学校特集
西武学園文理中学・高等学校2017
掲載日:2017年6月30日(金)
高校は1981年、中学は93年の開校以来、「レディー&ジェントルマン中高一貫エリート教育」を標榜し、高い知性や教養、豊かで誠実な人間力を身につけ、社会に貢献する人材を育成してきた西武学園文理中学校・高等学校。
「グローバルな視野と21世紀型スキルを培う」というスローガンを教育の柱とし、その教育実践に注目が集まっています。
ここでは文理の魅力を探るとともに、2018年度より開設する「グローバルコース」について、さらに同校がめざすこれからの教育についてご紹介します。
多彩な個性の融合
生徒は4割程度。スクールバス便が充実しています。
煉瓦造りの瀟洒な校舎から、生徒たちの爽やかな挨拶が聞こえてきます。運動施設も充実しており、なんとグラウンドが8面、体育館は3棟を完備する申し分のない環境。最新のコンピュータも導入され、ハード・ソフトの両面で生徒たちの日々の学習を支えています。今年度入学した中1からは全員がタブレットを持っています。
これら豊かな環境も西武文理の伸びやかな校風を支える要素ですが、同校の魅力の一つにその温かな雰囲気があります。
その温かみが現れているのは、「学校は安心できる場所」という生徒たちの共通認識。この意識はどこから来るのでしょうか。入試広報主任の加藤潤先生はこのように教えてくれました。
「学園創立以来、本校には様々なバックグラウンドをもった生徒が集まっています。そのため、多様性を受け入れ、個性を認め合う土壌や優しさがあるのでしょう」
今でこそ、ダイバーシティーといった言葉が世の中に溢れていますが、文理では約40年前の学園創立時からこれらの気風が涵養されています。
「本校の生徒たちは一様に染まらない多彩な個性をもっています。逆に言えば、これまでの日本で行われていたような画一的な教育の枠に収まらないような生徒もいて、他の生徒たちもそれを許容していく風土があったのではないでしょうか」(加藤先生)
様々な個性が時にはぶつかり合ったりしながら、その中で次第に互いの価値観を認め合う6年間。もちろん、行事などでまとまるべきところはしっかりと協力する信頼関係も築かれています。だからこそ安心して過ごせる場所として、学校が機能していることに気づいている生徒が多いのでしょう。
協働して最適解を探る
する機会が豊富に設けられています。
西武文理が考える"グローバル"とは、どんなものなのでしょうか。
加藤先生は「どちらかというと他者を引っ張っていくリーダータイプよりも、最終的には一緒に課題を解決していけるような生徒の育成を目指しています」と言います。
「得た知識をフル活用して常に問いかけながら、思考力を深め、探究していくためには、基礎的な知識や学力を定着させることも大切です。私はこれらを『習得型』と言っていますが、それを踏まえた上で『探究型』の学習へ進み協働できる力を養います。『習得型』と『探究型』の両輪を回していくことで合意形成を図っていき最適解を導き出すことができます。その際に不可欠なのは仲間の存在です」(加藤先生)
文理で展開されている数々の取り組み。これからのグローバル社会で活躍できる力はどうつけられるのでしょうか。具体的な実践例を見ていきましょう。
社会科の教諭でもある加藤先生は、「今、日本という国が何の課題にどう立ち向かっているのか、自分ならどう取り組めるか、ということに興味を示す生徒が多いことは本校らしい特徴の一つです」と言います。
この感性はどうやって伸ばせるのでしょうか。同校で定着しているPBL型の授業に一つの答えがあります。加藤先生は「場を設定すれば生徒たちは反応します。今後はそれをさらに広げて深めていきたいと考えています」と教えてくれました。
「CA活動」。写真は「アコースティックギター」。
例えば中学総合学習の「CA(Creative Activity=創造的活動)」は、中学3学年の枠を取り払った自主的活動の時間です。「生物・科学」などの学術的なものから、「ハンドベル」や「いけばな」といった芸術性や日本文化に触れられるものなど23講座を用意。
また、高1の総合学習では外部企業の方に協力いただき、課題解決型のグループ学習を全員に行います。一部の生徒たちは高1の総合学習での学びをさらに深めるために高2に進級後、学外のプログラムに時間を作って自主的に参加しました。
学びながら各地の風土や特色を知ることができます。
「外部の風を受けてきて、持ち帰ってきた生徒たち同士で活発な意見交換が始まります。本校にはこうした様々な刺激や仕掛けが豊富に用意されており、いい意味での化学反応が起こることで、それぞれの内面も大きく成長を遂げています」と生徒たちから湧き上がった行動に加藤先生は目を細めます。
そこで育つのは、信頼感を伴った個性を認め合う懐の深さと豊かな人間性、そして探究することで生じる自己肯定の心です。これらの活動は、文理ののびのびとした学校生活を支えるほんの一端です。
"英語の文理"の名の下に
1クラスを2分割し、約16人程度で行われています。
開校以来、目標に合わせたコースを敷くことで、生徒たちの志望進路を目指してきた西武文理。高校では英語科を設置し、「英語の文理」として定評のある英語教育を実践してきました。
その文理英語のノウハウを進化させて英語教育に特化したのが、2018年に設立される「グローバルコース」です。現在の中1には「中高一貫進学クラス」と「特別選抜クラス」の4クラス127名が在籍していますが、中2以降は3コースとなり、中1の11月に選択を行います。
先生方が協議を重ねた結果、この「グローバルコース」の選抜基準は、
1) 英語の学習を毎日(50分以上)続ける意欲があること
2) 中3終了時に英検準2級以上の合格を目指すこと
という、生徒のやる気を重視した、希望制となりました。
高い意欲をもった生徒をより引き上げる、文理の「グローバルコース」。具体的にどんな教育を行うのか見ていきましょう。
包括的な英語教育を実践
このコースの設立の目的は以下の3つです。
1)英語力の増強
2)進路希望の実現
3)グローバル人材の育成
グローバル主任の浜田真先生は、「中2からの5年間で特別授業や様々な研修によりグローバルにものごとを考える意識を育成し、大学進学時や卒業後により広い社会に飛び込める人材を育てていきたいと考えています」と話します。
自分自身が大きく成長する実感のある時間です。
「グローバルコース」が他のクラスと大きく異なることの1つは、従来の英語の授業時間数に1コマプラスされること。その時間にはオンライン英会話が行われ、年間約20回に渡って1回30分間、セブ島の先生とマンツーマンで会話します。
今年度は、このオンライン英会話に中学生(1〜3年生)の希望者188名が取り組んでいます。初級から上級まで3つのレベルを用意していますが、中3が多いクラスに中1が入ったり、なかには初歩からやり直したいと、中3でも初級を選択して頑張っている生徒もいます。このような取り組みが大きな刺激となっているようです。
「セブ島先生方のリードにより、生徒たちは楽しく会話しています。年間10回以上、30分間を1対1でアウトプットする経験は、数年分の英会話の授業に匹敵するのではないでしょうか。英語教師もフォローに入るので、まったく話せないまま時間が過ぎてしまう生徒はいません。終了後の感想を聞いていると、多くの生徒が、自分の言ったことが通じて達成感を得ているようです」(浜田先生)
医学部医学科に進学する生徒を毎年輩出しています。
オンライン英会話の授業はまず、その日の学習内容についての解説を受けてから臨みます。30分間を会話に充て、終わりの15分間で復習を行います。こうした事前準備、事後学習をきちんと行い、定着させていく姿勢は文理の一貫した伝統です。
浜田先生は「怒涛のような1時間で、生徒たちは充実感を伴う疲労感を味わっているようです」と笑顔で言います。
楽しさや自信、達成感は生徒をより高みへと引き上げます。
その他の主な取り組みは
やるべきことはきちんとやります。
「グローバルコース」の英語の授業では、検定教科書の『NEW HORIZON』で基礎を完璧にしたのち、検定外教科書の『Birdland』を使用し復習・応用として補完します。3:7程度の比率で使用される予定で、一貫コースではその逆の比率なので、いかに難度の高い学習が行われるかがおわかりいただけるでしょう。
そこで大切になってくるのが、家庭学習の徹底や朝のHR時に実施されるS限テスト(小テスト)、それに加えきめ細かなフォローと共に行われる放課後補習、課外ゼミなど。同校のモチベーションを高める教育は、これまで培われてきたノウハウ蓄積の賜物といえるでしょう。
さらに、タブレットを使った洋書多読や、自宅で毎日取り組む「基礎英語」、ネイティブスピーカーによる英文添削や英検・TOEFL・TOEIC・IELTS・G-TEC・TEAPといった資格試験の対策・受験なども積極的に行われる予定です。
実のある海外語学研修
「グローバルコース」では中2の夏に、セブ島で3週間の夏季語学研修を行います。
浜田先生が自信を見せるように、この研修は語学力をつけるだけでなく、現地の方々との触れ合いも予定しており、国際的な感覚を養う絶好の機会です。
セブの語学学校では、毎日6時間のマンツーマン授業と2時間のグループレッスン、さらに2時間ほどは教師がついて課題に取り組む、1日10時間におよぶ英語漬けの生活を送ります。
出発前にはしっかりと事前学習を行います。ネイティブスピーカーの先生による海外留学の際の具体的なアドバイスやセブ島出身の先生による島の実態についての講話を聞いたり、社会科の先生にフィリピンの歴史や地理などについても学びます。また、全員がオンラインでフリートーク(30分×3回)を体験します。
「グローバルな視点を育てるためには、世界の国々の良い面だけでなく厳しい現実にも目を向けなくてはなりません。週末には現地の孤児院を訪ねたり、ショッピングに出かけたり、生のフィリピンを感じる機会を設けています」(浜田先生)
なお、中2でグローバルコースを選択した場合、基本的にはそのまま進学する予定です。途中で志望が変わる場合のコース変更については現在検討中です。
西武学園文理の先生方は、このグローバルコースの設立によって、他コースの生徒たちや学校全体に英語だけにとどまらない良い影響が現れると楽しみにしています。
中3の研修旅行は例年イタリアでしたが、情勢により2016・17年はオーストラリアで実施。自分の英語力を試すいいチャンスとなりました。
絆を深める宿泊行事も充実しています。写真は中1の「スキー教室」。中2では「奈良・京都研修旅行」が行われ、日本文化を再確認します。
学びはもっと楽しい!
ノーベル賞受賞者の講演会など刺激がたくさん。
ここまで見てきたように、様々な角度からの知見を広げられるのが文理教育の醍醐味です。
先生方が胸を張るのは、教員も個性豊かな人財が揃っているということ。スペシャリストの先生方の自発的活動により、教科の枠にとらわれない授業が活発に行われています。
例えば英語の授業の中に歴史の要素が入ってくると、英語と歴史の教員が一緒に授業を展開。バイオ系の英文が出てくれば、生物の先生によって背景や状況が示されます。その上で問題に取り組むと非常に読みやすくなるだけでなく、理解も圧倒的に進むでしょう。
加藤先生が実際に行ったのは、例えば英語での大学入試問題演習です。
「新渡戸稲造の知識を持っていれば半分くらいは解けてしまうような問題でした。新渡戸がどんな人物だったのか、海外で取り上げられている功績などについて解説しました。学問というのは本来、教科の枠で区切られるわけでなく、融合し合っているということを生徒たちには理解してほしいですね」
生徒たちはたくましく育っています。
中1の国語で、江戸時代の文化を紹介する文章が出てきた時にも加藤先生は大活躍でした。
「江戸時代と現代の文化比較をしました。彼らから見ると驚くべきことばかりかもしれませんが、同じ日本人でありながら価値観の移り変わりについて考える契機になったのではないでしょうか。今は常識とされていることも、もしかしたら数年後には非常識になるかもしれません。常に"問い"かけし続けていく姿勢を身につけてほしいですね」(加藤先生)
単に知識を学ぶのではなく、自分の生活に引き当てて考えたり、クリティカルシンキングの力を磨く日々。西武文理での毎日は、確かな思考力と豊かな表現力、自由な発想力と行動力を伴う姿勢を養い、生徒たち一人ひとりが将来活躍するためのベースを確実にするものなのです。
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