学校特集
女子聖学院中学校・高等学校2017
掲載日:2017年9月1日(金)
JR山手線駒込駅から徒歩7分とアクセスの良い都心にありながら、緑の多い閑静な住宅街に位置する女子聖学院中学校。1905年の創立以来、キリスト教の教えに基づいた女子教育を実践していますが、「私は私らしく、あなたはあなたらしく。だからこそ、共に生きることはすばらしい」という互いの違いを受け入れ活かす指導は、多様な文化や価値観を受け入れる、同校伝統の国際理解教育にも適しています。そして、各教科の取り組みはもちろん、92年間続く運動会など伝統行事を含めた学校生活すべての場で、自分の思いや考えを表現できる「発信型女子」を育成。さらに、2015年にスタートした放課後学習支援システム「JSGラーニングセンター」のさらなる充実によって、今春には東大への現役合格者を出すなど、生徒一人ひとりの夢を実現へと導いています。同校の教育内容について、3人の先生方にお話を伺いました。
自分の思いを伝える「発信型女子」を育成
〜"What do you think?"に答えられる教育〜
佐々木恵先生(広報室長):「本校はこれまで、どんなときでも『問う』ことを大切にしてきました。生徒たちの意欲や主体的に学ぶ姿勢をどのように引き出してきたのかと改めて考えてみると、つねに問い続けてきたように思います。『あなたはどう思いますか?』『どう考えますか?』と、生徒に問うのは本校の文化であり、創立から112年、変わらずに引き継がれてきたものです。問うというのは、生徒との対話です。問うことで、生徒が何を考えているのかを知り、生徒たちを信頼し、そのもっている力に期待する。そのように、生徒たちとの対話を大切にしてきました」
さらに、キリスト教を教育の土台とする同校ならではですが、毎朝行っている礼拝の時間のなかで「自分自身への問い」も大切にしているといいます。
佐々木先生:「礼拝は、神様に愛されているかけがえのない自分と向き合う時間です。礼拝において語られる言葉を聴き、自分自身と向き合う時間のなかで、自分の思いや答えをもってほしいと思います」
女子聖学院の生徒たちは「神様に愛されているかけがえのない自分」と向き合うことで自己肯定感をもち、同じように他者の存在も大切にし、お互いを認めあう環境のなかで過ごします。
佐々木先生:「たとえば役割分担などを生徒同士でさせる場合も、つい大人は同配分になるようにと考えがちですが、生徒たちはお互いを認め合いながら、それぞれができることを、みんなが満足できるような形でうまく分担していますね。そのような環境のなかで、お互いに思考力を磨き合い、発信力をつけて、2020年の大学入試に求められる力を伸ばしてほしいと思っています。本校の教育スローガンである『Be a Messenger』、つまり英語でも日本語でも語る言葉をもつ人を育てるというのは、キリスト教教育が土台になった考え方です。ただ好きなことを話せばよいのではなく、あなたに与えられている賜物、良きものをどう用いるのか、社会的にどのような使命をもち役割を果たしていくのか。その答えをもってほしいと思います。国際社会から求められているからというだけでなく、そこに本校の使命があると考えています」
クラス対抗で行われる合唱コンクールは、生徒会が主催
名物の運動会は高校が学年対抗、
中学は縦割りで高校生のチームに加勢する
「プロジェクト型学習」で、発信力を鍛える
「発信型女子」を育成するために、プレゼンテーションをはじめとする表現活動を学ぶ「プロジェクト型学習」を推進させている同校。なかでも国語科の授業では「聞く・話す」に特化した授業を10年以上実施し、発信力を着実につけてきました。
平野由紀子先生(国語科):「中1では、クラスメイトにきちんと伝わる自己紹介や、図書館で調べ学習をして発表し、相互評価をする学習などを行います。中2では、小学生に対して本校を紹介するなど、世代の違う人へ言葉の使い方や選び方、小学生が何に興味もってくれるのかなどを考えながら発表をします。中3ではディベートを中心に、また、高1ではタブレットやパワーポイントなどのスキルも習得して、プレゼンテーションの練習を多く取り入れています」
このように学年に応じた積極的な学びを展開して、集大成ともいえる高2での修学旅行へとつなげます。
高2の修学旅行では長崎県五島列島を訪れますが、現地の過疎の問題について考えることからスタートします。
平野先生:「タブレットで現状と課題について調べを進め、チームごとに過疎化解消の施策を考えます。生徒たちが考えた案は、美しい自然を生かしたウエディングツアーとか、島に流れ着いた漂着ゴミの解決のためのボランティアツアー、外国人を呼び込み日本を体験してもらうためのツーリズムなどでしたが、そのなかから4チームを選出し、現地で高校生を含む地元の人へプレゼンを行いました。集まってくださった地元の方々にも喜んでいただき、観光課の方からすぐにでも実施したいという声をいただいたり、地元の高校生との交流をとおして人の役に立つ、社会を動かすことができるかもしれないプレゼンができたということは、生徒たちの自信にもつながりました」
「学校の外に意識がいくように、学校外の方に聞いてもらいたかった」と、長崎県や五島市に働きかけた先生方の思いが届き、受け身だった修学旅行から、観光を学んでみたいと希望の進路を見出したり、社会問題に関心をもつようになるなど、この試みはそれぞれの生徒の成長へとつながっています。
五島列島で、過疎化解消の施策をプレゼンする生徒たち
五島列島の高校生たちとも交流
放課後に廊下で販売
また、他者を思いやる同校らしい活動事例として、熊本への復興支援があります。文化祭で熊本の名水を活かした「復興サイダー」を販売したことをきっかけに、「一時的な募金ではなく、継続的に支援を続けたい」と、生徒から常時サイダーを販売しようという発案がありました。
平野先生:「じつは、生徒が炭酸を販売することについて学校側からなかなか許可が下りず、簡単には実現できなかったのです。でも、生徒たちは自分たちの目で実際に見て応援したいと、春休みに熊本に行って事情を聴き、学校をあげて支援を続けたいと『学校でサイダーを売りたいチーム』を結成。どうすれば学校が許可してくれるのか、一つひとつ問題をクリアしていき、現在では、毎日時間を決めて生徒自身の手で冷やしたサイダーを手渡しで販売し、売り上げを熊本に寄付しています」
自分たちの思いが形になるまであきらめない生徒たち。その姿には、すでに「発信型女子」を育成する教育の成果が表れているといえます。
「自分のことば」で世界に発信する!
国際社会でも自分のことばを英語で発信できる力を養うために、「国際理解教育」を積極的に行っている同校。2020年の大学入試改革を視野に入れて「読む・聞く・書く・話す」という4技能を高めるために、各学年で到達すべき英語学習の"マイルストーン(里程標)"を独自に策定しました。
特徴的なのは中学3年生での英検3級の「満点」合格。4技能すべての基礎固めをしっかりと行うことが「満点」にこだわる理由だと、佐々木先生が教えてくれました。
佐々木先生:「英検はスコアで見ると、準2級を8割できて合格すると1920点ですが、英検3級の満点合格は2200点と、こちらのほうが高いのです。中学で学ぶべき英語を積み残して先に進んでも、いつかつまずいてしまいます。また、満点でないと4技能をすべてマスターしたことにはなりません。もちろん、3級に合格しただけでは大学合格出願資格は得られませんが、中学で基礎を完全にマスターしたほうが次のステップへの近道になります。難関校への受験にも十分間に合います。3級の100点満点と2級のぎりぎり合格ではスコアがほぼ同じですし、3級で満点が取れれば2級もすぐに取れます」
各学年での3日間の英語の集中プログラムや、中3から参加できる留学を含んだ4カ国5種類の海外研修など、スピーキング力を高める機会が多い同校ですが、日常的に会話力を高める機会として「イングリッシュラウンジ」があります。ネイティブの先生が常駐し、昼休みや放課後の好きなときに英会話が楽しめたり、高校生はスピーチコンテストの原稿を見てもらえたりと、学年を超えた人気のスポットになっています。
さらに、放課後学習支援システム「JSGラーニングセンター」では、英検の取得級に応じた課題英作文の演習や英検講座、今年からスタートした48台のPCを駆使したオンラインレッスンなど、一人ひとりに合わせた強力なサポート体制で英語力を押し上げています。
入学後にグン!と伸びる学習環境
いつも生徒たちでいっぱい!
2015年から放課後学習支援システム「JSGラーニングセンター」を本格始動させてきた同校。自習エリアの充実や常駐のチューターのバックアップ体制、放課後や長期休みの各種講座開講など、生徒一人ひとりのニーズに対応するきめ細やかな取り組みに力を入れています。2017年春には現役での東大合格者を送りだし、GMARCHの合格率では約10%アップするなど、「入って伸びる女子聖学院」の印象をさらに強める結果へとつながっています。
塚原隆行先生(教頭・進路指導部長):「東大に合格した生徒は中1の授業で歴史が好きになり、さらにテレビの大河ドラマに興味をもったのですが、その時代考証の監修者が東大教授だったこともあって、東大入学を中2で決意。高校に入ると、東大合格は夢から目標へと変わっていきました」
生徒の気持ちに応える先生方による個別サポートや、東大生チューターによるアドバイスを受けるなど、そのOGは学校の環境を最大限に活用して努力を合格へと結びつけたのです。そして、塚原先生は他者を思いやり、仲間と共に支え合い、伸びていく同校ならではのエピソードを聞かせてくれました。
塚原先生:「彼女が頑張って合格したことはもちろんうれしかったのですが、『同級生がどんな自分も受け入れてくれて、いつも自分らしく自然体で過ごせた。友達が精神的支えになった』と言っていたことが、さらにうれしかったですね」
さらに、同校では昨年から「SA(スペシャルアドバンストクラス)」をスタートさせ、英語での発信力強化を進めています。SAクラスとS(スタンダード)クラスは入れ替えのチャンスもあり、それぞれの段階に応じて生徒の力を最大限に伸ばしています。
塚原先生:「SAクラスは英語の宿題や単語の試験問題など、勉強量を多くこなすクラスです。得意な英語の伸びが良い影響を与えて、1年間で数学の偏差値が平均で3ポイントアップする『SA効果』が見られました。数学に苦手意識をもっていた生徒たちもいましたが、英語を中心に勉強量をこなすことで自信がついて、数学にも手が伸びていった結果だと思います」
生徒たちは伸びやかに成長していく
「心が素直でまっすぐな生徒が多く、大人への信頼感が大きい。そんな生徒のまっすぐな姿勢に我々教師も支えられています。もちろん、指導者としての立場から言わなければならないときもありますが、教師も生徒も人としての価値は同じです」という塚原先生の言葉どおり、先生方は生徒たちを信頼し、生徒たちは先生方の信頼に応える。女子聖学院は、そんな温かな信頼関係のなかでそれぞれの生徒がそれぞれの資質を伸ばし、仲間と支え合いながら、自分で考え、自分のことばで発信できる大人へと成長していくことができる学校です。
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