学校特集
開智日本橋学園中学・高等学校2019
掲載日:2019年7月1日(月)
「生徒自らが活動する探究型の学び」を突き詰める姿勢に、多くの受験生親子を惹きつけている開智日本橋学園。国際バカロレアの認定を受け、中1から段階を追いながらクリエイティブでグローバルな教育を推進しています。
同校ではどのような教育が展開され、それにより生徒たちはどんな成長過程にあるのか。教頭で国際バカロレア教育主任の近藤健志先生にお話を伺いました。
開智日本橋が進めるIBとは
開智日本橋学園の教育方針は「生徒が主体的・能動的に学習する学びの創造」。創造型・探究型・発信型の教育を展開しており、国際バカロレア(IB)が掲げる理念とまさに一致しています。
ジュネーブに本部を置く国際バカロレア機構が提供する国際的な教育プログラム。世界の複雑さを理解して、それに対処できる生徒を育成し、未来へ責任ある行動を取るための態度とスキルを身につけさせるとともに、国際的に通用する大学入学資格<国際バカロレア資格>を与え、大学進学へのルートを確保することを目的として設置。153以上の国・地域の約5000校で実施されており、日本国内では37の小中高が認定されている。開智日本橋学園は、MYP(Middle Years Programme:11〜16歳を対象とした中等教育課程)とDP(Diploma Programme:16〜19歳を対象とした国際的に認められる大学入学資格<国際バカロレア資格>が取得可能なディプロマ課程)の認定校。
IBのMYPプログラムに則って学ぶのは、帰国生やインターナショナルスクール出身者が主となる「Global Leading Class(GLC=国際先端クラス)」と、英語の学習は中学からながら高い志をもって国内外への大学進学を目指す「Dual Language Class(DLC=多重言語クラス)」の各1クラス(20〜24名)の生徒たちです。
4クラスある「Leading Class(LC=最先端クラス)」においてもIBのノウハウを生かした授業が行われています。
近藤先生は、IBのプログラムを推進する理由を
「IBが重視しているのは、『生徒主体』、『深い思考』、『発信』の力です。我々は生徒たちにこれらの力を身につけることで、 自分自身の手で"やりたいことができるオプション"を広げ、主体的な人生を送ってほしいと思っています。
自分で興味をもって探究する、探究したことを発表し議論して、互いに認め合う力は、いずれ社会貢献にもつながります」と話します。
主体的な生き方ができるということは、どんな時代になっても対応できる力、困難を乗り越えるタフさと柔軟性を備えるということではないでしょうか。
「生徒主体」の学びとは
授業では教師は「促進者」を表すファシリテーターとして、適切な質問や問いかけを通じて生徒たちに主体的に学ぶ姿勢を促し、知的好奇心をくすぐっていきます。
同校にはかねてから重視している「哲学対話」という道徳の授業があります。中学生は全クラス2週に1回は輪になり、答えのない問いに対して自分なりに深く考える時間を設け、相手の意見を尊重する機会となっています。
「印象に残っているのは、中2で行われた『良い友達とは何か』というテーマです。ある生徒は、『自分の得になることをたくさんしてくれる人』と言います。では"得"の定義はなんでしょう? 『自分が苦しいときに悩みを聞いてくれる』、『いいことをやった時に褒めてくれる』など、生徒によって認識が変わります」と近藤先生。
この議論が発展していくと、困っている人に手を差し伸べたときも助けたことによる学びがあり、よかったと思えることも得なのではないか。単に一緒にいたら落ち着きリラックスできるなど、様々な経験則により、自分が考える"得"についての思案と議論が行われました。
近藤先生は、この授業における生徒たちの成長についてこう話します。
「この授業は専門の先生がいらして、ファシリテートしてくださいます。ただし、中3では慣れてくるため、生徒たちが自らファシリテーターを務めることもあります。
最初のうちは自分の言い分だけを伝えていた生徒たちも、中2くらいになってくると、他者の意見を参照しつつも、しっかりと自分の考えも伝えられるようになってきて、コミュニケーションスキルなどがあがります」
また中3DLCの社会で国家予算について学んだ授業では、まず教師から生徒たちにこんな質問が投げられます。
「日本の次年度の国家予算は、どのようなものにしたらいいと思う?」
これをきっかけに、「国家予算は一体どれくらいか」、「そもそも国家予算とはどんなものなのか」など、生徒たちに多くの疑問が浮かびます。
それぞれの疑問の芽を大切に、生徒たちは教科書や財務省のホームページなど、様々な手段を用い調べて、自分でノートにまとめ、成り立ちや仕組みを理解していきます。
「"自分事"として捉え、興味をもち、調べて、吸収していくのがIBの教育指針です。ファシリテーターからの質問や自らの疑問で生徒たちは動き始めるのです」と、社会を担当する近藤先生が教えてくれます。
次に生徒たちは「次年度の国家予算」を楽しみながら作成します。
「ここで大切なのは、きちんと調べて論拠を示すことです。例えば福祉とは何か、それが誰になぜ必要なのか、どのくらいの予算が必要なのか......。あらゆる方向性からの疑問を調べ、レポートに仕上げてプレゼンテーションを行います。自分が主体的に学んだ知識は記憶に刻まれますし、使えるものになります。楽しみながら自分から問いに対して考えていく姿勢をまずは育てます」(近藤先生)
互いの意見について、自分が感じた賛否や良し悪しをしっかり伝えて、議論し、評価し合うこともIBで重視されている事項です。
多様なバックグラウンドをもつ世界の人々と生きていく子どもたちに必要なのは、多様性を受け入れる力と共により良いもの協働して構築する力です。互いを認め合う素養がしっかりと根付いている生徒たちは非常に頼もしい存在でしょう。
こうした一連の流れは授業の中だけで行われるものではありません。同校ではICTを活用して、生徒たちは家庭で知識の習得を行う機会を多くもちます。
web上にはリアルな授業と連動したクラスルームがあり、授業の振り返り、宿題や課題の提出などが行われます。
授業だけではなく、ホームルームでのやり取りもweb上で可能。例えば体育祭や文化祭など行事の際には、委員の生徒たちが中心となり発信し、それに対して生徒たちもそれぞれの希望や考えを述べていきます。
「こうした様々な動きはweb上で完結する場合もありますが、その結果を受けて教室でディスカッションが行われることもあります。事前に情報収集がされているので効率化され、密度の濃い議論を交わすことができます。
すべての事柄において、生徒たちは自分がどんな探究を行ったのか、振り返りをして省みて、より良い方策を探り、深め合うような授業設計をしています」と近藤先生。
IB校として最も大事にするものとは
23区内の私立中高一貫校で唯一、IBのMiddle Years Programme(MYP=中等教育プログラム)とDiploma Programme(DP=高等教育プログラム)の認定を受けている開智日本橋学園。
DPの最終試験を受け一定の成績を納めると授与される証書は、海外大学への入学資格になるだけでなく、国内外で高い評価を受けています。DPのスコアに応じた優遇措置や『DP入試』を実施する大学が増えています。
「DPで求められるのは、MYP以上に深く考え、豊かな知識をもとに自己表現することです。より明確かつグローバルな基準で、こうした学力がどの程度身についているのかが評価されます。本校では、中1からMYPにじっくりと取り組むので、DPへストレスなく移行でき、正解のない問いに挑む姿勢ができていきます」と、近藤先生はMYPとDPの両プログラムを行う理由を話します。
MYP生が仮にDP課程に進まなくても、MYPで身につけた学び方は一般の国内大学入試に十分生かされると考えています。
近藤先生は自身が担当した高2のDPの授業のひとつについて教えてくれました。
「IB特有の必須科目である、『Theory of Knowledge(TOK=知の理論)』を学びます。これは考え方を問う哲学的な学びです」
ある時は、裁判官と裁判員で異なる判決が出て、裁判員の結論は高等裁判所で控訴されたという裁判をテーマに議論を行いました。
「『知』とは一体なにか。世の中の人々も知識を得る方法はそれぞれに異なります。そのことをきちんと理解して物事を探究することが大切です。単に『知る』ということだけを切り取っても、たくさんの事柄が絡んでくる複雑さを生徒たちは実感します」(近藤先生)
同校の生徒たちのこうしたスキルは、どうやって磨かれていくのでしょうか。
「学び方」を学ぶ
IBでは生徒が主体的に学ぶことを推進していると同時に、具体的な学び方のスキルを培います。
中1・2で自然に「自己管理スキル」を重視します。例えば宿題や試験勉強など、やらなければならないことがあるとき、どのタイミングで始めればいいのかを自分自身で管理できる力です。「自己管理スキル」を磨くために、まずはやるべきことのリストを作り、優先順をつけたり、二重丸をつけた時間がかかるものはせめて1週間前に取りかかることなどを学んでいきます。
「リサーチスキル」とは調べ方のスキル。インターネットでの調べものでは、きちんとしたソースが出ているものを使うなど、真偽を確かめる力を鍛えます。あわせて書籍のほうが編集者など幾人もの目を経ているので信頼できるといったことも学びます。
「思考スキル」は、論理的に考えること、ゼロベースでクリエイティブに考える癖をつけていくことです。高1の歴史では以下のような問いに取り組みます。「歴史には時代区分があるけれど、様々な地域の特性を考えて自分なりの時代区分を作るとすると、どのようなものになりますか?」。
「自分だったらどう歴史の移り変わりに節目をつけるかを、ゼロベースで考えることで歴史を学ぶ意味も学んでいくのです」と近藤先生は話します。
「コミュニケーションスキル」は効果的なプレゼンや対話を行うための技術。「社会性スキル」は、協働するために必要な力です。
この5つのスキルは、どんなに時代が変化しようと社会に出た際にも必要なものです。中学生のうちから試行錯誤しながら、時には失敗しながら学んでいくことで、より実践的なスキルへと磨かれていくのです。
「バイリンガルディプロマ」とは
開智日本橋学園のIBにおける大きな特徴は、日本語と英語どちらでも大学レベルの学びに対応できるまで鍛え上げる「バイリンガルディプロマ」を目指していることです。
英語、美術、技術、社会、道徳の授業とHRは、GLCは中1から英語で実施。DLCでは英語は中1の最初から、社会は中3から、その他の教科とHRは中1の途中から英語で行われます。なお、LCも中3の美術はネイティブの先生により、英語を使用した授業となります。
「DLCでの中3以降の社会は、授業を英語で行うので、生徒たちには相当な負荷がかかりますが、教員が適宜サポートすると共に英語が苦手な生徒に対して他の生徒が教えるなど、生徒たちはくらいついてきてくれます。試験も宿題もレポートも英語で出しますし、質問も英語でなければ私は答えません。ただし、先ほどの国家予算の話で、地方交付税交付金などの難しい単語は、日本語でもしっかり解説します」(近藤先生)
DPに進級する前の高校1年2学期終了時には、外国語運用能力のヨーロッパにおける共通参照である「CEFR」でB2レベルになることを目指します。
その一方、数学と理科は全学年日本語で学びます。
「本校では日本の教育とIBのいいところ両方を取り入れ、生徒主体の探究型の教育を行いたいのです。日本の数学と理科教育は世界の中でも素晴らしいレベルです。そのため、数学と理科は日本語の教材を使い、指導言語も日本語のほうがより効果的に学べるのではないかと考えています」と近藤先生。
国内外への進学も視野に入れた進路選択が可能なのは、IB校ならではの大きな魅力であり、海外大学への進学志望者も多い開智日本橋学園。今年5月にはイタリアやスイス、ドイツ、オーストリアなどヨーロッパの8大学が来校して大学説明会が実施されました。
学校説明会では、生徒たちによる発表の機会も設けています。ぜひ足を運んで、開智日本橋学園の教育が結実した様子をご覧ください。