学校特集
晃華学園中学校高等学校2018
掲載日:2018年5月24日(木)
晃華学園は調布市の閑静な住宅地にあるカトリックの女子校です。どのような世の中になっても「善」を選ぶことができる、カトリックの教え(価値観)を柱とした全人教育に力を入れるとともに、女性が豊かな人生を送るための資質や学力に磨きをかけ、約半世紀もの間、人と共に人のために生き、自分らしい人生を築く卒業生を送り出しています。
晃華学園の魅力は、生徒一人ひとりが晃華生である自覚と誇りをもって自発的に学校生活に取り組んでいるところにあります。「卒業生をロールモデルに女性としてどう生きるかを考えることができる。それが女子校の存在意義」と語る、新校長の西山恵子先生をはじめ、教頭の安東峰雄先生、中1学年主任の下田好利子先生、高1学年主任の渡辺徳正先生に、晃華学園の特色ある教育の1つ、中1のオリエンテーション合宿、高1の進路学習合宿について伺いました。
入学式前に行うオリエンテーション合宿
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2018年4月に晃華学園中学校に入学した生徒は159名。数でいえば併設の小学校から進学する生徒のほうが少ないのですが、入試による入学生の保護者からは「馴染めるかしら」と心配の声も・・・。子どもたちも入学式で緊張し、通学で緊張し、教科ごとに先生が変わる授業でも緊張するというように、新しい学校に入学する精神的な負担は計り知れません。その負担を少しでも軽減し、入学式当日から晃華生として生活できるようにとの目的で行っているのが、入学式前に実施されるオリエンテーション合宿(1泊2日)です。
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この行事は、何十年も続いている晃華学園の伝統行事。同校が大切にしているものを伝える校長先生の講話や、お祈り・校歌・聖歌の練習など、毎年恒例のプログラムに加え、中1を担当する教員が工夫を凝らした、その年独自のプログラムを行っています。出発の際には、不安だらけの生徒たちですが、寝食をともにし、無事に家に着いた時には「参加してよかった」と皆、口を揃えているそうです。
新入生は4月最初の月曜日に登校し、クラス発表の後、合宿のレクチャーを受けたり、入学式の練習を行ったりします。そして翌朝、学校に集合しバスに乗り込んで、合宿地に移動します。今年度は千葉県の九十九里でした。
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下田先生:バスの席は、お友達が増えるように様々な配慮をしています。みんなが初対面なので行きは緊張ぎみですが、現地に着いて自己紹介やクラスごとのオリエンテーション、ミニ運動会などに取り組むうちに子どもたちは自然と打ち解けます。今年の自己紹介は、名乗り合った人からしおりにサインをもらうというゲーム型式で行いました。「何人、集められるかな」と言うと、生徒たちは恥ずかしがることなくサイン集めを楽しみました。
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また、ミニ運動会では「しっぽ取り」、「ボール運び競争」、「大縄跳び」、「フラフープを使ってのリレー」などクラス対抗の種目を増やしたのも今年の特徴だったと思います。
こうした親睦を深めるプログラムに加え、クラスごとに目標を考えたり、お祈りのやり方を習ったり、入学式に備えて校歌や聖歌を練習したり、学校生活を自己管理するためのスコラ手帳(中学3年間/高校は任意)の書き方を学んだりと、晃華生になるためのさまざまなプログラムにも取り組みました。
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女の子らしいデザインに仕上がりました♪
なかでも特に各担任の個性や工夫が見られたのが「クラス目標づくり」です。ある担任は「こんな学級になってほしい」という思いを熱く語った後に、「君たちならどうする?」と、問いを投げかけました。子どもたちは言葉を発していいものかと最初は周りの様子を伺っていましたが、1人の子が「キーワードをあげてみようか」と口火を切ると、別の子がホワイトボードの前に立って司会を始めたり、書記を始めたりして話し合いの形が整っていきました。合宿をすると、リーダーシップのある子、元気で行動力のある子、のんびりしている子など、子どもたちのことがよくわかります。制服を来て何日登校しても見えにくいものが生徒も教員もよくわかる、とても有意義な合宿になっています。
神様のお導きにより私たちはここにいる
校長先生の講話では、新校長の西山先生が「ミッションスクールに入ってきたあなたへ」というテーマで、晃華学園が大切しているものをまず最初に伝えました。これまでカトリックの教えに触れたことのなかった子も、真心のこもったお話に、晃華学園の一員となった実感を覚えたのではないでしょうか。
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西山校長:私が最も伝えたかったことは、「一人ひとりを大切にする」ということです。小学校からたった1人で入学した生徒は不安が大きいと思いますが、「この合宿でお互いに知り合って晃華生になっていくので大丈夫」と話しました。
私たちがこうして晃華学園に集い、今年もまた1つの学年が始まったことは偶然ではありません。意味があるのです。公立中学校に行くことも、他校を受験することもできる中で、こうして出会うことができたのは、神様のお導きがあったからです。生徒には「気づいていないかもしれませんが、あなた方は神様に呼ばれて晃華学園の生徒となったのです。だから私たちはあなた方一人ひとりをかけがえのない人として大切にします」と約束しました。
また、本校では「Noblesse Oblige」(ノーブレス オブリージュ)という言葉を大切にしています。その言葉は、カトリックの精神に基づいた価値観を礎にして、自分の個性や能力を磨き、将来、どのような社会で生きることになっても、喜んで役割を果たす人、他者のために生きる人を育てるという本校の精神と一致します。「学校生活においても、他者のために尽くす心、感謝する心を大切にしてほしい」ということも話しました。
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フランス語の格言として有名な言葉ですが、もともとは「ルカによる福音書」12章48節「すべて多く与えられた者は、多く求められ、多くを任された者は、さらに多く要求される」という聖書の言葉に由来しています。晃華学園に集う生徒は、地球規模で見れば「多く与えられた者」といえます。将来、多くを求められ、任された時のために、しっかりと自分を磨き、人々のために役立てる責任を担ってほしいという願いを込めて、この言葉を大切にしています。
卒業生をロールモデルに自分の生き方を考える~高1の進路学習合宿
「ノーブレス オブリージュ」の精神を根底としたキャリア教育も、晃華学園の大きな特色の1つです。人生には、大学受験、就職、結婚、転職などさまざまな転機が訪れます。分岐点に差しかかった時にどの道を選ぶかは、その人の価値観が基準となります。カトリックの女子校という強みを生かしてその価値観を育み、卒業生をロールモデルに自分と向き合い、自分らしい生き方を考えていく......。「ライフガイダンス」と呼ばれる晃華学園独自のキャリア教育が生徒を輝かせていることは間違いありません。
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渡辺先生:本校では、中学校を卒業し、高校に入学する前に、キャリア教育にスポットを当てた合宿を行っています。それが自分と向き合い、どのように生きるかを考える「進路学習合宿」(2泊3日)です。「(その言動は)高校生としてどうなの?」という問いかけをしながら、晃華学園の高校生になるということはどういうことかを考え、自覚してもらうことを目的に、10年前に始めました。
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安東先生:ピアノを上手に弾くことができないのに、「将来の夢はピアニストです」と言っても現実味がないですよね。「進路学習合宿」では、模試の結果を分析して弱点を明らかにし、基礎学力の確認をすることで、現在の実力を把握します。もちろん勉強も行いますが、それだけではないのが、晃華学園の「ライフガイダンス」が単なるキャリア教育ではないことの所以でもあります。
卒業生が自分の中高時代や人生を語る「La vie heureuse」(ラ・ヴィ・ウールーズ:フランス語で"幸せな人生")というオリジナル冊子を読み、職業も違えば生き方も違う約30名の卒業生の生き方に刺激を受けて、生徒は自分の価値観や生き方と向き合います。
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安東先生:「ラ・ヴィ・ウールーズ」に載っている卒業生は、社会に出てから人生の曲がり角に立った時も、くじけるどころか、晃華学園が大切にしているものを栄養として、花を咲かせています。実は「ラ・ヴィ・ウールーズ」に載っている3分の1の卒業生が転職していますが、ライフステージが変わることは新たに生まれ変われるチャンスでもあるのです。同じ職業であっても、ライフステージが変わることで仕事への関わりが豊かになることを先輩たちは教えてくれます。このような人生経験を身近に感じることができるのも本校の「ライフガイダンス」ならではだと思います。
渡辺先生:女性のロールモデルといえば、今年度は高1の4クラスの担任のうち3人が女性でした。世代は異なりますが、それぞれの立場から、自らの体験を話してもらいました。3人の中の1人はお母さんなので、出産や子育てをしながら働くということがたいへん身近に感じられたようです。
2日目の夜はみんなの前で自分の夢や目標を語りました。少し高めの設定をした発表ですが、この背伸びから「頑張る」という決意が生まれるようです。聞く側も「そんなことを考えていたのか」と同級生たちの夢や目標に心を動かされます。中高一貫校では、よく「中だるみ」が心配されますが、この合宿は生徒たちとっては、良い意味での「刺激」となっています。
大人っぽい顔つきになって帰ってくる我が子をみて、保護者の方も、勉強合宿だと思って送り出しけど、それだけではなさそうだと感じるようです。保護者面談は秋ですから随分時間が経っていますが、「あの合宿で変わった」「何をしたのか」と聞かれたこともあるそうです。
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晃華学園の生徒たちはクラブ活動にも一生懸命
(写真はバレーボール部)
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音楽部(オーケストラ)は部員100名以上の大所帯!
ライフガイダンスにつながる「振り返り」を大切にしている晃華学園

晃華学園では、行事やHRでの取り組みを文章にして残しています。同校ではこれを「振り返り」と呼んでいます。iPadを導入しているので、必ずしも紙に書くわけではありませんが、書いたものは担任に提出し、コメントが書かれて戻ってきたらファイリングします。中3の校長面接では、1人ひとりが「振り返り」を見せながら自分の中学校生活や成長について話すとともに、高校生活に向けての決意を述べます。高校では「振り返り」をeポートフォリオにして、新しい入試に活用していく予定です。
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安東先生:本校が「進路学習合宿」のような行事ができるのは、カトリックの教えに基づいた「価値観を育むベース」があるからです。中1からいろいろな種を蒔いて行き、中3では1年間かけて職業や進路について考えます。中3の最後に受けるR-CAP(興味・価値観・志向を詳細に分析する自己分析・適職発見プログラム)の結果も進路学習合宿で活用できるので、良いターニングポイントになっていると思います。中学生が自分の興味や志向を自覚することは難しく、自分に向いている職業が、それまで自分が思っていた職業と違うことが珍しくないのです。R-CAPで思いどおりの結果を得られる生徒は約3割。一旦、意識をリセットし、ここで視野を広げる生徒もいます。それは縛られていたものから解き放たれて自由になるということ。そういう生徒はまっさらな気持ちで高校生活をスタートさせています。
「漫然と生きてはいけない」その信念が原動力
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安東先生:「進路学習合宿」がもたらすものは、「漫然と生きてはいけない」という価値観をみんなで共有することではないかと感じています。高校に入学する前に、全員が自分の生き方を考え、将来を意識することで、高校生はのびのびとそれぞれの目標に向かいながらも、集団力を必要とする時にはしっかりまとまって力を発揮します。その姿は頼もしいものです。
例えば、レンガを積み上げている人に「何を作っているの」と尋ねた時に、「レンガを積み上げています」「壁を作っています」「教会を作っています」と答えた人がいたとします。この中で自分の仕事にもっとも肯定感をもっている人は誰かというと、「教会を作っている」と答えた人です。その人はレンガを積み上げる単純な作業もつまらない仕事とは思いません。教会を完成させるために必要な作業ととらえるからです。日常の学習や活動も同じで、そこだけを見ている子にとってはつまらないことかもしれませんが、将来を見据えている子にとっては必要なことになります。後者のほうがより熱心に取り組み、力が伸びるのは言うまでもありません。

オリンピック選手が、勝つために目的ごとにコーチを揃えたり、自分でトレーニングメニューを組んだりするように、自分の目標が明確になった生徒は先生を上手に利用するようになります。模試ではまったく冴えなかったのに、本番で力を発揮し大学入試を突破する生徒は大概、私たち教員をつかまえて質問していた生徒たちです。
多くの女性が社会進出をしている時代。女性のロールモデルを明確に示すことができる、女子校の存在意義は大きいと考えます。
安東先生が「私たちは人材ではなく、人間を育てている」と胸を張るように、世の中が変わり人材に代わるものが現れたとしても、人間に代わるものは現れません。「私らしく生きる」ことが、より価値を増すであろう人生100年時代に、晃華学園の価値観教育が輝きを増すことは言うまでもありません。