学校特集
東京電機大学中学校・高等学校2017
掲載日:2017年6月20日(火)
人気路線JR中央線の東小金井駅から徒歩5分という至便な場所に位置する東京電機大学中学校・高等学校。武蔵野の自然、閑静な住宅街に囲まれ落ち着いた好環境の中、生徒たちはのびのびと学校生活を送っています。同校の校訓は「人間らしく生きる」。「経験知」を大事にしながら10年後、20年後の社会で本当に役に立つ知識や能力を育てている同校の教育について、入試・広報担当の影山大先生に話を伺いました。
学年横断で共同研究を行う「TDU 4D-Lab」
同校では「豊かな心・創造力と知性・健やかな身体」をそなえた人を育てることを教育目標に掲げています。自らの夢の実現に向かって努力し、個性を伸ばし豊かな人間性と高い知性と強靭な体をそなえて新しい時代を生き抜ける生徒を育てることを目指しています。
そのために時代に合わせて次々と授業改革を断行してきました。中でも特筆すべきは昨年度からスタートした「TDU 4D-Lab(ラボ)」。
開校以来、中3で行っていた卒業研究を発展させ、中2から高2までの4学年が学年横断で研究を行う"課題探求型学習"です。この「TDU 4D-Lab」について、影山先生は次のように話します。
「4D-Labは1テーマにつき各学年の生徒4~5人、4学年合わせて20人程度が所属し、それぞれに指導教員(ファシリテーター)がつきます。ちょうど、大学のゼミのようなイメージです。
研究分野は次の6つで、それぞれにさまざまなテーマが設定されています。
① 社会・国際学(テーマ例:「おもてなし」「あるある解決!アイデア商品の開発」)
② 人文・文化学(テーマ例:「土地の高低差から歴史を見る」「こころを考える」)
③ 生命・環境学(テーマ例:「ビオトープをつくろう!」「麹菌のはたらき」
④ 理工学(テーマ例:「災害レンジャー電大支部」「ニセ科学にだまされるな」)
⑤ 情報学(テーマ例:「TDU広報室」「ITマナー向上委員会」)
⑥ 体育・芸術学(テーマ例:「TDU体育祭企画案」「TDU武蔵野祭企画室」)
生徒はこうしたテーマの中から第3希望までを選び、志望理由書をつけて提出。希望者が多いラボは人数調整を経て所属Labが決まります。基本的に中2で選んだテーマを4年間続けて研究することになりますが、中3から高1に進学する時点で「違うテーマに変更したい」と希望する生徒は変更届を出すことができます。
万葉集の研究、プログラミング、ビオトープ作りなどアカデミックなテーマもあれば、学校行事の検討、新しいスポーツを考えるといった身近なテーマもあり、現在設定されているテーマは40以上にのぼります。
活動は月1回が基本ですが、週末や長期休暇などを利用してフィールドワークを行うLabもあります。「ラーメンについて」をテーマに据えた通称"ラーメンLab"では2つの班に分かれ、1班は都内の有名ラーメン店の食べ歩きをして意見をまとめる活動を行っています。もう1班は学食のラーメンのトッピングを研究しており、「うまい棒」や駄菓子を砕いて乗せたらおいしいのでは、といった提案を出しています」
個人単位の卒業研究だとうまく課題設定ができない生徒もいましたが、Lab形式にすることで、"アイデアを出せる" "みなの意見をまとめられる" "発表が得意"など、一人ひとりの個性や資質を活かすことができ、集団で1つのものを作り上げる体験にもつながります。問題設定を含めて全て生徒だけで進め、教員はファシリテーターとして必要に応じてアドバイスをすることに留めているので、生徒の自主性、探求力などを育むこともできます。
「これは大学入試のための勉強ではなく、10年後、20年後を見据えたプログラムです。近い将来AIが普及して既存の職業がなくなったときも、自分が本当にやりたいこと、世の中に役に立てることを自分の力で選んで進んでいけるような力をつけるのが目標です」(影山先生)
中1は「基礎Lab」で調べ学習や話し合いの作法を学ぶ
4D-Labの前段階として、中1では「基礎Lab」を実施しています。林間学校で富士山の3~5合目を登るので、富士山に関する事柄を調べることで調べ学習のやり方、話し合いのやり方、まとめ方などを学びます。こうして1年をかけて土台を作ることで、中2からのLab活動をスムーズに始めることができます。
また、同校では高校から入学する生徒もいます。高入生は4D-Labには2年間しか参加できませんが、Labを通じて上下の学年と知り合えるだけでなく、中学からの一貫生との交流も増えて壁がなくなる点もメリットです。
「異学年との共同作業だからこそ生まれるパワーも見逃せません。"多言語社会における英語"というLabで浅草に行き、外国人観光客に話しかける活動を行った時のことです。まだあまり英語を話せない中学生たちが物おじせずにどんどん外国人に話しかけ、単語が分からなくても身振り手振りで会話をしていました。ところが高校生は"どう話せば通じるか"などと考えすぎてしまってなかなか行動に移せません。でも、"中学生があれだけ話しかけているんだから、自分たちも負けていられない"と前に出ていくことができたということです」(影山先生)
1人ではできないことでも、グループ活動なら勇気をもって一歩を踏み出すことができます。また上級生が下級生に研究結果を引き継いだリ、研究手法を指導するなど、上級生がLabリーダーとしての役割を担い、新たな能力を身に着け、発揮する場としても役立っているのです。
研究成果は9月の文化祭で発表するほか、中3が各Labの代表として発表を行います。まず全部のLabが発表を行い、その中で選抜された発表は外部の先生や東京電機大の教授の前で発表し、優秀Lab2組が選ばれ表彰されます。その2組は中学の卒業式後に発表を行います。
体験重視の理科では実験道具も自分で作る
同校の理科は実際に作ったり実験したりと、自分で手を動かし体験することを重視しています。実際、学校説明会や7月のオープンスクールでも、「手を動かす理科の授業に魅力を感じる」という保護者や受験生の声が多く聞かれます。
象徴的なのは、理科の実験では実験キットなどは使わず、実験道具を自分たちで作ることでしょう。たとえば中2の電気に関する実験では、電池、電池ボックス、電球をつなぐミノムシクリップと電線をはんだごてで手作りし、そこから電球をつなぎます。そして次はプリズムを研磨して透明にして、電球の光をあてて光の性質を調べる実験を行います。そうやって実験道具が増えてきて、次の実験につながっていくのです。
単純に暗記ではなく「経験知」を大事にした授業は、2020年からの新しい大学入試にも通用する力を育みます。これからの大学入試は知識だけではなく、知識と経験をつないで表現する力が問われるので、同校のふだんの授業の積み重ねがこれからの時代を生きる力につながっていくのです。
めんどうみのよい学習体制で学力が定着
早くからとり入れてきたアクティブラーニングや電子黒板などのICT活用も浸透し、共同作業の時間も増やしています。たとえば影山先生が担当する国語では、自分の意見を1人ずつ書かせ、PDF化して電子黒板で全員分を見せて話し合うことも。挙手して発言するのが苦手でも、こうした手法を使えば自分の意見を発表することに慣れていきます。
4D-Labで異学年交流や意見交換の機会が増えることもあり、中3の最後にはおとなしい生徒たちもディベートで堂々と意見を言えるまでに成長します。
一方で、確かな学力を身に着けるために反復練習など基礎学力の定着にも力を入れています。中学では英語・数学は毎日1時間程度の課題が出され、小テストも頻繁に行われます。 各科目ごとに確認テストも実施し、合格点に達していなければ補習や再テストが行われます。
補習も行なっていますが、補習をすることが目的ではなく、小テストなどもなるべくその日のうちに返却してすぐに振り返りができる体制を作っています。「目の前のイヤなこと(テスト勉強)と、イヤなことを先送りした結果(再試験や補習)を比べさせ、ちょっと面倒でも今がんばっておけば結果として得をする、と話して聞かせます。強制ではなく自分で気づいて能動的に動けるようにするのが目標です」(影山先生)
基礎・応用クラス、指定校推薦...幅広い選択肢を提示
東京電機大学の系列校ということもあり、説明会などで「文系志望ですが、大丈夫ですか?」と聞かれることもありますが、東京電機大学への内部推薦制度を利用すして進学する生徒は10%程度。男子は7割、女子は半分が理系に進みます。
確かに他校に比べると理系志望者が多いのですが、それゆえに文系希望者がメリットを享受できる部分もあります。同校では中央大、明治大などMARCHレベルの大学の文系学科への指定校推薦枠も複数持っています。ところが文系志望者は少ないためこうした難関大学の指定校推薦の競争率が低く、比較的推薦を取りやすくなっています。
中3・高1では応用力養成クラスと基礎力充実クラスに分かれ、高2からは文理に分かれてそれぞれ「応用」「基礎」のクラス分けとなります。基礎クラスと応用クラスは毎年入れ替えがありますが、応用クラスは国公立大や難関私立大を目指します。また、指定校推薦は希望できません。
基礎クラスでは上位私立大を目指すだけでなく、薬学系や医療技術・看護系、芸術系、体育系などさまざまな進路を考える生徒たちで構成されています。
いろいろな選択肢を示し、自分たちで的確な判断ができるように、そして高3になって後悔しないように材料を提示しているのです。
2教科自由選択の入試で強みをもつ生徒が増加
昨年度入試で大きく内容を変更した同校。4回目(2月4日)は午前入試から午後入試に変え、さらに4教科入試から選択式2教科へと大きな方向転換を図りました。自分の得意な教科を2つ選んで受験するという珍しいシステムです。
その結果、思いがけない効果もありました。これまでは男子受験生が多かったのですが、昨年度は「理数系が好きだけどなかなか得点できない」という女子の挑戦が増えたのです。午後入試にしたこともあり、難関校の午前入試を終えた後に同校を受験しに来るなど、今までと違う受験者層が来てくれました。
4回目入試は70分の枠の中で、好きな2教科を選んで受験するもので、時間配分も自分で自由に決められます。「2教科の組み合わせでいちばん多かったのは、"算数・国語"と、意外にも"算数・社会"。80名ほどの受験者のうち約1/4が"算数・社会"を選びました」(影山先生)。
この「自由選択制」を導入した理由を影山先生は「得意科目や強みがある子はのびしろが大きいから」と話します。「以前、算数は満点、国語は平均点以下という生徒が入学後に大きく力を伸ばし、東工大に合格したことがありました。小学生時代に苦手な科目があっても中学で大きく力を伸ばすことがあるし、得意科目がある子は強いです。ですから4回目入試は得意分野をもっている受験生にぜひ受験してほしいです」
庶民派自分のペースで希望の進路に進める
同校の前身の電機学校の時代から電気・電子分野には定評があり、以前は電気に関する専門的知識や電機大進学を希望する生徒がたくさんいました。
でも今は「理数系に強い」「大学系列」「駅から近い」「のんびりした雰囲気」「進学に力を入れている」といった同校の校風や立地に魅力を感じて志望する受験生が増えました。
ゆったりした雰囲気は、いわば「庶民派私学」。にも関わらず学習面でも生活面でもしっかりめんどうを見てくれるのが同校の魅力です。
マイペースで勉強、部活、人間関係など学校生活を全方向で楽しみたいという受験生にはおすすめの学校です。学校説明会や文化祭に足を運び、ぜひ学校の雰囲気や魅力を感じ取ってください。
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