年6月には「公募推薦入試対策説明会」が同校で行われました。
塚原教頭:「掘り下げたお話を聞くことができ、アドミッション・ポリシーを理解することの大切さが、生徒にもしっかりと伝わりました。狙いを定めて3年間、集中して勉強していけるので、高1から話を聞けたことも良い経験です。後期には昨年に続く出張授業も予定され、さらなる関係づくりに努めていきます」
がんばる生徒たちの未来の可能性を様々な角度からサポートするべく、同校は「さらに」「もっと」を求めています。
毎朝の礼拝が、女子聖の最大のキャリア教育
あらためて、「本校の最大のキャリア教育は、毎朝の礼拝です」と渡部副校長が語るように、同校の生徒たちの根幹は礼拝でつくられていきます。
渡部副校長:「自分のなかでの価値観や、自己肯定感、他者への肯定感を育ててくれる礼拝をもとに、今度は自分が何を発信していくのか。学校はその訓練の場でもあります。広い社会に出たあと、たとえ価値観が違ったとしても『ことば』を伝えあい、お互いの存在そのものを認め合う女性になってほしいと思います」
佐々木先生:「『ことば』がないと決断も判断もできなくなり、日本の社会が立ち行かなくなると思います。日本だけでなく、大きな課題のある世界のなかで、なぜ今この決断が必要なのかといったことを、ことばを尽くして本気で語れる人になって、社会で活躍してほしいですね」
礼拝を核とした女子聖の教えを体に染み込ませ、伝統を受け継ぎながら挑戦を重ねていく生徒たち。「自分にしかない良さ」を発揮し、「ことば」に裏付けられた多彩なリーダー像を胸に刻んでいくに違いありません。