学校特集
三田国際学園中学校・高等学校2017
掲載日:2017年6月9日(金)
三田国際学園は、今春中高ともに3期生が入学し、中高6学年がすべて共学となりました。生徒増にともない、先生も増員され、現在90名のうち18名がネイティブ教員となっています。三田国際学園が"MITA International School"と標榜するのには理由があります。この18名のInternational Teachers(インターナショナル教員)が日本人教員と変わらない立場で教科や学年を担当し、時にはインターナショナル指導部の一員として、行事やインターナショナルクラス、さらには高校のインターナショナルコースの充実に向け、日々奔走しているからです。インターナショナルクラスでは、副担任として朝礼、終礼を行います。1期生を中1から担当している城野大輔先生(国語科)は、「中1,中2では必要に応じて担任が手助けをしてきましたが、中3ではすでにその必要がなくなってきている」と話します。学習指導をお願いすれば、International Teachersも進んで指導してくれるため、インターナショナルクラスでスタンダード(初級)からスタートした生徒のうち3名が、翌年までにインターミディエイト(中級)に上がり、この春からはアドバンスト(上級)で海外育ちの生徒と一緒に授業を受けているそうです。
生徒一人ひとりに目をかけて、意欲を力に変えていく校風は、創立当初から変わりません。そこにインターナショナルという新しい風が加わり、これまで以上に主体性、多様性に富んだ学校に進化している三田国際学園。
「1期生の成長が2期生にもいい影響を及ぼし、自分たちが学校を創るという意識が根づき始めている」と話す城野先生とインターナショナルクラス担任である長野里香先生(英語科)、そしてインターナショナル指導部副部長のDavid Brunner先生に、三田国際学園の今について伺いました。
2015年に日本の私立学校とインターナショナルスクールの長所をかけ合わせた男女共学の学校としてスタートした。中学校には本科クラスとインターナショナルクラスを設けている。入試時に英語力を問わないため、インターナショナルクラスには小学校時代を海外やインターナショナルスクールで過ごした生徒と英語をイチから始める生徒が混在し、主体性と多様性に満ちた校風を醸成している。
【アクセス】東急田園都市線「用賀駅」より徒歩7分
【教育理念】知好楽「人生に於けるすべてのことは知ることからはじめ、それを好きになり、最後に楽しむ境地に至ったときこそ、初めて自分のものになり、豊かなものになる」という孔子の教え。
三田国際学園に新風を吹き込むInternational Teachersとは?
Brunner先生:International Teachersは、インターナショナル指導部に所属し、英語教育はもちろん、インターナショナルクラスや高校のインターナショナルコースのカリキュラム、英語に関する行事の充実に取り組んでいます。一般的に外国人教員は非常勤が多く、英会話のみを教えている場合が多いと思いますが、三田国際学園では日本人教員と同じポジションに立ち、生徒の成長に深く関わっています。私は英語だけでなく、アドバンストの生徒に社会科(今年度は中3公民分野を担当)も教えています。ほかにも、理科、数学の授業を受け持つ教員もいます。私は大学院でアクティブ・ラーニングを学んだため、授業ではその手法を活かし、実際に起きていることを通して社会の仕組みを学ぶことに取り組んでいます。
行われているイマージョン授業
例えば、iPadの部品となるミネラル(鉱石)を巡り、アフリカでは現在紛争が起きやすい状況にあります。私たちは直接関わってはいませんが、一方でiPadを買うことにより"武装軍の手助けをしているかもしれない"という見方もできるのです。そこで、「誰に責任があるのか」「それはどういう責任か」といった"トリガークエスチョン"を投げかけることによって、生徒たちに考えさせるのです。それは分析的、かつモラル的、かつ価値観的な質問でもあります。正解がないので、生徒にとっては難問です。
生徒はその資源がどこにあり、誰が管理し、どのようなルートで消費者の手に渡るのかを調べ、考え、発表することで世界経済の基本的な仕組みを理解することにもなります。こうした授業の積み重ねによりグローバルな視点や考える力が総合的についていくのではないかと考えています。英語の授業(ティームティーチング)では、日本人教員と「こういう問題点があるから、こういう授業をしていこう」とアイデアを出し合い、ゼロから一緒に作っています。
英語力が伸びる理由はInternational Teachersにあり?
長野先生:本校におけるInternational Teachersの存在は大きいと思います。インターナショナルクラスの副担任として、いつも生徒の身近にいますから、生徒のほうから先生に話しかけることも多く、自然とスピーキングとリスニングの力が伸びていきます。合わせて、中1から終礼時に行っている1分間スピーチや、英単語テスト(週1回)など、小さな学習を積み重ねることで、英語学習へのモチベーションを支えています。単語テストは学習習慣さえ身につけば点数が取れるようになります。50点中20点以下だった生徒が、合格点の40点以上をクリアし、50点を取り続けるようになると、一気にモチベーションが上がります。英語が"わかる"という実感を持てるからだと思います。たとえばより多くの単語や表現に触れることを目的とした多読の授業(週1時間)でさまざまなジャンルの英語の本を読むときでも、わかる単語がグンと増えます。ホームルームで先生や友だちが話していることも聞き取れるようになります。
「あっ、いまの、わかった!」という声を聞けたときが、私たち教員にとってもっともうれしい瞬間です。
からのスタートでも使える英語力がしっかり身に付きます。
城野先生:International Teachersは、インターナショナルクラス専属ではありません。英語の授業や、総合の時間、道徳の時間、あるいは行事やクラブ活動など、さまざまな場で本科クラスの生徒とも関わります。総合や道徳はクラスベースで行うときもあれば、学年で集まり、グループを作ることもあります。そういう時には、あえてインターナショナル教員が本科クラスの生徒を相手にファシリテートをするなど、シャッフルして学年の先生であることを認識させる工夫もしています。生徒の反応はよく、新鮮な気持ちで取り組めているようです。
本科クラスの核となるプログラムです。教員が専門分野を掲げて、各学年10〜15名の10講座を運営。生徒は興味関心がもてるゼミを選び、中2は週1回、中3は週2回、ゼミ形式の授業を行う中で、好きなことを好きなだけ学習していきます。社会とつながりながら学習を発展させることをめざしています。
本科クラスの基礎ゼミナールではどのような成長が見られますか?
城野先生:私はインターナショナルクラスの担任ですが、本科の基礎ゼミナールも担当しています。中2の4月からスタートし、「学ぶとはどういうことか」をアカデミックに考えることから始めて、各ゼミで工夫をしながら活動を進め、年度末に中間発表を行いました。それを見て、「先輩はすごいな」「自分はどのゼミに入ろう」と考え、楽しみに入ってきた中2の面倒を見ることで、中3は先輩としての自信を深めています。先輩の背中を追う中2と、自信をもって次に進もうとする中3という、良い構図ができているので、お互いに刺激し合いながら成長してくれれば、と期待しています。
中3は秋の学園祭が集大成を発表する場となります。中2での学びや活動を活かして、自分のテーマに取り組み、探究活動を行います。「ことばを科学する」という私のゼミでは、3人1組で1つのテーマに取り組み、補い合いながら探究活動を進めます。夏休みには大学生が参考文献に選ぶような論文を1本選んで読んでもらい、2学期に発表を行いました。そして、生徒共通の興味関心である「広告」「キャッチコピー」を中心に研究を行っている大学の先生をお招きし、みんなが知っているキャッチコピーはなぜ人々の心を引きつけるのか。その理由を言語学という1つの学問領域から分析し、考察するということはどういうことなのかをレクチャーしていただきました。その上で架空の商品(ペットボトルの飲料水)を用意していただき、商品の特徴、ターゲット、成分、商品コンセプトなどをもとに、キャッチコピーをつくり広告に仕上げました。男子、女子、2つのグループで行うと、色合いの違うものができておもしろかったです。また、広告づくりを通して、社会に貢献する姿勢や、言語学という学問が実社会にどのような形で活かされているのかを体験することができたのではないかと思います。もっとも大きな収穫は、3学期に行った中間発表です。ポスターセッションを中心に、一部、動画を見せながら口述での発表も行いました。アカデミックな視点を随所に交えて1年間の活動をしっかりと見せることができたという達成感も、自信につながっていると思います。
昨年に続き、今年も出願者数、実受験者数ともに前年を大きく上回った三田国際学園。平均実質倍率は12.7倍(2月1日午前は3.8倍)と非常に高倍率となりました。 今年度の入学者は186名。受験者数は本科クラスのほうが多かったですが、入学者数はインターナショナルクラスが上回り、結果的に本科2クラス、インターナショナル3クラスになりました。 同校を選んだご家庭の多くが、足繁く学校に通い、大橋学園長の話を聞いたり、生徒たちの活動に触れたりして、文化の醸成を実感した結果と言えるでしょう。大橋学園長は日頃から三田国際学園は「こういう教育をめざす」という明確なビジョンを掲げて、コントリビューション(貢献)の大切さを説くため、教員はもちろんのこと、生徒にもめざす学校像や志が浸透しています。それを物語る出来事が昨年度末に行われた生徒会選挙だったそうです。立候補していた1期生、2期生ともに「私たちはこの学園をこういう学校にしたい。一緒に創っていこう」と語りかけました。そこには学園の一員であることに対する誇りと、自分たちが学園を創っていくという意志の強さがありました。「こんなに一人ひとりを成長させてくれる学校はほかにない」と保護者からの声も聞かれる同校ですが、担任、副担任の先生は一人ひとりの生徒をよく見ています。だからこそ、生徒が主体的に取り組み、自由に発想することができるのです。
これからの三田国際学園に期待できることとは?
長野先生:インターナショナルクラスでは、スタンダードの生徒の力を引き上げるだけでなく、アドバンストの生徒の力もさらに伸ばしていくことが大切だと思っています。1つの方法として、アドバンストとスタンダードの生徒を一緒にし、生徒間で教え合う機会をつくりたいと考えています。教員が教えるよりも刺激が大きいと思いますし、アドバンストの生徒はさまざまなバックグラウンドをもっているので、グローバルコミュニケーションを体感できるからです。
城野先生:たしかに国語の授業でも、インターナショナルクラスは英語と日本語、両方のアイデアが出てきて議論が深まります。例えば主語を考えるときに、アドバンストの生徒が「英語だったらこうなんだけどな」と発信し、スタンダードの生徒がその発言を受けて、考えを発展させています。普段の活動の中でも、クラス目標や学園祭のテーマ等を考えるときに同じような光景が見られます。まず発信するのはアドバンストの生徒ですが、スタンダードの生徒が「その言葉、いいね」「どんな意味?」というようにそれを受け入れ、さらに掘り下げて、広げて、日本語の説明とリンクさせて、英語と日本語を理解したうえで決めていくということをしています。生徒同士のコラボレーションは、私たちの想像を超える刺激があり、今後ますますそういう場面が増えていくことが理想ですね。
Brunner先生:アクティブ・ラーニングのクオリティもさらに高まれば、"MITA International School"の価値がもっと上がると思います。私は、この学校がより先進的な学校になるためのエンジンになりたいと思っています。
2018年度より高校募集は国際生入試のみとなり、より中高一貫校を意識した、高校コースが設定されます。 新コースは下記の4コースです。国内の大学はもちろん、海外の大学や医学系の大学を志望する生徒にも十分な力をつけて送り出すことを目的としたコースとなっています。
■本科コース
2年次に文理選択し、国内の大学進学をめざすコース。
■インターナショナルコース スタンダード
これまでのスーパーイングリッシュコースをベースに、英語に力を入れて、国内の大学進学をめざすコース。
■インターナショナルコース アドバンスト
海外の大学進学をめざすコース。
主要授業(英数理社)はオールイングリッシュで実施。
TOEFLやSATの指導も行います。
■メディカルサイエンステクノロジーコース
これまでのスーパーサイエンスコースをベースに、基礎研究プログラムで先端科学に触れたり、ニーズが高まっている医学部受験にも対応するコース。