学校特集
白梅学園清修中高一貫部2019
自己実現を目指す6年間の豊かな学び
掲載日:2019年9月1日(日)
白梅学園清修中高一貫部は、開校から14年目のまだ新しい女子校ですが、昨春には初の東大合格者が出たのをはじめ、多くの卒業生が国公立・難関私立大学に合格しています。「ヒューマニズム精神+英語・国際教育+憧れの気持ちを持つこと」をコアな指針とする同校の特徴は「少人数制」と「英語教育」、そして女子校の良さを強みとする教育を実践していること。同校が考える女子校の良さとは? その教育への思いと中身について、校長の山田裕先生にお話を伺いました。
性別を超えて社会で活躍できるように。
「女子校」を貫く意義を改めて考える
学園の建学の精神は「ヒューマニズムの精神」。その壮大なテーマに基づき、同校は教育理念として「ヒューマニズムの精神の下、心豊かで気品のある人材、夢と希望を抱き行動する人材を育成します」を掲げています。
山田校長:「つまり、生徒それぞれが『自己実現』を図ることができる学校でありたいと。わかりやすく言えば、『あなたたちの夢を実現させましょう。そのために、学校は6年間お手伝いします』ということです」
白梅学園清修中高一貫部は開設して14年と新しい学校ですが、同学園の創立は1942年。 厳しい戦時体制下、女子にしっかりした準高等教育を施すために、前身の東京家庭学園が創設されました。それ以来、各時代に先駆的な役割を演じた方々が白梅学園の運営と教育にあたってきましたが、ちなみに、「保育の白梅」と評価される白梅学園大学の保育教育の土台を創ったのは、トットちゃんこと黒柳徹子氏が最も尊敬しているという近代保育の先駆者・小林宗作先生です。
山田校長:「小学校でも、大学でも、そして本校でも、私の思いは変わりません。『子どもたちのために』、それだけです。小学校の校長を退任した後、今度は子どもたちにとって良い教師を育成することに関わりたいと白梅学園大学に移りましたが、本校に赴任した今も、大学で小学校教諭や幼稚園教諭の教職課程に携わっています」
「人の幸福は自己実現にある。それを手伝うのが学校の役目」と言う校長は、初めて女子校に関わるにあたって、共学校が増えている中で「女子校の良さを貫く」ことの意義を追求し、さまざまな方を訪ねて指南も仰いだのだそうです。
「男女参画社会」と言いながらも、女性は社会の中で自分を出し切れていないのが現状というのはよく言われること。
山田校長:「でも、学校は違います。女子校では異性の目を意識することなく自分の考えを表現し、行動できます。それを積み重ねていくということは、社会に出てからも時と場所を選ばず、どのような環境においても、男性や他者の目に怯むことなく自分を表現できる力を身につけることなのではないかと。生徒たちにはそうした習慣を身につけて、社会に出てからも同じように行動してほしいですし、そのための教育をしなければと思っています。ですから、本校の生徒には女性の人権や役割、社会に出た時にどう生きていくのかを教えたい。そして、性別を意識することなく自分の考えをしっかりと伝え、自分らしさを表現できる女性になってほしいですね」
この校長の言葉こそが、「ヒューマニズム」の根幹かもしれません。
性別はもとより、多様性を受け入れながら社会の中で自らの生き方を切り拓き、社会に貢献するために、先生方が一人ひとりの才能や個性を発掘し、それを最大限に伸ばすことは、ヒューマニズムの精神そのものだからです。
「グローバルマインド」を育てる
独自の英語教育と国際教育
英語力育成には定評がありますが、その英語教育を例に、同校で実践されている教育内容を改めてお伝えしましょう。
「聞く・話す・読む・書く」のいわゆる英語4技能はもちろん、コミュニケーションをする際に必要なマナーや状況に合わせた伝え方、またジェスチャーなどの非言語ツールを駆使した多様なコミュニケーションができる「英語総合運用能力」の育成を目指すのが同校の英語教育です。
「英語総合運用能力」=「英語で吸収できる力」+「英語で発信できる力」
そして、その核となる「グローバルマインド」とは、以下の4つの力を持ち合わせ、さらに異なる価値観を持つ人とも積極的に関わり、共生・協働ができることを意味します。
❶広い視野
❷柔軟な思考力
❸コミュニケーション能力
❹プレゼンテーション能力
中1から週7時間ある英語の授業のうち、5時間がネイティブの先生によるオールイングリッシュの授業。チームティーチング(TT)で行われますが、同校のTTは二人ともネイティブの先生です。
一般的にTTといえば、ネイティブと日本人の先生が二人一組になり、日本人の先生は日本語で補足説明することが多いのですが、同校のようにどちらもネイティブの先生というのはとても稀なこと。
山田校長:「TTは二人とも英語オンリーです。日本語は理解できるのですが、授業では一切使いません。それでも、生徒たちはその状況にだんだん慣れていきます。私も授業を見ましたが、本校のネイティブ教師は非常に能力が高く、生徒の興味や意欲を喚起する授業を行っています。これは、自慢ですね(笑)」
しかも、少人数にもかかわらず常勤のネイティブの先生は4人。極めて恵まれた環境といえます。
とくにリスニングとスピーキングの強化に焦点が当てられ、定期テストにはスピーキングテストも、ネイティブの先生によるインタビュー形式と、クラスメイトの前で発表するプレゼンテーション形式の両方を実施するという、重層的な指導が展開されています。
・高2修了時:準2級以上=約70%(高3修了時の全国平均:準2級相当=約36.4%)
・中3修了時:準2級以上=約50%(全国平均:3級相当=約36.1%)
・中2修了時:3級 =約70%
今年度から、これまで実施してきた国際教育を統合して、「グローバルキャリア教育」をスタート。以下のように、英語総合運用能力を磨くさまざまなプログラムが用意されています。
●英語宿泊研修(中1〜3/1泊2日、学外の施設でネイティブの先生と英語オンリーで過ごす)
●English Expo(中1〜3/スピーチやスキット、プレゼンなどの発表会を実施)
●英語村研修(中3・高1/Tokyo Global Gatewayで海外生活を疑似体験する)
●オンライン・スピーキング講座(中1〜高2/希望者/オンライン通話で1:1で会話する)
そしてさらに広く世界に触れ、将来の自分の道筋を考えるきっかけとするため、キャリア教育ともいえる研修も実施。
これまでも国内・海外研修は実施されていましたが、今年度からリニューアルされます。
●国内英語研修(中2/3泊4日)...広島と京都を訪ねて日本の歴史や文化を学ぶとともに、当地の大学の留学生と交流する。
山田校長:「留学生との交流では、日本の歴史や文化を英語で伝えることを体験するのですが、ガイドをするわけではありませんので、事実を伝えるのではなく、自分はどう感じているか、どう考えているかという思いを発信するのです。さらに、それだけでは一方通行ですので、自分の思いや考えをどう受け止め、どう投げかけるかという、双方向のコミュニケーションにすることを狙いとしています」
●海外研修(高1/約2週間)...現在検討を重ねているが、ホームステイなど語学研修的な要素だけではなく、当地の日系企業での職場体験を含め、キャリア教育につながる体験も入れる予定。
山田校長:「カナダやニュージーランドは、男女参画社会が実現できていますから、いかに女性たちが生き生きと働いているか、自分の目で見ることは意義深いキャリア教育になると思っています」
そして、これらの研修に備えて、各国からの留学生を同校に招いて交流する機会も頻繁にあります。
山田校長:「日本文化を発信するおもしろさ、海外の文化を吸収するおもしろさ、これを知っていくと『もっと味わいたい、もっと経験したい』と、さらに主体的に取り組むようになるだろうと期待しているのですが、実際、生徒たちはみんなとても意欲的ですね」
また、一つひとつのプログラムは単体で存在するのではなく、広く連動しています。
例えば、以下のように海外研修の事前学習では英語科だけではなく、社会科や国語科など他教科と融合させることも大切にしています。知識と知識を有機的に結びつけて、生徒の視界を大きく広げるためです。
●事前学習
社会科で訪問国の歴史、地理、芸術、政治について詳しく学習し、そこで得た知識をもとに生徒がそれぞれテーマを設定し、事後レポートを書く準備を進める
↓
●研修
日本への留学生や、訪問国の人々との交流から「新しい自分、世界の中の自分」を発見する
↓
●研修報告会
パワーポイントや写真などを駆使してプレゼンテーション形式で報告(質疑応答あり)
毎週3回(火・木・金)、夕方に地域の公立小学校の5・6年生(女子)を対象に無料で「英語教室」を開催しています(1回45分)。「英語の楽しさ」を知ってもらうために同校のネイティブの先生2名が指導するもので、これまではホームページで案内していただけでしたが、今年チラシを作って募集したところ、申し込みが激増しました。
山田校長:「私立学校も地域貢献をするべきだと思っています。来年度から小学校5・6年生で英語が必修になりますが、本校で英語を楽しむ体験をして、中学に進学してもらえればと。この取り組みを児童から聞いた小学校の先生から『どのように楽しい授業をやっているのか』というお問い合わせもいただくようになり、先生向けの研修会に本校の英語教師が講師として出向くという交流も始まっています」
身近な先輩や近隣の大学との連携など、
「憧れ」を持たせることで将来への目を開かせる
高校生に向けて、校長自身、授業を持つことになりました。
山田校長:「総合や道徳の時間を使って、『高齢者』『障がい者』『女性』『子ども』、この4つのテーマで人権について語りたいと思っています。さらに、例えば白梅学園大学には絵本専門の教師がおりますので、「幼児期にはなぜ読み聞かせが必要なのか、その理論と技能を学ぶ→付属幼稚園で実践する」といった一連の流れもつくれればいいですね」
また、近隣に白梅学園大学を含めて3校の大学がある環境も、今後、さまざまな可能性を生みそうです。
山田校長:「近所には幼稚園や小学校の教員を育成する白梅学園大学、美術の武蔵野美術大学、英語教育の津田塾女子大学があります。今も交流はありますが、さらに連携を深めていければと思っています。『憧れ』があれば自ら追求し、学びへのモチベーションが大きく変わっていきますから、生徒たちが『憧れ』を持つきっかけをたくさんつくっていきたいですね」
校長は、着任して間もない頃に体育祭を見て感動したと言います。全学年を引っ張る役割の高2が、見事な頑張りを見せてくれたからです。
「身近なところでは、先輩に対する憧れを抱かせたい」と語る校長ですが、この「憧れ」という言葉には、校長は特別な意味を持たせています。
「努力すれば夢は叶う」という言葉があります。でも、校長はあまり好きではないそうです。
「頑張った過程の中で身につけたことは必ず力になります。ただ、みんなに等しく『努力すれば夢は叶う』と言ってしまうのは酷です。それよりも、憧れを持って6年間を過ごしてほしいのです。憧れは、一番強いパッションですから」と。
今年度の学校案内パンフレットの写真は、プロのカメラマンではなく、実践女子大学で学ぶ卒業生が「母校で自分の好きな場所」を撮ったもの。その卒業生は広告に携わることが夢だそうです。その思いが同校らしいと、採用されました。
また、同校の校舎は女性の建築士が「女子のための教育環境」をテーマに設計し、机や椅子までオリジナルです。そして、その校舎で6年間を過ごしたある生徒はその建築士に憧れ、彼女が教鞭をとる大学に進学したのだそうです。
山田校長:「じつは、もう一つ自慢があります(笑)。今年入学した生徒の保護者の方々へのアンケートで本校を選んでくださった理由を尋ねたところ、1位が『教員の雰囲気』だったのです。これは嬉しかったですね」
「憧れ」の種は、すでに同校に満ちあふれているようです。
豊かな学びがある環境の下、先輩や先生方、そして多くの出会いの中で憧れを抱き、自分の道を見つけていく生徒たちは、きっと、今度は後輩たちから憧れられる存在になっていくのでしょう。そのような循環が、同校の伝統になりつつあります。
ほかにも、同校の個性を表す独自のプログラムはたくさんあります。
・例えば、「自主・自立・自律」の精神と主体性を身につけるため、「ノームチャイム制」「ほとんどノー校則」であること。
・例えば「食育」。中1〜2では週に1回、昼食の時間に食品や栄養素に関する知識や食事の所作やマナーを身につけます。また、野菜を栽培する「農業女子プロジェクト」も実施。中3では、さらなる知識を身につけ、健康と食事の関係や食事の大切さを理解。高1以降は海外の食文化を学ぶとともに、実際に体験することで当地の食事事情を理解し、尊重する心を育みます。
・例えば、学びを定着させるために「言語能力向上プログラム」があります。自己学習力、他者と協働する力、論理的思考力、表現力を身につけるもので、生徒は「今、自分はどの力を身につけているのか」を理解しながら進めます。そして、中学3年間の学びの集大成として、高1で5000字の「論文作成」に取り組みます。
・例えば、放課後にはアトリウムやラウンジで自主学習する生徒たちの姿がありますが、先生方が個別にフォローしてくれるほか、思春期の生徒たちの機微を大切に見守るため、担任の先生との個人面談も定期的に行われています。
●放課後のエリアコラボレーション活動(エリコラ)
白梅清修では、クラブ活動ではなく独自のエリコラ活動(月〜金)を行っています。これは地域で活躍しているプロの方に指導を受ける課外活動で、本物に触れることで教養を深めていきます。
弦楽器・鉄道模型・テニス・ダンス・茶道・美術・英会話(Chit-Chat room)と、計7種類の活動から複数を選択して参加することができます。