学校特集
共立女子第二中学校高等学校2018
掲載日:2018年9月1日(土)
今から132年前(1886年)に創立された共立女子学園の建学の精神は「女性の社会的自立」。それは共立女子第二にも引き継がれ、建学の精神を具現化する教育が脈々と続けられています。東京ドーム5個分の自然豊かなキャンパスの中で、「野菜作り」や「星の観察」などの実体験を大切に、社会貢献ができる人間力豊かな女性を育成するための多彩な教育プログラムを展開。入試にも実践を取り入れ、2019年度からはその場で実験を行う「サイエンス入試」の導入が決定、注目を集めています。そして高校では、教育方針の基本ともいえる「探究」をさらに進化させた「共立探究」が本格始動。このような同校の主体的な学びが、社会に出てから必要になる力を育み、生徒たちを自立した大人へと導いているのです。その同校が教育の二本柱とする「探究」と「英語」について、校長の晴山誠也先生と各先生方にお話を伺いました。
サイエンス入試で見たいのは
前向きに集中して取り組む力
来年度からスタートする「サイエンス入試」はペーパーテストではありません。受験当日、試験官から実験方法の説明を受け、準備された器具を使って実験を行い、レポートにまとめて発表するという形です。
「実験内容は、『食塩が溶けた透明な水から塩を取り出す』といったような内容で、難しいものではありません。正解を求めるというよりも、私たちが見たいのは、前向きに集中して取り組み、きちんと発表できるかという姿勢です。募集枠は10名と多くはありませんが、これまでの入試とは違った学力観で、真正面から物事に取り組む多様な力をもった生徒に入学してほしいと思っています」と、晴山校長は言います。
夏休みに行われている「理科実験教室」が毎年大盛況の同校。サイエンス入試は、理科好きな生徒にとって大きなチャンスといえます。
四季折々の野菜を育てている
「もともと本校では、天文教室で星をながめたり、野外観察をしたりと、自然環境とふれあう学びを大切にしてきました。300㎡あるファームでは、私自身、野菜作りも種まきから収穫まで生徒と一緒に行っています。虫が出た時に、キャ―と言って終わりではなく、『これ、何だろう?』『きれいだね』と、関心をもつことが大事だと思います」と、晴山校長。
この恵まれた自然環境に加えて、生物・化学・物理の実験室が4つあり、中学3年間で約100もの実験を行っているのも同校の特徴。お茶の水女子大学の支援のもと、「ウニの人工授精」や「幼生のポケット飼育」など、「体験」を重視した理科教育も行われています。
「なぜなのかと、もっと深く調べていこうとする気持ちは、理科以外の教科にも共通するもの。本校には文系志望の生徒が多いですが、理系的な考え方は重要です。客観的なデータを見て物事を判断できる、そんな思考力をもった生徒を育てていきたいと思っています」(晴山校長)
学びを深める「共立探究」は、
7つのテーマから自ら課題を設定
物事への関心を広げ、自ら調べる姿勢を大切にしてきた同校ですが、今年度からは高校で、自分の学びを深めていく総合学習「共立探究」がスタートしました。
「高校からは週に一度、探究の時間を設けて、社会に出てからも必要な思考力や問題解決力を身につけていきます」と、教務部主任の田端豊先生は言います。「中学で基礎を学んだあと、高1で読む力、書く力、考える力をしっかりつけて、高2で本格的な探究活動に入っていきます。カテゴリーは、『歴史』『国際』『科学』『文化』『キャリア』『生活』『自然』の7つ。7つのテーマから一つを選択して、自分で『問い』を立て、2学期でフィールドワークなどを経て論理的に検証していきます。3学期には個人やグループに分かれて、それぞれの学びを深めていきます」(田端先生)
複数の正解がありうる問題解決型の取り組みをとおして、今後の多様化する社会にしなやかに対応する力を身につけることが狙いです。
各階にあるオープンスペースは人気の場所
「探究には、言語の力が必要です」と、田端先生。同校では、以前から言語の力を獲得するために読書に力を入れ、中学3年間で100冊読破することを推奨するプログラム「3-100計画」を実施しています。
「朝読書の時間はもちろん、電車通学の時間を使った読書を奨励しています。図書館のほかにも、教室や各階のオープンスペースにも本の紹介コーナーを設置していますが、夏休み中には選択した2冊の本を読みこみ、新学期にプレゼンを行います。発表には順位をつけて、各学年で代表者を選出します」(田端先生)
さらに、「2~3学期では、各自が興味のある新聞記事をスクラップして、自分の考えを自分の言葉で発表する取り組みも行っています」とも。このように、自分一人で考えるだけでなく、一歩進めて発表し合い共有することで視野も広がっていくのです。各教科の先生有志で「探究チーム」も結成され、同校で行われてきたこれまでの確かな学びを、高校での深い学びへとつなげていくために注力しています。
さらに探究活動の一つとして、大学附属のメリットを生かした「高大連携」の取り組みがあります。
「高1の有志11名が、共立女子大学とコラボして甲州街道のイラストマップを作りながら、地域を活性させるにはどうしたらよいかと考えます。大学の先生からノウハウを教わりながら、10月24日の公開講座で発表しようという試みです」と、晴山校長。
具体的には、大学の家政学部建築デザイン学科の先生から「神保町の活性プロジェクト」の経験を生かしたアドバイスを受けながら、まず学校の近くにある甲州街道のイラストマップを作成。そのうえで、地域を活性化するにはどうしたらよいかを生徒たちで話し合い、考えていく協同作業です。
「八王子は蔵の多い街で、絹織物業も多く残っています。改めて地域を見直すきっかけにもなると思います。地域には、卒業生も多いので直接取材をさせてもらうなど、学校の外に飛び出して主体的な学びを実践していきます」(晴山校長)
また、共立女子大学への進学保証以外に、大学附属校のメリットを生かした講演会や公開講座、文化祭を通じての交流など、さまざまな連携が行われているのも同校の強みです。
「15」の自覚、「18」の自立。
自立に必要なのは"人間力"と"突破力"!
「成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法の改正が行われ、早ければ4年後には試行される見込みと言われています。大人への助走期間は、18年間と短くなりました。自らの責任を自覚して自立した大人になれるように環境整備を急がなければいけません。その自立のために必要なのが、土台となる『人間力』と、もう一つは『突破力』だと思います」と、晴山校長。
そして、「文部科学省主催の『トビタテ!留学JAPAN』に自ら応募し、エチオピアの孤児院で教育ボランティアに参加した生徒がいました。帰ってから文化祭で後輩たちに活動報告をしたところ、共鳴した後輩たちがアフリカの子どもたちのために文房具の寄付を呼びかけ、全校生徒からたくさんの文房具が集まりました。今年、彼女は卒業しましたが、慶應義塾大学に通いながら、高2で立ち上げたソーシャルビジネスでタイの子どもたちに支援を続けています。彼女のように、自分自身で殻を破る『突破力』を発揮する生徒を、今後も多く育てていきたいです」と、言います。
次代を見据えて、
英語教育の改革にも次々と着手
これからのグローバル社会に不可欠な「英語力」をさらに磨くために、英語教育の改革に着手して5年目。2020年の大学入試改革を見据えて、「聞く・話す・読む・書く」の4技能をバランスよく学べる「4技能統合型授業」を昨年より本格スタートさせました。
英語科主任の吉田裕子先生は言います。「4技能統合型授業とは、できるだけ生徒たちが英語を使うような仕掛けを、4技能すべてに取り入れていくものです」と。本格スタートから1年で英検合格者も増加し、毎年実施しているアンケートでは、「英語が苦手」と言う生徒が2割からほぼゼロになるなど、大きな成果が表れています。
中1・2では、「聞く力」をつけるために、授業中に英語の遊び歌「マザーグース」を歌ったり、「話す力」をつけるために、ペアワークやグループワークで英語を使う時間を増やしています。キーワードは、「オールイングリッシュ」。
先生は日本語での説明を最小限に抑え、生徒たちが英語を使う場面をできるだけ増やす工夫をしています。また「読む力」をつけるために、音読を積極的に取り入れ、読みトレや多読ライブラリーの充実も図っています。そして、もっとも重要視しているのは「書く力」をつけること。
「日本の生徒たちは、24時間英語に接することができる環境にはありません。そこで、耳で聴いた英語を繰り返し発音し、書き留める。話したり、読んだりした英語を文字に書いて起こす。教科書を最低3回は書き起こすなど、つねに"たくさん書く"作業を取り入れています。つまり、"聴いて→話して→書いて→発表する" 。インプットからアウトプットへの流れをスムーズにして、"英語脳"の回路を作り出すことが英語力を育てる要点だと考えています」(吉田先生)
中高一貫校向けの先取り教科書から、検定教科書に転換したことも大きな改革でした。
「教科書につねに立ち戻ることをポイントに、中2の授業中も中1の教科書を復習するなど、繰り返し繰り返し使います。それによって基礎力の底上げを強化し、英語力を育てていきます」(吉田先生)
英語の授業は週6時間ですが、4技能統合型授業が4時間、ネイティブの専任の先生による少人数制の英会話の授業が1時間、分割の授業が1時間。日々の基礎トレーニングとしては、NHKの「基礎英語」で毎日英語に触れることを推奨し、中1~3では「朝学習」で確認テストを行います。
2017年からは、中1~高3の全学年にPC回線を利用してマンツーマンの英会話レッスンを行う「オンライン英会話」を導入。家庭学習として利用できるシステムとして整えています(1回25分/年間15回)。
また授業とは別に、アメリカ人とイギリス人のネイティブの専任の先生2名によるイマージョン・ワークショップの時間も用意。ハロウィンのランタン作りやクリスマスリース作り、イングリッシュ・クッキングなど、ここでは日常生活の英語に楽しく触れることができます。そして、毎年開催されるイベントも豊富ですが、英語暗唱コンテスト「レシテーションコンテスト」は日々の成果を発揮し、競う場になっています。
このように、同校では授業以外のさまざまな場面で、生徒が英語と触れ合う環境づくりを強化しているのです。
グローバル力に磨きをかける
「ターム留学」が今年度からスタート
英語でのコミュニケーション力を試す機会として、国際交流も活発に行われていますが、姉妹校であるニュージーランドのワイヒ・カレッジとは、相互に生徒を受け入れて交流を深めています。
姉妹校の生徒が来日した時は、同校の生徒の家に約10日間ホームステイをしてもらい、授業やイベントなどで行動を共にします。逆に、同校の生徒が現地を訪れた時(高1・2の希望者制)は、約2週間ホームステイをしながら、現地校の授業に参加したり、現地の生徒に日本の文化を紹介するなど交流を深めています。
さらに、今年度からはニュージーランドへのターム留学もスタートします(高1の3学期の約3カ月間)。日本人同士で固まらないようにとの意図から、一つの学校に多くても共立生は2名までが通うことになるので、現地の学校生活にとけ込むのも早そうです。
「ニュージーランドは、アーダーン首相が産休を取って世界からも注目されています。女性が活躍する国なので、生徒たちのモデルにもなると思います」(晴山校長)。ほかにも中2全員が参加する、国内で"留学体験"ができるブリティッシュヒルズでの2泊3日の英会話研修も、生きた英語を学びながら異文化への関心を高める機会になっています。
「母校」であり「母港」でもある、
一人ひとりを全力で応援する学校
卒業生は1万人を超え、社会の第一線で活躍している多くの先輩とのネットワークは同校の貴重な財産。毎年、卒業生による講演会も複数回行われていて、生徒たちの身近なロールモデルになっています。「卒業生たちは気軽に学校に遊びにきてくれますが、仲間同士の絆もとても強いですね。我々は母校というよりも、いつでも帰ってこられる"母港"のような存在でありたいと思っています」と、晴山校長。
そんな先輩たちの背中を見てきた生徒たちは、共立生であることに誇りをもっています。「生徒は、明るく優しい子が多く、他人を迎え入れる"受容力"はとても大きいですね。さらに、"突破力"を高めて、どんどん自分の壁を破ってチャレンジしていってほしいと思います」と言う晴山校長ご自身、ニュージーランドへの引率時には、自ら現地校の校長宅にホームステイをしたそうです。それはトラクターで収穫のお手伝いをするなど、まさにチャレンジングな経験だったとか。
つねに生徒の目線を大切にしながら、生徒に寄り沿う先生方は、「自立する女性」育成のために、生徒一人ひとりを全力でサポートしています。
体育大会は、同校の伝統行事の一つ
体験重視の理科では、中学3年間で100もの実験を行う
同校では、道徳の一環として「礼法」の授業を設けています。各学年とも、年間8時間。武家の作法を今に伝える小笠原流礼法を基本とし、「和室と洋室の基本動作」や「座礼・立礼の基本」「食事の作法」など、TPOに合わせた正しい礼儀作法、美しい日常の所作を身につけていきます。
家庭科の湊理香先生は「住環境の変化で、最近は和室のないご家庭も増えているため、畳のある和室で正座をする機会も減っていますし、襖の開け方・閉め方、また敷居や畳の縁を踏まないなど、基本的な所作を身につけることは、とても大事な時間だと考えています」と言います。
教室での「礼」の作法から始まり、電話のかけ方や手紙の書き方、蓋のついた茶碗でのお茶の飲み方まで、「礼法」で学ぶ内容は多岐にわたります。
高2では「茶道・華道・装道」を全員が学ぶ「和躾(なごみ)の日」を設け、外部の講師を招いてその作法を教わります。装道とは、衣服(着物)を身に着ける行為の理想を目指すもので、同校では、着物の入り口ともいえる「浴衣」を、帯結びまでを含めて一人で綺麗に着られることを目標にしています。
JR「八王子駅」南口、また「高尾駅」から徒歩5分の学園バスターミナルからスクールバスが利用できます。登下校時以外の日中も運行、学校行事などの際にはそれに合わせて運行。さらに日・祭日や長期休暇中もクラブ活動などに合わせて運行されるので、とても便利です。来校者の方も無料で利用できるので、学校説明会にお出かけの際には、ご利用ください。