学校特集
西武台新座中学校
掲載日:2017年10月14日(土)
アクティブラーニングの目的は主体的・対話的で深い学びを実現することです。知識・技能を生きて働くものとして習得することを含め、育成すべき資質や能力を身につけるために必要な学びを実現するためのものです。
その本質的なアクティブラーニングを実践している学校の1つが西武台新座中学校です。2011年の中学校新設時から「地球サイズのたくましい人間力」を育てることをテーマに、高度なアクティブラーニングを実践しています。
西武台新座の学びの魅力はどこにあるのでしょうか。「授業を教師の手から子供たちの手に!」を合言葉に、生徒自身から湧き上がる意欲を引き出す教育を陣頭指揮する小林副校長に話を伺いました。
学び、使い、フィードバックする
主体的に学ぶ意欲を伸ばす成長のサイクル
西武台新座の学びの土台は、『成長のサイクル』。学ぶこと全体を3つのステージに分け、それを循環し続けることでより高いレベルへと成長し続けます。
最初のステージは前提となる知識の構築です。アクティブラーニングを行うためには当然ながら基礎知識がないと意味がありませんから、しっかりと基礎知識を身につけます。
ここまでは従来の日本の教育でも行われてきたことですが、第2のステージからいよいよアクティブラーニングの本質に入ります。次のステージは現実世界の問題解決です。事前に得た知識をあてはめたり組み合わせたりしながら、現実にある問題を解決するために何ができるか考え、実行します。
第3のステージでは第2のステージで実行された結果を冷静に自己評価します。予想していた結果に対して実際はどうであったか、今回の取り組みで良かったことは何か、足りなかったことは何か、より良い結果を得るためには何をすればよいのか、徹底的に分析します。そして第1のステージに戻り、より良い結果を得るために必要な知識を学び、さらにサイクルを循環し続けます。
「第1のステージで伸ばすのは学ぶ力です。ここは従来の日本の教育でも行われてきたことであり、学ぶ知識の量を減らすことはありません。第2のステージで伸ばすのは学んだことを使う力です。そして第3のステージでは結果をフィードバックして、より良い結果へつなげるための自己評価をします。これを繰り返す中で、生徒たちは学んだことを現実に活かし、その結果を踏まえてさらに学ぶという知的活動の体験を重ねます。すると学んでいる内容への関心が高まり、自発的に学びを進めるようになるのです。(小林先生)」
少人数グループによる対話的学びを通して
自分の長所を知り、個を確立する
個を確立することにもつながる。
対話的な学び、つまり他者との協働を通して自分の考えを広げ深める力を伸ばす上で、少人数によるグループワークが非常に大きな役割を果たしていると話す小林先生。特に3人単位だと、一人ひとりの個を確立することにもつながるといいます。
「大人数だと積極的に発言しない生徒も出てきてしまいます。2人だと意見が単純な対立構造になってしまいがちです。3人の場合はそれぞれの意見の長所や短所を客観的に見えるようになり、議論が生まれます。また情報収集力に優れている人や意見を集約するのが上手な人、発表が上手な人など、お互いの得意不得意に気づき、役割分担ができるようになります。それができれば他者の良さを認めつつ自分の良さも客観的に認められるようになり、他者の評価に依存しない、個を確立することができます。(小林先生)」
少人数でのグループワークの形態として、授業にディベート的活動を取り入れているのも西武台新座の大きな特徴です。
「ディベートでは与えられた論題に対して賛成側と反対側に分かれて論述を行います。個人的な主張とディベートにおいて主張する立場が違っていても構いません。論題に関する情報の中から自分側の主張を裏付ける証拠資料を集める作業は成長のサイクルの1番目、すなわち知識の構築にほかなりません。またそれらの資料を組み合わせる論理構成力や、それを正しく相手に伝える作業は、成長のサイクルの2番目、現実世界の問題解決にあたります。さらに相手側の反駁(反対意見)を踏まえて、相手の論点と自分の論点を比較した上で自分の議論が優れていることを示すという作業は、3番目のフィードバックと全く同じです。ディベートではこれを少人数グループで行うため、アクティブラーニングで求められる力と個々の得意能力を伸ばす上で、まさに最適なのです。(小林先生)」
より深いアクティブラーニングを実践
中学2年生が実際に授業で行ったディベートの論題の一つに、『遣唐使を廃止するべきだった。是か非か』というものがありました。唐の文化を受け入れるべきだったか、それとも日本古来の文化を大切にするべきだったかというのが論点になるだろうと教員は想定していたそうですが、廃止するべきだったと主張した生徒たちの中には、当時船で日本海を渡って行き来することのリスクに注目したグループがあったそうです。遣唐使の渡航記録と、そのうち何回海難事故に遭遇してしまったかを調べ、そのたびに遣唐使に選ばれるような貴重な人材を失うリスクという面から、遣唐使を廃止すべきだったと主張しました。
「当時の船で唐まで渡ることがとても危険だったという記述は、教科書にはほんの数行にしかまとめられていません。でもそこに注目した生徒たちは、文献を調べ、事故の発生率を算出することによって立派なディベートの証拠資料を作り上げたのです。わずか数行の記述から想像力を膨らませた素晴らしい知的活動の成果が見られました。(小林先生)」
2017年8月に開催された「第22回全国中学・高校ディベート選手権(ディベート甲子園)」に参加した英語部の4名が、愛知の名門校南山高校女子中等部に勝利して決勝トーナメントに進出。決勝トーナメントでは京都の洛南高校付属中学校に僅差で敗れたものの、2年連続全国ベスト16の快挙を成し遂げました。
要求レベルはあくまで高く、
指導は本人のやる気を引き出すよう愛情と情熱を注ぐ
2011年の中学設立当初から「地球サイズのたくましい人間力」を育てるために、ICTを用いた教育や様々な人数でのグループワークを積極的に取り入れ、アクティブラーニングの最先端を走り続けている西武台新座。それを支えている教員についても小林先生に伺いました。
としてのスキルと生徒への愛情と情熱が求められる
「知識の構築、現実世界の問題解決、フィードバックを繰り返していく中で、生徒たちにはかなり高いレベルを要求しています。とはいえ最初から上手にできる生徒などいません。まずは教員が知的活動をリードしながら生徒一人ひとりが一連の知的活動を理解することを手助けします。そこから生徒一人ひとりの主体的なやる気をどのように引き出し、要求されているレベルに向かって主体的に頑張る姿勢まで持っていけるか、ということが教員一人ひとりに課された課題です。単なる知識の伝達者ではなく、生徒のやる気や潜在能力を引き出すプロの指導者としての高いスキルと、生徒への愛情と情熱が求められます。(小林先生)」
実際の授業でも、生徒たちのグループディスカッションに教員が積極的に参加。時にはあえて正解とは違う意見を挟むなどして生徒同士の議論を活発化させています。
「ディスカッションは自分たちの知識や想像力の範囲でしかできないので、生徒同士だけの議論では内容に限りがあります。そこで教師があえて反対の意見を出してみたり、別な見方もあるよとアドバイスしたりすることで生徒たちの議論を活性化させ、得られた結論に幅や深みを持たせるようにしています。それが正解であるかどうか自体はそれほど重要ではありません。もし正解でないのだとしたら、次のフィードバックでそこを反省して、さらなる学びに結び付けていけばよいのです。こうして自ら学び続けることこそ、『授業を教師の手から子供たちの手に!』という合言葉のもと西武台新座が実践している授業のスタイルなのです。(小林先生)」
与えられて芽生える興味・関心から、
自発的な意欲・態度を引き出し学びの姿勢を確立させたい
態度が全く変わり、生活態度にも波及する。
西武台新座が最終的に目指しているのは生徒自身が問題を見出し、それを成長のサイクルに乗せていかれるような、自発的な意欲と態度を引き出すことだといいます。
自発的にテーマを見つけると、生徒たちの取り組みかたの意欲と態度が全く変わります。態度が変わると、他のことにも波及し、生活態度が改まり時間を無駄にすることがなくなります。するとますます意欲的に取り組むようになります。これが連鎖することで、自分が見つけたテーマだけでなく、人間力そのものも大きく成長することになるだと、小林先生は熱く語ります。
「今は教員から与えられた問題をきっかけにして興味・関心を芽生えさせ、それを成長のサイクルに乗せている段階ですが、これが浸透することによって一人でも多くの生徒の自発的な意欲と態度を引き出し、学びの姿勢を確立させたいと考えています。このような生徒が増えてくると、授業は生徒たちの談論風発の場となり、教員はより深い知識と思考パターンを持っているという立場から生徒たちの議論を活発化させる役割を果たすことができます。その時初めて、『授業を教師の手から子供たちの手に!』が実現するのです。(小林先生)」
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