学校特集
光英VERITAS中学校・高等学校2024
掲載日:2024年10月19日(土)
2019年度まで、千葉県の女子校として知名度も人気も抜群だった旧聖徳大学附属女子。校名を新たに光英VERITASに変更し、中高ともに共学化したのが2021年でした。そして今年3月、高校の共学化第1期生が卒業。ちなみに昨年は女子校最後の卒業生を送り出しましたが、その置き土産は東大理科Ⅰ類に合格者が出るという快挙でした。共学校を機に、進学指導にもより一層力を入れていこうとしていた矢先、後輩たちへ見事にバトンを渡して巣立っていったのです。さて、共学化4年目の今年の高1は男子91名、女子63名が入学。高1では初めて男子が女子の人数を上回り、同校がかつて女子校だったことを知らない生徒もいたのだとか。共学化して初めての卒業生と在校生の様子、そして同校の教育の「今」について、校長の川並芳純先生に伺いました。
現役合格率約95%、理系志望者は女子校時代の2倍に!
■男子の熱い愛校心など、新たな発見も続々
この3月、共学化1期生の高3生が巣立ちました。さらなる進学校化を目標の一つとしているだけに、川並校長も今年の進学状況には注目していたようです。
川並校長:「我々にとっても、男子の大学受験は初めての経験でした。正直、男子は浪人が多く出るかもしれないと考えていましたが、蓋を開けて見れば今年の卒業生の約95%が現役で合格。また、男子では医学部志望の生徒もいて、想像以上の結果となりました」
文武両道を目指す同校ですが、例えば野球部。
野球部は共学化後にできた新しい部活ですが、2021年全国高等学校野球選手権大会(甲子園)千葉大会に初出場ながらも初勝利を収め、ニュースになりました。そして2023年には、千葉県大会でベスト16に入るなど結果を残し、現在は約100名の部員を抱えるほどの大所帯に。
ちなみに、部員たちの髪型は自由で、旧来の「野球部といえば丸刈り」とは大きくイメージが異なります。部活動後には、同校独自の自習システムVAS(ヴェリタス・アフタースクール/難関大学の学生がメンターとして常駐し、さまざまな学習支援を行う)を活用して19時まで勉学にも励むなど、まさに同校が掲げる真の「文武両道」を体現しています。
高校の共学化1期生の中に「野球をやりたい!」と入学した男子がいたそうです。川並校長は当初「彼は就職希望かもしれない」と考えていたそうですが、実際には理系の大学に進学。しかも、野球部で一番最初に合格を決めたそうで、川並校長も予想外だったとか。ある部員が言ったそうです。「野球はやりたかったけれど、この学校を選んだのは現役進学率が高いからです」と。
そして、野球部のOBである1期生のみなさんは、この夏、全国高校野球選手権千葉大会の3回戦・対東海大市原望洋の応援にこぞって駆けつけてくれたそうです。
川並校長:「大学を休んでまで応援に来てくれたOBもいました。女子が愛校心が強いのはよく知っていますが、男子にもここまでの熱い愛校心があるとは新発見でしたし、とても嬉しかったですね」
■進路指導では、「学びたい学問」「第1志望」を貫くことを鼓舞する
同校では、「学びたい学問を学べるところへ進学」「第1志望を貫くこと」を進路指導の要点にしています。
川並校長:「本校独自の教育に、探究的学びのサイクルを表す『ヴェリタス・トルネード・ラーニング』があります。例えば、ある物事に対して課題や疑問点を見出し、それに対する答えを探し求めます。でも、課題を解決したその先にはさらに大きな課題があります。このように、課題解決のための挑戦は続いていくのです。これが『トルネード・ラーニング』で、本校ではこの探究的学びを全学年で行っています。そのため、関心があることを深めていく環境、やりたいことができる環境にあると言ってもよいでしょう。生徒たちには『興味関心があることをやりなさい』『学びたい学問を学びなさい』、そのためには『第1志望を貫きなさい』と指導しています」
トルネード・ラーニングの考え方を身につけた生徒たちは、「学びたい学問」「望む進路」に向かって突き進みます。それが、現役合格率約95%という結果として表れたのでしょう。
今春も、東京学芸大学や東京都立大学などの国公立をはじめ、早稲田大、上智大、MARCHなどに合格者を輩出しました。
川並校長:「秋の総合型選抜の受験対策を行いながら、冬の一般受験の準備を怠らなかったことも現役合格率を上げてくれた要因だと思います。これらのサポートには全教員が携わっていて、それも功を奏したのではないでしょうか。でも、高校の共学化1期生たちは後輩たちに想像以上に良い結果を残してくれ、ホッとしました。また、本校の生徒たちは部活動にも熱心ですが、本当の意味での『文武両道』を見せてくれたと思います。改めて生徒たちを見直しましたね」
■「理系的思考力」を醸成する、さまざまな仕掛けがそこかしこに
かつて川並校長は、「共学化した際には理数系にも力を入れたい」と語っていました。その目標を達成するために、校舎の2階をサイエンスフロアとして7室すべてを理科教室に。そして、年間40回の実験を行うなど、理数・サイエンス教育の強化に乗り出しました。生徒自らが実験方法を考えるなど、発想力や表現力、協働力を養う授業も同校ならではです。
また、中学3年間は全クラス共通のカリキュラムで学びますが、高校では人文社会系・グローバル系の「Global Language Artsコース」と、理工系・医科歯科薬科系の「Medical Scienceコース」の2コース制に改編。さらに東京理科大や東工大、千葉工大など理工系の大学との連携授業なども活発です。
川並校長:「東京工業大との授業では、中2のグループ学習で『SFの物語を作ってみよう』というものがありました。生徒からは『地球の表面積が一夜にして100倍になったら』『もし地球が四角形だったら』など、ユニークな作品が出てきましたが、感心したのはSFとはいえ単なる空想ではなく、重力など事実を踏まえた細かいディテールまで考えて設定していたことでした。また、東工大とは『コマはなぜ倒れないのか』について学びました。こういった学習で『難しい!』と思う前に、『サイエンスっておもしい』『知ること、学ぶことは楽しい』と実感し、『知的好奇心』を増幅していってくれればと思っています」
こうした積み重ねが功を奏し、理系志望者が倍増。「理系志望者を増やしたい」という目標を早くも達成したわけです。川並校長はまた、高校生の探究で印象に残った実験についても教えてくれました。
川並校長:「『糸の力で建築物ができるか』というテーマに挑んだ生徒がいました。柱の代わりにワイヤーを使い、その引っ張り合う力で構造物を作れるかという非常に興味深い実験でしたね。これはSDGsにも通じていきますし、さまざまな実験を積み重ねることによって、生徒が『こういう研究がしたい』というものが具体的に見えてきて、それが進路にもつながっていくのです」
■楽しくなければ学校じゃない!
川並校長:「私は校長になって21年が経ちますが、年に数回、生徒たちに『自分たちの時間と空間を大事にしなさい』と伝えています。自分を大切にできる人は、家族も友達も守れる人です。自分を大切にすることを考えることは、学校全体の雰囲気を良くしていくことにもつながっていくからです」
例えば、夏休み終了後、よく学校に行きたくない子どもたちのことがニュースになります。でも、同校の生徒はまったく逆で、「早く学校に行きたい」という生徒が多いのだそうです。
「楽しくなければ学校じゃない!」という川並校長の思いを生徒たちがしっかりと受け止め、「行きたくなる学校」を自分たちでも作り上げているようです。
川並校長:「人は、花を咲かせる機会を与えてあげれば花を咲かせるものです。本校の校章の菱形は、ダイヤモンドの原石をイメージしていますが、この原石こそが生徒たち。また、教養は人間の核となるものです。生徒たちには本校で教養を身につけて花を咲かせ、光輝く存在になり、社会に貢献してほしいと願っています」
中学受験生対象「夏のVERITAS祭」を初開催!
■600名が参加し、大盛況!
今年7月に、「夏のVERITAS祭」が初めて開催されました。これはミニ文化祭をイメージしたもので、朝8時30分から12時30分まで、受験生親子は半日をかけて体験授業や部活動見学、カフェテリア体験をし、教育内容についての説明を聞きました。さらに、希望者は施設見学や個相談を受けることができるなど盛りだくさんな内容で、このイベントには250組600名が参加しました。
川並校長:「4〜5年生の参加者が多かったですね。体験授業は5教科3コマを受けることができ、途中入退場可としました。『夏のVERITAS祭』という名の通り文化祭のようなイベントとなり、とても盛り上がりました。有志の生徒たちも参加し、授業のアシストをしたり、施設内を案内したりと、とても熱心にサポートしてくれました。『夏のVERITAS祭』は来年以降も続けたいですね」
ところで、同校のキャンパスは幾度となくテレビドラマのロケに使われています。緑に囲まれたキャンパスに広い廊下、2020年にリニューアルした2000名以上収容可能なカフェテリアなど、ロケーションとしても最高の環境で、一見の価値ありです。
「夏のVERITAS祭」もオープンキャンパスも、光英VERITASの「今」を体感するには絶好の機会。来年以降も要チェックです。
さらに自由で、開かれた学校を目指す
■生徒のより良い未来を考える「未来会議」を初めて実施
川並校長:「よく『共学校化して何が変わりましたか?』と聞かれるのですが、その度に『七色だった色が何十色にも何百色にも増え、とにかくカラフルになりました』と答えています」
そして、さらに新しい色として加えようと考えているのは、生徒自身が学校を広報宣伝する有志団体を作ることだとか。
川並校長:「例えば、『学校宣伝部』のようなものを作ってもいいかなと考えています」
そこで、今年の夏休みには先生方が全員集合して、初めて『未来会議』というものを開いたのだそうです。
川並校長:「これは教員による生徒たちのための会議です。古代ギリシアで夕食後に行われていたシンポジアというものがありますが、ここでは酒を酌み交わしながら議論したり討論したりしていました。『未来会議』はこのシンポジアに倣い、食事を共にしながら役職関係なく、生徒の未来のために自由な発想で自由に議論する場にしたいと思っています」
「理数・サイエンス教育」「英語・グローバル教育」「小笠原流礼法教育」を主軸に、トルネード・ラーニングで学びを広げ深める同校ですが、共学化4年目にしてさらなる挑戦を始めています。学校の主人公は生徒自身、その生徒の未来を真摯に考え、全力でサポートする先生方。まだまだ進化の途上にある、光英VERITASの今後には一層注目です。
グローバル教育の目標は人・社会・自然環境の保持に貢献する「次世代の地球を守るリーダー」を育成すること。そのため、「英語学習」「行事」「異文化交流」「地球的課題・知識・理解・実践」「進路」「留学」を柱としてグローバル教育を展開。とくにニュージーランドターム留学は、コロナ禍前よりもバージョンアップしているとか。今後も、国際交流プログラムにはさらに注力していく予定です。
川並校長:「人も動くようになったので、生徒には海外でより多くの経験をしてもらいたいと考えています。1年間留学する生徒もいることから、留学期間も見直しました。ニュージーランドターム留学はこれまで1セット(1学期)だけでしたが、今年から2セット(2学期)にしました。マレーシアの大学に進学した卒業生もいます。保護者の方々の留学や海外進学への関心が年々高まり、海外大学進学説明会には170名が参加されました。注目度の高さを実感しています」
千葉県観光誘致促進課より、海外の生徒たちの研修先として打診が絶えないという同校。受け入れ先として声がかかる大きな理由として川並校長は、「小笠原流礼法にあると思います。世界に誇る日本文化でもある小笠原流礼法は、グローバル教育ともつながっています」と言います。
小笠原流礼法は、もともとは室町時代の武士の礼法。美しい振舞や所作などは相手を思いやる心や感謝の心から生まれたもので、礼法ではその精神を培います。宗家監修のもとに行われる小笠原礼法は、共学化した現在も全学年で週に1時間必修、卒業後は免状をもらえます。
「礼法はトルネード・ラーニングを支える土台中の土台なのです」と川並校長。日本文化とともに「学ぶ姿勢」をも培っているのです。