学校特集
聖徳大学附属女子中学校・高等学校2019
掲載日:2019年9月1日(日)
1983年の創立以来、礼儀作法などの女子教育で知られる伝統校ですが、今の同校の教育を象徴するキーワードは「探究学習」や「英語教育」、「ICT教育」などです。そして今春、「大学現役進学率99%」という見事な結果を導き出しました。さらに、伝統の上にさまざまなチャレンジを重ねてきた同校がその手応えを得て、今年度から中学を「S(スーペリア)探究」と「LA(ランゲージアーツ)」の2コース制とし、新たなステージへと踏み出しました。「今の聖徳大学附属女子」について、校長の川並芳純先生にお話を伺います。
「自己肯定感」を育みながら
一歩一歩階段を上ってきた10年間
基礎基本を着実に積み上げてきたからこそ実現できた、今春の「大学現役進学率99%」。これは先生方の丁寧な指導と、生徒それぞれのたゆまぬ努力が結実したものです。それにしても、生徒たちが自発的に努力しようとする姿勢は、どこから生まれてくるのでしょうか。
それは、川並先生が校長に着任した約15年前に遡ります。世界の中でも日本の生徒、とくに女子は自己肯定感が低いとよく言われますが、当時の同校の生徒たちも同じでした。
川並校長:「生徒たちはいろいろなタレントを発揮できるにもかかわらず、失敗することに慣れていません。ですから、壁にぶつかると立ち止まってしまい、自己肯定感も持てなくなる。だから、生徒たちには『トライ&エラーでいいんだよ』と言い続けてきました。そのことが、ようやく浸透してきたように感じますね。今では全校集会や行事なども生徒主体で行っていますし、さらに、いろいろな場面で自主的に先回りするようにもなりました」
そのような心持ちの変化が大きかったのでしょう、生徒たちはどんどん変わっていきました。
川並校長:「生徒同士がさまざまな気づきを与え合い、それぞれの『気持ち』が育ってくれたように思います。今春の大学現役進学率が99%に達したのも、みんなで共に頑張った結果ですので、褒めてあげたいですね」
今年から新たに始動した
「S(スーペリア)探究」「LA(ランゲージアーツ)」の2コース制
同校の教育の特色を改めてお伝えする前に、今年から中学でスタートした新しいコース制についてご紹介しましょう。
以下の2コースは、「どういうふうに学びたいか」「大学で何を学びたいか」という学びの軸を選ぶもので、最終的に目指すゴールはほとんど同じです。
新コース設置の背景には、これまで伝統的に行われてきた教育内容があります。とくに「探究」と「英語」には長年の経験の蓄積があり、そこでの生徒たちの成長ぶりがあったからこそ、このコース制につながったといえます。
では、同校で行われてきた、そしてさらに進化・発展していく学びを抜粋してお伝えしましょう。
ちなみに、高校ではこの2コースに「音楽科」を加えた3コース制になります。
「iPad」×「英語」×「探究」×「小笠原流礼法」
これが、「聖徳流21世紀型スキル」
生徒みんなが持っている「学ぶ力」自体を6年間の中で大きく伸ばしていく同校ですが、「『知の冒険』を続ける女性へ」をモットーに掲げる教育のポイントは以下になります。
同校では「見通しを立てて学習を始め、粘り強く取り組む→振り返りを行う→次の学習につなげる」というサイクルを徹底し、「何ができて、何ができなかったのか」をきちんと明らかにしていきます。自分を客観的に見る目を養ってこそ、学ぶ力が大きくなっていくからです。そして、このサイクルは、学校生活全般に活きています。
同校では5年前にiPadを導入して以来、学びのスタイルが大きく変わりました。授業での探究型の学びや協働学習の質が飛躍的に向上するとともに、反転授業や実技教科、クラブ活動などでもフル活用されています。
授業では、以前のように先生が生徒に背を向ける板書が不要となったことをはじめ、小テストや課題の配信・提出などで大幅な時間短縮ができることで「50分授業に70分の内容を入れることが可能になった」と、川並校長。また、何よりも先生と生徒、生徒同士の情報交換量が格段に増えたそうです。
川並校長:「例えば、文学作品の感想を問うにしても、以前の授業では全員に聞くことはできませんでしたが、iPadを使えば全員が答えます。そうすると、自分と似た感想があれば異なる感想があることも知り、物事の違った見方・考え方に触れることができるのです。本来、生徒たちは大量の情報を受け取る能力を持っていると思いますが、iPadがその突破口になったように感じています。さらに、わからないところを生徒同士で教え合う姿が増えたことは嬉しいですね」
そして、校長はe-portfolioには「失敗の記録も残しておくこと」も重要だと言います。失敗の原因を明確にして、きちんと導けば、生徒は目指すべきところがわかり、記録を振り返った時に自分が一歩一歩階段を上ってきたことを実感できる。それが、自己肯定感にもつながっていくのだと。
さらに、生徒自身にとっても自分の学びの軌跡が記録されるため、「成長日記」にも「第2の卒業アルバム」にもなることは大きな魅力でしょう。
英語に力を入れている同校ですが、それは単なるコミュニケーションツールとして学ぶだけではなく、「日本と外国の文化の違いを理解したうえで言語力を獲得していく」という考え方を前提としています。
そして、「LAコース」では、英語の4技能「聞く・話す・読む・書く」のうち、とくに「話す」技能を高めるため、週に8時間の英語の授業のうち、4時間は「コミュニケーション力」と「プレゼンテーション力」の育成に力点を置き、世界に通用する英語力を身につけていきます。
また、コースにかかわらず、今年度からは全学年で年間16回、正規の授業として「オンライン英会話」を導入しました。英語学習をゼロからスタートする中1も、1回25分間、画面を通してネイティブの講師と1:1で会話をします。「いきなり?」と驚きますが、それも同校の体験を重視する指導姿勢ならではです。
川並校長:「ネイティブの方の口の形をよく見て真似たりしながら、中1もけっこうしゃべっていますよ。通常の英会話では一人の先生が生徒全員を相手にしますから、50分授業のうち一人の生徒の発言量は平均すれば5分くらいになってしまいます。それが、オンライン英会話では1:1の個別指導になりますから、生徒たちも楽しみながら、物怖じせずに話すようになりますね。小さな留学と言えるかもしれません」
10年以上前から、自分で選択したテーマを探究し、中3で「卒業研究論文」を発表するなど、思考力・判断力・表現力の育成にも力を入れてきた同校。
これまでは卒業研究論文に取り組む期間は1年間だけでしたが、さらに学びを深めていくために3年間じっくりと研鑽を積む「S探究コース」を設置しました。
ところで、同校でいう「探究学習」には2つの意味合いがあります。1つ目は「探究科」の授業、2つ目は全教科で行う「探究型授業」のことで、「探究学習」とはその2つの総称です。
探究学習ではクラス発表会、学年発表会、保護者会での発表など、プレゼンテーションをする機会が多いのですが、生徒たちは普段の授業で「課題を見つける→探究する→自分の言葉で発信する→仲間と協働しながら新しい価値を生む」という一連のプロセスを身につけているため、場数を踏むことで、さらに自分の意見を発信する力に磨きをかけていきます。
川並校長:「エビデンスに基づいて論を展開できるようになるなど、生徒たちはどんどんプレゼンの腕を上げていきますね。これは、社会に出てから必ず活きてくる力ですし、新しい大学入試への対応という面でも、探究内容をまとめたものを学習の成果物として提出できますので、この『探究学習』は一つの突破力になると思っています」
また、この探究学習の評価方法ですが、同校では大学との共同研究で独自の評価ルーブリックを開発しています。時間をかけて精査されたルーブリックを作ったことで、これまで評価しにくかった主体性や協働性などについても、生徒も先生も目指すべきところがわかりやすくなったと言います。
川並校長:「例えば、評価が3や4だったとしても、段階によって求められることが明示されていますので、『ここをもっと頑張れば5にいける』と目標がわかり、モチベーションが上がります。そして、頑張れば頑張った分、階段を上っていけることを知ることは、自己肯定感にもつながると思っています」
校長が言うように、「小さな階段を上り続ける」ことは女子の特性を活かした同校ならではの伝統ある指導法であり、その改良の積み重ねが生徒たちを活気づけ、それぞれを大きく伸ばしているのです。
さらにもう一つ。同校には、6年間必修の「小笠原流礼法」をはじめとする「和の精神」を育む教育があります。正しい礼儀作法はもちろん、「思いやりの心」を育て、「日本文化」の素養を身につけることは、日本人としてのアイデンティティーの確立につながり、今後ますますグローバル化・ボーダーレス化する世界の中で活躍するための大きな基盤になっていくことは間違いありません。
生徒たちが大切に育んできた、
「聖徳大学附属女子の心」を表す象徴的な2つのこと
そして、冒頭で述べた「何が生徒たちを自発的に動かすのか」という問いには、もう一つ答えがありました。
それは、先輩から後輩へと受け継がれる「聖徳大学附属女子の心」です。先生方が温かく見守り、時機に応じて背中を押してくれる環境のもと、生徒たちは自分たちで作り上げた「学校文化」の中で、日々、成長していくからなのです。
ここでは、生徒たちが作った「学校文化」の端的な例を2例ご紹介します。
生徒昇降口で目を見張るのが、下足箱です。右の写真をご覧ください。靴の踵がピシッと1本のラインになっています。思わず、「きれい!」と言ってしまいました。
川並校長:「来校される方みなさん驚かれるのですが、これは教師の指示ではなく、先輩から後輩へと代々受け継がれている伝統です。これも、生徒たちの気持ちが育ってくれている証のようで嬉しいですね」
秋に行われる体育祭は6学年を縦割りにして、赤組と青組の2チームで競い合います。
何年か前に、そのことは起こりました。勝敗がきまった直後のことです。
それぞれがチームごとに集まり、勝ったチームは喜び合い、負けたチームは悔し涙に暮れていました。2つのチームはグラウンドのこちら側とあちら側、100mくらい離れていたそうです。どちらのチームも、みんなはリーダーに感謝の気持ちを伝え、リーダーはチーム全員をねぎらいました。
その時です。
負けたチームのある一人から、100メートル離れたところにいる勝ったチームに「今日はありがとう! 楽しかったよ〜」という声が飛んだのです。すると、勝ったチームからも「私たちも楽しかったよ〜。ありがとう!」と声が返ってきて、その声は全体に広がっていきました。
両チームのリーダー2人は思わず駆け寄り、固く抱き合ったそうです。上の写真がその時の光景です。
川並校長:「それを見た時、生徒たちは我々教師は入れない自分たちだけの神域を作ったと、この子たちはどこに行っても負けないな、と思いました」
生徒たちが見せてくれたこの光景以上に、同校の教育の成果を物語るものはないと言っていいかもしれません。このような場面が日常にいくつも積み重なり、同校の風土となって息づいているのです。
だからこそ、生徒たちは人と関わる中で心を豊かに成長させ、「学ぶ力」を自ら磨き、しっかりと未来を見据えて前進するようになっていくのでしょう。
最後に改めて、生徒たちにどのような大人になってほしいか、川並校長に聞きました。
川並校長:「仕事の能力や他人を気遣える人間味など、何でもいいのですが、『この人がいてくれてよかった』と思ってもらえる人になってほしいですね。いつも生徒に言っていることなのですが、『自分自身が光ることはもちろん、自分が光ることによって周りの人も光ってくるような、そんな人になってほしい』と。また、たとえるなら金平糖のようにと言いますか、中心の丸い部分を『土台となる教養や人間性』、周囲のとんがったギザギザをその人の『個性』とするなら、その両方をしっかりと持って、たくさんの人と握手できる人になってほしいと願っています」
聖徳大学附属女子は、北総線の「秋山駅」「北国分駅」から徒歩約10分という好立地にありますが、「自家用車乗り入れ可能」というのも嬉しいポイントです。
敷地が広いため、最大200台を収容できる大型駐車場を完備しているとともに、臨時駐車場を合わせると最大約400台まで収容できるため、受験前の学校説明会やオープンスクール、また入試当日などに車で学校に行くことができます。また、入学後も登下校の送り迎えはもちろん、授業参観やイベントに参加される時なども車で行けるので便利。
学校説明会などにお出かけの際には、ぜひご活用ください。