学校特集
聖徳大学附属女子中学校・高等学校2018
掲載日:2018年9月1日(土)
聖徳学園は創立から85年、そして聖徳大学附属女子中高は創立から36年目を迎える千葉県有数の女子伝統校です。小笠原流礼法を6年間かけて学ぶなど、礼儀作法を重視する女子教育に定評がありながら、筑波大学をはじめとする難関国公立大学や早慶上理GMARCHへの進学者を輩出。ICT教育も積極的に取り入れながら、最先端の教育を行っています。そして来年度、これまで積み重ねてきた探究型の授業や、力を入れてきた英語教育を軸とした2つのコースを新設し、新たなステージへと進みます。新コースではどのような学びを深めていくのか、教頭の大野正文先生にお話をお聞きしました。
探究を軸とした「S(スーペリア)探究コース」では、
積み上げてきた探究型の学びを深める
「課題発見」と「課題解決」を繰り返しながら、探究する力を育成していくのが、「S(スーペリア)探究コース」です。基本となるのは、探究科での学び。探究ゼミに所属し、中学3年間をかけて生徒一人ひとりが興味・関心をもったテーマを研究論文としてまとめていきます。
同校の探究型の授業には"歴史"があります。アウトプット型の学びを授業にも多く取り入れ、思考力・判断力・表現力を育んできました。研究論文発表も10年前から実施しています。
「生徒が自分で選択したテーマを探究し、その成果を中3の卒業研究論文として発表してきました。ただ、従来の卒業論文研究の期間は1年間でした。英語で流暢に発表を行う生徒もいますし、学びの成果としては上がってきていますが、正直なところバラつきもあります。そこで、もっと学びを深めていくために、現行の1年間から3年間へ、じっくり学べる環境を整えたいと思いました。週に一度で年間30時間、3年あれば夏休みを入れると100時間以上は研究に充てることができます。課題を発見する訓練から始めて、解決して、発表する力もつけていきます」と、大野教頭。
さらに学びを深めることで、主体性・多様性・協働性を育みたいとも。「もともと本校の『和の精神』は人をつなぐものであり、知識をつないでいくこと、文化をつないでいくことでもあります。学校全体の取り組みの中で育んできたものですが、来年度からは、教科学習の中に取り入れて強化していきます。生徒一人ひとりが自分で設定した進路をより高く実現していければと思います」
「北極星の高度」について発表する生徒
探究型の授業を進めていく難しさのひとつに評価方法がありますが、同校では5年前より2年間をかけて、文科省からの委託事業で評価研究が進められてきました。大学との共同研究で『多様な学習成果の評価手法に関する調査研究』を行い、独自の評価ルーブリックを開発しています。学校内には評価研究委員会を設置し、アクティブラーニングなどについて、現在も研究を進めています。
「主体性や多様性や協働性など、これまで評価しづらく身につけさせにくかった力などについても、適正に評価を行っていくことで、しっかりと力がついていきます。学力はもちろん、学び続けていく力もつきます。探究の授業は、適正に評価することも含めて、一朝一夕にはできないものなのです」と、大野教頭。経験に裏打ちされた同校の自信の積み重ねが、新コースの誕生につながったといえるでしょう。
英語を軸とした「LA(ランゲージ・アーツ)コース」では、
文化理解を含めた言語スキルを獲得する
「英語を単なるコミュニケーションツールとしてだけではなく、日本と外国の文化を理解したうえで言語を獲得していくという考えが基本になっています。特徴としては、英語の4技能『聞く・話す・読む・書く』のうち、『話す』技能をしっかり高めて、世界に通用する語学力を身につけること。週に8時間の英語の授業のうち4時間は、 "コミュニケーション力"と"プレゼンテーション力"を中心に 『話す』技能を高めるために使います」と、大野校長はLAコースの特長を語ります。
英語にふれて慣れる機会を大切にしたいと、同校にはさまざまな行事や実践の場が用意されていますが、すべての行事の位置づけを明確にしました。
「英語研修は、入学前からスタートしますし、夏季英語キャンプや文化祭での英語劇など、学校内外でもさまざまな英語にふれる機会をつくりますが、大切なのは行事を単発で行うのではなく、長期の学習計画の中の学習成果の発表会と位置づけることです。計画的に取り組むことで、しっかりと時間をかけて準備を行っていけるからです」と、大野教頭。
このように改革することで、授業内でも目標に向かって計画的に準備を進められ、先生方同士の共有もさらに深まります。
オーストラリアへの修学旅行や3カ月間のターム留学など、数多くの海外での実践の機会もありますが、毎日の学校生活のなかで外国人の先生とふれあう時間も大切にしています。ネイティブスピーカーの先生は3人。先生方は実技教科や行事などにも参加して、生徒と一緒に授業を受けることもあります。
また、同校には生徒と先生が食堂(じきどう)に集まり、毎日全員で昼食をとる「会食」の時間がありますが、その時もネイティブの先生は各クラスのテーブルを順番にまわって、食事をしながら楽しくコミュニケーションをとります。
「日々の生活から慣れることが大切だと思っています。英会話クラブの生徒たちは、浅草に行って外国人へインタビューなどしますが、普段から外国人の教員と話をしているので物怖じせずに話しかけていますね」
さらに、同校で20年以上継続して行ってきた活動に「英語劇」がありますが、手作り衣装も年々本格化し、生徒も保護者も楽しみにしている行事の一つです。
「継続は本当に大切だと改めて感じる行事です。始めた当初は落ち着いて見ていられませんでしたが(笑)、毎年、英語の発音も演技も格段にレベルアップしていき、発信力を高める機会にもなっています」と、大野教頭。
そのような継続した活動を大切にしながら、新しい取り組みによっても生徒の可能性を押し広げていきます。最近、スタートした取り組みはイマージョン授業です。
「体育や理科の授業を英語で行います。先日は体育の時間にバスケットボールを行いましたが、生徒たちはまったく違和感がないようで、物怖じせずに自然と英語でプレイしていましたね」
先生方は、そんな生徒たちの様子を頼もしく思いながら、新コースへの手ごたえも強く感じています。
ちなみに、高校になると「S探究コース」「LAコース」の普通科2コースに加え、演奏家や音楽の先生を目指す専門学科の「音楽科」が設置されています。
"聖徳流"21世紀型スキル
ICT教育と小笠原流礼法が、成長のカギ
「限られた時間のなかで、クラス全員が発表できるのは大きいです。自分とは違うほかの人の意見を聞くことで多様性を育成できますし、e-portfolioに対応してiPadの中に自分の考えや実績を蓄積できますので、自分の成長も感じられると思います」
授業以外にも学校生活の中でiPadを使いこなしている生徒たち。生徒総会の発表など、さまざまな場面でiPadを活用し、知見を広げています。
同校での主体性とは「見通しを持った学習の中で粘り強く学習に取り組み、その学習を振り返って次の学習につなげられること」。そのため、授業の始まりにはその授業の目的や流れ、何を身につけることができるのかを明確にします。終わりの5分間でその時間を振り返り自省をして、次の時間を迎える。アクティブラーニング型の学習を実践しながら、一つひとつの授業が大切に行われています。
その基礎力強化のために、同校では反復学習を徹底して行います。「年間100回以上の小テストを行い、到達具合を測っていきます。テストはやりっぱなしではなく、クラスの到達度を教員会議でも共有し、100%の生徒が理解するまで補習を徹底して行います。これはもう10年以上継続していますが、土台になる基礎力がないと決して上には積み重なっていかないので、確認を細かく行っています」
このように生徒全員に目を配り、基礎基本の "100%"の徹底した理解が、現役進学率97.3%へつながっているのでしょう。
小笠原流礼法宗家より「花鬘の伝」が授与される
週に一度、中学から高校までの6年間、すべての生徒が「小笠原流礼法」を学び、卒業時に免状が取得できるのは同校の強み。日本の伝統文化を学び、正しい礼儀作法が身につくのはもちろんですが、思いやりの心が育まれ、他者との信頼関係の構築やコミュニケーション力が高まることにもつながっています。
また、学習面でも礼法の学びが大きな影響を与えていると大野教頭は言います。
「生徒たちは、間違えることを少しも怖がらないんですね。人を思いやる気持ちがとても強いので、誰かが間違えたりおかしなことを言ってしまっても、笑顔で受け入れる雰囲気があり、じつに伸び伸びしています(笑)。生徒たちのつまずきをプラスに変える力や、友達を認める力は本当にすごいなと思います」
間違いを恐れずに発言し、他者との適度な距離感をもって協働作業ができる同校の土壌が、学力、人間力ともに生徒を成長へと導きます。
卒業後も「ずっと学び続けて、自己実現を果たしてほしい」という先生方の願いのとおり、多岐にわたる分野で卒業生は活躍中です。生徒一人ひとりにきめ細やかな教育を行う同校の学びが、新コースでさらに進化することは間違いありません。