学校特集
東京家政大学附属女子中学校・高等学校2018
掲載日:2018年9月1日(土)
明治14年の創立以来、伝統の女子教育を実践してきた東京家政大学附属女子。「自主自律」の建学の精神のもと、137年間変わらずに、社会で活躍する自立した女性を育成してきました。JR埼京線「十条駅」から徒歩5分という都心にありながら、生徒たちが学ぶのは約9万㎡にも及ぶ自然豊かなキャンパス。協同学習で主体的な学びを深め、6年間をとおして行われる「ヴァンサンカン・プラン」では、将来、「なりたい自分になる」ために学年に応じたさまざまな課題に取り組みます。また、栄養たっぷりのスクールランチ(給食)では、食を学びながら豊かな心身を育んでいます。家政の魅力はまさに、これらを統合して育まれる「人間力」。今年度校長に就任した篠澤文雄先生をはじめ、英語科の諸坂喜美先生、さらに、生徒のみなさんにもお話を伺いました。
失敗を恐れない、チャレンジャーに!
"3兎"を追って、視野を広げる
「家政には『自主自律』の建学の精神と、それを軸にした『Kaseiヴィジョン』と呼ばれる3つの生活信条『愛情・勤勉・聡明』があります。3つの信条をとおして、明治時代から変わることなく、思いやりの心をもち、品性と感性を備えた女性を育ててきました。さらに、これからの多様化する社会の中で、集団や組織の中で、リーダーシップを発揮できる生徒を育てていきたいと思います」と、篠澤校長は言います。
そのために、校長が生徒に伝えている大切なメッセージが2つあります。
「1つ目は、『失敗を恐れることなく、チャレンジャーになれ』です。失敗をすることはとても大事なこと。恐れずに、どんどん自分の可能性に挑戦をしてほしいと思います」。そして、「『2番目に好きなものを得意にしてほしい』です。1番目に好きなことは黙っていてもやりますよね。女性はやることを決めて、コツコツと進めていく潜在能力があります。ですから、勉強でいうと2番目に好きな科目を得意にすれば、得意な科目が増えて視野が広がりますから」と校長。
校長は歴史が専門ですが、ご自身も大学時代、恩師との出会いをきっかけに1番目に好きだった地理ではなく、2番目に好きだった歴史の先生になったのだとか。「意識をしていると、呼び込まれるように新しい出会いがあり、そこから視野も広がっていきます。でも、まったく意識をしないと、それらに気づくこともできません。2兎でなく、3兎を追ってほしいと思います」(篠澤校長)
「ヴァンサンカン・プラン」で25歳の自分を描き、
「なりたい自分」を目指す
「生徒の可能性を伸ばすことが教育であり、わが校のモットーでもあります。将来の理想の自分を具体的に考えるために行っているのが『ヴァンサンカン・プラン』です」と校長。ヴァンサンカンとは、フランス語で「25歳」の意味。自分が理想とする「25歳」を実現するために、成長過程に応じてさまざまな課題に取り組んでいきます。
まずは自分自身を知るために「自分史」作りからスタートし、食育教室や職業人へのインタビュー、アポイントを取ることから始まるボランティア活動などの体験を経て、中学卒業時には、職業をテーマに全クラスで発表を行います。「なりたい自分・目指す将来像」を具体的に見据えながら、今、何をするべきなのかを考えて学びを深め、未来への一歩を踏み出していくのです。
さらに、高校では大学の体験授業や社会で活躍するOGの話を聞く機会をもち、具体的な進路を描いていきます。
他者との対話・協同学習を通じて
豊かでたくましい人間力を育てる
同校は主体的な学びに力を入れていますが、すべての教科でアクティブ・ラーニングが実施され、生徒同士で話し合い、協力して考えながら、問題解決に取り組む授業が行われています。
「今はアクティブ・ラーニング自体が目的になってしまっている風潮がありますが、アクティブ・ラーニングは目的ではなく、あくまでも手段です。我々は"アクティブラーナー"を育てたいと思っています」という校長の言葉どおり、年間をとおして行われているさまざまな行事は生徒が主体的に運営し、先生方はそれを尊重して見守ります。
このように、同校には生徒が自らの意見を発表する機会や学びを実践する場が数多く設けられているため、自分の考えを自分の言葉で話せる生徒が育つ土壌があるのです。
「家政の魅力を伝えたい!」
自分の言葉で発信する、生徒目線のアンバサダー
生徒たちが主体性を発揮する場として、自分たちの言葉で発信する「アドミッションスタッフ」の活動があります。「家政の魅力を伝えたい」と、立候補した生徒たちが説明会で受験生や保護者に向けて発表したり、一人ひとりの受験生の悩みや質問にも、ていねいに自分たちの言葉で答えています。
自然体で率直な彼女たちの存在は、受験生や保護者からも大好評。生徒の目線でありのままに学校生活を伝える、いわば家政のアンバサダーです。4人のアドミッションスタッフが、活動内容と学校の魅力を教えてくれました。お話ししてくれたのは、次の4人のみなさんです。
N・Sさん(中3)/調理部
K・Kさん(中1)/イラスト部
N・Nさん(中1)/調理部
A・Sさん(中1)/英語部
N・Sさん「アドミッションスタッフは、入試ボランティアから活動の幅を広げて、昨年、約60名で活動を開始しました。入試の説明会で受験生や保護者の方と直接お話をして、気持ちよく過ごしていただけるようにしています」
K・Kさん「制服のファッションショーも行いました。お客様の中を歩いたのでとても緊張しましたが、笑顔でゆっくりと歩き、胸を張るように意識しました。個別に受験生の方とお話をさせていただく時は、最初は先輩についてきてもらったり、アドバイスをもらったりしていましたが、今は一人でお話ししています」
N・Nさん「みんなで集まって資料を整理したり、発送したりと、役割を分担しながら活動しています。昨年、小学生の時に説明会に参加して、先輩たちをかっこいいと思って憧れて入学し、アドミッションスタッフに立候補しました」
A・Sさん「主に説明会で発表したり、一対一でお話ししたり、資料の袋詰めもしています。昨年、受験生として説明会に参加した時に先輩たちが声をかけて悩みを聞いてくださったり、いろいろな質問にも優しく答えてくださったりしたので、私もそのように答えられたらいいなと思ってアドミッションスタッフになりました。今も先輩には勉強の仕方を教えてもらったり、お手紙をもらったりと優しくしていただいています」
N・Sさん「一番はスクールランチです。私はサラダや野菜が苦手だったのですが、メニューがどれも美味しくて、好き嫌いがなくなりました。一番好きなメニューは、ひじきの煮物です。お魚も美味しいです。味付けがとても美味しいのと、温かいものは温かく、冷たいものは冷たく、適温で出されます」
K・Kさん「先輩や同じ学年の友だち、みんな優しい人ばかりです。いろいろなことを具体的に教えてくれます」
N・Nさん「設備が整っていて、過ごしやすいところです。教室も広くてきれいですし、フリースペースでは、お友だちといろいろなおしゃべりをしながら過ごします。毎日学校に行くのが楽しみです」
A・Sさん「入学して一番よかったと思うのが、英語に興味をもてたことです。放課後、『イングリッシュルーム』ではネイティブの先生と自由に話ができます。私は英語初心者で小文字もわからない状態で入学したのに、今は英語が一番好きな教科で、英語部にも入りました。先生の言うことがわからない時は、先輩に『何て言っているのですか?』と聞くと、しっかりと教えてくださいます」
N・Sさん「英語教育はとても充実していますね。ほかにも毎年、英文を暗記して発表するレシテーションコンテストが行われていて、各学年で盛り上がっています。英語の授業も英S、英T、英TTという3種類があって、違う視点から英語を学べます」
A・Sさん「あと、もう一つ紹介したいのが、『生活の記録』です。何時にご飯を食べて、何時に宿題をしたかとか、すべて手帳に記録をして週の始めに先生に提出するのですが、ここには悩みなど、何を書いてもいいんです。家政は宿題をしっかりやっていれば、学力をつけることができるという特徴がありますが、勉強の時間も色分けをすることで、数学をやりすぎていて、理科を怠っているから理科をやらないといけないなど、バランスを見ることができます。私は、寝る時間が遅いのもわかりました。記録して、すべて把握ができるところがいいです」
質問に対して、しっかりと自分の言葉で話してくれた生徒のみなさん。学校への誇りと、大好きな「家政」をもっともっと知ってほしいという気持ちがまっすぐに伝わってきました。
「中1から高3までの幅広い年代が一緒に活動することで、縦のつながりも横のつながりも強まり、参加する生徒たちの成長の機会になっています」と、篠澤校長。アドミッションスタッフたちのように、憧れの先輩の存在が、なりたい自分に一歩近づくきっかけにもなっているようです。
中学では徹底した基礎を。
コツコツと努力した生徒が伸びる!
アドミッションスタッフたちも大好きな英語の授業は、週にテキストを5時間、ネイティブと日本人の先生のティーム・ティーチングを1時間、セミナー1時間の学びで4技能を高め、コミュニケーション力を向上させています。
ティーム・ティーチングは約10~15名の少人数で行っているため、全員に先生の目が行き届き、発表もすべての生徒が行います。
「中学では基礎をとても大切にしています。単語テストや宿題も多く、提出しない生徒は呼び出して、教員がとことんつきあいます」と、英語科の諸坂先生は言います。「文法が苦手でも、英語を嫌いにはさせたくないので、ハードルは段階を踏んで少しずつ上げています。英語入試で入ってくる生徒もいますが、1年を終えてみると、コツコツと頑張る子が伸びていっていますね」
また、英検にも力を入れていて、中3で準2級の取得を目標に学習計画が進められ、対策講座も行われています。
インドの先生が、ヨガを英語で教えることも。
5カ国のネイティブの先生との異文化交流
英語が好きな生徒が多い理由の一つに、ネイティブの先生とのコミュニケーションの時間があります。スクールランチを一緒に食べたり、放課後にネイティブの先生と自由に話ができる「イングリッシュルーム」も生徒の人気スポットです。
「5人在籍しているネイティブの教員は、国籍がすべて違います。インドの先生がヨガを英語で教えてくれたり、ルーマニアの先生とクリスマスのオーナメント作りをしたり、イギリスの先生と調理室でスコーンを一緒に作ったり、クリームティーの由来から教わったり。カナダの先生からは、英語でフランス語を学んだり、シンガポールの先生からは英語で中国語を教わったりもします」と、諸坂先生。
つねに身近にいるネイティブの先生方との交流から、生徒たちは英語力はもちろん、多文化社会で活躍するための素地を、楽しみながら身につけていきます。
発表やプレゼンを頻繁に行い、
表現力を大きく伸ばす
発表の機会が数多い同校ですが、なかでも学校全体で盛り上がっているのが「レシテーションコンテスト」です。
「発表に向けて英文を読み、すべての内容を理解していなくても、とにかく暗記します。そしてジェスチャーやアイコンタクトなども含めて表現力を見て、クラスの代表、さらに学年の代表を選出します。みんなが代表になるために努力をしますので、選ばれないと悔し泣きをする生徒もいますが、目標に向かっていくうちに力がどんどんついていきます」と、諸坂先生。
「また、昨年は中1の1月から3月の授業のなかでドラマ作りに取り組み、ホールで発表も行いました。ストーリーやセリフも生徒が作ったのですが、自分たちで考えて音楽を入れたり、衣装も手作りするなど、私たちが期待した以上の舞台を見せてくれました」と、先生方が驚くほどの出来映えでした。
入学して1年足らずで協同学習の成果がしっかりと現れ、先生方も手応えを強く感じています。
さらに、中2ではイングリッシュキャンプ、中3ではシンガポールへの修学旅行などを実施し、実践的に役立つ英語力を高めていきます。
自然のままの植物や生き物たちに出会える「家政ビオトープ」をはじめとした、武蔵野の面影を残す緑豊かなキャンパスの中で6年間を過ごす生徒たち。同校では、一人ひとりの未来を見据え、可能性を広げる学びが展開されています。ほぼ毎週土曜日には「アドミッションスタッフ」が参加するミニ学校説明会が行われています。実際に足を運ばれ、家政の伸びやかさを体感してください。
部活も盛ん! 上は中高一緒に活動するソフトボール部
中学の調理部。美味しそう、楽しそう!
中学生は全員がランチルームでの給食となります。献立は専属の管理栄養士で栄養教諭の先生が、一汁三菜+乳製品のバランス良いメニューを考案。「食育」の場にもなっています。学期末には学年ごとに食育教室を開催。
たとえば中1は「日本の食文化」を、中3は「ダイエット」の正しい知識を教わります。
●食べ物を大切にし、食べ物の生産などに関わる人々へ感謝の気持ちをもつ
きちんと食事の挨拶をすることから、食べることの大切さや生産者への感謝の気持ちを学びます。
月に一度の「食べ残し0(ゼロ)day」の設定で、意識して残さず食べる姿勢を育てています。
●マナーや食事をとおして、人間関係形成能力を身につける
挨拶のほか、食器の置き方、正しい箸の持ち方などのマナーや、食事中のエチケットなどを1年生の時に学び、身につけます。
●栄養バランスや食事のとり方を理解し、自らを管理する能力を身につける
ランチルームにある「食育コーナー」では、その日のメニューの栄養面の解説や食材の産地などを楽しく紹介。
生徒が興味をもって食について学べるように工夫しています。