学校特集
日本学園中学校・高等学校2024
掲載日:2024年9月1日(日)
2026 年度から明治大学系列校となる日本学園中学校・高等学校。校名が「明治大学付属世田谷中学校・高等学校」に変わり、男子校から男女共学校として新たなスタートを切ります。すでに大きな注目を集めていて、2023 年度以降の入試では出願者数・入学者数が大幅に増えました。系列校化に伴い、新しく策定した教育のグランドデザイン、2025 年に完成する新校舎や制服について、校長・水野重均先生に伺いました。
歴史と伝統が息づく、
教育のグランドデザイン
京王線・井の頭線明大前駅から徒歩5分、明治大学和泉キャンパスからも徒歩圏内の場所に位置する日本学園中学校・高等学校。校門を入ると、豊かな樹々、その奥には国の登録有形文化財に指定されている重厚な校舎が見えます。創立139年という歴史を持つ伝統校で、吉田茂元首相や岩波書店創業者である岩波茂雄、日本画家の横山大観など、政・官・財界をはじめ各界で日本を支えた逸材を多く輩出してきました。
そんな同校が明治大学の系列校へと至った背景としては、明治大学と創立年代がほぼ同じで教育理念にも共通するものがあったこと、10年以上前から続く教育的支援事業を通して信頼関係を構築してきたことがあります。
2026年度から明治大学付属世田谷中学校・高等学校と校名を改め、共学校へと生まれ変わりますが、これまでの歴史の中で大切にしてきた教えは変わらずにそのまま受け継いでいく、と校長の水野重均先生は話します。
水野先生「本校の創設者・杉浦重剛先生は『各人の天分を活かす』という教えを説きました。これは『人は得意な道で成長すればよい』という意味です。この言葉は本校の理念として脈々と受け継がれており、それはこれからも続いていくでしょう。2026 年度からスタートする教育のグランドデザインでは、この理念をベースに置きながら『国際理解教育』『キャリア教育』『理数教育』を大きな柱として3つの能力を育成することを目指しています」
<育成する3つの能力>
① 自ら課題を見つけ、その課題に向き合い考え抜く力
② グローバル社会の中で自分を表現するコミュニケーション力
③ 情報化社会における最先端技術に対応し応用する力
水野先生「テストの成績などの数値化できる認知能力も大事ですが、変化の激しい時代、グローバル化が進んだ社会では、物事をどのように捉え、考えるかという非認知能力を身につけることが必要だと考えています。相手の感情を読み取る力、異文化を理解する力といった数値化できないスキルをいかに伸ばしていくか、そこに重点を置いていきたいのです」
こうした非認知能力を大きく伸ばしていくカギとなるのが、同校オリジナルの学び「創発学」です。「創発学」とは、調査・研究・取材・まとめを通して「創造する力」を育み、それらを表現・発表する「発信する力」を身に付ける探究的な学びのこと。「フィールドワーク」「プレゼンテーション」「キャリアエデュケーション」の3つの手法で構成され、知的好奇心を高め、学ぶ楽しさを発見し、自らの将来を切り拓く「自己創造力」を育むプログラムです。こうした探究的な学びは、今でこそ日本の学校教育に浸透していますが、同校ではおよそ20年前から先駆的に行われています。
水野先生「『創発学』は、先ほど申し上げた『人は得意な道で成長すればよい』という考えにも通じており、本校の気質的な部分とも深くつながっている学びと言えます。自分の視点を軸にして、深く追求していく学びです。今後もこの『創発学』を継承し、『国際理解教育』『キャリア教育』『理数教育』と組み合わせた形で実践していきます」
2026年度から大きく生まれ変わる同校ですが、教育内容で目指すのは"刷新"ではなく、"進化"です。長く受け継いできた建学の精神や伝統的な学びは残し、新たなグランドデザインに落とし込んでいます。
6年間で「好き」を見つけ、
「得意」に変える
同校の教育の特色である「創発学」。その具体的な内容について、水野先生は次のように教えてくれました。
水野先生「林業・漁業・農業などを体験し、生徒たちは五感をフル活用して『なぜだろう』『どうしてだろう』と自分の視点で問いや課題を立てます。さまざまな事象に興味関心を持つきっかけになる、実にユニークな学びだと思います。事前学習→フィールドワーク→プレゼンテーションという流れで学習を進めますが、その中で生徒たちはさまざまな気付き、学びを得ます。当然、失敗することもあるでしょう。得られた気付き・学び・失敗を、それぞれ次にどう生かすか、いかに連続性を持たせるかがとても重要なので、次に生かしやすいようにプログラム内容を組んでいます。積み重ねの体験こそが、深い理解と知識、豊かな感性の形成につながっていきます」
「創発学」の林業・漁業・農業体験プログラムに興味を持つ保護者も多く、学校説明会では「共学校化した後も続けてほしい」「子どもにぜひ体験させたい」という声もよく上がるそうです。
水野先生は、「創発学」や中高6年間の学校生活を通し、生徒たちには中高6年間のうちに"好き"を見つけ、それを"得意"に変えていってほしい、と言います。
水野先生「勉強は、『強いて勉める』と書きます。しかし本来、学びは強いられてするものではなく、主体的に楽しみながら行うものだと思います。
人は自分の興味関心があることに対しては、自然と『もっと知りたい』という気持ちが湧いて、学んだり、調べたりしますよね。学びたいことがあって、そのために知識、知恵、技術を身に付けていく。それが本来の学びだと思っています。ぜひ生徒たちには、この6年間で自分の『好き』を見つけ、それを『得意』に変えていってほしいと願っています。そして、そういった学びはきっと長続きすると思います。例えば、日本画の大家・横山大観も、最初はまったく売れなかったそうです。ですが、自分の画風を突き詰めていった結果、大成されました。ですから生徒たちには、自分の『好き』や『得意』を継続して一途に突き詰めていくことの大事さも伝えていきたいですね」
新校舎&充実した設備環境で
展開する高大連携
現在、同校では系列校化・共学校化に向けた設備・環境面の準備も着々と進められています。2025 年秋には新校舎が完成する予定で、グランドデザインを体現する設備が整います。
水野先生「ランチタイムには管理栄養士によるさまざまな定食などがいただける『ランチアンドスタディルーム』ですが、大画面LEDモニターを設置します。ランチ以外の時間には、プレゼンテーションなど校内イベントはもちろん、明治大学の先生に講義いただく際や学生さんたちと一緒に何か学びを行う際などにも活用したいと考えています。すでに大学の先生には教育プログラムについて具体的に相談させていただいており、特に理数科目ではいくつかご提案を頂戴しています。大学の設備を利用させてくださるというようなありがたいお話もあり、高大連携プログラムを推進できると確信しています」
高大連携が進むことで、生徒たちはさまざまなものを享受しますが、中でもシームレスな学びを得ること、お手本にできる身近なロールモデルを得ることは大きい、と水野先生は話します。
水野先生「高大連携の学習では、もしかしたら生徒たちがまだ理解できないような内容があるかもしれません。しかし中学・高校・大学が分断されずにつながっていることで、中高6 年の間に、あるいは大学進学後に深く理解できる日がきっと来るでしょう。また、大学の学生さんたちがかっこよく実験器具を使う姿や学びを深めていく姿は、生徒たちにとって良き手本、ロールモデルになるはずです。こうした学習環境は、学びへのさらなる意欲につながっていくと思います」
ほかに、主体的な学びを促進させるため、新校舎と既存校舎の一号館には、各階にラーニングコモンズ(ラウンジ)を設置する予定です。生徒同士、あるいは教員と生徒が教室以外の場所で気軽に集まって話ができるスペース、クラスや学年の枠を超えて集えるようなスペースとして活用してほしいと水野先生は話します。
そして、共学校化に向けた準備も順調に進んでいます。女子の制服は男子と同じくブレザースタイルで、ブルーを基調とした落ち着いたデザイン。好みに合わせて選べるようにと、スカート、スラックス、リボン、ネクタイなど選択肢を多く用意しているほか、家庭の洗濯機で洗えるという配慮もなされています。また、教員向けの勉強会や研修会、部活動や行事の見直しも行われているそうです。新たなスタートに向けて、ソフト・ハードの両面で万全な態勢と環境が整いつつあります。
7割以上が明大に推薦合格できる
教育体制を目指す
明治大学の系列校になることが発表されてからは特に人気を集めている同校。明治大学への内部推薦を受けられる最初の学年とあって、2023 年度入試は出願数が激増し、倍率は跳ね上がりました。当然入学者数も増え、クラス数をひとつ増やしたそうです。
水野先生「高い倍率をくぐり抜けて入学してきた生徒たちが燃え尽きないように、そして学習への高い意欲を維持できるように注力していきたいと思います。内部推薦の基準はまだ確定していませんが、生徒の7割以上(約200名)を明治大学に推薦合格させるような教育体制を目指すとともに、国公立大学等にも合格できるような学力をしっかりと付けたいと考えています」
長い歴史と伝統を重んじながらも、進化・発展への歩みは止めない。生徒一人ひとりの「個」や得意な部分を尊重し、それを伸ばしていくことを推奨する。日本学園中学校・高等学校はそんな気概にあふれています。充実した環境下で主体性を持ちながら学びを深め、将来に生かしていきたいと考える受験生にはぜひ注目してほしい学校です。