学校特集
聖徳大学附属女子中学校・高等学校2017
掲載日:2017年9月20日(水)
ICTを学校生活の随所に積極的に取り入れ、ルーブリックを活用するなど、先端的な教育を行っている聖徳大学附属女子中学校・高等学校。S選抜、選抜、進学の3クラス制を敷き、今年は国立大医学部への進学者を輩出するなど、生徒たちの希望進路をバックアップしています。しかし穏やかな校風の同校は勉強ばかりの学校ではありません。教育理念は「和の精神」で、生徒たちは中高6年間で週1時間行われる小笠原流礼法や書道の授業などを通じて、日本伝統の心を育みながらレディになっていきます。この最先端と伝統的な教育が両輪となり、生徒たちの力を着実に伸ばしています。
聖徳大学附属女子中学校・高等学校で推し進められている教育を教頭の大野正文先生と入試広報室の中牧さやか先生に伺いました。
「私は何にでもなれる!」
気持ちを育む聖徳の教育
今春、筑波大学医学部やお茶の水女子大学などの国公立大学などへの進学者を出した聖徳大学附属女子。きめ細かな女子教育を徹底し、丁寧に寄り添いながら導いてきた結果の一例といえるでしょう。
今年は97%と、もともと現役大学進学率が高かった同校ですが、近年は医歯薬系を志望する生徒が増えてきているそう。大野先生はこの理由についてこう話します。
「いずれのクラスでも理系に進みたいという生徒が増加しています。本校は女子校ですので、生徒たちには『男子がいないぶん、活躍機会は2倍ある!』と伝えています。そのため、生徒たちは能動的な学校生活を送っていく中で、男子がやるとイメージされがちな活動でも自分はできるのだという認識が培われているのでしょう。それらの経験から生徒自身が就きたいと思う職業の選択肢が広がって、理系を選択しているのだと思います」
中学では部活動は全員参加の必修です。
「職業選択の自由は、男女関係なく誰でも可能」と生徒たちに伝える先生方ですが、印象的だったのが、高校音楽科の卒業生はほとんどが音楽系に進学する中、自動車大学校に進んだ生徒がいたこと。その他、プロゴルファーを目指す生徒がいたりと、卒業生たちの活躍の場は多岐に渡っています。
「礼法の時間は、他者への思いやりを育む時間となっています。おもてなしの心は生徒たちに深く浸透し、それを職業にしたいと考える生徒も増えているのでしょう。もともと看護師を志望する生徒は多くいましたが、医師という選択肢が出てきているのは、これまでの学習指導や進路指導が実を結び、生徒の学力向上やチャレンジ精神がついてきたことで、礼法で学んだホスピタリティを発揮できる職業選択が広がったからといえるのではないでしょうか」(中牧先生)
「理数スーパーアカデミア」。
それぞれの希望を持って、自分の夢に向かって邁進していく姿は、同級生のみならず下級生たちにも大きな影響と刺激を与えます。今春、国立大医学部への進学者が出たことで、それに続く生徒が出るだろうと先生方の間で期待が広がっています。
なお、2013年には最難関大学合格を目指す「S選抜クラス」が誕生しました。現在生徒たちは高校2年生。彼女たちの将来はきっともっと選択の幅が広がることでしょう。どんな進路選択をしていくのか非常に楽しみです。
大学入学者選抜改革にも
通用する実力を養成
聖徳大学附属女子では2020年から実施される高大接続改革について、先のS選抜クラスの設置をはじめ、すでに様々な方策が取られています。
大野先生が「思考力・判断力・表現力を伸ばす土台となる知識・技能が不要になったわけではありません。この部分はこれまで通り大事にしたいと考えています」と言う通り、スパイラル形式で行われるきめ細やかなドリル学習や朝学習、学習到達度に応じたきめ細やかなサポートシステムで、少しずつ積み重ねながら基本的・基礎的な学力をしっかりと涵養します。
生徒たちに学習内容が定着する秘訣は「やりっぱなしにしない」こと。
「小テストなどを繰り返しながら測定をして、効果が出ているかを検証しながら進めていきます」(大野先生)
談笑する姿も見られます。
では、前述の通り礼法や書道の授業も6年間きちんと行うことからもわかるように、「すべての教科が土台となり生徒たちを成長させる」と考えられています。
その中でも、特に英語には力を入れており、「話す」「聞く」「読む」「書く」という4技能を徹底的に育成。
大野先生は「環境が生徒の能力を高めるという考え方です。『英語に慣れること』を目指し、自然と英語に触れられる環境を学校生活の中にたくさん散りばめています」と話します。
授業時間数は英会話も含めると、週7〜8時間確保され、日常的に英語に触れられる環境です。専任は2人、非常勤を含めると5人いるネイティブスピーカーの先生方は、実技教科や行事などにも参加し、生徒と一緒に授業を受けることも。
毎日全校生徒と先生方が食堂(じきどう)に集まって昼食をとる「会食」もネイティブの先生と生徒たちは一緒に食事をします。
英会話部の顧問をする先生もおり、外国人教師と日々の中で触れ合うことで、ふとした文化の違いを確認したり、学校の中で異文化体験を行えます。
「学校内のいろいろな場面でネイティブスピーカーの先生に活躍してほしいと思っています。生徒たちは英会話でコミュニケーションを取りながら、もっと話せるようになりたいという姿勢が培われています。いずれは、教科を英語で学ぶイマージョン教育を導入していけると理想ですね」(大野先生)
なお、聖徳大学附属女子では2019年より新カリキュラムに切り替わり、より21世紀型教育にシフトしていく予定です。
英語を楽しみながら
表現できる場がたくさん!
英語を使う行事を豊富に行っているのも、聖徳大学附属女子の特徴です。
例えば入学前には、ネイティブスピーカーの先生による指導が行われる「英語研修」が実施されています。「希望者参加型ですが、参加率は100%。入学前に友だちができるきっかけにもなっているため、学校生活への不安も和らぐようです」(大野先生)
同校の学校生活で重視されていることに、発表・表現の機会があります。上記の英語研修後を含め、ことあるごとに発表が行われます。最初はたどたどしくてもいいのです。そこから徐々に、自分で発表や発信できるように慣れていく、次へ次へとつなげていくのが聖徳流です。発表を重ねていくことで、生徒たちは自らの成長を実感できることでしょう。
20年以上続く名物行事であり、生徒もその家族も楽しみにしているのが、中学生による聖徳祭(文化祭)での「英語劇」です。
中1は「白雪姫」、中2は「ピーターパン」、中3は「シンデレラ」を各学年がクラス対抗で演じます。生徒たちは気合が入っており、9月末の発表に向けて8月から大道具を作ったり、練習を始めるのだとか。保護者も非常に協力的で、過去にはまるでウエディングドレスのような、大迫力のドレスをまとったシンデレラが舞台に上がったこともあったのだそう。
大野先生は、「中には裏方として舞台を支える生徒もいますが、生徒全員が何かしら舞台には立つようにという指導をしています。全家庭が観にいらしているのではというほどの盛況ぶりで、奏楽堂(ホール)には入りきらないため、学年ごとに入れ替わって観劇していただいています」と話します。
「最優秀賞」、「優秀賞」を狙って生徒たちは懸命に取り組みますが、特徴的なのは英語への評価だけでない、パフォーマンスに対する評価の「ステージ賞」を設けていることです。類型ごとのクラスなので、英語の能力に差が出てしまうこともありますが、様々な視点から頑張りを認められる場があること、認められているという実感をもつことは、生徒たちの成長にとって大きな後押しになることでしょう。
発表で磨かれる、思考力と表現力
8月に実施される房総での「イングリッシュ・サマーキャンプ」は、ネイティブスピーカーと一緒に自然体験をしながら英語を覚えることができる機会です。自由参加で参加率は1/3ほどですが、毎年行われているものなので、生徒たちはどこかの学年では必ず参加しているそうです。
中3の夏に3泊4日で行われるのは「グローバルキャンプ」です。生徒たちは街に出て行き、外国人にインタビューします。外国人から見た日本の印象などをインタビューし、それらによって得られた意見に対して自分の考えを述べるまでを一連として、英語で発表を行います。
キャンプの初日には、ネイティブスピーカーの先生から「グローバルとは何か」というお話があったそうです。
そして街へ出た生徒たち。国籍・人種・文化など、多様なスタンスの外国人に触れ、真のグローバルの一端を体験できたのではないでしょうか。
インタビューの前には、ドラマ形式の寸劇を使ってコミュニケーション能力を高めるための講座を受けたり、効果的なプレゼンテーション資料を作るための具体策を学ぶ時間も設けられています。
「普段は引っ込み思案がちな生徒でも、発表の際には学んだことを生かして、クラスメートや先生の目を見ながら、アクションを入れつつ全体に問いかけたりと、工夫を凝らして一生懸命プレゼンしていたのが印象的でした」(中牧先生)
3日間のインタビューを通じて、生徒たちは自分なりの課題を発見し、自らの視点を持って課題に取り組みます。
例えば今年は、プレゼン資料にゴミが散乱したゴミ箱の写真を撮り使った生徒がいたそうです。彼女は日本の過剰包装について疑問を呈し、将来は大学でエコについて学びたいと結んでいたとか。
それぞれの視点の面白みに気づくこともでき、将来を見据えた貴重な挑戦となっています。
「いろいろな国からたくさんの外国人観光客が訪れますが、自分の英語が伝わる!と手応えを感じた生徒は、得意げに箸の使い方を教えてあげていました」と、中牧先生はその場面を思い出し、愉快そうに教えてくれます。
礼法の時間に箸の持ち方をきちんと学んでいるからこそ、自信を持って教えられますし、日本の文化を伝えたいという誇りや責任感も同時に育まれている証なのでしょう。
中3の3月には、中学の集大成として「卒業研究発表会」が行われます。
生徒たちは自分自身でテーマ設定をし、英語でレポートを作って自身の持てる表現力を駆使して発表します。
テーマは実に多彩で「盲導犬」、「声の高低」、「遺伝」、「利き手」など興味深いものばかり。
夏休みごろからテーマ決めを行い、発表に向けて少しずつ自分で調べて作り上げていくためには学びの要素だけでなく、計画性や実行力も必要です。時には先生にダメ出しされる経験は、生徒をひと回り成長させ、より深い思考へと導いてくれるものとなるでしょう。
中牧先生は「それでもみんな、最後はとても立派に発表します。保護者の方も我々教員も、その姿に思わず目頭が熱くなってしまいます」と瞳を輝かせながら話します。
生徒全員がiPadを活用
こうした発表の機会を大切にしている聖徳大学附属女子ですが、その時間を確保するためICTを活用し、授業の効率化に成功しています。
「これまでのように、教員が一方的に教え込むのではなく、生徒たちが一人1台持っているiPadを使うことによって、自分で調べて、探求していく学習に取り組む学びに変わってきています。発表する行為自体も大変意味がありますが、発表するに至るまでにきちんと考えて調べて文章にまとめます。それらの活動でも思考力・判断力・表現力がつくのだろうと考えています」(大野先生)
ディスプレイに生徒たちの回答一覧を映し出すことのできるアプリを使うことで、様々な意見に触れられ感じていくことで生徒の多様性が養われます。意見の発表を通じて主体的・対話的な深い学びを目指しており、すべての授業はアクティブラーニング型で、グループワークを頻繁に実施しています。
「特に中学生はグループを作るとメンバーが固定しがちですが、自分が普段一緒にいない人ともいかに協働し、人間関係を作ることができるかという力を育みます」(大野先生)
グループ構成をうまく作ることにより、他者と自分を比較照合して振り返りを図り、自分自身を客観的に見つめる目を培う、メタ認知の力を育てています。その上で「その機能を促進して自分自身で勉強できる生徒を育てたいと考えています。ICTはすべて生徒の能力を高めるために活用していきます」と大野先生は力強く語ります。
同校での主体性とは「見通しを持った学習の中で、粘り強く学習に取り組んで、その学習を振り返って次の学習につなげられること」。そのため、授業の始まりにはその授業の目的や流れ、何を身につけることができるのかを明確化します。終わりの5分間でその時間を振り返り自省をして、次の時間を迎えられるよう、アクティブラーニング型の学習を実践しながら、一つひとつの授業が大切に行われています。
「本校で育てたい生徒像は『思いやりの心を持ちながら自分らしく活躍できる生徒』です」(大野先生)
なおICTを使って、各種学習にも役立て検定などにも果敢に挑戦しています。
第一志望入試が追加実施!
12月1日の1回のみだった第一志望入試は、16日に2回目の実施が決定し、受験チャンスが広がります。
国語と算数の基礎学力調査(2科で40分)を実施します。400字程度の自己表現作文を予定しており、習い事をはじめ自分が頑張ってきたことなどをアピールできる場です。
「国・算はあくまで基礎学力を見るものです。作文は自分が頑張ってきたもの・ことについて、実績なども含めて気軽にアピールしてください。面接では頑張ってきたことを話題の中心として真ん中に据えて、ことばのキャッチボールができればいいと思っています。深くは突っ込まないので、安心して受験してください」(中牧先生)
「第一志望の生徒には特に、学校行事などでも中心となって運営していける存在になってほしい」と先生方は願っています。
千葉県屈指のICT先進校の生徒たちは、女性としての磨きをかけながら、世界で活躍する力・視野をも身につけています。
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