学校特集
三田国際学園中学校・高等学校2019
掲載日:2019年6月1日(土)
三田国際学園は、2018年度より高校で本科、インターナショナル(スタンダード・アドバンスト)、メディカルサイエンステクノロジー(MSTC)の4コース制を敷いたことに伴い、2019年度からは中学校にもメディカルサイエンステクノロジー(MST)クラスを設置しました。
これにより6年間のロードマップがより充実し、同校の教育理念である「知好楽」(さまざまな知に出会い、それを行動の源として自らの世界を広げ、社会との関わりの中で自分自身の生き方を見つける)を実践する場が整ったことになります。
今春注目の「MST」クラスの入試は算数・理科の2科目で実施。30名の募集に対して458名もの受験生が出願しました。初年度から多くの受験生が集まった背景には、三田国際学園が実践する世界標準の教育の中で必然的に生まれたクラスであることに加え、1年早くスタートした高校MSTC1期生の活発な取り組みがあります。また受験生を持つご家庭が、文化祭で堂々と自分たちの研究を発表する姿や、学術的な価値を感じさせる研究内容に触れ、本物の研究者が6年かけて導く教育成果への期待が膨らんだことも大きいでしょう。
高校MSTCでは、昨年末から中高生のための科学アイデアコンテスト「つくば Science Edge」をはじめ、さまざまな場で発表を行い、複数の研究が高い評価を受けています。「生徒たちはさまざまな刺激を受けながら想像以上の成果をあげている」と話す学習進路指導部副部長の辻敏之先生(理科教諭/工学博士)と、教頭の今井誠先生に、MSTの教育方針や取り組み、成果などを中心にお話を伺いました。
サイエンスの探究により、実践に役立つ力を養うMST
辻先生:MSTはサイエンスを探究することにより研究者としての素養を培うことを狙いとしています。特に生徒が自らテーマを選択して取り組む「基礎研究」が大きな特色と言えます。
本校のサイエンス教育ではクラス・コースに関わらず、日々の授業で「疑問→仮説→検証→結論」というプロセスを大切にしています。中学校時代に習慣づけられたそのプロセスを土台にMSTCでは「基礎研究β」に取り組み、「実験→(解析)→データ→(考察)→発表→(討論)」というサイクルで学ぶことで、物事を多面的、客観的にとらえる訓練をしながら、問題を発見する力とその問いを解決するための力を養います。
MST・MSTCで3年、または6年かけて養われる力は生涯において役立つ力です。例えば高3生が27~28歳となる10年後は、研究者を目指していればドクターを取得する年齢です。また修士課程を修了し企業に勤務していれば3年目あたりでしょう。そのくらいの時期に自分が携えている能力を自覚して実際に使えるようなれたら、と考えています。それがMSTをはじめ、本校が目指すところです。
生徒が主体となり自由に研究に取り組む「基礎研究」
辻先生:高校のMSTCは、昨春、本校の中学校(本科・インターナショナル)で学んできた生徒36名でスタートしました。研究活動は授業内だけではなく、朝や休み時間、放課後を使い行っています。その理由は、生徒自身が自由に時間を使って研究に取り組んで欲しいと考えたからです。
MSTCがスタートして1年が経過しましたが、放課後のラボに誰もいない日はありません。誰かが最終下校時刻まで残り、毎日熱心に研究に取り組んでいます。
現在、研究テーマは生物系を中心に14題目がありますが、学校の設備でできそうなテーマであれば新しいテーマでも構いません。例えばミドリムシはそうして出来たテーマの1つです。この研究をしている生徒たちは、培養するために必要な糖の代用品としてチョコレートを使用し、培養できるかを調べています。
【研究テーマ例】
・微生物・水耕栽培・プラナリア・ミドリムシ・HHOガス・プロペラ など
研究活動が対外的に認められて自信を深めた生徒たち
三田国際学園では研究の成果をアウトプットする機会を大切にしています。昨年度は10月のMITA International Festival(学園祭)で中間報告を行いました。生徒たちはその後も研究を進め、研究・開発に挑戦する中高生のための学会「サイエンスキャッスル」や、「つくば Science Edge」「日本農芸化学会」などにも積極的に参加しています。
辻先生:日々、愚直に、そして素直に取り組んでいる生徒たちですが、研究活動が外部の方に認められ、学術的にも成果をあげていることを実感すると生徒たちは自信を深めます。自信がつくと、一層工夫を凝らして表現するようになりますし、さらなる発表の場を求めて行動を拡げます。
例えば日本農芸化学会(一般講演)への参加は生徒たちの発案でした。発表後、この学会に所属する大学院生や大学教員の方たちと行った質疑応答では、同世代の中での発表とは違う大きな"刺激"を受けたようです。こうした研究班に引っ張られる形でMSTC全体の士気が高まっています。
【表彰を受けた主な大会】
・サイエンスキャッスル関東大会
※ http://www.mita-is.ed.jp/news/detail.html?id=1243
・つくば Science Edge 2019&日本農芸化学会
※ http://www.mita-is.ed.jp/news/detail.html?id=1349
・新しい学びフェスタ
※ http://www.mita-is.ed.jp/news/detail.html?id=1351
三田国際学園の生徒に聞きました!
「つくばScience Edge 2019」でジャイロミル型プロペラの性質に関する研究「Characteristics of giromill propellers ~how can shapes affect efficiency~」を発表し、英語ポスター部門1位を獲得した塩谷さん(高2/中学時代はインターナショナルクラス)と白井くん(高2/中学時代は本科クラス)にMSTCでの活動について伺いました。
白井くん: 僕は中学校に入学した時から理系に進みたいと思っていました。当時はスーパーサイエンスコースでしたが、MSTCに変わり研究活動ができるということで、ますます興味を持ちました。
白井くん:1週間に1度、クラス内で自分の研究を発表する機会がありますが、そこで友だちの考察に触れると、「そういう考え方もあるのか」と気づかされることが多々あります。クラスメイトというよりは一緒に研究をしている仲間のような感覚で、刺激を受けますし、そういう環境だから成長できるのではないかと感じています。
白井くん:教師と生徒の関係は、極端に言えば教える人と教わる人ですが、辻先生は考える機会をたくさん与えてくださいます。すぐに正解を教えるのではなく、「考えを広げる」ためのヒントを与えてくださるので、自分なりに考えて答えを導き出すことができます。そこがすごくおもしろいですし、先生も一緒になって考えてもらえることがすごく新鮮で楽しいです。
塩谷さん:私は謎を究明することよりも、新しいものを創り出すことのほうが好きで、また性格的にも向いていると思ったからです。
白井くん:僕は小さい時から工作が好きで、ものづくりに興味があったので、プロペラを選びました。
塩谷さん:私たちは、風力発電に使われている「ジャイロミル型風車」の性質を調べました。具体的には羽の模型を作り、風を当てて、1つずつ計測するのですが、ほとんどが手作業による工作なので実験の準備に時間がかかりました。また動画を撮って回転数を数え、解析する作業も本当にたいへんでした。
白井くん:実験を行う中で、真正面から風を当てた時(0度の時)に羽が回らないことがわかりましたが、最初はいくら考えても羽が回らない理由が思い当たらず、本当に悩みました。ちょうどその頃に学園祭があったので、発表を見に来てくださる方に聞いてみようとアンケートを配布すると、建築士の方から「渦が原因なのでは?」というアイデアをいただきました。根拠も論理立てて説明してくださったので、その考察をもとにさっそく実験を行うと問題を解決することができました。
塩谷さん:毎日、研究活動に取り組んでいると、前日まで気づいていなかったことに、翌日、気づくということがよくあります。時には今まで考えもしなかった思考が浮かぶこともあります。考え続けることにより生産性が高まるというか、より良いものを作れると実感しています。
MSTCは大学の研究室のような関係づくりを目指す
辻先生:高1は、既存の研究班に入って活動してもいいですし、オリジナルの題目を立てて活動しても構いません。MSTCでは今年度の高1からiPadだけでなくMac Bookも使用していますので、情報科の先生にもご協力いただき、プログラミングや画像認識、文章解析などのテクノロジー分野の研究にも踏み込む予定です。
「生徒が自主的に取り組む活動」というコンセンサスのもと、できれば大学の研究室のような縦の関係を作りたいと思っています。高2が高1に技術を教え、生徒同士で議論して結論づけたことを私に報告してもらう、そんな環境が理想です。発表の要旨なども高2主導で行い、なるべく私たちが必要以上に介入をしないように心がけたいと思います。そういうスタンスで関わることにより「研究活動は自分たちのもの。だから責任を持ってやる」という意識が生まれるのではないでしょうか。
辻先生:例えば計画を立てる時に、「いつまでに何をしなければならないか」という見通しを立てられるようになりました。文章をはじめとした表現技術の向上にも成長の跡が見られます。多くの対外的な発表を経験するたびに、うまく伝えることができないもどかしさを味わい、その都度「なぜ伝わらないのか」を理詰めで考えているからだと思います。
また何事にも「うまくいかないことには必ず原因がある」と信じ、原因の究明に努めることができるようにもなりました。そこに一番の成長を感じるとともに「科学者らしくなってきたなあ」と日々実感しています。
そうした先輩たちは高1生たちにとって、まぶしくて大きな存在ですが、一方の高2生たちも「自分たちに高1を指導できるのか」という不安を抱えています。しかしチームとして研究活動を推進するには、早く学年間の距離を縮めて、チームとして研究活動を推進してもらわなければなりません。そこで高2生たちには「1年前を思い出して、自分たちが何をしていたかをもう一度考えて」とアドバイスしました。この年代の子どもたちが自分の成長を客観的に評価するのは本当に難しいことですが、1年前の自分を振り返ることにより、後輩たちに対しても優しく、かつ丁寧に接することができるようになりました。生徒たちは"科学者"としてばかりではなく、"人間"としても大きく成長しています。
MSTの特色である「基礎研究α」は中2から
辻先生:まずは研究者の基本をしっかりと時間をかけて教えていきたいと考えています。教科学習も理系クラスであることを意識せずに授業を進めていますが、数学と理科に関しては深く、学んだことがつながるような授業展開を意識しています。
私は「サイエンスリテラシー」という授業を担当していますが、そこで「探究的読書」というメソッドを使い、本の目次からキーワードを取り出し、本の要約をする作業を実施しました。すると、こちらが想像した以上に要約が上手にできていることには本当に驚きました。中にはその本を読んだかのような見事な要約になっているものもありました。MSTの入試科目に「国語」はありませんが、国語的な能力も相当高い生徒たちが集まっているのは確かです。それだけにこの先が本当に楽しみです。
今井誠教頭が振り返る2019年入試
今井先生:本校は三田国際学園となって今年で5年目を迎えましたが、2019年も新設のMSTクラスをはじめ、多くの受験生にチャレンジしていただきました。特に「インターナショナルクラス」は女子を中心に非常に人気が高く、当初2クラスの予定が今年は3クラスからのスタートになりました。
本校では当初より文系、理系を問わず「サイエンスリテラシーが必要である」という考えのもと、入試問題を検討して参りましたが、2019年の入試はその考えをより推進することができたと自負しています。
例えば今年から実施した「算数1科目入試」は、これからのAIの時代に備え、数学的な思考を持つ子どもたちにも入学してほしいという思いから導入しましたが、算数でも"国語的"な力を測れるよう、問題にもさまざまな工夫を施しました。同様に「インターナショナル」の英語1科目入試では、英語でも"算数的"な力を問える構成となっています。
辻先生が「MSTの生徒たちは国語力が高い」と感じているのも、想いを込めて入試問題を作成した本校教師陣の工夫の賜物だと思います。こうした工夫は今後の入試でも行っていきたいと思っています。
今年度より高校に続き中学校でもMSTクラスがスタートし、本校の教育理念である「知好楽」<さまざまな知に出会い、それを行動の源として自らの世界を広げ、社会との関わりの中で自分自身の生き方を見つける>を実践できる場が整いました。さらに高校の「MSTC」では、医療系進路を見据えて医療者、研究者に必要なマインドを育む授業を行っています。
また「インターナショナル」のアドバンストでは海外の大学進学を目指し、準備を着々と進めています。一貫生の一期生卒業は2021年になりますが、その頃には今以上に医療系や海外の大学等幅広く進路が広がるでしょう。
本校にはドクター(博士号)を持つ教員が複数在籍しています。また、インターナショナルティーチャーも現在21名が在籍し、専任の教員として日常的に生徒と関わっています。
本校が本気で取り組む世界標準の教育に興味を少しでも持っていただけたら、ぜひ学校説明会に足を運んで、エネルギーを感じてください。三田国際学園の教育に触れることで、学校選びの「物差し」が得られるのではないでしょうか。