学校特集
青山学院大学系属浦和ルーテル学院中学校・高等学校2024
系属校推薦入学の枠拡大へ
掲載日:2024年11月5日(火)
青山学院大学系属浦和ルーテル学院中学校・高等学校は、1クラス25名×3クラスを1学年とする少人数制で、アットホームな雰囲気が特徴の学校です。「ギフト教育」と呼ばれる独自の教育は「神様から贈られたかけがえのない才能や個性」(=ギフト)を見出し、そのギフトを用いて世界平和に貢献し、自分自身も幸せな人生を歩むことを目標としています。そして、来春2025年度中学校入学の生徒からは、青山学院大学への系属校推薦入学の枠が大幅に拡大する予定です。アップデートし続ける同校の教育について、理事長で校長の福島宏政先生に伺います。
70年以上に及ぶキリスト教をベースにした教育
■主体的・探究的に学び進め、平和を作る人を育てる
世界を見渡すと、今なお戦争や災害が後を絶ちません。昨年、理事長にも就任した福島校長はこのような社会を危惧し、愛を教えることと平和を作り出す人を育てることが教育の使命であると、改めて2つの目標を掲げました。
福島校長:聖書に「喜ぶ人と共に喜び、泣く人とともに泣きなさい」(ローマの信徒への手紙12:15)という言葉があります。国内外の争いや事件の原因の一つには、簡単に答えを求める風潮があるように思います。イエス・キリストの時代にも争いはありましたが、イエス様は暴力ではなく愛によって問題を解決しようとしました。私たちは、家族や友人には自然に無償の愛を捧げることができます。しかし、自分とは無関係の人に愛を捧げることは簡単ではありません。こういった愛は教育でしか教えられないのです。本校では、さきほど申し上げた「喜ぶ人と共に喜び、泣く人とともに泣きなさい」という心のありようを大切に、教育を通して無償の愛を捧げることができる人、平和を作ることができる人を育てることを改めて目標とします。
もう一つは「主体的・探究的に生きる人間を育てていくこと」。これは「ギフト教育」にも関係します。
福島校長:人間は誰しも神様からの「ギフト」をいただいて生まれてきました。ギフトとは才能や個性、使命のことを指しますが、自分はどのようなギフトを持って生まれてきたのか、自分のギフトを社会でどう生かすのかを考えなければいけません。「惜しまずに豊かに蒔く時は、刈り入れも豊かなのです」(コリントの信徒への手紙Ⅱ9:6)とは、それぞれが自分の価値に気づき、それをさらに増大させようとする生き方を示しています。一生をかけて自分のギフトを探究しながら、そのギフトを他人のためにどう使うかを考えられる人を育てたいと思っています。
福島校長が印象に残っている生徒がいます。彼は現在40代で、大学の准教授として活躍しているそうです。
福島校長:ある日突然、その卒業生のお母さんから「息子がミッション系の大学の准教授になりました」と連絡を受けて知ったのです。彼は高校生の頃、私が担任をしていた生徒でした。ご家庭の事情があり、生活が少し荒れていました。卒業後は、大学には行かずにI T系の専門学校に入学し、その後、派遣で働いていました。しかし、働くなかで大学や大学院での学びの必要性を感じた彼は、大学の通信課程で国際政治学や経営を学び、M B A(経営学修士)の資格を取得したのです。どんな生徒にも、必ず神様からいただいたギフトがあります。大切なのは、自分のギフトを探究し続ける姿勢なのです。彼の「その後」の話を聞き、教師は生徒を信じて見守ることが重要なのだと改めて気づかされました。
福島校長の理想とする教育を体現している卒業生です。
■家庭の事情で学校を去った生徒も十数年ぶりに来校
少人数だからこそ、先生方は生徒一人ひとりを注意深く見守っています。そして、生徒一人ひとりが自分のギフトを探すサポートを惜しみません。
福島校長:現在の中2生のみ、複数の学校に合格したうえで本校を選んでくれた生徒が多かったため、例外的に4クラスになってしまいましたが、本来の温かで家庭的な雰囲気を守るためにも、今後クラスを増やす予定はありません。
生徒一人ひとりの顔が見える教育体制は、同校ならではです。昨年、留学期間の関係で3月に行われた高校の卒業式に出席できなかった生徒がいました。しかし、その生徒の帰国後、6月に、その生徒のためにチャペルでたった一人の卒業式を挙行したこともあります。
また、家庭の事情で中途退学した生徒と十数年ぶりに再会したエピソードについても教えてくれました。
福島校長:小学校から入学した生徒でした。ご家庭の事情で途中でやめてしまったのですが、今年の春休みに訪ねてきてくれたのです。彼はその後医学部に進学し、現在インターンとして救命救急医を目指しているとのことでした。そして、彼は「ルーテルで賜物を活かす教えを受けたことが生きていて、困難な状況にある方を助けたい」と言いました。自分の与えられたギフトを見つけ、大切に育み、本校でのギフト教育を拠り所にしてくれていたのです。そして、忘れずに本校を訪れてくれた。とても嬉しかったですし、感動しました。
■ルーサラン・アップデイト・プロジェクトで、日々の教育を更新中
青山学院大学の系属校となり6年目。来年には、系属校になって初めて入学してきた小学生がいよいよ中学校に入学してきます。そのため、中学受験はより狭き門になることが予想されますが、一方で系属校としてさまざまなことが整ってくる時期でもあります。そんな現在、福島校長は新たな教育施策「ルーサラン・アップデイト・プロジェクト」として4つの新しい試みを考えていると言います。
福島校長:新しい試みとしては4つあります。1つ目はI C T関連です。本校ではiPadは一人1台など、ハード面は進んでいるのですが、ソフトの利用面ではまだまだ課題があります。たとえば教育ソフトを研究して授業に活用するなど、I C T化の充実をさらに図っていきたいと考えています。また、パソコン教室のパソコンも新しいものに変える予定です。
「図書館をリニューアルする」。これが、2つ目です。
福島校長:本校は、小学校の開校からスタートした学校ですので、図書館も小学生に最適化したつくりになっていました。それを中高生にとってもより使いやすい形に改修し、探究学習に活用できる蔵書も増やしたいと考えています。
創立当初からグローバル教育に力を注ぐ同校ですが、同じ信仰をもつアメリカのご家庭にホームステイする「アメリカ研修」「長期留学」は長い伝統を誇るプログラムです。そして、このほかに新たな研修もスタートします。これが3つめの改革です。
福島校長:今年の夏休みから、オーストラリアに10日間ほど滞在する留学を開始します。提携しているオーストラリアのカレッジと、文化交流や自然体験をする予定です。本校では、夏休みの4週間をかけて行うアメリカ研修や、高2〜3での10カ月間の長期留学がありますが、もう少しライトな気持ちで参加できる留学があってもいいかな、ということで新たに設けることにしました。
そして、最後4つめの改革は先生方の研修です。こちらはすでに一昨年から始動していますが、主に授業運営力の向上を目指したものです。
福島校長:近隣にある大学の教育学部の先生に指導していただいています。例えば、教科ごとに「失敗を恐れずにチャレンジする授業」などテーマを設定し、その実現に向けて1年間をかけて授業を作っていくのです。具体的にはまず1学期は指導案を作り、2学期に模擬授業、そして本番へとつなげていきます。また、お互いに授業を研鑽し合う研究授業も行っています。学校は時代に合わせてアップデートすることが必要ですから、教師も日々アップデートしていかなければいけません。
授業運営力の向上は、当然ながら生徒の学力アップにも比例します。そして、学力アップはギフトを開花させ、将来への飛躍へと確実につながっていきます。
■青山学院浦和ルーテルの「国際交流プログラム」(抜粋)■
アメリカ研修▶︎夏休みに約1カ月間の予定で実施。中3〜高2の25名が参加。前半2週間はカルフォルニア州アーヴァインの姉妹大学の寮に滞在し、後半2週間はアリゾナ州フェニックスの教会員の家庭にホームステイ。英語力の向上はもちろん、異文化体験やキリスト教理解を通してグローバルな視野も養います。
オーストラリア研修▶︎夏休みに10日間程度で実施。クィーンズランド州ブリスベンを拠点に、提携校での英語体験や同世代交流、自然体験などを行います。
日本研修▶︎アリゾナ州フェニックスの姉妹校から生徒と先生が来校し、同校で10日間ほど学校生活を共にします。この交流で「もっと英語でコミュニケーションできるようになりたい」と、英語学習に意欲的になる生徒も多いそうです。
長期留学▶︎高2の7月から高3の5月までの10カ月間、アメリカ・アリゾナ州フェニックスの教会員の家庭にホームステイし、姉妹校に通学します。アメリカで取得した単位は、日本でもそのまま認定されるのも大きな特徴です。
■「基礎学力」と「フィールドプログラム」は両輪
中学の授業では各教科とも基礎を丁寧に固めていきますが、英語は4技能をしっかり身につけ、中3までに英検準2級の取得を目指します。
福島校長:高校生になって偏差値が10〜20アップする生徒がいますが、これは中学時代、学習の基礎をしっかり固めていることによります。本校では先取り学習は行いませんが、一つひとつの授業を丁寧に、例えば歴史で言えば事実の裏側まで深く掘り下げるなど、探究的な学びを実施していることが功を奏しているのでしょう。
通常の授業のほかに週に1時間、自分の興味関心のある分野の学びを深める「フィールドプログラム」という学習活動がありますが、これも探究的な学びの一例です。「フィールドプログラム」は「フィールドA(アーツ)」「フィールドE(イングリッシュ)」「フィールドS(サイエンス)」の3分野に分かれ、生徒は興味のある分野を選びますが、この活動は生徒自身の進路希望へ弾みをつけるきっかけともなるものです。
福島校長:「フィールドA」は歴史や芸術、文学について学ぶ人気のプログラムです。2020年よりコロナ禍のためフィールドワークは行っていませんでしたが、今年は再開できそうです。また、「フィールドE」で今意識しているのは「英語+S D G s」です。ナイジェリア、オーストリア、チリなどさまざまな出自の教師たちがそれぞれの出身国の歴史や文化、自身の体験を語ります。生徒は世界の課題を知り、自分の英語力を生かして解決の道を考えます。「フィールドS」では、生徒に人気が高いものにビオトープの観察があります。ビオトープでの生き物の生態の観察を通し、自然界の移り変わりを実地で学ぶことができます。
フィールドプログラムは、生徒たちの好奇心を満たすプログラムでもあります。生徒はやりたいことをどんどん掘り下げ、学ぶ楽しさを実感し、自身の未来へとつなげていっています。
■3つの「フィールドプログラム」■
フィールドA▶︎芸術、文化、歴史などをアクティブラーニングで学びます。最も力を入れているのは世界遺産の研究です。グループごとにテーマを設定し、ICT機器を活用して協働で調査・探究します。それぞれの世界遺産を訪ねるツアーの企画をプレゼンし、最も優れたツアーを実地で行う計画を立てています。活動のまとめとして世界遺産検定に挑み、2年連続で最年少最優秀賞を授与されました。
フィールドE▶︎高いレベルの生きた英語力を身につける目標を掲げています。一昨年はワールド・ビジョンの活動を知ることを通し、英語力を国際的に生かす道を考える学習を行いました。英語力の目安として英検2級以上の取得を目指します。
フィールドS▶︎自然観察や理科実験など、サイエンス分野の学びに取り組みます。生徒の関心が高いのは自分たちで作ったビオトープの観察で、生き物たちの実態を身近に学ぶことができます。数検や理科検にも挑戦します。
生徒一人ひとりのギフトを生かした進路指導
■青山学院大学をはじめ、他大学進学にも積極的に挑む
青山学院大学の系属校となって以降、同大学に進学する生徒の割合は増えていますが、2024年には卒業生60数名中15名の生徒が青山学院大学に進学しました。
福島校長:実は、青学にはまだまだ枠がありますが、他大学進学の意志を持った生徒も多いため、このような結果となっています。他大学は早稲田大学に5名、上智大学に7名が進学しているほか、医学部や薬学部、芸術系大学などにも進学しています。また、来春2025年度の中学入学生からは、青山学院大学への系属校推薦入学の枠が大幅に拡大しますが、詳細は説明会でお話しします。
青山学院大学進学への道筋が示されていることは大きな魅力。そして、他大学進学へのサポートが手厚いことも大きな魅力。
さまざまな進路を可能にしているのは、先生方の日々の見守りと、熱心な進路指導があることは言うまでもありません。年8回以上の面談のほか、無料の講習や受験講座も多数実施。希望すれば、たとえ生徒一人でもその受験講座を開設することもあるのだとか。
少人数でありながら、人文・法律・理工・医歯学・芸術系など幅広い進路を実現していることもまた、キリスト教精神に基づく「ギフト教育」の賜物と言えるでしょう。