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学校特集

東京家政学院中学校・高等学校2024

地域密着型のSDGsプログラムで、
社会と繋がる学びをさらに強化
生徒目線で地域課題の解決に挑む、中2の新しい探究プログラム「Tokyo SDGs Quest」

掲載日:2024年8月1日(木)

 昨年、創立100周年を迎えた女子伝統校。高校を6コース制に改編するなど、時代に対応した教育を推進しています。建学の精神に「知識(Knowledge)を高め、技術(Art)を磨き、徳性(Virtue)を養う」を掲げ、「社会で活躍する自立した女性」を育成していますが、生徒一人ひとりの個性に応じた指導、クリエイティブな探究プログラム、育てたい次世代の生徒像の具現化という同校の「3つの強み」を基本に、とりわけ「体験を重視した学び」を強化しています。昨年度からは新たに、中2の探究プログラム「Tokyo SDGs Quest」がスタートしました。同プログラムに参加した生徒たちと学年主任の太田亜希子先生、邦永真一先生にお話を伺うとともに、卒業生に「東京家政学院で過ごした6年間」を振り返っていただきました。

フィールドワークを行って地域の社会課題を学び、課題解決策を提案

■地域に根づいた、SDGsベースの探究活動

 同校では、SDGsを探究テーマとした課題解決型のプロジェクト学習に取り組んでいます。中1から高2まで5年間にわたる体系的な探究活動の取り組みが評価され、2023年には、持続可能な社会に向けた実践的な教育活動に与えられる「第13回ESD(Education for Sustainable Development) 大賞」の最優秀賞(文部科学大臣賞)を受賞するなど、高い評価を得ています。

東京家政学院_中2学年主任の太田亜希子先生
中2学年主任の太田亜希子先生

 受賞対象になった取り組みは、中1・2合同の「心と学びをTsunaguプロジェクト」(通称「ポスタビ」/ポスター制作)から、中3の「SDGsクリエイティブプロジェクト」(動画制作)へと展開する地域密着型プロジェクト。
 それらの蓄積をベースに、4年ほど前からは奥多摩山間地域で社会課題を学ぶSDGsツアーを実施しています。その狙いについて、中2学年主任の太田亜希子先生は「奥多摩地域の社会課題や困り事を生徒たちが見つけて考察し、SDGsの視点を通して解決法を考えていくこと。とりわけ体験を重視した学びに力を入れています」と話します。
 そして、その一環として、昨年からは新たに中2で取り組む「Tokyo SDGs Quest」がスタートしました。「Quest」とは「探究」のこと。舞台は、過疎化に悩む奥多摩地域です。現地の方々から課題(ミッション)を与えていただき、生徒目線の解決策を模索する実践的なプログラムです。

■「Tokyo SDGs Quest」の導入は「奥多摩SDGsツアー」

「Tokyo SDGs Quest」の導入として、昨年、中2生全員が夏の「奥多摩SDGsツアー」に参加しました。東京都下ながら、都心部で生活する生徒たちにとってはほとんど未体験ゾーン。檜原村で初めてお茶摘み体験をした生徒からは「葉っぱをちぎるのが楽しかった!」「普段見ている景色と全然違う」などといった感想が多く聞かれました。

東京家政学院_初めてのお茶摘み体験も、驚きと発見の連続だった
初めてのお茶摘み体験も、驚きと発見の連続だった

太田先生:山の斜面の段々畑で摘んだ新芽を宿に持ち帰り、炒り茶のような感じでフライパンで熱して乾燥させるところまで、生徒たち自身が行います。茶畑には獣害防止のために電線の金網が張ってあるのですが、「これに触るとビリビリするから気をつけてね」と注意を受けたり、高尾山のネイチャーウォークでは道一本を挟んで気候が違うなど、現地に行って実感することや地元の方に聞かなければわからないことが多くあり、体験の一つひとつに、生徒たちは強いインパクトを感じたようです。限界集落に住むお年寄りと触れ合い、現地で社会課題に本気で向き合っている大人と話す体験を通して、地域の課題を実感し、思いを共有することが「奥多摩SDGsツアー」の狙いです。

■「Tokyo SDGs Quest」は、課題を「自分事」にする学び

「Tokyo SDGs Quest」の流れを、昨年の例を引きながら説明しましょう。
 まず5月の「奥多摩SDGsツアー」での「体験」を起点に、「特別活動・総合の時間」で奥多摩地域の社会問題を洗い出し、「環境保全」「ゴミ問題」「過疎化」「獣害」の4つのグループに分かれて、問題解決に向けた下調べや議論を進めました。この過程で、各自が「振り返りシート」を作成し、プロジェクトごとに課題設定と情報共有、現地再調査、解決策の提案といった、探究の基礎スキルを獲得していくのです。
 そして、今年7月にはグループごとに日帰りで現地を再訪問して、現地の人々と交流しながら具体的な問題解決策を練り直し、バージョンアップさせた提案を11月にプレゼンテーションする予定です。

太田先生:調べ学習をもとに生徒たちもいろいろな解決策を考えるのですが、現実的には難しいものも多かったりします。そこで、7月に再度のフィールドワークを行って地元の方の切実な思いを耳にし、目にすることで、「自分事」にできるかどうかが最も重要なポイントになります。実際、体験的な活動を行うことで生徒の自主性が着実に育まれていると思います。

■「Tokyo SDGs Quest」の流れ

STEP1: 「奥多摩SDGsツアー」(2泊3日)〜奥多摩を舞台に社会解決型フィールドワークを行う。
1日目 青梅市の御嶽渓谷でラフティングをしながらリバークリーン活動(全員)
2日目 グループごとに「ジャガイモ掘り」「竹箸作り」「鍾乳洞体験」「お茶摘み体験」に参加
3日目 高尾山でネイチャーウォーク
(あきる野市の、廃校になった小学校の校舎を活用した滞在型観光施設「戸倉しろやまテラス」に宿泊)
     ↓
STEP2: Quest Research
体験を通して実感したことを起点に、「環境保全」「ゴミ問題」「過疎化」「獣害」の4つのグループプロジェクトチームを立ち上げる
     ↓
STEP3:Quest Tour
プロジェクトごとに分かれて、奥多摩地域を再訪問。課題を「自分事」化する。
     ↓
STEP4:Co-Creation
Co-Creationとは「共創」の意味。チームの仲間や現地の方々の思いを一つの解決策にまとめ上げる。
     ↓
STEP5:Tsunagu Project「ポスタビ」
「Tokyo SDGs Quest」での経験から得た学びや思いを、ポスタビの活動を通して下級生に引き継ぐ。


■「社会問題は、実際に現地で体験しないとわからない」と痛感

東京家政学院_中3のS・Nさん
中3のS・Nさん
東京家政学院_「多摩川リバークリーンプロジェクト」の作業中の様子
「多摩川リバークリーンプロジェクト」の作業中の様子

●「多摩川リバークリーンプロジェクト」に参加
→ゼラチンを使った「食べられる包装紙」を提案

S・Nさん:「奥多摩SDGsツアー」で御嶽渓谷のラフティングをした時に、お菓子の包装紙やプラスチック、ビーチサンダルなどたくさんのゴミを拾いました。ラフティングプランナーの方から、BBQや川遊びをした人たちが残す放置ゴミが川や海の生物に深刻な害を与えている問題を教えてもらいました。そこで私たちが考えたのは、「ゴミ」の素になるプラスチックを減らすために、ゼラチンなどを使った「食べられる包装紙」を提案することでした。ゼラチンの分量を試行錯誤して、失敗もありましたが、その過程を動画にしてプレゼンしました。

東京家政学院_中3のK・Rさん
中3のK・Rさん
東京家政学院_「南沢あじさい山」にて
「南沢あじさい山」にて

●「集落魅力発見プロジェクト」に参加
→深沢集落の紫陽花リースリサイクルを提案


K・Rさん:私はあきる野市にある、紫陽花の群生で知られる深沢集落に行きました。「南沢あじさい山」という紫陽花の名所があるのですが、過疎化の課題解決、集落の魅力発見という観点から、現地体験をする前に考えたのは紫陽花祭り、インターネット活用、紫陽花のリース作りなどでした。イベントで人を呼び込めると思ったのです。でも、実際に現地に行ってみると、住民はお年寄りばかりだし、そんなイベントを開催したり参加できるような状況ではないということがわかりました。今ではたった一人で紫陽花を管理している方によれば、「紫陽花は枯れた花や葉っぱを株元に置くと、その養分を吸い取ってまた大きく成長する」のだそうです。そこで、持ち帰った紫陽花のリースが枯れたら、それをまた持って来てもらって株元において、新しいリースを作る、というサイクルを提案しました。そうすれば、継続的に訪れる人が増えるんじゃないかと考えたからです。私は「枯れたら捨てる」という発想しかなかったので、肥料に再利用することを知ってびっくりしましたし、これは自然界の完全なリサイクルです。やっぱり写真を見ただけではわからない、現地に行かないと気づけないことがたくさんあるんだなと、すごく思いました。管理されている方の紫陽花の美しい自然を残したいという思いも聞いて、それをみんなに伝えていこうと、グループ内で真剣に話し合いました。

東京家政学院_中3のN・Cさん
中3のN・Cさん

●「林業復興プロジェクト」に参加
→間伐材を使った木製製品の生産販売を提案


N・Cさん:持続可能な森林を残していくためには間伐が欠かせないのですが、事前調査で、その間伐材の処分に費用がかかったり無駄になったりしていることを知り、それを減らすための課題解決策を提案しようと考えました。間伐材の保管場所を作るとか発電に利用しようと考え、その初期費用の半分を、間伐材を利用した木製品で販売して貯めるというのが最終的な提案でした。八王子市に山林など地域資源の再生事業をしているNPO法人「小津倶楽部」があると知り、取材にも行きました。

■「探究活動」は、プレゼンの準備段階で自分を客観視することが大事

東京家政学院_中3学年主任の邦永真一先生
中3学年主任の邦永真一先生

 昨年の11月に「Tokyo SDGs Quest」の初めての成果発表を行いました。まだ中2で、プレゼンテーションに慣れていないせいか戸惑う生徒も多かったようですが、最終的には、動画ありクイズ形式ありと、工夫を凝らしたプレゼンが披露されました。
 それも、生徒の成長を感じさせる場面でしたが、生徒たちのプレゼンテーションについて、中3学年主任の邦永真一先生はこんな話をしてくれました。

東京家政学院_邦永先生先生が生徒に伝えたプレゼンの意義
邦永先生先生が生徒に伝えたプレゼンの意義

邦永先生:初めて取り組んだ「Tokyo SDGs Quest」は前例もないし、そもそも「プレゼンテーションとはなんぞや?」という感じで、生徒たちは相当戸惑っていましたが、最終的には非常に凝ったおもしろいものになっていました。本校の生徒たちは非常にまじめで、資料作成なども一生懸命にやるのですが、人前に出て話すのが得意なほうではありません。そこで、「プレゼンの語源はプレゼントだから、相手に届けるものなんだよ。だから制限時間とか喋り方とかは瑣末な問題だし、プレゼンの良し悪し以上に大事なのは、事前の準備段階で自分が発表している姿を想像したり、自分を客観視する時間を持つこと。だから、実はプレゼンテーションというのは発表前に終わっているんだよ」という話を発表会が終わった後にしました。準備に四苦八苦したからこそ、生徒たちには響いたようです。でも、自分の問題意識を本当に相手に訴えたい時にはその発想が土台になると思いますし、それが中3以降のクリエイティブプロジェクトに繋がっていくと思います。

 このお話をプレゼンの前ではなく、あえて終わった後にしていることに、「生徒の成長を見守る」同校らしさを感じます。教わるのではなく、自分の体験を通して自分の力にしていく。それが「成長の種」となって、大きく育っていくはずだからです。

●東京家政学院での6年間

東京家政学院_中1・2は共通クラスで学び、中3・高1で2コース制に。そして、高2では希望に合わせて6コース制をとる

中1・2は共通クラスで学び、中3・高1で2コース制に。そして、高2では希望に合わせて6コース制をとる

東京家政学院の中高6年間を振り返って思うこと

■「1日10分」のチャレンジドリルで学習習慣が身につきました

 東京家政学院中高で6年間を過ごし、現在、東京家政大学人文学部英語コミュニケーション学科3年。卒業後は英語の教員を目指している佐藤陽南子さんに、「東京家政学院で過ごした6年間」についてお話を伺いました。
 学習面で最初に挙げたのは、同校オリジナルの自主教材「チャレンジドリル」です。ドリルは国語・数学・社会・理科・英語の5教科5冊分で、1教科10分程度で取り組める内容。中1・2年次の家庭学習の教材として使います。中学生活に慣れる段階では毎日の学習を習慣化することが大事ですが、生徒たちは「1日10分」のチャレンジドリルに日々向き合うことで、学びに取り組む力を身につけていきます。

東京家政学院_OGの佐藤陽南子さんは今、東京家政大学の3年生
OGの佐藤陽南子さんは今、東京家政大学の3年生

――「チャレンジドリル」の良かった点は?
佐藤さん:「チャレンジドリル」は毎日の宿題のようなものです。教科によってもさまざまですが、簡単なものから時には難しいものもあります。国語や英語は得意なので楽しくできたのですが、苦手な数学は少し難しい内容になると、参考書を見たりネットで計算方法を調べたり。1教科1日10分が目安ですが、それ以上に時間をかけていたこともありました。やっぱり正解が多いと嬉しくなるので、とにかくやってみようとあれこれ調べて答えに辿り着く。振り返ってみると、「チャレンジドリル」があったから、中学入学当初から毎日の学習習慣が身につくと同時に、どんなことでも「とにかくやってみよう」というチャレンジ精神が身についたんだなと感じています。設問はすべて先生方が作っていらっしゃるのですが、毎日ポスト(現在はキャビネット)に入れることが楽しかったですね。

――東京家政学院は、探究活動も多いですね?
佐藤さん:探究活動で身についたことはたくさんあります。私たちの学年は、本格的な探究ゼミがスタートしたスタートアップの学年だったので、最初は正直、何から手をつけていいのかよくわかりませんでした。私は6人グループのリーダーだったのですが、新型コロナウイルスをテーマに決めた後も、個々の温度差もあって、すぐにはまとまりませんでした。それを時間をかけて議論の方向性を決め、先生にアドバイスをいただきながら軌道修正をし、細かい流れを決めていきました。その過程で私が学んだのは、人それぞれにいろいろな考え方があることでした。特に私のグループは、私以外は全員高入生。内進生ならば中学時代に「ポスタビ」や「ジョブタビ」などのキャリア系プログラムを経験していますが、高入生はそうではありません。意見が食い違っても、相手の考えを尊重しながら多様な意見に耳を傾けることが必要なのだと、探究ゼミを通して学びました。

――コミュニケーションの取り方について学びはありましたか?
東京家政学院_体育祭では毎年、高3が「荒城の月」を披露する。後列左から3人目が佐藤さん
体育祭では毎年、高3が「荒城の月」を披露する。後列左から3人目が佐藤さん

佐藤さん:中学時代の探究活動を通して、コミュニケーションの大切さや多様な意見に耳を傾ける重要性を言葉として知ってはいても、身についてはいなかったのだと思います。でも高2の探究活動の中でそれが実行できて、無事に論文を完成させることができたという、一つの目標を成し遂げることができたのは、私にとって大きな成功体験でした。また、グループをまとめるリーダーシップも学べたと思います。多様な意見を尊重すること、批判を怖がらずにリーダーとして言うべきこと、グループ活動において守るべき規律の重要性とか注意すべきタイミングなども学べたと思います。その経験は、大学での新しい友人関係においてもとても役立っていると実感しています。

■自分がしてもらったことを、私もしてあげたい。だから、教師を目指します

――東京家政大学人文学部に進んだ理由は何ですか?
佐藤さん:私は資格を取得したいと思っていました。社会福祉士と教員の2つの選択肢があったのですが、社会福祉士は大学卒業後でも取得の機会があることを知って、教員の道を選びました。生徒たちの成長を支援できる先生になりたいと思ったからです。というのも、自分でも理由がよくわからないのですが、中2の頃に友達と上手に関わることができなくて、勉強にも身が入らない時期があったんですね。その時、先生方が「ちょっと話そうか」と声をかけてくれました。放課後に話す時間を作って親身に相談にのってくださり、そこでいろいろお話しするうちに、言葉にできなかった気持ちや考えが整理されていきました。私自身もその先生方のように、人をサポートできる人に、生徒をサポートしてあげられる先生になりたいと思ったのです。

――佐藤さんの揺れ動く気持ちをキャッチして、先生のほうから声をかけてくださったんですね。
佐藤さん:そうなんです。とても嬉しかったし、助かりました。それほど落ち込むようなことでもないのに、悩みすぎてすぎしまうことは誰でもあると思うのですが、そういうことって、人と話すことで緩和できたり解決できたりすることがありますよね。

――どんな先生になりたいですか?
佐藤さん:家政学院での6年間の経験を生かして、生徒たちの悩みを真摯に受け止め、生徒が相談しやすい先生になりたいと思っています。英語科の教員としては、先生が話すだけの一方通行ではなく、ペアワークなども取り入れながら、英語に楽しく慣れ親しんでもらえる授業をしたいと思っています。

 中学時代は音楽部でヴァイオリンに挑戦し、中高6年間、生徒会活動にも励んだ佐藤さん。ほかにも、JRC(青少年赤十字)部でボランティア活動をするなど、忙しい毎日を過ごしていたそうですが、「考えてみると、部活と委員会の両立が一番大変だったかもしれません」と笑います。
 来年、佐藤さんは教育実習で東京家政学院に戻ってきます。成長した佐藤さんが教壇に立つ姿を、先生方も楽しみにしているに違いありません。

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