学校特集
東京都市大学等々力中学校・高等学校2018
掲載日:2018年12月1日(土)
東急大井町線「等々力駅」より徒歩10分。瀟洒な住宅街の緩やかな坂を登ると、東京都市大学等々力中学校・高等学校が見えてきます。同校は2010年に共学化し、2018年春で中高一貫3回目の卒業生を送り出しました。共学化し9年目を迎える同校ですが、毎年、難関大学への合格実績を伸ばし続けています。今春の卒業生は176名、うち国公立大が43名、早慶上理が94名、G-MARCHには180名という驚異的な実績をあげました。卒業生が176名と、他校に比べて少ないなかでのこの実績、この躍進ぶりは「AERA」などのマスコミにも取り上げられるほどです。
そんな同校が、2015 年より「等々力改革第2ステージ」として力を入れているのが理数教育。なかでもホットな話題といえば、2019年には2年目の実施となる「算数1教科入試」です。ここ数年、「算数入試」を実施する学校が増えていますが、同校の算数入試には、やはり同校ならではの思いや工夫があります。2019年の算数入試の話題を中心に、教頭で入試広報室長の二瓶克文先生と、数学科主任の清水遼先生にお話を伺いました。
「算数1教科入試」では、
上位校を意識した問題を出題
●算数が得意な受験生には、実力を発揮できる良い機会
「本校には付属小からの入学者のほか、4教科入試で入学してくる生徒や帰国生、英語1教科で入学してくる国内のインターの生徒、また、高校募集も行っているので高校から入ってくる生徒もいます。さらに、2017年からはアクティブラーニング型入試も始めており、いろいろなバックグラウンドをもった生徒が学校を盛り上げています」と、教頭で入試広報室長の二瓶克文先生は言います。
そして2018年に導入された「算数1教科入試」もまた、「いろいろな能力をもった生徒」への開かれた扉として導入されました。
同校には、東大や東工大など最難関国公立大学の現役合格をめざす「S特選コース」と、難関国公立大学や早慶上理などをめざす「特選コース」の2つのコースがありますが、2019年に2回目となる「算数1教科入試」は、「S特選コース」の入試として、2月1日の午後に実施されます。
ただ、第1回目である2018年には算数Ⅰ(50分)、算数Ⅱ(60分)、作文(50分)で実施されましたが、2019年は算数(60分)のみとし、難易度も変え、受験しやすくしました。2019年は、「記述をさらに重視。解く過程から思考力や記述力を問う問題にしようと考えています。算数が好きで時間をかけてでも前向きに取り組める人。そんな生徒に本校で成長していってほしいと思います」と、数学科主任の清水遼先生。
この「算数1教科入試」を2月1日の午後に実施する理由を、二瓶先生は次のように語ります。
「中学受験期間は受験生の子どもたちにとって、大変忙しいスケジュールになります。そんな状況のなか、2月1日の午後に算数1教科だけ、とすれば60分間で終わりますから、余力を残して翌日以降の試験に臨めます。また、算数1教科だけというのは、算数が得意な受験生にとって実力を発揮する良い機会になります。ぜひチャレンジしてほしいですね」
近年、慶應義塾中等部や浅野などをめざす受験生が同校を併願校として選ぶケースが増えてきているそうですが、そのような状況も考慮し、算数1教科入試の問題は「上位校の受験生を意識した問題」(二瓶先生)になっていると言います。
●「算数1教科入試」の模擬問題に挑戦してみよう
上位校を受験する受験生を意識しながらも、同校らしい算数入試とはどのようなものでしょうか。改めて清水先生に伺いました。
「算数1教科入試は60分・100点で行います。内容は整数や割合、図形、場合の数など大問が4~5題を出題予定で、解答のほかに、答えを導き出すための過程も記述してもらいます。たとえば、その問題にはどういった性質、規則性があるのか。試験中は、まず手を動かしてみてください。そして、問題の規則性に気づき、試行錯誤し、自らの考えにまとめ、記述することにより第三者に伝える。こういった一連の流れでのなかで、思考力や表現力を見させていただきます。そして、"キラリと光る"原石をもった生徒さんを探し出したいと考えています」(清水先生)
なお、算数入試の模擬問題は同校のHPに掲載されています。力試しのつもりで、ぜひチャレンジしてみてください。
(※模擬問題はこちらをクリック)
独自の理科教育プログラム「SST」。
中1・中2の理科は約100(2年間で約200回)の実験テーマを用意
●実験重視の授業で探究心を身につける
理系大学の付属校で、もともと理数教育は充実していましたが、2015年よりさらに強化している同校。その柱となるのが独自の理科教育プログラム「SST(Super Science Todoroki Program)」です。
「SST」の特徴は、なんといっても年間100にも及ぶ実験・学習テーマがあること。そして、それらのテーマをすべてやりきること。実験重視ですが、時には地の利を生かして等々力渓谷や多摩川へフィールドワークに行くこともあります。
実験は「予習(予想)・仮説」→「実験・観察」→「まとめ・考察」のサイクルで行います。これを繰り返し行うことで、自主的な学習や理科的理解を促進し、探究心を育んでいるのです。
中2のS特選コースの担任でもある清水先生は、生徒たちの理科のノートを見て感心するそうです。
「理科ではノートをしっかりとる指導もしていますので、予習から考察まで、とにかく生徒たちの実験ノートは見事です。また、理科は予習をしなければ授業に参加できません。こうした徹底した指導で理系の感覚を養ってくれています」(清水先生)
生徒自身もまた、「実験ノートを作り、自分で結果や記録をとって、そこから考えるのが楽しい」と言っているとか。中身の濃いノートを作りたいという気持ちはそのまま、学習意欲の向上につながっています。
(参考:実験重視の理数教育「SST」)
http://www.tcu-todoroki.ed.jp/support/gl/sst.html
●オーストラリア研修やプログラミング講座など、特別講座もユニーク
都市大等々力では、中2から高2までの希望者が対象の「オーストラリア研修」を実施しています。これは8月上旬の11日間、オーストラリアの大学の医学部を訪問し、そこで医師や医学の道を志す高校生や大学生と交流。グローバルリーダーをめざすための素養を磨きます。
また、東京都市大学との高大連携も盛んに行われています。同大学の付属校であるメリットを生かして、大学の研究者が同校を訪れ、最先端科学技術について講演を行ったり、プログラミングの基礎を学ぶ講座も開講。高度な先端科学への興味を喚起しています。
また、中学生は基本を学ぶために、系列の幼稚園で理科実験教室のお手伝いをするといったプログラムも。これは、「自ら学んだことを他者に教える」ことをとおして、自分自身の理解をより深めていこうというものです。
●生徒の満足度が高く、理科好きな生徒が多い
「命のはぐくみ」
「実験」「観察」を中心に、自主的に学ぶ機会に満ちたSST。中2の生徒にとったアンケートからは、97.9%の生徒がSSTの授業に「とても満足している」と回答しています。また、「自主的に取り組んだかどうか」という質問には88.4%の生徒が「自主的に取り組んだ」と回答。「学習の理解度」に関しては90%の生徒が「理解できた」と答えています。
生徒のみなさんからは、「理科は実験・観察が多いのでとても満足している」「実験すればするほど新しい発見がある」「実験をとおして自分で考える機会がある」「実験の内容を『覚えて理解』するのではなく、一つの現象からさまざまな可能性を考える思考力がついた」「観察力がついた」といった感想が聞かれました。SSTが導入されてからまだ4年。この授業を受けた生徒たちが、将来どんな活躍をしてくれるのか楽しみです。
いろいろなタイプの生徒が切磋琢磨して
学校を盛り上げている
●「ノブレス・オブリージュ」と創設者・五島慶太氏
同校の前身となる東横女子商業学校の創設者は、東急グループの礎を築いた実業家の五島慶太氏。五島氏は、明治時代、長野県上田市に近い小さな村に生まれました。向学心が強く、小学校の代用教員をしながら学費を貯め、東大法学部へ進学。こういった自身の経験から教育にも尽力した五島氏は、つねに「世の中のために、人のために」という哲学をもっていたそうです。
同校には系列校が複数校ありますが、五島氏の彫像が置かれているのは同校だけだとか。五島氏の「世の中のために、人のために」という思いは、「ノブレス・オブリージュ(高潔な若人が果たすべき責任と義務)」「グローバルリーダーの育成」という理念として、同校の生徒たちの心に現在も受け継がれています。
●2019年より生徒全員がタブレット端末を所持。ICT教育が加速
2020年からの大学入試改革でも注目の「eポートフォリオ」ですが、これは生徒一人ひとりの学校での学習や行事などの記録をデータ化したもので、大学入試のWeb出願などに活用されます。同校では今年より「eポートフォリオ」を全学年で導入しました。また、高校生はタブレット端末を持っていますが、来年からは中学生も全員がタブレット端末を持つことになるなど、2020年大学入試改革への準備も着々と進んでいます。
「実際には現高1の生徒から『eポートフォリオ』を活用することになるのですが、本校の場合は高1だけではなく、学校全体で取り組んでいるのが特徴です。また、クラウドサービスの『クラッシー』や授業支援アプリ『ロイロノート』も導入しています」(二瓶先生)
●しっかりと部活に励み、「TQノート」で学習を自主管理する
サッカー部の顧問でもある清水先生は、「部活動を本気でやっている生徒は、勉強にも一生懸命に取り組んでいます」と言います。
クラブ活動の加入率は中学生が94%、高校生でも88%と、中高合わせても9割近い生徒が部活に入っています。活動日は週4日までと決まっていますが、校長の原田豊先生も「部活をしっかりやりなさい」と奨励しているそうです。
「部活動は人間力育成の場でもあると思います。本校には自習室があるのですが、しっかりと部活をやり終えたあとは、生徒たちは自主的に、または誘い合って自習室に行き、大いに活用しています」(清水先生)
ちなみに、同校は8年前まで女子校でしたが、現在の男女比は6対4で男子のほうが少し多くなっています。「生徒同士は和気あいあいとしていて、男女隔てなく仲が良いですね」と、清水先生。
生徒同士が切磋琢磨できる環境のなか、生徒と先生の関係もまた密です。生徒たちの学習計画を支えるものに「TQ(Time Quest)ノート」があるのですが、これは自学自習と時間管理能力を育むためもの。このノートには、先生も必ず目をとおしてアドバイスしています。
このように、日常的に育まれた先生と生徒の信頼関係は厚く、「大学受験の時、志望の大学に合格しても、『面倒を見てくれた先生のために』と思うのでしょうか、志望校に合格しても受験を続ける生徒が多いですね」と、二瓶先生は言います。
生徒と先生の信頼関係が、卒業生数が少ないのにもかかわらず、難関大学への合格者数が多いという実績となって表れているのかもしれません。
多彩なバックグラウンドや力をもった生徒が入学してくる同校で、それぞれがさらに力を伸ばす6年間。ここにまた、「算数が得意」「算数で自分を表現できる」生徒が加わることを同校は期待しています。
自身の力を試してみたいと思う受験生のみなさん、2月1日の午後は東京都市大学等々力の「算数1教科入試」に挑戦してみてはいかがでしょうか。
ここまででご紹介した以外にも、東京都市大学等々力の魅力はまだまだいっぱいあります。
以下のリンクから、ぜひチェックしてみてください。
■ S特選コース http://www.tcu-todoroki.ed.jp/j_high/syllabus/course03.html
■ 特選コース http://www.tcu-todoroki.ed.jp/j_high/syllabus/course01.html
■ GL留学コース http://www.tcu-todoroki.ed.jp/support/gl/abroad.html
■ システムLiP http://www.tcu-todoroki.ed.jp/support/systemlip/index.html
■ 英語・国際教育プログラム http://www.tcu-todoroki.ed.jp/support/international/index.html