学校特集
多摩大学目黒中学校・高等学校2018
掲載日:2019年1月4日(金)
入学してから学力を大きく伸ばしていることで知られる多摩大学目黒。予備校に通わなくてもすむような大学入試に直結する授業を展開しており、国公立をはじめとする難関大学への進学実績も順調に伸びています。最近では独自のアクティブラーニング活動の面でも高く評価されています。実業界とのつながりが強い多摩大学との高大連携を強化。大学のゼミを通して、国際交流、地域振興などさまざまな社会活動の最前線を体験しています。また6年間で最大5ヶ国を訪問できる国際性豊かな環境も多摩大学目黒の特徴。単に英語教育だけでなく、学びの扉が世界に開かれています。「常に進化し続ける学校」として生徒のために良いことを積極的に取り入れる多摩大学の生徒たちが、これらの環境でどのように学び、成長しているのか、広報部長の井上先生に話を伺いました。
大学のゼミに出席し
社会活動の最前線を体験
「科学技術の進歩によって必要な知識はますます増大していきます。一方、グローバル化によって、国内外を問わずどの分野においても、多様な背景の人々と協働して社会を形作っていかなければなりません。そのために求められる力の土台を作るために、多摩大学目黒では校外AL活動を取り入れています。(井上先生)」
高校生として求められる基礎学力はしっかりと授業を通して学びつつ、並行して校外AL活動を通して社会の様々な現場を体験。そこで出会う人々と協力しながら問題解決をさぐるという経験を通して、これから大学で学ぶものとして必要な、「いろいろな人と協力し合う経験」を積み重ねていくのが多摩大学目黒のやり方です。実業界とのつながりが深く、AL活動に先駆的に取り組んでいる系列校の多摩大学の協力のもと、企業や官公庁とも連携。広く校外にALの学びの場を開き、中等教育単独では難しいPBL(Project-Based Learning)型を実施しています。
その内容は起業体験・国際経済・地域振興・イベント企画など多岐にわたります。今回はその中でも国際経済をテーマにした「アジアダイナミズム研修」と、地域振興として国内におけるグローバル化とそこに発生する諸問題の解決に挑む「いちょう団地プロジェクト」の2つを紹介します。
日本政策金融公庫からの起業セミナーに始まり、企業訪問や新商品の研究・開発などを通して起業を体験します。
【アジアダイナミズム研修】韓国の済州島で行われる国際経済フォーラムに参加します。特にアジアを中心とした国際関係と経済の最先端の現場で行われる首脳陣の議論を目の当たりにすることができます。
【いちょう団地プロジェクト】多国籍の人が混在して居住する神奈川県の「いちょう団地」。そこで発生している諸問題に目を向けて、多文化共生を実現するために何ができるのか。今後の日本社会が直面する社会問題の解決に挑みます。
【目黒イベントプロジェクト】自分たちで手作りした和紙を使ってキャンドルナイトイベントを企画・運営。目黒区内の商店街と協力しながら夜を美しく演出し、コミュニティーの活性化に貢献します。
【プログラミング体験】コンテストに参加することを目標に、基本からプログラミングを学びます。
【きく、はなす、かんがえるワークショップ】多摩大学で行われるゼミを先取りで体験します。様々な分野で活躍している先生方からお話を聞き、話し合い、考えを深めるという探求型活動を行います。
アジアダイナミズム研修で
アジアの国際関係の最先端に触れる
福田康夫元総理と一緒に
韓国の済州島で行われる国際経済フォーラムに参加するアジアダイナミズム研修は、多摩大学目黒の校外AL活動の中でも、特に知的好奇心を強く刺激する内容です。福田康夫元総理、ノーベル平和賞を受賞したラモス・ホルタ元ティモール大統領、潘基文全国連総長など世界の要人が集まるフォーラムに参加し、東アジアの平和と繁栄の促進を目指した講演やディスカッションを直接聞くという貴重な経験をすることができます。
中3の時に韓国の済州島で行われた国際経済フォーラムに参加する「アジアダイナミズム研修」に参加したことは、私にとって非常に大きな体験でした。各国の首脳会議や核問題についての対策を協議する場などを直接自分の目で見ることができました。特に印象に残ったのはアメリカのゴア元副大統領の環境問題についての講演です。社会の大きな問題が私たちの身近にも直結することだと感じ、これからの生活の仕方を見直そうと思いました。
研修に参加してからは、普段の授業に対する取り組み方も変わってきました。特に歴史関係では中国や韓国と日本との関係をただ知識として覚えるのではなく、どういう経緯で今があるのかということを考えて学ぶようになりました。
今の目標は、自分の経験を最大限活用して人のために尽くせる人になること。AL活動の経験を普段の勉強に活かしながら、英語と数学を特に頑張っていきたいです。
最近は日本と韓国を巡る様々な問題が出ていますが、このような時期に、あえてアジアダイナミズム研修に行く意義について、井上先生は以下のように話します。
「国際社会は、平和の追求というきれいな側面だけではありません。水面下ではそれぞれの国が国益を背負って、片手で握手してもう片方の手で殴り合うという現実的な側面にも気づいてもらいたいと思っています。今のような時期だからこそ、アジアダイナミズム研修で学ぶことは多いのです。様々な意見を聞いた上で、自分の考えを持つ良いきっかけにしてほしいと考えています」
アジアダイナミズム研修に参加した生徒たちは、帰国してからは普段の授業にも真剣に取り組み、知識を習得するようになったといいます。きちんとした知識がないと考えることも議論することもできないことに気づき、主体的に学ぶ姿勢が芽生えているようです。
多国籍の人が居住する団地において
多文化共生の実現を目指す
フィールドワークを行う生徒たち
グローバル化は、何も世界に出ていくことばかりではありません。日本におけるグローバル化にも、解決すべき諸問題があふれています。「いちょう団地プロジェクト」は、そのような日本におけるグローバル化を学ぶ絶好の舞台です。
かれていないと理解できな
い人が増えてしまう
神奈川県横浜市と大和市にまたがるいちょう団地は、住民のおよそ2割が外国籍ともいわれる大規模集合住宅です。日本語が通じない住民も少なからずいます。様々な文化を背景に持つ多国籍の人が混在しているため、生活様式の違いから様々な問題が発生しています。「いちょう団地プロジェクト」では、これらの問題に目を向けて、多文化共生社会を実現するために何ができるのかを、フィールドワークなどを通して学びます。
例えばごみ問題。日本人にとって当たり前のごみを分別することや決まった日に決まった種類のごみを出すことも、多くの外国人にとってはそのような感覚はなく、トラブルの原因になります。他にも救急車要請や子供の教育など、様々な問題があります。多摩大学のゼミの協力のもと、現場を訪れてこれらの諸問題に触れ、現場レベルでどのような改善ができるのか、中高生ならではの視点で考え、提案します。
現在直面している問題を理解する
「いちょう団地には、これからの日本社会が直面する問題が濃縮されています。国外に出て活躍するグローバル化もありますが、このように国内におけるグローバル化にも目を向けて、多角的な視点を持ってもらいたいと考えています。(井上先生)」
一人一家族にホームステイするほか
6年間で最大5ヶ国を訪問可能
チャンドラー教諭とサイモン教諭。
海外でも国内でも多国籍化が進む社会の中で、英語は共通のコミュニケーション手段として習得すべきツールです。
多摩大学目黒には2名の専任教員がおり、少人数の英会話授業で一人ひとりの英語をしっかり伸ばしています。休み時間や放課後はもちろん、学校行事にも参加して、常に英語を話す機会を提供しています。やる気のある生徒はネイティブ教員が主宰する英語部に所属し、より多くの時間を英語オンリーの環境にして学ぶことができます。
さらに6年間で最大5ヶ国を訪問し、学べる機会が用意されています。
中でも中学のオーストラリア修学旅行では、2週間一人一家族にホームステイしながら現地の学校で英語を学ぶという本格的なもの。最初は苦労することもありますが、ネイティブ教員から習った英会話を自分のものにする最大の機会です。他にもイギリスへの語学研修制度があります。
高校ではアメリカ・カナダ・ニュージーランドに1年間ホームステイしながら現地校で学び、帰国後遅れることなく卒業できる制度があるほか、中期・短期の留学プログラムが充実。英語圏でも異なる文化に触れることができます。
また、交換留学制度があるニュージーランドからは留学生が多摩大学目黒に来ることもあります。生徒たちは日本語を学ぼうとする英語ネイティブの留学生を助けるという、英語学習の枠を超えた国際経験を積むことができます。
修学旅行は3年間の英会話授業の集大成。一人ひとり別々にホームステイしながら、約2週間現地の学校で語学研修を行います。最初は苦労することもありますが、すぐに適応して自分の考えを英語で伝えられるまでに成長します。
語学研修・留学制度(希望者)
語学研修(中学/イギリス 高校/アメリカ)
夏休み期間中2週間(高校3週間)、ホームステイしながら語学研修を行います。
長期留学(高校/アメリカ・カナダ・ニュージーランド)
1年間、ホームステイしながら現地校に通います。
中期留学(高校/カナダ)
半年間、ホームステイしながら現地校に通います。
短期留学(高校/ニュージーランド)
2ヶ月間、ホームステイしながら現地校に通います。
短期交換留学(高校/ニュージーランド)
5週間、お互いの家庭にホームステイしながら現地校に通います。
「現地の学校で学ぶことは、単に英語を学ぶだけではないメリットがあります。日本以外の国からの留学生もともに学ぶため、様々な世界や文化背景を持つ人々と交流し、視野を広げることができます。
また2016年にはネイティブ教員2名が常駐する国際交流室を設置。誰でも気軽に立ち寄って英会話を楽しめるほか、留学や語学研修に向けてのサポートやアドバイスも受けられます。海外の大学進学へ向けてのアドバイスも、今後行っていく予定です。(井上先生)」
自分の考えと目標を持って
努力し続ける人を育てるために
紹介された井上先生(写真中央)
系列大学の協力のもと、企業や官公庁とも連携した独自のAL活動を行う多摩大学目黒。海外の学校で学ぶ機会も多く設けられており、他校にはない多様な学びがあふれています。
これらの活動はeポートフォリオに記録され、これからの大学入試において有利に働くという面もあります。しかしそれ以上に大切なのは、これらの学びを通して、生徒たちが自分の考えと目標を持って努力し続ける人間に育てることなのだと、井上先生は話します。
「現代社会は変化が速く、今の世の中の流れが数年後には真逆になっていることも十分に考えられます。大切なのは周りの価値観を鵜呑みにしてしまうのではなく、自分で考え、自分の価値観と目標を持って努力し続けることなのです」
実は井上先生ご自身も、元財団法人合気会合気道本部道場指導員として、マレーシア・タイ・香港で巡回指導をした経験の持ち主。武芸指導という立場から世界の現場で国際交流を経験し、そこで何ができるかをきちんと考えて行動することの必要性を痛感したという井上先生の話には、大きな説得力があります。
「多摩大学目黒では、授業はもちろん、校外AL活動でも、クラブ活動でも、学校行事でも、常に目標を持って、努力し続けられる人を育てることを一番大切に考えています。その実現のために、学校も常に進化し続けていきます(井上先生)」