学校特集
横浜富士見丘学園中学校・高等学校2019
掲載日:2019年11月20日(水)
今春より男女共学校化し、新たな歴史を刻み始めた横浜富士見丘学園。さらなる改革も推進中で、生徒たちの夢を叶える体制づくりがより強化されています。希望の進路へ邁進できるために、どんな教育が行われているのか。生徒たちはどんな夢を描き、自らの希望をどう叶えていくのか。具体的な取り組みと男子入学後の学校生活について、校長の駒嵜 健先生に伺いました。
基礎学力と学習習慣を重視
現中2の生徒たちが高3になる2023年、創立100周年を迎える横浜富士見丘学園。この伝統校で、生徒一人ひとりがもつ可能性を大きく伸ばす教育の陣頭指揮を執っているのが、昨年度より校長に就任した駒嵜先生です。
「未来を担う子どもたちやその子どもたちがより良い生活や社会を目指し、より幸せに過ごせる礎を作ること。それが本校が一番大切にしていることです」と語ります。
そのために同校で掲げている教育の柱は以下の通りです。
1.確かな学力
2.活きた英語力
3.理数教育
4.ジェネリックスキル
この中でも最も重視されているのが「確かな学力」です。
特に中1から中2にかけての学びを大切にしており、きめ細かな学習指導を徹底。毎日提出する学習記録ノート「あしあと」では、担任の先生とのやりとりを通して、生活と学習にじっくりと向き合う姿勢を育成しています。自分自身の成長の振り返りももちろん可能です。
「TERAKOYA」と命名した放課後の学習支援制度も取り入れています。
中学生は基礎学力の定着のため、高校生は大学入試に向けた学習を常時2〜3名常駐する大学生・大学院生がサポート。横浜国大や横浜市大、東京理科大、東工大や上智大などの学生と触れ合い、生徒は近い未来の自分の姿と重ねることもあるでしょう。
もちろん先生方への質問や疑問も大歓迎ですが、先生には聞きづらい生徒や自分でもっと学びたいという意欲に応えるためのもので、生徒たちにも好評です。
また今年の12月からは来年度の本格始動に先駆けて、オンライン学習サービス「スタディサプリ」を全学年で導入します。
「一番重要なのは、"しっかり学ばせること"と"本物の体験をさせること"です。覚えるべきこと、身につけるべき知識をしっかりし、自分自身の手できちんと書くといった従来型の学習で基礎学力をつけることがすべての学びの原点です。
本当の"学歴"というのは、学校歴ではなく、学習歴だと思っています。いかに学習を積み重ねてきたか、また積み重ねていけるかが重要です。
自力で身につけた学歴はなくなりませんし、決して自分を裏切ることはありません」(駒嵜先生)
学びを重ねた知識や努力は、人生の指針になるはずです。横浜富士見丘学園では、このように基礎的な学力をベースに、多様な考え方や文化に触れる機会を豊富にもっています。
「活きた英語力」をつけるために
横浜富士見丘学園の英語教育で展開しているのは、「Vivid English Program」です。
ライティング、リスニング、リーティング、スピーキングに加え、同校では「英語6技能」として、発表を意味する「プロダクション」と相互的なやりとりを意味する「イントラクション」を追加しています。
「将来的には日本国内でも、アジアやアフリカなど様々な国の方が来て、共に働くことが当たり前になる時代がくると思うのです。
その中で外国の方と英語でコミュニケートできる力は必須です。
しかし、単に話せる、聞けるというだけではなく、学問的にも耐えられるような力をしっかりとつけていきます。
英語においても、やはり勉強することが重要です」と駒嵜先生は話します。
中1・2でのネイティブ副担任制は、まずは英語を話してみたくなる機会や、苦手意識をもたせないための取り組みです。そして、同校ならではの取り組みに、中3の「グローバルアイ」があります。これは、英語を母国語にしない様々な国からの留学生と文化的相互理解を図るプログラム。
3日間に渡り実施され、4〜5人一組で留学生と一緒に横浜を散策するなど、生徒たちにとって普段の学習成果をアウトプットする絶好の機会です。最終日には、英語でのプレゼンに挑戦します。
この「グローバルアイ」は、多くの国の方々とコミュニケーションを取って、多様な文化や考え方を知り刺激を受けられる生徒たちの充実度も高いプログラムです。こうした取り組みを通じて英語の重要性にも気づき、中3の冬に実施する海外研修へのモチベーションにもなっています。
実はまだ検討中なのですがという前置きをして、駒嵜先生が展望を教えてくれました。
「『グローバルアイ』は、中3だけではなく、高1でも行いたいと思っています。
高校ではSDGsなどの様々な課題も含めて、もっと世界に視野を広げ、踏み込んだ内容で実施したいと考えています。政治的な問題はさておき、未来を担っている彼らの目線で様々な国の方々と深いコミュニケーションを取れる機会があるというのはいいことだと思うのです」
例えば、隣国である北朝鮮の実情について、アフリカと中国の関係性など、歴史的背景などを鑑みつつ各国がどういう立ち位置で物事を捉え、どんな取り組みをしているのかというところまで考えることを目指したいのだそう。
世界はますます近くなっていますが、それでも未知なることはたくさんあり、地球規模で取り組むべき課題は山積しています。
そうした問題に立ち向かえる人材の育成を行いたいと横浜富士見丘学園では考えているのです。
人間力を高める「ジェネリックスキル」
かねてより行っている東京理科大学との教育連携をはじめ、充実した理数教育を展開している同校。
「これからの子どもたちにとって、AIが発達しても機械に使われないために、理数的な考え方も重要です」(駒嵜先生)
また同校で取り組む「ジェネリックスキル」とはどんなものなのでしょうか。駒嵜先生が答えてくれました。
「近年は大学などでも使われている言葉ですが、社会に出た後の"汎用力"と言われています。いわゆる協働力や課題解決力などのすべてを包括しています。
本校では"生きる力の育成"と位置づけて、基礎学力も英語力もすべて、社会に出た後にきちんと役立てられるか。あわせて『ジェネリックスキル』を学ぶことで人間的な基盤を作るところに教育の本質があると思っています」
駒嵜先生は、構想中のさらなる展開について、こう話します。
「本当は起業家精神を意味する"アントレプレナーシップ"を子どもたちがもてるようになると非常に良いと思っています。起業するのは特別な人ではなく、女性や若い方も多く、豊かな発想力や粘り強く立ち向かう姿勢をもっています。そのためにどんな心構えやマインドが必要なのか、資金などがなくてもアイデアを絞り出して乗り切る、諦めずに次の手を考えられる、というたくましさを求められるこの精神を学ばせたいのです」
先にもある通り、今後日本には、そうした発想力とバイタリティをもった海外の人々がますます増えてきます。
「日本は子どもの数が減っていて競争心も薄く、かつ島国なので危機感があまりないことが気がかりです。
帰国子女入試などで年に何度か海外へ行きますが、アジアの子どもたちは本当に勉強しています。勉強したくでもできない貧しい子が多くいます。だからこそチャンスがあれば貪欲に学び、この状況から抜け出したいという強い思いが彼らを突き動かしています。その姿は日本が戦後間もない貧しい時代に復興のために頑張っていた日本人の姿とも重なります。
そういう人たちが流入してくると、日本人が使われる立場になるのではないかと危惧しています」(駒嵜先生)
だからこそ様々な"本物の体験"を通して、自分自身でたくましく生き抜く力を培ってほしいと先生方は願っています。
「何度でも失敗していいのです。我々が全力で応援します。将来に向けて、大きな夢を描いて、常に向上心をもってほしいと思っています。自分で何事にもどんどんチャレンジしてみることです。失敗から学び成長することのほうが多いでしょう。女子はもちろん、特に男子は小さくまとまらずにどっしりと構えていてほしいですね。子どもたちの可能性は無限大なのです」(駒嵜先生)
共学化初年度の校内の様子とは
なお今年度から共学化した横浜富士見丘学園。学内の雰囲気はどう変わったのでしょうか。
「女子たちの真面目さが改めて浮き彫りになりました」と笑う駒嵜先生。男子生徒はどうしているのでしょう。
「上級生の女の子たちは、弟ができたという感じでかわいがっています。
男の子たちは来年、下級生が入ってきて、先輩風を吹かせつつもどう変わってくれるのか。中3くらいまでに反抗期が来て、ヒゲが生え、声変わりをして、体も大きくなるなど、男の子は大きく変わるので、そのときに本校としてどう育てていくかがとても楽しみです」
高1までの主要教科の授業は男女別クラス編成。それぞれの特性に合わせた授業を展開していますが、男女での教え方はどうしているのでしょうか。駒嵜先生は中1の理科の授業を担当しています。
「生徒たちの反応を見ながら教えているので、教え方を特別に変えるということはしていません。
ただし男子は『理数特進』クラスということもあり、理科への興味が強い生徒が多い印象はあります」
現在、成績上位は女子が占めているのだそう。
しかし、駒嵜先生は学校説明会で、参加者の方たちにこう伝えているそうです。
「全般的な傾向なのですが、多くの場合、女の子はカメ型、男の子はウサギ型であると思っています。男の子は追いこみ型が多く、ここぞというときにジャンプします。女の子は地道にコツコツと進んでいくことが得意で、中学生のうちは常に男子の一歩先を行っている印象があります。ただし、最後の踏ん張りでは女の子より男の子の方が大きくジャンプすることができるのではないかと感じています。だからこそ、男女それぞれの特性に合わせた学習方法が大きな成果を生むと考えています」
最後に駒嵜先生が熱く語ってくれました。
「幸せの考え方や度合いなどは生徒によって捉え方が異なると思いますが、それを後押しできるものを中高のうちにできるだけ身につけること。学校でできるのはそれだけだと思っています。とにかく一人ひとりの生徒が幸せに生きてほしいのです」
日々の学校生活の中で、学ぶことへの喜びを知る機会が豊富な横浜富士見丘学園。ここには知的好奇心を育み、自分自身の生き方と幸せを見つけられる6年間が待っています。