学校特集
昭和学院中学校・高等学校2018
掲載日:2018年10月1日(月)
昭和学院(千葉県市川市)は「明敏謙譲」を校訓に掲げ、明るく自主性に富み、品位高く個性豊かな生徒を育てる全人教育を実践してきました。校長・大井俊博先生は就任3年目となり、ますます意気盛んに大掛かりな学校改革に取り組んでいます。平成28年度から3年計画でスタートした「昭和リバイバルプラン」は今年が総仕上げの年。2018年度入試は英語に特化した生徒を獲得するための「マイプレゼンテーション入試 in イングリッシュ」を創設するなどさらなる改革も続行中です。改革を力強く押し進めている大井先生に、昭和学院の学校改革とその成果について伺いました。
着実に成果をあげている3年計画
ここ数年で目覚ましい変化を遂げている昭和学院は、多くの受験生や保護者から注目を集めています。改革を推進してきた校長・大井俊博先生は就任3年目となり、「わが校はまだまだ伸びしろがたっぷりある。"チーム昭和"で教員が一丸となって生徒にさまざまなチャンスを提供していきたい」と力強く話します。
大井先生の前任校は、都立御三家とも言われる都立中高一貫教育校である両国高等学校・両国高等学校附属中学校。2006年に「両国」が都立中高一貫校としてスタートしたとき、オールイングリッシュや全員参加の海外語学研修を実施して注目を集めました。そのとき立役者として腕を振るった大井先生が、今度は昭和学院で大きな改革の渦を巻き起こしています。
大井先生は「まずは先生の意識を変えなければ、学校は変わりません。私学である以上、受験生にインパクトを与えて"受けてみたい!"と思われる学校にならなければいけない。発想力が勝負だから、学校を変えていくために、いいアイデアがあればどんどん出してほしい"と先生たちには発破をかけています」と話します。
大井先生が就任時に掲げた「昭和リバイバルプラン(3年計画)」の一部を抜粋すると
●1年目(平成28年度)
・挨拶指導、校内美化、礼節指導の推進
・アクティブ・ラーニングの導入
・中3で英検準2級に15人合格
●2年目(平成29年度)
・アクティブ・ラーニング研修&授業改善
・中3で英検準2級20人、2級5人合格
・全国大会出場、全国制覇
・国公立合格10人、早慶上理・ICU合格15人以上
3年前には「こんな高い目標の達成は難しい」と驚いた先生も多かったようですが、実際にはこれらの目標はほぼすべてクリアしてきました。今年度はさらに高みを目指し
●3年目(平成30年度)
・アクティブ・ラーニングの推進
・教員の合同研修と学力向上への取り組み
・中3で英検準2級25人、2級5人合格
・全国大会出場、全国制覇
・国公立合格15人、早慶上理・ICU合格20人以上
といった目標を掲げて、実現に向けて「チーム昭和」で力強く改革を推し進めています。
これまでも、目標以上の実績をあげてきた同校だけに、今年度末にどんな結果を出してくれるのか、期待が高まります。
月1回の「未来講座」で人生が変わる!?
改革を推進している大井先生は、その理由を「時代に即して学校を変え、受験生に選ばれる学校にならなければ私学の存在意義はないからです」と話します。「チーム昭和」で一丸となって学校を変えるために、大井先生が先生たちに伝えているのは「危機意識、課題意識、当事者意識」の3つを大事にしてほしい、ということ。生徒に何かを感じ、つかみとってもらうためには何をしたらいいのか、生徒にどんなサービスを提供すればいいのかなど、常に「生徒のためにできること」を考えて動く必要があるからです。就任当初から今日に至るまで、この思いを大事にしながら、大井先生は先生たちからのアイデアを常時募集し、受け入れ、話し合ってどんどん形にしています。
たとえば、今年度から始まった新しい試みが「SGアカデミー:未来講座」。SGは昭和(Showa)学院(Gakuin)の頭文字をとったもので、「SGアカデミー」は自ら考える力を育てる体系的なプログラム。朝読書、アクティブ・ラーニング、グローバル社会に対応する英語教育、そして未来講座の4つから成っています。
中でも先生方の発案から生まれ、これから大きな広がりが期待できるのが「未来講座」です。これまで1年に1回行っていた、著名人による文化講演会がベースになって「未来講座」が生まれました。生徒の学習意欲を高め、自己実現を後押しするための企画です。「生徒がやる気になる話をもっと聞かせたい」「こういう仕事がしてみたい、と生徒の意欲を駆り立てるような話を聞かせてあげたい」という先生方の思いが形になったのです。
未来講座は月1回程度のペースで、主に水曜日の6時間目を使って行い、中高の全生徒が聴講します。各界で活躍する人や同校の先生、卒業生などに登壇してもらい、生徒に気づきを促したり、方向性を見出すきっかけになるような講演をしてもらいます。
記念すべき第1回の未来講座には、文筆家の片倉佳史さんに「国際理解・国際交流とは何か」をテーマに講演してもらいました。早稲田大学教育学部出身で、1997年に台湾に移住した片倉さんは、台湾の遺構や日本が統治時代の痕跡を調査・記録して発表しています。戦時中に日本人が台湾でダムを作ったり農業を教えたりしてきたので、台湾では日本語を話せる人が多いだけでなく親日感情を抱く人が多いのです。
高2の修学旅行が今年から台湾になるため、事前学習を兼ねて行われた講演でしたが、国際社会を生きていくために必要なことや、海外から平和を考えることの大切さを知ることができる貴重な時間となりました。
6月に行われた2回目の「未来講座」は、大井先生自らが講演を行い、自身の人生のターニングポイント、人生を変えた出合いについて話しました。小学生時代、通学途中にランドセルで魚獲りをして怒られたことから始まり、恩師との出合いや大学剣道部での同級生と築いた絆など、心温まる話に生徒は聞き入っていました。初めて担任を持ったときの辛く悲しい出来事、生徒との温かい交流を経て「どの学校に行っても、正面から生徒と対峙しようと決意しました」と思いを語る大井先生。その気持ちが、昭和学院での力強い改革の源となっているのです。
今後はネイティブ教員や新任の先生にも登壇してもらうほか、アーティスティックスイミングの石黒由美子さん、世界史の大家である大学教授などの講演を行う予定です。「さまざまな分野で活躍する方の話を聞くことで、生徒が刺激を受け、方向性を見出すきっかけになるといいなと思っています」と大井先生。進学実績を伸ばすだけでなく、人間力を育て、土台を固める――未来講座は昭和学院ならではの取り組みの1つとして、大きく育っていきそうです。
iPad全員配布で授業に活気
昨年度からは中学生全員にiPadを配布しました。
「資料や映像を多用できるようになり、どの授業も活気にあふれています。先生による一方的な講義形式の授業ではないから、ついていけなくてボーっとしている生徒や寝ている生徒は、全然、みかけなくなりました」と大井先生は楽しそうに話します。
オールイングリッシュで行っている英語では、アップテンポで音楽をかけてノリのいい授業を展開することも。また、生徒たちも受け身ではなく、先生が来る前にiPadで自主学習を始めていることも多く、iPadのおかげで生徒の意識が無理なく自然な形で勉強に向かっていることが分かります。
生徒がiPadに入力した答えを電子黒板に投影して、添削しながら解説したり、その場で採点していい答えにポイントを付けたり、逆に誤答の多い問題を重点的に説明したりすることもあります。ICTの活用で、自分からは発言したり答えを言えない生徒にもスポットが当たり、全員参加の授業が実現できています。
また、修学旅行にもiPadを持参するの同校ならではでしょう。注意事項や行程などもiPadに入っているから、生徒は分からないことがあってもすぐに自分で調べることができます。iPadを大事に扱い、普段から使い慣れているからこそできる活用法なのです。
オーストラリア語学研修を先行実施
現在の中2から、中3春休みに全員がオーストラリア語学研修を実施します。今年の春休みには先行実施として希望者のみでオーストラリア語学研修を行いました。参加したのは15人で、1週間のプログラムです。
行き先は真っ白な砂浜を擁する風光明媚なゴールドコースト。2人1組でホームステイし、小中高一貫のセントスティーブンスカレッジで学びます。
1日だけ自由行動の日がありますが、それ以外は「午前中は英会話レッスン、午後は学校での授業体験」。単なる英語の授業だけでなく、現地の授業を一緒に受けることができるので、生徒たちは興味津々です。現地で日本語を学んでいる生徒が1人ずつ付き添ってくれるから英語に自信がない生徒でも安心して授業を受けることができ、有意義な研修となりました。
「数学や理科・社会の授業を受けてみて、進み方はうちの学校より遅いし内容も簡単だけど、すごく掘り下げて学んでいることが分かった」という感想が出てきたほか、「高校に行ったら海外の学校に留学したい」「外国の大学に進学したいと思うようになった」という生徒もいるそうです。
また、この語学研修に参加した14人のうち12人は高1の夏休みに行われる3週間のカナダ語学研修にも参加が決まっています。「鉄は熱いうちに打て」と言われる通り、早い時期に海外に足を運ぶことで生徒が視野を広げ、海外に積極的に目を向けるきっかけになっているのです。
英語力を活かせる新しい入試制度も創設
28年度にマイプレゼンテーション入試、29年度に適性検査型入試をとり入れるなど、毎年、入試改革も断行してきた同校。30年度は、小学生時代に英語力を磨いてきた生徒に受験してもらう狙いで、新たな入試を創出します。
1つは午後入試に採り入れた「マイプレゼンテーション入試 in イングリッシュ」。午前中に行う「マイプレゼンテーション入試」と同様に自己表現の作文は日本語で提出しますが、、得意なことを自由にアピールするプレゼンテーションは英語で行い、質疑応答もネイティブ教員がすべて英語で行います。
「マイプレゼンテーション入試は英検2級程度の英語力を想定したレベルの高い試験です。実際に昨年度は英検1級を持った帰国子女の受験生が来てくれたので、そうした生徒にも受けてほしい、入学してほしいという思いから実施を決めました」(大井先生)。
また、近年は幼少期から英語を学んでいる生徒も多く、小学生時代に英検を取得する生徒も増えています。そこで、30年度の推薦入試では英検4級以上を取得していれば国語の試験を免除することにしました。2教科型なら算数のみで受験でき、4教科型なら算数・理科・社会の3教科で受験できるのです。
2017年度に始めた「マイプレゼンテーション入試」では、昨年度は10人が入学しました。2018年度から新たに導入した「適性検査型入試」も大いに注目を集めました。これは都立中高一貫教育校の「適性検査」に準じたもので、「適性検査Ⅰ」(読解力や表現力を見る国語的な試験)
「適性検査Ⅱ」(教科横断型の思考力・判断力・表現力を推し図る問題)の2つの検査を行います。適性検査型入試は80人以上が受験し、1割程度が入学しました。
これらの新型入試で入学した生徒たちは、十人十色の個性や感性、さまざまな能力や適性を持っています。大井先生はこれらの生徒たちのことを「タレント」と呼んでおり。「本校には個性豊かなタレントたちが揃っており、彼らが活躍できるステージがいくつもあります」と語っています。
多様な入試制度を創出することで、同校には画一的な生徒ではなく磨けば光るものを持った生徒がたくさん集まりつつあります。一般入試で入学した生徒も刺激を受け、お互いに切磋琢磨するプラスのサイクルが生まれ、「昭和リバイバルプラン」をはるかに上回る実績を生み出しているのです。
学校の活気や生徒の満足度は、学校に足を運ばないとなかなか体感できません。ぜひ学校説明会や文化祭に足を運んで、日々成長している同校の姿を、感じてみてください。