学校特集
狭山ヶ丘高等学校付属中学校2017
掲載日:2017年7月1日(土)
1950年の開校以来、「豊かな人間性と確かな学力」を育む学校として、所沢・入間エリアを中心に高い支持を集める狭山ヶ丘高等学校が、付属中学を開校して今年で5年目。高校の教育方針でもある「自学自習の姿勢の確立」を引き継ぐとともに、その堅実な校風と高い信頼感から、中学受験生からも注目される進学校です。
語学研修や農作業などを通して本物に触れ、やる気が芽生え、自立心が育つ狭山ヶ丘ならではの取り組みは、現代のデジタルネイティブの子どもたちにも、刺激的な6年間になるはずです。
2015年には7階建ての新校舎も完成し、今後も期待が高まる同校の教育内容について、英語科の石井駿先生と理科の新田文子先生にお話を伺いました。
日々の授業や現地での体験を通して
コミュニケーションツールとしての英語に触れる
狭山ヶ丘高等学校付属中学校では日頃から全教科で"丁寧"かつ"レベルの高い"授業が展開されていますが、なかでも力を入れているのが英語教育です。大量に文章を読む多読やスピーチコンテストを積極的に取り入れ、生徒のアウトプットする力を授業で養います。実際、数学・国語を含む3教科で行われる「学力推移調査」や模試でも英語は高い成績を残しています。
授業時間の多さに加え、ゼミは各学年で週2回実施。さらに英検対策講座を開講していることもあり、「本校には英語に興味を持つ生徒が多い」と英語科の石井駿先生も手応えを感じています。
狭山ヶ丘高等学校の卒業生でもある石井先生は、当時学んでいた訳読を中心とする従来型の英語教育に疑問を抱き、大学、大学院へ進学。そこで得たことを母校に伝えるべく先生として戻ってきました。
ところが、母校に戻ると当時とは英語教育が一変。すでに若い先生を中心に、音声を重視した英語教育が取り入れられていたのです。
石井先生は「中学の早い段階から聞こえた音を口に出すシャドーイングや音読などを実践すれば、高校の英語教育へとスムーズに移行できる」と話します。これは石井先生が母校でやりたかった英語教育の考えに通じるものでした。
同校でこれだけ積極的に英語教育が行われている理由のひとつに、英語の教員が全員で受ける「授業研修」があります。年に複数回行い、様々な先生の授業を観てレポートを書き、担当者にフィードバックする。そうすることで精度の高い授業が行われ、生徒は英語に興味を持つという好循環が生まれているのです。生徒が自主的に勉強をするのと同様、先生もまた自主的に授業の改革を進めているのです。
定員オーバーや2年連続の参加者も!
生徒に大人気の「語学研修」
同校では毎年3月から4月にかけて、カナダでの「語学研修」を実施しています。中1と中2の希望制で定員は40名ですが、授業で学んだ英語力を研修で活かしたいと応募する生徒が多く、現在は参加者を抽選で決めています。このことからも、生徒たちの英語に対する関心の高さが伺えます。
研修に参加する生徒の多くは、渡航までに英検3級の合格を掲げ、当面の目標として頑張ります。その結果、中学3年生で英検2級の合格者が2名出るなど、「語学研修」が生徒のやる気を引き出すきっかけにもなっています。
「語学研修」はカナダに3週間滞在。1家庭に2名ずつのホームステイ型式で行われます。平日はホームステイ先の家族による送迎で現地校の授業を受けます。カナダの授業は体験型のアクティブラーニングが主体で、クラスは英検の取得級ごとに生徒に合わせた学力で編成されています。
研修期間中は「バディ」が生徒たちをサポートしますが、この存在も生徒たちの英語力向上に欠かせないものとなっています。普段の会話はもちろんですが、彼らに対する感謝の気持ちを英語で伝えたい、その想いが、現地での自主的な学習にもつながっているのです。「別れのときに『すごく寂しい』と涙を流していた生徒の姿が印象的でした」と語るのは生徒たちに帯同した新田文子先生。現地での親密さがうかがえます。
「平日は学校での授業が主体となりますが、土日はホームステイ先の家族と一緒に過ごします。幼い子どもがいる家庭では子守りの手伝いをした生徒もいました。大人のネイティブに対しては緊張するようですが、バディのような同世代や年下の子供たちが相手であれば、臆することなく、積極的に英語で話しかけることができるようです」と新田先生。
石井先生も「カナダでもバンクーバーのような都会であれば、日中は家に人がいない場合が多く、いたとしてもご年配の方が一人きり、中には自身がベビーシッターをやっていて、多忙な家庭もあります。しかし、本校がホームステイ先として選んでいる郊外では、人との触れ合いも多く、現地の生活をリアルに体験することができます。帰国後、ある生徒から"英語は学問ではなく、コミュニケーションツールであることがわかった"と聞いたとき、このプログラムの有用性を実感しました。実際、中1でこの研修を体験した生徒の多くが、中2での参加を熱望しています」と、語学研修を受けたことによる生徒たちの変化に確かな手応えを感じています。現地での様々な出会いが自立心を育み、さらなる英語力の強化へとつながっていくのです。
また同校では、昨年度から新しい教育課程の変更に向け「新教育課程研究推進部」という部署が設立されました。石井先生もここに所属。今後は6ヵ年の計画を立て、中高一貫の利点を活かしたさまざまな取り組みがスタートします。「英語の授業では今まで以上にアクティブラーニングを取り入れたいと思っています。例えばペアワークで一方が日本語を英語に直す作業をしながら、もう一方がヒントを出す。すると、ここは複数形だから"s"をつけなきゃと、ヒントを出す方も頭を使います。授業で"学び合い"の機会を増やすことで、生徒たちの相互理解を促したい」と、今後の抱負を話してくれました。教員たちのこれまでの経験を活かした「新たなスタイル」の授業がはじまることで、生徒たちのさらなる英語力のアップが期待できます。
身体を動かして汗をかく
1区画のなかで収穫を目指す「農作業」
狭山ヶ丘高等学校付属中学校の"学び"は机上のものだけではありません。積極的に外へ出て、身体を動かし、汗をかく。同校のプログラムにはPCやタブレットのバーチャルだけでは体験できない"本物"に触れる機会が豊富に用意されています。中学開校以来実践している「農作業」は、「汗を流して働くことの大切さを学んでほしい」と願う小川義男校長の発案。労働の意義と責任感を学ぶと共に、生命の尊さと収穫する喜びを知ることができる企画となっています。
農作業は週1回2単位続きの授業で行われます。場所は学校からバスで10分ほど移動した所にある広大な敷地。中1では苗の植え方から始まり、間引きや収穫などの基本作業を学びます。
中2からは一人に1区画(2m×2m)の専用の畑が与えられます。事前に綿密な計画を立て、1年間自分の畑と向き合います。そこで成功と失敗を繰り返し、食べ物に対する感謝の気持ちと責任感を育むのです。
「実際に植えてみると、隣の区画との距離が近くて、互いの栄養を取り合うなどの失敗もあります。しかし自分だけの専用区画で育った野菜を自ら収穫する喜びは格別」と新田先生は「成功と失敗」を学ぶ絶好の機会だと言います。また「最初は畑にいる虫に驚いていた生徒も、毎週畑に通うことで、すぐに慣れました。生徒たちの適応力にいつも驚かされています」と、新田先生は生徒たちの変化に目を細めます。
ちなみに収穫した野菜は各家庭で持ち帰り、家族とともに美味しくいただいているそうです。「農作業」は食を考える"食育"としても、大きく成果を上げているようです。
みんなで山頂を目指す「軽登山」で
心身ともに鍛えて人間力を向上
他にも狭山ヶ丘高等学校付属中学校では様々なフィールドワークが行われていますが、中でも年に2回実施(昨年までは3回)されている「軽登山」は、同校ならではのオリジナルプログラムです。「農作業」がそれぞれの与えられた区画の中で取り組む"個"のプログラムとすれば、「軽登山」は"団"の取り組み。生徒全員が一丸となり、奥武蔵や秩父、奥多摩の山々の登頂を目指します。「道中でつらそうにしている仲間がいれば、生徒たちは自発的に声をかけ、手を差し伸べます。心と身体を鍛えることが『軽登山』の本来の目的ですが、全員が一致団結して山を制覇する"達成感"は、学校生活を送るうえでも欠かすことができない『チームワーク』と『人間力』を育みます」と新田先生は机上では得ることができない"フィールドワーク"における心理的な効果を説明します。
昨年の8月には、富山県の「立山」を登る宿泊型の軽登山(中2)も実施されました。 この時の登頂を目指す山の高さは3015m。初日は「一の越」という最初の山小屋で宿泊し、翌日の早朝に登頂を開始します。その日の天候はあいにくの曇りでしたが、一度だけ雲がなくなり晴れた瞬間があったそうです。「その一瞬の景色の素晴らしさは今でも忘れることができません。苦難の先にある"喜び"が分かち合えることも『軽登山』の醍醐味です」と新田先生。「集団の中で、周囲の状況を見極め、自分の役割を理解し、秩序を乱さずに行動することは、その後の円滑な学校生活にもつながる」と生徒たちの「社会性」の向上にも期待を寄せます。
また、今回の「立山」登山では、その標高の高さから体調面に心配のある生徒は「一の越」の周りを散策する別ルートでの行動となりました。各生徒の体力や体調を把握し、無理がないように配慮するのも同校の方針です。保護者にとっても心強い限りと言えるでしょう。
人前で発表することで表現力を高め、
AI時代をたくましく生き抜く人間力をつける
6年間で多くの「実体験」の場が用意されている同校ですが、そこで得たこと、感じたことは必ず書いて、発表させます。帰りのホームルームで毎日行う「1分間スピーチ」は、その日の日直が担当します。「入学当初は一定のテーマを決めていましたが、現在は一番気になるニュースについて話してもらいます。単にニュースの内容を話すのではなく、なぜそのニュースが気になったのか、それに対してどう思ったのかを1分間でまとめます。何度か経験を重ねることで自分の考えを要約する力がつき、ほとんどの生徒が1分ジャストで話せるようになります」と新田先生。
また新田先生が教える理科でも、日頃から多くの発表の機会を設けています。中3で行う研究発表では「周波数の違う音を植物に聞かせるとどのような影響を受けるのか」、「なぜアリには働きアリと働かないアリが存在するのか」など、一人ひとりがテーマを決め、1年間にわたって研究します。発表までに実験を何度も重ね、予想通りにいかなければ、なぜそうなったのかを考察、そしてまた実験を繰り返します。最後に得られた成果をレポートにまとめ、パワーポイントを使って発表します。「プレゼンテーション能力を養うためには、日々の積み重ねが欠かせません。どうすれば自分の考えをまとめることができるのか、どうすれば相手に伝わるように表現できるのか。本校にある様々な"プレゼン"の機会の中で、これからのグローバル社会に必要な発信力を育んでいきたいと考えています」と、新田先生もまた自身の指導について、日々の改善を重ねています。
人工知能(AI)が社会で実用化される中、10年後には存在自体がなくなる仕事があると言われています。日々変わりゆく社会で活躍するために必要なことは、コミュニケーションがとれること、表現力があること、そして人の心がわかること。同校の先生たちはそれを十分に理解しています。
座学だけでは得ることができない感動や喜び。同校の6年間で是非"本物"に触れてみてください。
各駅より無料スクールバスを運行しています。19時(高校生は21時)まで自習室を活用しても、駅まで安全に送り届けます。
■川越駅(JR埼京線・東武東上線)西口より約40分
■入曽駅(西武新宿線)東口より約15分
■箱根ヶ崎(JR八高線)駅西口 送迎バス乗り場4番より約20分
■狭山市(西武新宿線)駅東口より約25分
★朝ゼミ用スクールバスも出ています。座れます。
★武蔵藤沢駅より徒歩13分です。駅から学校までの通学路は平坦なので、徒歩通学も可能です。