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学校特集

富士見丘中学高等学校2019

SGHの成果が結実しつつも、未来を見据えて進化中!
創造性、行動力、英語4技能などを大きく伸ばす、先進性のあるプログラムを実践

掲載日:2019年7月20日(土)

2019年3月に行われた「全国スーパーグローバルハイスクール課題研究発表会(SGH甲子園)」の「英語プレゼンテーション部門」にて、現高3の生徒たちが「フードロス」をテーマに行ってきた探究結果をプレゼンし最優秀賞を受賞。名だたるSGH各校が居並ぶなか、例年突出した成績を収めている富士見丘中学高等学校。同校の生徒たちの受賞歴はこれだけに留まりません。それは下記で詳しくご覧いただくとして、毎年全国・世界規模の大会で活躍できる生徒を輩出するプログラムとはどういうものなのでしょうか。入学時から卒業時の伸び率に抜群の定評を誇る、富士見丘中学高等学校のクリエイティビティとモチベーションを高める教育について、広報部長の佐藤一成先生にお話を伺いました。その教育の一端をご紹介します。

学校全体で育む探究への姿勢

富士見丘_広報部長の佐藤一成先生
広報部長の佐藤一成先生

2015年に「サステイナビリティ(持続可能性)から創造するグローバル社会」を研究テーマとして、スーパーグローバルハイスクール(SGH)に指定され、今年5年目を迎えた富士見丘。SGHプログラムは毎年ブラッシュアップされ、慶應義塾大学大学院などとの連携を深めるなど、最先端でありながら普遍性も重視した学びを推進し、生徒たちを鼓舞し続けています。その成果の一つとして、先に触れた通り2015年以降SGH甲子園で最優秀賞と優秀賞を2回、2016年にはシンガポールで開催された社会的課題をテーマに発表と議論を行うコンテスト「グローバルリンクシンガポール」でも最優秀賞を受賞するなど、様々な大会で毎年しっかりと結果を残しています。SGH甲子園での最優秀賞を受け、今年7月の「グローバルリンクシンガポール」にも参加します。なお、国内外での発表会での入賞者数は2015年が3名でしたが、現在は23名と飛躍的に増加しています。

佐藤先生は「初年度に優秀賞をいただけたことは、生徒の『自分たちもやればできる』という大きな自信につながりました。他の生徒や下級生たちへの刺激となり、何事にも積極的に取り組むという雰囲気が校内に満ちています。また我々教師陣も探究方法について本気で追求を重ねており、さらなる発展を目指しています」と話します。

富士見丘_2020年に創立80周年を迎える女子伝統校です。写真は今年度の入学式の様子。
2020年に創立80周年を迎える女子伝統校です。写真は今年度の入学式の様子。

SGH校として同校が育成する生徒像は、「サステイナビリティの視点を有し、課題解決に向け、海外の人々と協力的な活動を行う上でリーダーシップが発揮できる人材」というもの。21世紀の世界の中で社会貢献ができ、日本が存在感を示すために、海外の人々と協力して英語で意見交換をして、課題解決できる力を養っています。

かねてより環境教育を重視している富士見丘。2012年にはアラブ首長国連邦(UAE)で開催された「ザイード未来エネルギー賞」の中で、環境教育に熱心に取り組んでいる学校に対する「グローバルハイスクール部門」でアジア代表として選出され、ファイナリストとして表彰されました。
「その時に様々な国の方と、サステイナブルな社会に向けてどう取り組んでいくのかを話しました。その経験からこれまでの環境教育をより幅広い視野で捉え、サステイナブルな課題について生徒たちに考えさせていくということをSGHとしての研究テーマと決めました」(佐藤先生)

同校のテーマ決定を追うように、2015年に国連サミットで「持続可能な開発目標SDGs」が採択され、日本でも「サステイナビリティ」、「SDGs」の認識が次第に広がりました。世界的な潮流となっている「SDGs」とあわせ、富士見丘ではどのような形で教科に落とし込んでいるのでしょうか。

中学での基礎づくり

富士見丘_中1の段階から世界の人々とコミュニケートできるベースを作ります。
中1の段階から世界の人々とコミュニケートできるベースを作ります。

SGHは高校での取り組みと思われがちですが、富士見丘の大きな特徴は、中学からの丁寧な学習段階をきちんと経て、中核となる高1・2での探究学習へつなげていることです。同校ではその力を養うためにどのような学びと経験が必要かを考え、プログラムを構築しています。

中1の総合の時間は「ICT」という授業を実施。ICTを活用しながらグループワークを行い、投げかけられる問いや課題に対して、しっかりと聞き、考えて、相互に意見交換する時間を設けています。2017年からは一人1台のノートパソコンを所持するようになり、生徒たちは「ICT」の授業で学んだ情報の収集・分析・発信法を活用し、自分だけのポートフォリオを構築していきます。

富士見丘_芸術への見聞を広げ、感性も培われる「美術展」。
芸術への見聞を広げ、感性も培われる「美術展」。

中2で取り組むのは「美術展を作る」というもの。武蔵野美術大学の教授から指導を受け、学生や作家の作品を生徒たちがキュレーターとして紹介します。自分たちで企画を立てテーマ設定をし、来場者に作品の見どころを伝えられるよう、作者にインタビューをして専門的な知識を学びます。芸術的な視野が広がるだけでなく、わかりやすく説明するための表現力も養われます。

中3の6月に行われるのは、オーストラリアへの修学旅行です。姉妹校を訪問し、交歓会や授業への参加を通じて交流し、互いの文化を紹介し合います。

この修学旅行を支える英語4技能については、基礎力を徹底しながらも、アクティブラーニングなど新たな学習方法でやる気を喚起。週1回授業内で行う「Online Speaking」が英語で発信する力をあと押ししています。

富士見丘_中3のオーストラリア修学旅行。帰国後もSNSなどでバディとは親交を深めます。
中3のオーストラリア修学旅行。帰国後もSNSなどでバディとは親交を深めます。

なおクラスには必ず帰国生がいるという環境も同校の特徴であり、国内生にとって大きな刺激となります。語学の面だけでなく、帰国生は国内生にとって身近な異文化体験者。滞在していた国の文化の伝道師として、帰国生ならではの視点を得ることができます。
帰国生にとっても同校で学ぶメリットは多々あります。生徒の約2割が帰国生なので、決して特別な存在でないという居心地の良さ。英語は取り出し授業により、現地校やインター校と同様の教材を利用し、充実の特別プログラムを展開しています。その一方で日本語での教科学習のサポートも実施しているので、現地校やインターナショナル校で学んだ生徒も安心して授業に臨むことができます。
「ディスカッションやプレゼンテーションを行うSGHの授業は、帰国生にとって海外で行ってきた学びと同じという安心感があるでしょう。そのためSGHの学びはなじみやすく楽しんでできるのではないでしょうか」(佐藤先生)

高3進学時に60%の生徒が英検2級(CEFRのB1)の取得を目標としている富士見丘。
「現高3は62.2%と達成できました。毎年取得レベルが上がっていく状況を見ると、目標をきちんと設定することで、それに向かって学校として進んでいくことが大事なのだと教員として再認識できました。
なお中3での英検取得率は2級以上が50%、準2級以上が75%、3級以上は100%なので、しっかりと底上げができていることがご理解いただけます。今後はさらに高い目標設定をしていきたいと考えています」と佐藤先生が教えてくれました。

学びへつながる動機付けとは

富士見丘_復興への希望をつなげる「釜石フィールドワーク」。
復興への希望をつなげる「釜石フィールドワーク」。

高1で総合の時間に履修するのが「サスティナビリティ基礎」です。チームティーチングで行われる教科横断型の授業やSDGsをテーマに慶應義塾大学の留学生の方と一緒に学ぶ「グローバルワークショップ」などを行っています。10月には岩手県釜石市での1泊2日の「釜石フィールドワーク」を実施し、東日本大震災で被災された方にその体験を伺い、自分なら何ができるのかを全員が考えます。これを受けて「持続可能なまちづくりを考える」というコンセプトのもと、テーマごとに意見を交換し合った内容を発表。復興や災害に対して一人ひとりが"自分事"として向き合います。

富士見丘_「ポジティブな未来をデザインする」ことにチャレンジしたグローバルワークショップ。
「ポジティブな未来をデザインする」ことにチャレンジしたグローバルワークショップ。

「グローバルワークショップ」は、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科と連携して年8回開催。例えば昨年の第3回は、オリンピックに向けて東京をよりよくするアクションを呼びかけるビデオ作りを行いました。
情報を集めてテーマ決めをし、発表ののち絵コンテを作成。それに基づき30秒ほどのビデオを撮影します。映像づくりのきめ細やかさやかわいらしさ、わかりやすく伝えようとする創意工夫など、出来上がった作品はそれぞれ努力のあとが見られ、アート作品としても見応えのあるものとなりました。

佐藤先生は富士見丘が取り組んでいる、次なる一手をこう話します。
「生徒たちは堂々と英語でプレゼンしたり意見が言えるようになったり、SGHプログラムを通じて大きな成長を遂げました。今後は自分で問題を設定する力、創造的な意見を出していく力をさらにつけていきたいと思っています」

富士見丘_「3ヵ月留学」など、海外プログラムも充実。世界各地に姉妹校があることも富士見丘の強みです。
「3ヵ月留学」など、海外プログラムも充実。世界各地に姉妹校があることも富士見丘の強みです。

そのために今年のグローバルワークショップのテーマとしたのが「クリエイティブコンフィデンス(創造性への自信)」です。これまでグローバルワークショップでは、デザイン思考の手法を使って課題解決型の学習を行ってきましたが、課題はともすると大人から与えられがちです。そこで本年度のワークショップでは「スペキュラティブデザイン」という手法をとり、自分たちで問題を設定して10年後、20年後の未来に起こりうるシナリオを想像するという新たな試みに挑戦しています。
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科との連携があるからこそ、こうした取り組みができるのです。

「高2・3で始まる本格的な探究の前に心がけていることは、サステイナビリティ課題の基本的な理解と研究のモチベーションを喚起することです。本気で調べたい、もっと学びたいという気持ちを持つことがいちばんです。そうした意味では高1の『釜石フィールドワーク』は、被災された方やその地域のために一生懸命頑張っていらっしゃる方と行動を共にするので、心に響く生徒が多く、その学習意欲を維持したまま高2・3で取り組めるようです」(佐藤先生)

SGH校としての本領発揮

富士見丘_「マレーシアフィールドワーク」での一幕。
「マレーシアフィールドワーク」での一幕。

高2・3では「サスティナビリティ演習Ⅰ・Ⅱ」をグループ研究で行います。これまでの環境教育をベースとした「環境とライフスタイル(マレーシアフィールドワーク)」、災害の多い日本の環境下も考える「災害と地域社会(台湾フィールドワーク)」、シンガポール経営大学と連携する「開発経済と人間(シンガポールフィールドワーク)」の3テーマでゼミ形式の授業を展開。高2の12月または1月に「海外フィールドワーク」を実施し、探究の成果を発揮する機会を得ます。この学びは振り返った際に大きな達成感や自分の得意分野が見つかったという生徒が多く、その一方他者と一緒に行う研究の大変さを知り、その分成長できたという感想もよく聞かれるプログラムです。

「実際に現地へ赴き、台湾やマレーシア、シンガポールの生徒たちとも交流する中で、彼女たちも自分と同じような悩みを抱えていたり、似通ったところで楽しみを見出したりしながら温かな人間性に触れる機会になっており、そうした心の交流も非常に大切にしています。
ニュースなどで一方的に伝えられるような、アジアの他国に対する見方が生の人間と人間のコミュニケーションにより変わってきますし、それを10代の若いころに経験できるというのは、そのあと学び続けていく人生において重要なことなのではないかと思います」(佐藤先生)

富士見丘_「やりたい!」という気持ちを、思い切りあと押ししてくれる学校です。写真は「5×2」の発表風景。
「やりたい!」という気持ちを、思い切りあと押ししてくれる学校です。写真は「5×2」の発表風景。

なお、約半数の生徒がこの海外フィールドワークに参加しますが、そのほかの生徒は「自主研究5×2」に取り組みます。これは中1以降で行う自身の興味・関心をとことん掘り下げる自主研究です。
同校では近年これら「自主研究5×2」やサスティナビリティについて学んだことが進路へ直結する生徒が増えてきているそうです。例えば中2以降に「自主研究5×2」でパラリンピックについて研究し続けた今春卒業したある生徒は、自分が学んできたことをベースに立教大学のコミュニティ福祉学部に進学。SGHプログラムで学んでいた生徒は「防災看護をテーマにしたい」と慶應義塾大学の環境情報学部へ、「環境とライフスタイル」を選択していた生徒も大学でもそのテーマで研究を続けたいとそれぞれ進学先を決定しました。

富士見丘_学習面だけでなく、行事や部活も活発。テニス部は全国大会常連校です。
学習面だけでなく、行事や部活も活発。テニス部は全国大会常連校です。

「自分が取り組んだことにより世の中がよくなることに繋がる、と理解できるまで持っていくために極力行動に移すことが重要です。正解のない問題なので自分で課題を設定して、自分で解決に向けて考えてアクションをし、その中でまた新たな課題が見えるというサイクルで学んでいくことになります」(佐藤先生)

課題解決のために粘り強く真摯に取り組む姿勢やコミュニケーション能力、そして世界を生き抜いていくための前向きさとひたむきさを育てている富士見丘中学高等学校。9月29日(日)に開催される文化祭では、SDGsにまつわる企画を生徒たちが立て実行する様子を見ることができます。ぜひ足をお運びください。

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