学校特集
三田国際学園中学校・高等学校2018
掲載日:2018年6月9日(土)
三田国際学園の中で今、もっともにぎわい、「学び」への熱気を帯びている場所がサイエンスラボ(理科室)です。
同校では今年度、中学1期生の高校進学に合わせて、高校スーパーサイエンスコースをメディカルサイエンステクノロジーコース(以下、高校MST)と改称しました。これまで以上に研究者、医療従事者として必要なマインドを育成するコースとして明確に打ち出したことで、その志望者数は予想を超えるものとなりました。
この高校1年生たちが放課後毎日のように自分たちが選んだテーマの研究活動に取り組み、サイエンスラボの中心にいるのです。彼らの学びに対する熱意は、中学の基礎ゼミナールで実験科学の講座を選択した生徒、サイエンスクラブに体験入部に来た新入生にも伝わって、大きな刺激となっています。この春4年目を迎えた三田国際学園では、同学年の仲間同士だけではなく、縦のつながりの中においても、学びへの自発性が育まれ、学校独自の文化として醸成されつつあるのです。
そして、いよいよ2019年度から、このサイエンスマインドを育成する教育を中高一貫して行うべく、中学にもメディカルサインエンステクノロジークラス(以下、中学MST)が新設される予定です。その背景や概要、目指すところなどを、同校の大橋清貫学園長と、高校MSTを統括している学習進路指導部副部長の辻敏之先生(理科教諭/工学博士)に伺いました。
今年度も大盛況の中学入試!受験生に求めるのは「思考力」
大橋学園長:今年もたくさんの受験生に集まっていただきました。社会に出てから活躍することを前提とした6年間の学びが保護者の方にご支持をいただける、それを実感できた入試となりました。
本校では、どの教科でも思考力を重視した問題を取り入れていますが、十分な対策を練って来られた受験生が多く、本校の入試の特色として定着しつつあると感じています。その象徴的なものとして、今年初めて思考力問題に特化した「21世紀型入試」を行いました。結果は50名の受験で6名合格。ほぼ10倍の倍率となりました。
合格者の中には、他の入試回で合格を得られなかった子が素晴らしい文章を書いて合格するなど、たくさんの伸びしろ(思考力)をもつお子さんが入学してくださることに、この入試の意義を感じています。
ただ、来年度は「21世紀型入試」を行う予定はありません。それは単独で思考力に特化した入試を行うよりも、「4教科入試」の中で各教科が思考力を問う問題を出題することで、「21世紀型入試」の意義を全うできるのではないかと考えたからです。今後も高い思考力をもつお子さんが合格しやすい問題を出題していきます。
歴史の1ページ目を創った高校1期生が卒業。中学1期生が高校生に
大橋学園長:高校1期生がこの春、卒業しました。当初は、高2の文化祭までPBLを中心とした相互通行型の授業に取り組み、「大学入試に間に合うのか」という意見も耳にしました。しかし高校1期生たちは、日頃から鍛えた「考える力」を存分に活かし、多くの生徒たちが希望の進路を勝ち取ってくれました。
一方の中学1期生(現高1)も、この3年間の相互通行型授業の成果が身を結び、かなりの「考える力」が身に付いています。彼らも教わること以上に「自分で考える」という学びを経験していますので、高校に上がってもその力を十分に伸ばし、大学入試では、我々はもちろん、本人や保護者の方が思っている以上の結果を出してくれると確信しています。
生徒自ら楽しく探究!だから思考力が身につく!
大橋学園長:3年間の学びの中で英語力がつき自信を持ったことと、相互通行型の授業による思考力の蓄積が大学入試でも大きな力になることを実感しています。本校の授業では問いかけに重点を置き、より深く考える場面を設定しています。学部レベル、場合によってはマスターレベルまで掘り下げることで、生徒たちは学習がおもしろいと感じます。それが原動力となり、自らの学びにつながるのです。
「生きた英語」に触れる!
本校の生徒は思考のレベルが高く、「授業レポートを書く」、「図書館で調べて論文を書く」など、白紙の状態から文章を構築し、考えを伝えることを得意としています。近年、日本の大学も受験生の学習歴や入学後の伸びしろである思考力を問う入試に変わりつつあります。一般入試でも国公立大や早慶で勝負できる力は十分に備わると思いますが、得意を生かせる各大学の個別入試で希望の進路を実現する生徒が、今後は増えていくのではないかと思っています。
英語力については、本校に在籍する「International Teachers」と呼ばれているネイティブスピーカーの教員(21名)や多くの帰国生を通じて、「学習」としての英語よりも「言語」としての英語を理解することで、英語で物事を考えられるようになっていきます。インターナショナルクラスでは、入学時に英語ゼロからスタートした生徒も含め、ほぼ全員が中1で英検3級以上を取得しています。高校での長期留学(約10カ月間/アメリカ・カナダ・ニュージーランドから選択/留学中の単位を認定)には、今年度(高1約200名のうち)約40名が参加予定です。クラス・コースを問わずに英語の習得に積極的なので、本校の生徒が大学入試の英語で苦労することはないでしょう。
高校では1クラス分以上が白衣を着る人生を選択
大橋学園長:三田国際学園は「英語の学習環境に恵まれている学校」と思われがちです。実際、その通りなのですが、なかにはメディカルを含むサイエンス方面に、高い関心を持つ生徒が多いことも事実です。そこで中学1期生が高校に上がるのを機に、今年度から高校のスーパーサイエンスコースをメディカルサイエンステクノロジーコースに改称すると、1クラス(現在36名が在籍)以上の生徒から手が挙がりました。1期生からこれだけ「白衣を着る」人生を選択する子が多いのですから、中学入学時から研究者、医療従事者としての進路を視野に入れて学べる環境を作ることに迷いはなく、2019年度から中学MST新設を決めるに至りました。
このクラス(高校はコース)は、単に医学部合格に力を入れるクラスではありません。医療従事者や研究者として必要とされるマインドを育み、柔軟な思考力を養うことを目的としています。本校では、研究者としての顔を持つ理科教員が複数います。彼らは中学生だから中学生の教科書を使って学習するのではなく、例えば「Nature」などの専門誌を使って、生徒が興味をもつ授業を行い、必要であればより専門的な話もします。時には国語や社会でも教科の枠を超えて、現代思想における生命や倫理、医療を取り巻くさまざまな社会問題などをテーマに考える授業を行います。
このクラスを選んだ以上は、白衣を着てサイエンスラボで過ごす時間が増える6年間であってほしいと思います。研究者の先生や先輩たちに憧れ、刺激を受け、純粋に、高い理想をもって研究活動に没頭した結果、医療従事者や研究者への道へ進んでくれることを期待しています。
中学1期生は基礎ゼミでの活動が高校MSTにつながった!
それでは、2019年度から始まる中学MSTはどのようなクラスになっていくのでしょうか。その手がかりとなるのは、現在中学本科クラスで実施されてるプログラム「基礎ゼミナール」と、高校MSTの「基礎研究」への取り組みです。ここでの探究活動を週1~2時間の授業時間だけにとどめることなく、「当たり前の日常」として発展的に広げることで、知識を深め、問題解決するための方法を学び、論理的思考の習慣を徹底的に身につけていくといいます。
辻先生:私は中学1期生が中2の時に赴任しました。その年から中学の基礎ゼミナールの実験科学グループの講座『生物を考える』を担当しています。基礎ゼミナール(中2は週1時間/中3は週2時間)は、本科クラス独自のプログラムで、実験科学のほか、プログラミングや社会科学など、多様なテーマの講座があり、生徒が興味のある講座を選び、研究テーマを定めて2年間研究活動をするというものです。
私のゼミでは、まずは座学で「なぜ生きているのか」というところからじっくり考えさせて、生物への興味・関心を深めることから始めています。最初は「夢があるから」「楽しいから」「役割があるから」と自分を軸にして考えますが、問答を繰り返すうちに、自分を軸に考えるのではないことに気付き、やがて普遍的な答えを見つけだすようになります。中2の後半からは実際に生き物を使い、飼育や観察をしながら、自分たちの研究テーマを選定します。
●「ダンゴムシが酔っぱらったら千鳥足になるのか」・・・ダンゴムシの行動習性である交替性転向反応に着目。エタノールの与え方や、どういう状態になったら「酔っぱらい」なのか、その定義などを考えます。
●「切り花に色水を吸わせると色がつく。では、においのついた水を吸わせたら、においはつくのか」・・・花を後天的にデザインできないか、ということを考えます。
●「透明骨格標本づくり」・・・例えば小さな魚などを処理(酵素でタンパク質を分解)し染色すると、硬い骨は青色に染まり、軟骨は赤い色に染まる。それがスケルトンで見える標本があります。水棲生物が多いですが、それを昆虫で作れないかと試行錯誤を繰り返します。
辻先生:例えば昆虫の「透明骨格標本づくり」はたいへん難しいのですが、本校には昆虫を専攻し体のつくりを研究している教員がいます。その先生のことが大好きな生徒が発起人となり、周囲を巻き込んで、薬品の濃度を変えるなど、試行錯誤をしながら標本づくりに取り組んでいます。
テーマはこちらからヒントを与えたり、高1の先輩が取り組んでいたテーマを紹介したりしましたが、彼らとしては与えられたものをやるのではなく、自分たちで考え「自分オリジナルのテーマ」をつくりたいという気持ちが強いので、私は「興味のあるテーマが見つかり次第、内容をプレゼンして私が納得してから」と言い聞かせています。
1年目のゼミでは、テーマの選定に時間がかかりましたが、2年目の生徒たちは、先輩の姿を見ていたので、スムーズにテーマを決めることができました。今年からゼミが始まった中2の生徒たちも先輩がどういうことをしているのかを気にしています。基礎ゼミを始めて3年目ですが、そういう縦の流れができると、同時に文化のようなものが芽生え始めていることを実感できます。
担任をはじめ、身近な理科教員が専門分野を持つ研究者
辻先生:このコースには研究活動が常に「隣にあるという環境」を欲している子が集まっています。担任を含めて4名の理科教員(全員が研究者)が高校MSTを担当し、求められれば、いつでもアドバイスをしたり、レクチャーをしたりする環境の中で、基礎ゼミよりも専門性の高い研究活動に取り組んでいます。
同じ興味をもつ者同士が3、4名でチームを組んで始めますが、それぞれが興味のあるものを出し合って研究していくと、テーマに広がりが出て、たいへんおもしろい研究成果を得られることがよくあります。こうした研究活動を通して「問題を発見する」、あるいは「問題を解決する」ことについて、自分なりの方法論を身につけてくれればと思っています。
辻先生:中学MSTは高校MSTへと続く6年一貫のコースとしてデザインしています。本科クラスの基礎ゼミの理数系講座をさらに発展させた「基礎研究α」を中2から行い、それに向けた準備として「サイエンスリテラシー」という授業を中1から行う予定です。この授業では、大学の研究室や博物館などに出かけたり、科学に関するトピックスについて議論を行ったりして、研究するとはどういうことか、科学とはどのようなものなのかということを学びます。
中学生の間に、わからないものに対して、このようにアプローチをしてみたらどうかという「考える力」が自ずと芽生えれば、たとえば数学や理科の「公式を覚える」という学習も、なぜそうなるのかを考えることができ、理解を深め、使いこなせるようになります。教科で学んだことが研究活動に役立つ瞬間があり、その研究の中で得た経験や知識は教科学習にも役立ちます。このように興味関心を持って学習や研究活動に取り組むことで、大学入試に臨むために必要な学力は備わっていきますし、6年間の学びを通して得たことを、AO入試の志望理由書に声高に書ける、自分の強みが明確にわかっている生徒に育っていくのではないでしょうか。1年次...「サイエンスリテラシー」の授業で学びの技法習得
2年次...1学期 基本論文読解 2学期 テーマ設定 3学期 中間発表
3年次...1学期 研究活動 2学期 学園祭発表 3学期 紀要の発行
※プログラム内容は予定であり、今後変更の可能性があります。
辻先生:基礎ゼミでもポスターセッションや学園祭でのプレゼンテーションがあるように、高校MSTの基礎研究でも校内の発表を行い、さらに対外的な発表の機会も設けています。まず1年次には、中高生の化学コンテストである「つくばScience Edge」でポスターセッションを行い、さらに研究を深めて、高2のシンガポール修学旅行では、アジアの中高生が参加する最大規模の研究発表イベント「Global Link Singapore」に参加し、英語で発表する予定です。学会の高校生ブースもターゲットにしていますが、より高度な学術的成果が出れば、一般の学会で発表することも視野に入れています。実際、昨年夏には、当時高2の生徒が「ミドリムシが水耕栽培に与える影響」という研究テーマで、環境微生物系学会で発表を行いました。
大橋学園長:昨秋、中高生のためのスマートフォンアプリ開発コンテスト「アプリ甲子園」で準優勝した本校生徒(当時高1)のプレゼンテーションはたいへん立派なものでした。その様子は本校のWEBサイトでも紹介していますが(http://www.mita-is.ed.jp/news/detail.html?id=967)、これからのAIの時代、当然そういう方面に進む生徒も多くいるでしょう。しかし、分野は関係ないのです。高い理想を持って、3年間、あるいは6年間、一つのことを研究してほしい。そのためのバックアップが整っていて、化学変化が止まらない学校、それが三田国際学園なのです。
三田国際学園では、中学MSTに限らず探究ある学びに不可欠となる理数分野への意欲旺盛な生徒に入学してほしいと考え、2019年から新入試を導入します。
◆2/3(日)第4回入試は、「MSTクラス」のみ募集。算数・理科の2科目入試
◆2/1(金)第2回入試のうち「本科クラス」は、算数1科目入試
さらに本科・インターナショナル各クラスの4科目入試においても、各科目で思考力を測る問題をこれまで以上に出題する方向で検討が進められています。
詳しくは同校の学校説明会にてお知らせします。
(http://www.mita-is.ed.jp/admissions/visits.html)